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_/ _/_/ _/_/_/ The Globe Now: 台湾人に生まれた幸福 _/ _/ _/ _/ _/ _/ _/ _/ _/_/ 18,647部 H11.12.25 _/ _/ _/ _/ _/ _/ Japan On the Globe(119) 国際派日本人養成講座 _/_/ _/_/ _/_/_/ _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ ■1.台湾は独立主権国家■ 香港に続いてマカオが中国に返還された。最後は台湾だと、北 京政府は言う。これに対する台湾の動きを見てみよう。李登輝総 統は本年7月9日、ドイツの放送局とのインタビューで、中台の 位置づけについて、次のように発言した。 91年の憲法修正以降、両岸(台湾海峡の両岸、すなわち大 陸中国と台湾をさす、JOG注)関係の位置づけは国家と国家、 少なくとも特殊な国と国との関係になっており、決して合法 政府と反乱団体、中央政府と地方政府といった「一つの中 国」における内部関係ではなくなっている。 したがって北京政府が台湾を「離反した一つの省」と見な しているというのは、まったく歴史的および法的な事実を踏 まえたものとなっていない。[1] ・・・ 大陸は「一国二制度」の香港・マカオ方式を台湾にも適用 しようとしているが、台湾は香港・マカオとは異なり、香 港・マカオがもともと植民地だったのに対し、中華民国は主 権独立の国家であり、両者は根本的に異なるのである。[1] ■2.北京政権の武力威嚇■ この李登輝発言に対して、北京はすさまじい反発を見せた。た とえば、朱邦造・中国外務省報道局長の次のようなコメントが報 道されている。 李登輝は就任以来、(台湾)島内の多くの民衆の反対を顧 みず、金銭での買収やワイロなど卑劣な手段で「実務外交」 など祖国の分裂活動を進めてきた。国際的に「二つの中国」 「一つの中国、一つの台湾」の作り上げを図ったうえ、大胆 不敵にも両岸関係を「国と国との関係」と位置づけたことは、 火遊びの道を突き進むものだ。両岸関係の改善に重大な影響 を与えるほか、台湾海峡の情勢安定への影響と、中国の平和 統一を危うくするものである。 われわれは李登輝と台湾当局に告げる。国家の主権、尊厳 維持と領土保全に対する中国政府の固い決心をみくびっては ならない。分裂に反対し、「台湾独立」に反対する中国人民 の勇気と力をみくびってはならない。[2] この「中国人民の勇気と力」を見せつけるように、次のような 威嚇が行われたと、時事週刊紙「環球時報」は報道する。 中性子爆弾の技術保有の宣言に続き、8月2日に中国は 「東風31号」長距離弾道ミサイルの試射に成功した。新型 ミサイルは高い機動性と核弾頭の搭載能力をもち、当面どん な武器でも阻むことはできないのだ。 南京、広州の両軍区では空軍が低空飛行訓練を最近強化し た。福建省駐留部隊はすでに「一級戦備状態」に入った。ミ サイル部隊は前線に展開し、スホイ27など新型機も東南沿 岸の地形に習熟し、実戦能力を高めるため活動頻度を高めて いる。 福建省では部隊が沿岸に展開し、一部の戦闘機は沿岸に配 備された。大量の食料がすでに福建省の軍用補給庫に運び込 まれているのだ。[3] ■3.余裕の台湾政府■ すさまじい敵意に、日本政府ならオタオタする所だろうが、台 湾政府は余裕を見せる。 台湾国防部の孫韜玉次長(国防次官に相当)は13日、野 党・新党の集まりで、・・「大陸側に軍事行動の動きもない し、伝えられるような短期間での台湾占領の能力も大陸側に はない。軍事攻撃の一連の報道は、大陸側の台湾に対する心 理戦だ」と説明、特に香港紙の報道は注意が必要と指摘した。 また、中国側の戦闘機二機がこのほど台湾海峡の中間線を 越えて台湾側に侵入してきた事実を明らかにしたうえで、 「飛び過ぎてしまったのだろうが、気づいて大慌てで帰って いったよ」と冗談を交え、重大視していないとの姿勢を見せ た。・・・ こうした当局の呼びかけが功を奏しているのか、李総統発 言をきっかけに急落した株価も今月六日を底にして、以後順 調に回復しており、すでに下げ幅の約半分を取り戻している。 [4] さらに、8月7日米空母キティホークとコンステレーションが、 台湾海峡付近の南シナ海で「通過演習」を行い、異例の写真公開 まで行った。国防省筋は「小規模、ルーチンなもの」としている が、96年に台湾初の総統選で、中国が軍事的威嚇を強めたとき も、空母2隻が台湾近海に派遣された。タイミングといい、形式 といい、台湾と米国との間で何らかの連携があったようだ。[5] ■4.人権尊重の明白な基準■ 今回の李登輝発言に関して、イギリスのコラムニスト、ジェフ リー・スミス氏は、台湾が挑発的な行動をとるのは反対だが、 「台湾住民の自発的な同意がなければ台湾は中国に吸収されるべ きではない、というのは人権尊重の明白な基準である」として、 次のような提案を行っている。[6] もう一つの可能性は中国の攻撃が差し迫った状況になった とき、いくつかの米国の同盟国が警告のために台湾海峡で軍 事的示威行動を起こすことだ。「国際社会は台湾の自由が奪 われることを許さない」というメッセージを中国に送る上で、 非常に効果を上げるに違いない。 人口200万足らずのコソボや、数十万規模の東チモールの独 立を国際社会が支援しようという時代に、2千万人以上の国民が 自由選挙で総統を選ぶ、安定し繁栄する民主主義国家・台湾の共 産主義国家中国による武力併合がどうして許され得よう? 北京 政府の反発と武力威嚇は、19世紀的な中華帝国主義ぶりを国際 世論に印象づけるだけの結果となったようだ。 今回の発表は、任期満了を来春に控えた李総統が長年力を注い できた台湾化政策の仕上げの意味もあり、以前から周到に準備さ れてきたという。見事な外交手腕である。 ■5.北京政権の痛いところ■ 北京政権のヒステリックな反応は、実は李登輝発言が、共産中 国の最も痛いところをついているからである。香港の「鏡報」誌 12号は、次のように報じている。 政治面からみれば、中国は多民族の統一国家であり、国内 56民族のうち、人口が百万を超える民族が10余りある。 台湾が分裂できるとあれば非漢民族の地域、たとえばチベッ ト、新疆、内モンゴル、さらには壮族、ミャオ族、回族、朝 鮮族などが分離独立を求めるさらなる理由を持ち、中国は国 として成り立たなくなるだろう。中国の少数民族は全人口の 6%にすぎないが、居住地は総面積の60%を占める。中国 の鉱物資源の半分は少数民族地域にあり、少数民族がみな分 離してしまえば、中国は容易に滅びてしまう。[7] 台湾が中国に統一されるべきだというのは、同じ漢民族として の民族主義なのだが、その背後で国土の60%を持つ少数民族の 民族主義は踏みにじってしまう所に、欺瞞がある。 現在の中国と台湾の関係は、大戦中のナチス・ドイツとスイス の関係によく似ている。スイスはドイツ系が国民の大半を占める が、同じ民族のナチスドイツと一緒になることよりも、自らの自 由と民主主義の伝統を守ることを選んだ。 スイスは建国以来、ドイツ系、フランス系、イタリア系の人々 が協力して、住民自治による自由と独立の理想を追求してきた。 全体主義のナチスドイツと合体することは、その理想を破棄する 事に他ならない。スイス人はそのアイデンティティを、ドイツ民 族の血よりも、自らの歴史の中で培ってきた政治的理想に求めた のである。 ■6.三民主義の理想■ それでは、台湾人の求める政治的理想とはなにか? 李登輝総 統は、著書「台湾の主張」の中で、それを孫文の「三民主義」に 託してこう説明している。 満洲人による清朝専制支配からの独立に生涯をかけた孫文は、 中国人の中国を作ること(民族主義)、その新しい中国は専制支 配ではなく、民主共和国でなければならないこと(民権主義)、 その中で民衆の生活を向上させていくこと(民生主義)が必要だ と唱えた。これが三民主義である。1947年に制定された中華民国 憲法第一条には、「中華民国は、三民主義に基づく民有、民治、 民享の民主共和国とする」と宣言されている。 孫文が口癖としていた「天下は公のために」という言葉を李登 輝総統は自らの政治信条の中心としている。天下、すなわち国家 は、公、すなわち国民全体のために、という意味で、民生主義を 意味する。 現在の共産党下の中国大陸をみると、この民権主義と「天 下は公のために」が忘れられていて、覇権主義と結びついた 民族主義ばかりが強い。中国大陸で孫文の「三民主義」とい えば、困ったことに民族主義を第一におくのである。 [8,p43] 中国大陸が過去の歴史と同じように、進歩と退歩の繰り返 しに陥ったのは、第一に政策決定が指導者個人のものになり、 国民の声を聞かないできたこと、第二に社会の構造的な変化 を、長期的にみることを怠ったこと。そして、第三に、指導 者が国民の福祉を真剣に考えてこなかったことが原因だろう。 こうした国民軽視の政策が、社会発展にとっての不確定要素 となって、継続的な中国大陸の発展を阻害してきた。 [8,p52] ■7.漢民族5千年の歴史で初めての民主選挙■ 三民主義の具現化のために、李登輝総統は台湾の急速な民主化 を進めてきた。96年には、総統の国民直接選挙が行われた。この ときも中国はミサイル発射を含む大規模軍事訓練などで威嚇した が、逆に台湾国民の反発を買い、李登輝総統が54%の得票で、 信任された。李登輝総統は96年3月の就任演説で次のように述べ た。 本日のこの祝賀会は、いかなる一候補者の勝利を祝すため ではなく、また、いかなる一政党の勝利をを祝すためでもあ りません。 それはわれわれ2130万同胞が民主を勝ちえた共同の勝 利を祝すためであります。それは台湾・澎湖・金門・馬祖に おいて人類の最も基本的な価値のある−自由と尊厳が肯定さ れることに歓喜するためであります。[8,p201] 李登輝総統のいう「歓喜」とは、自分や国民党の勝利よりも、 漢民族5千年の歴史で初めての民主選挙が行われた、という点に ある。それは李登輝が88年に死去した蒋経国の後を継いで、総統 に就任して以来、進めてきた民主化の到達点なのである。 李登輝総統の理想は、国民の支持を集め、それをもとに台湾人 としてのアイデンティティが形成されつつある。98年に台湾大学 が行った調査で、「わが国」とはどの地域を指すかの質問に対し て、「台湾のみ」とする人が76%で全体の四分の三を占めた。[9] さらに本年7月に行われた世論調査では、台湾住民の7割が、 中国が武力攻撃してきたら「中華民国のために戦う」と答えた。 [10] 大半の台湾人が、「自分が国家の主人であるという自覚と 志」を抱いているのである。[8,p56] ■8.台湾人に生まれた幸福■ 日本統治時代から、蒋介石政権時代まで、自分の国の主人公と なれなかったことを、かつて李登輝総統は「台湾人に生まれた悲 哀」と語った。しかし、日本統治時代の法治主義や「日本精神」、 そして蒋介石のもたらした三民主義の理想をベースに、豊かで自 由な民主国家を作り上げた。漢民族の先頭を切って、そのような 国づくりを進めてこられた事を、李登輝総統は「台湾人に生まれ た幸福」と呼ぶ。 「台湾経験」すなわち「台湾モデル」とは、単に台湾のた めだけのものではない。中国人すべてのものであり、将来統 一された中国のモデルに他ならない。[8,p122] 李登輝総統が目指しているのは、現在の中国の専制的体制に替 わって、台湾のように、自由、かつ民主的で、豊かな社会が大陸 に出現することだ。台湾をモデルにしてこそ、中国はその長い停 滞と動乱の歴史から抜け出すことができる。 李登輝総統のビジョンが実現して、中国全体が「台湾化」すれ ば、大陸の十数億の人民が、自らの国の主人公として生き、「中 国人に生まれた幸福」を味わえる社会となろう。 さらにチベットやウイグルなど少数民族も、それぞれの地域で 独立し、自前の国家の主人公として、それぞれの理想追求ができ るようになる。アジアの平和と安定は飛躍的に増大し、それはわ が国にとっても、このうえない贈り物となろう。 ■9.日本人に生まれた幸福とは?■ 孫文は、30年にわたる革命家としての生涯のうち、約10年 の雌伏期間を日本で過ごした。その間、明治の日本人は、孫文を 惜しみなく支援し、共に立ち上がって一命を捧げた志士も少なく ない。国家の自由と独立をかけて、明治維新、日清、日露と歩ん できた日本人にとって、孫文の理想は決して他人事ではなかった のである。 孫文の理想を受け継ぐ李登輝総統と台湾国民の偉大な挑戦は、 現代の我々に「日本人に生まれた幸福」とは何か、と問いかけて いるのではないだろうか。 ■リンク■ ★JOG(043) 孫文と日本の志士達 ★JOG(061)李登輝総統の志 ★JOG(062) 台湾史に見る近代化の条件 ★JOG(108) 地球史探訪:台湾につくした日本人列伝 ■参考■ 1. 「李登輝インタビュー要旨」、月刊日本、H11.9 2. 「台湾・李総統発言 これまでの中国公式論評」、産経新聞、 H11.07.14、東京朝刊、4頁、国際2面 3. 「台湾海峡、高度の緊張台湾海峡、『環境時報』紙報道の詳細、 産経新聞、H11.08.14、東京朝刊、4頁、国際面 4. 「中国による軍事行動報道 台湾『心理戦』と分析」、 産経新聞、H11.08.15、東京朝刊、4頁、国際面 5. 「米2空母、台湾近海で演習 対中けん制か」、産経新聞、 H11.08.12、東京夕刊、2頁、総合2面 6. 「正論 李登輝発言と国際社会」、ジェフリー・スミス、 産経新聞、H11.09.23、東京朝刊、9頁 7. 「支那分裂へのカウントダウン」、野間健、月刊日本、H11.7 8. 「台湾の主張」、李登輝、PHP研究所、H11.6 9. 「『私は台湾人』認識増加」、産経新聞、H11.12.06、 東京朝刊、5頁、国際面 10. 「台湾侵攻に住民7割『戦う』」、産経新聞、H11.07.28、 東京朝刊、4頁、国際2面
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