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          Common Sense: フェミニズム 対 民主主義

                   怨念と闘争で革命を目指すフェミニズムは、
                  民主主義と相容れない。
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■1.知事の形相は一変■

     平成14年8月、千葉県柏市で行われた「千葉なの花県民会
    議」でのこと。堂本暁子・千葉県知事が就任してから始めた、
    県下の市町村を巡回して、県民の意見に耳を傾けるという趣旨
    の集会である。知事は観客席に降りて、にこやかに参加者にマ
    イクを渡しては意見を聞いて回る。ある中年の女性が知事から
    マイクを受け取って意見を述べ始めた。

         県が今制定しようとしている(「千葉県男女共同参画の
        促進に関する」)条例にはいろいろと問題があると思いま
        す。やはり男らしさ女らしさというのは大事なもので、、、

     ここまで聞くなり、今まで愛想を振りまいていた知事の形相
    は一変。その女性からマイクをひったくって壇上に駆け上がり、
    「男女共同参画社会は世界の流れなんです!」とヒステリック
    にフェミニズムの教義を説き始めた。

     意見を表明していた女性の顔は恐怖にひきつり、壇上に居並
    ぶ市長や県議のお歴々も唖然とするばかり。「県民の意見を聞
    く」という民主主義的な会議は台無しになってしまった。

■2.県の予算で条例案の新聞広告■

     千葉県男女共同参画条例のどこが問題かを考える前に、もう
    少し堂本知事の姿勢を見てみよう。

     平成14年9月24日、条例案が県議会に上程される前日に
    地元紙「千葉日報」に全面見開きの記事広告が掲載された。
    「男女共同参画社会の実現目指し県が条例案提出へ」と両面ぶ
    ちぬきの巨大な見出し。堂本知事らのカラー写真を満載し、座
    談会記事では堂本知事自ら条例案の内容を自画自賛。肝心の条
    例案はほんの概要を片隅に掲載しているだけだ。

     この記事のスポンサーは千葉県である。「議会に上程する前
    に3百万円もの広告費を使って条例の一方的な宣伝をするのは
    問題だ」と自民党議員が議会で問いただしたところ、堂本知事
    は逃げの一手。

     政党が自分の金で政策の新聞広告を出すのは自由だ。また成
    立した条例を県民に知らしめるために、行政当局が県の予算で
    新聞に広告を出すのも許される。しかし、県知事が県の予算で
    自らの政策の広告宣伝するのは権力の乱用そのものである。こ
    んな事が許されるなら、たとえば選挙直前に、自民党が政府予
    算を注ぎ込んで、新聞に自民党候補の宣伝記事を掲載させる事
    もできることになる。

■3.具体的ルールのない法律は民主主義に反する■

     さて、こうまでして堂本知事が成立させようとした「千葉県
    男女共同参画の促進に関する条例」の中身を見てみよう。そも
    そも「男女共同参画」とは何なのか? その第3条では基本理
    念としてこう定義する。

        (基本理念)
        第3条 男女共同参画の促進は、男女の個人としての尊厳
        が重んじられること、男女が直接的であると間接的である
        とを問わず性別による差別的取扱いを受けないこと、男女
        が個人として能力を発揮する機会が確保されることその他
        の人権が尊重されることを旨として、行われなければなら
        ない。

     この条例全体を通じて、「男女共同参画」とはこの程度の抽
    象的な表現しかされていない。これが法律としておかしいのは、
    「交通安全の促進に関する条例」とでも置き換えて考えてみた
    ら、よく分かるだろう。

     実際には「交通安全」を実現するために、すべての道路に制
    限速度を決め、それを15キロ以上超過すると1万2千円の罰
    金を科すなどというルールを定める。こういうルールは市民を
    規制するだけでなく、行政当局も規制し、市民の人権を守る。
    15キロの速度超過で、もし1万2千円を超える罰金を科せら
    れたら、それは不法だと裁判所で争うことができるからである。

     こういう具体的なルールがなければ、ドライバーは40キロ
    で走っていても、それが法律違反かどうか自分では分からない。
    警察は目をつけた車を「交通安全に反する」として自由に捕ま
    え、好きなだけ罰金を科すことができる。これは法治主義とい
    う民主主義の根本原則を無視するもので、ナチスや共産党など
    が敵対勢力を弾圧する時によく使う手である。

■4.「自ら進んで男女共同参画の促進に努めるものとする」■

     何をしてはいけないか、具体的なルールも示さないまま「男
    女共同参画」を謳いあげたこの条例は、法律というより思想宣
    明の文書である。そして特定の思想を県民全体に法律で押しつ
    けようという所に、もう一つの大きな問題がある。

        (県民の役割)
        第5条 県民は、職場、学校、地域、家庭その他の社会の
        あらゆる分野において、基本理念にのっとり、自ら進んで
        男女共同参画の促進に努めるものとする。

        2 県民は、県が実施する男女共同参画の促進に関する施
        策に協力するよう務めるものとする。

     この条例が成立すると、冒頭の中年女性のように「男女共同
    参画は問題がある」と公の場で述べることは、「県民の役割」
    を果たしていないことになる。かつての「非国民」ならぬ「非
    県民」である。県民の一人ひとりにまで「基本理念」に則り、
    「自ら進んで」男女共同参画にの促進に努めることを要求する
    のは、思想統制にほかならない。

     この思想統制で、社会の文化慣習まで変えてしまおうという
    所が、共産主義と同様にフェミニズムの「革命的」たるゆえん
    だ。基本理念の第2項ではこう主張する。

         男女共同参画の促進にあたっては、社会における制度又
        は慣行が、性別による固定的な役割分担等を反映して、
        ・・・男女共同参画の促進を阻害する要因となるおそれが
        あることを認識し、社会における制度または慣行が男女の
        社会における活動の選択に対して及ぼす影響をできる限り
        中立的なものとするよう配慮されなければならない。

     社会の「制度又は慣行」が男女差別を助長している面がある
    ので、それを改めよ、という事である。たとえば「助産婦」と
    言えば「制度又は慣行」により女性に決まっていたが、これは
    男女差別を助長するので「助産師」と改め、男性でも勤められ
    るようにする、という事もその一つである。そのために妊婦は
    産婦人科に行っても、男性の助産師が来たらどうしよう、と余
    計な心配をしなければならなくなる。

■5.「必要な措置を講ずることができる」■

     具体的なルールが欠けていようと、思想的統制であろうと、
    罰則がなければ、法律は単なるスローガンに過ぎない。この点
    でも堂本知事は抜かりない。たとえば第13条では県内企業に
    対しては、このような条項を規定している。

    3 知事は、男女共同参画の促進に必要があると認められると
        きは、事業者に対し、雇用の分野における男女共同参画の
        促進に関する取組の状況について報告を求めることができ
        る。

    4 知事は、前項の報告により把握した男女共同参画の促進に
        関する取組の状況について公表するものとする。

    5 知事は、第3項の報告に基づき、男女共同参画の促進に必
        要があると認められるときは、事業者に対し、情報の提供、
        助言その他の必要な措置を講ずるものとする。

     県の役人が千葉県内の企業に対して、「男女共同参画の促進
    に関する取組の状況」について、報告を求め、それを公表し、
    必要な措置を講ずることができる、というのである。

■6.権力と利権■

    「その他の必要な措置」というのが曲者だ。何が必要かは、行
    政当局が恣意的に決められる。そのうちにはこんな処置まで含
    まれている。

        (入札参加資格審査に当たっての考慮)
        第22条 県は、一般競争入札及び指名競争入札に参加す
        る者の資格を審査するに当たっては、男女共同参画の促進
        に関する取組の状況を考慮することができる。

     たとえば、県内の特定の土建業者を名指しして、男女別の賃
    金差、待遇差に関する報告を求め、その内容を公表することが
    できる。これだけでも企業にとっては相当のイメージダウンに
    なるだろう。さらに「必要な措置」として、差別が撤廃される
    までは、県の土木事業から閉め出す、という事までできる。

     犯罪を起こした企業や、公正な競争入札で実力のない企業を
    閉め出すのは良いが、「男女共同参画」という具体的に何をど
    こまでやれば良いのか分からない「思想」に忠実かどうかで、
    行政が恣意的に入札締め出しなどという「必要な措置」をとる
    ことは、これまた権力の濫用そのものである。

■7.利権との癒着■

     実は堂本知事が就任以来、後ろ盾にしてきたのが、千葉県政
    界の大ボスで自民党の花沢三郎・県議会議員であった。花沢県
    議は千葉県の土建業界のフィクサーで、公共事業などの利権で
    子分たちを養ってきた人物である。土地区画整理事業をめぐる
    収賄で、有罪判決を受けたこともある。そして花沢県議は自民
    党内の反対を押し切って、男女共同参画法案を通そうとした。

     想像を逞しくすれば、法案が成立すれば、ボス県議の意に従
    わない土建業者を、男女共同参画の促進が十分でない、という
    難癖をつけて、県の土木事業からはずすことも可能になってし
    まう。

     中国でも見られるように、独裁的な政治権力はかならず利権
    ・汚職を生む。堂本知事と花沢県議の組み合わせは、男女共同
    参画という思想のためには手段を選ばない革命家と、利権のた
    めには思想を問わない政治家との癒着なのである。

    「市民団体」への補助金ばらまきも、利権の一種である。

        (民間の団体との連携及び協働)
        第8条 県は・・・特定非営利活動法人その他の民間の男
        女共同参画の促進に寄与する活動を促進するものとする。

     堂本知事は自分を選挙で応援したフェミニズム団体にどんど
    ん「特定非営利活動法人」(NPO)の認証を出して、カネを
    ばらまいた。千葉県が平成15年度予算に計上したNPO関連
    予算は実に1億8千万円。[1,p188]

■8.阻止された男女共同参画条例■

     平成14年10月15日。堂本知事が成立を目指した男女共
    同参画条例は「継続審議」となった。事実上の「否決」である。
    社民・県民連合、共産党、市民ネットワークが「条例案はその
    まま通すべき」と主張したのに対し、多数派の自民党が「条例
    案は過激なジェンダーフリーに基づく条文など多くの問題があ
    り」と継続審議を主張、ヤジと怒号の飛び交う中で採決が行わ
    れた。

     傍聴席に陣取っていた堂本シンパのフェミニズム活動家たち
    は閉会後、退場する自民党議員に向かって、「サイテーだよ、
    アンタたち」と悪罵を投げつけた。千葉県議会で県当局が提出
    した条例案が継続審議になったのは史上初めてのことだった。

     10月27日には参院選千葉選挙区補選が行われた。社民党
    や市民ネットワークは「男女共同参画条例に反対した自民党は
    女性の敵だ」と訴えたが、フタを開けてみると自民党候補の圧
    勝。朝日新聞が実施した出口調査では、女性の45%が自民党
    候補に投票し、対立候補の37%を上回った。堂本知事は「男
    女協働参画条例を通さなかったら自民党は女性票が減る」と脅
    していたが、女性は男女共同参画を支持しなかった。

     その後の県議会議員選挙でも自民党は圧勝して、65議席か
    ら71議席に増やした。一方、堂本知事の参謀格だった市民ネッ
    トワークの現職女性議員は落選した。

■9.フェミニズムとマルクス主義■

     千葉県を例に、フェミニズムが言論統制、権力の濫用、利権
    との癒着など全体主義的特徴を備えている事を見てきたが、こ
    れは決して偶然ではない。フェミニズムはマルクス主義から派
    生した革命思想だからである。

     堂本知事の国会議員時代からの盟友で、千葉県の条例案作成
    にも中心的役割を果たした東大教授・大沢真理は、フランスの
    過激フェミニストで、ジェンダー理論の創始者クリスティーヌ
    ・デルフィを信奉している。デルフィは著書「何が女性の主要
    な敵なのか」でこう述べている。

         女性の解放のためには、現に知られている社会すべての
        基礎(JOG注:千葉県条例での「制度又は慣行」がこれに
        あたる)を完全にくつがえす必要がある。この転覆は革命
        なしには、すなわち現在他の人間に握られている、私たち
        自身を支配する政治的権力を奪取することなしには実現で
        きない。この権力奪取が女性解放運動の究極的目標となら
        なければならないし、女性解放運動は革命的な闘争に備え
        なければならない。[1,p108]

     マルクスは労働者階級は資本家階級に搾取・抑圧されており、
    革命闘争によって権力を奪取して、労働者階級を解放すべし、
    と論じた。デルフィはその構造を下敷きとして、女性を男性か
    ら搾取・抑圧された階級と見なし、政治的権力を奪取して、解
    放するという「革命的な闘争」を目指したのである。

     デルフィの思想の根底にあるのは、社会や家庭で女性が男性
    から抑圧されているという怨念であり、またそれを晴らすため
    に政治権力を奪取しようという闘争的姿勢である。ここから、
    「目的のためには手段を問わない、とにかく独裁的政治権力を
    奪って現体制を転覆させよ」、というマルクス主義と同じ革命
    路線が出てくる。

     議会制民主主義とはこういう独裁から市民を守るために、
    「法の支配」や「選挙による意志決定」という「手段」を定め
    ている。だから民主主義は「革命的な闘争」をめざすマルクス
    主義とも過激フェミニズムとも相容れない。千葉県民は賢明に
    も選挙という民主主義的手段を通じて、堂本知事のフェミニズ
    ム革命を見事に阻止したのである。
                                          (文責:伊勢雅臣)

■リンク■
a. JOG(006) Fact Finding と Logical Thinking
    夫婦別姓派の事実把握と論理的思考を問う
b. JOG(177) 一周遅れのフェミニズム
    最近の脳科学が発見した男女脳の違いからフェミニズムを見
   てみると、、、

■参考■(お勧め度、★★★★:必読〜★:専門家向け)
  →アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。
1. 千葉展正、「男と女の戦争 反フェミニズム入門」★★、
   展転社、H16
   
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ おたより _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
■「フェミニズム 対 民主主義 」について

                                           アルファさんより
     私は女性らしさの一つに自重された温和な優しさがあると思っ
    ています。実際、私が目標としていた女性像です。私はそんな
    慎み深く暖かい女性の姿にこそ、男性性が引き出され、お互い
    の調和やバランスがとれるのだと思っています。

     結婚当初、主人は私がいなければ靴下一つ場所のわからない
    人でした。私自身主人に尽くす事にとても喜びを感じていまし
    た。特別な事は何も無く、ただ生活の中でふれあいながら、お
    互いの役割や存在を確認しながら幸せを実感できていた一瞬だ
    と思います。

     よくテレビで社会主義や共産主義など見ますが、まるで家庭
    という空間を無くした兵士の製造工場のように見えます。父が
    いて、母がいて、父性と母性に囲まれるからこそ、子供たちは
    不二の幸福を感じるのだと思います。マルクス主義や過度な理
    想主義は理想に伴わない犠牲を生産し続けると考えています。
    現実主義あって、現実に伴った社会が日本の姿だと考えていま
    す。

     女性が女性を越えた努力をされる事は素晴らしいと思います。
    ただそれに伴って価値観の統一が強制されたり、女性性が否定
    される事はあって欲しくない現実です。

■ 編集長・伊勢雅臣より

     伝統を否定し、ジェンダーフリーという机上の「理想」を強
    制する所に、マルクス主義と同様の全体主義的本質が見てとれ
    ます。

© 平成16年 [伊勢雅臣]. All rights reserved.