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■■ Japan On the Globe(622) ■■ 国際派日本人養成講座 ■■ The Globe Now: 太陽エネルギー文明と「日の本」の国 今、生まれようとしている太陽エネルギー文明 を先導する使命が「日の本」の国にある。 ■転送歓迎■ H21.11.08 ■ 38,414 Copies ■ 3,211,445 Views■ ■1.わずか1ミリの大気圏■ 昨平成20年春、中国の胡錦濤国家主席が来日したおりに、 総理官邸で展示されたのが、直径1.28メートルのディジタ ル地球儀「触れる地球」だった。雲の動きや気象に関する最新 情報がインターネット経由でダウンロードされ、今この瞬間に 宇宙船から見た地球の姿を、そのまま見ることができる。 折しも死者・行方不明者13万人の被害が出たサイクロン・ ナルギスがミャンマーを襲った直後であり、ディジタル地球儀 上にここ数週間分の雲の動きを再現して見ると、巨大サイクロ ンがミャンマーを襲う一週間以上前からインド洋上にくっきり と姿を現していた。この予知情報がミャンマーに伝えられてい たら、犠牲者の数も大きく減らすことができたかも知れない。 このディジタル地球儀を、せっかく中国の最高権力者に見せ るのだったら、中国が全世界の約2割もの温室効果ガスを排出 している様子だとか、中国が占拠しているウイグル自治区での 環境破壊により、黄砂が日本にまで飛来して迷惑をかけている 様子などを見せてやれば良かったのに、と思うのだが、「人の 嫌がることはしない」と広言していた福田元首相のことだから、 そんな発想は思いつきもしなかったろう。 それはともかく、温室効果ガスにせよ、黄砂にせよ、高度約 1万メートル、ジェット機が飛ぶくらいの高さまでの空気の層 (対流圏)の問題なのだが、この地球儀上では、わずか1ミリ の厚さでしかない。人類を護ってくれている大気とは、かほど に、か弱い存在なのである。 ■2.地球環境は大きな変動を続けてきた■ 温室効果ガスの議論では、安定的な自然を、人類の文明が破 壊しつつある、という先入観をベースに語られる事がほとんど だが、地球の自然とはもともと絶えず変動してきた。[a] たとえば、初期の地球に酸素はなかった。光合成バクテリア が繁殖して酸素(O2)を生み出し、酸素が大気中に飽和して 一部がオゾン(O3)に変わり、そのオゾン層が紫外線をカッ トすることによって、はじめて生物が海から陸上に上がって進 化することができた。これがわずか4億年前のことである。地 球の誕生が46億年前と言われるので、地球の歴史を1年に換 算すると、酸素が生み出されたのはようやく11月30日頃と いうことになる。 2万年前の最終氷河期には気温の低下のため、海面は100 メートル以上も低く、アジア大陸と日本とは陸続きだった。こ れが12月31日午後11時58分頃のことだ。 この1万年ほどは、地球史の中でも「例外的に気候が安定し た期間」だったと言われるが、その間でも地球の自然は絶えず 大きな変動を続けてきた。 6千年ほど前の縄文期には、温暖化により海面が現在より5 メートル以上も高く、東京湾が埼玉県の大宮あたりまで入り込 んでいた。 逆に18世紀ごろには、アイスランドの大規模な火山噴火で 放出された火山ガスが北半球を覆い、地上に到達する日射量を 減少させ、冷害による饑饉を東西で引き起こした。これがフラ ンス革命の遠因となり、また日本でも天明の飢饉を引き起こし たと言われている。 このように地球環境は常に大きく変動を続けてきたのであり、 現代の温室効果ガスの問題も、その前提のもとで議論されなけ ればならない。 ■3.「有り難い星」地球■ 「温室効果」とは、自然を破壊する悪いイメージでしか使われ ないが、それも偏った先入観である。そもそも大気中の二酸化 炭素や水蒸気の温室効果によって、地球の気温は生命に好適な 平均15度程度に保たれている。もし、温室効果がなかったら、 地球の平均気温はマイナス18度まで下がると推定されている。 さらに、地球の表面の7割を覆う海が、温度変化の激変を防 いでいる。たとえば水のない月では、昼の側は太陽熱で150 度を超え、夜の側はマイナス110度まで下がる。地球の表面 を覆う水が、「温まりにくく冷めにくい」性質によって、昼夜 や夏冬の温度差を相殺してくれるのだ。まさに「地球」という より、「水球」である。 しかも、そもそも地球が水に覆われていること自体が、奇跡 的である。隣の金星では太陽に近すぎるために水はすべて蒸発 して水蒸気になってしまう。火星では逆に太陽から遠すぎるた めに、ほとんど氷の状態でしか存在し得ない。 地球が太陽から適度の距離であるがために、水が液体の状態 で存在し、そしてその水の保温効果と大気の温室効果によって、 生物に適当な温度が保たれている。こう考えると、我々が生か されているこの地球とは、奇跡的な「有り難い星」なのである。 ■4.太陽エネルギーの恵み■ もう一つ有り難いことは、地球が太陽から無尽蔵のエネルギ ーを供給されていることである。太陽から地球に届けられるエ ネルギーの総量は、石油換算で約130兆トンであり、これは 人類が一年間に消費するエネルギーの石油換算量約90億トン の1万4千倍以上である。言わば36分間の太陽エネルギーで、 人類の1年分のエネルギーが賄(まかな)える勘定になる。 したがって、太陽から供給されるエネルギーのほんの一部で も活用できれば、石油も石炭も原子力も要らない事になる。本 来、地球には「エネルギー問題」など存在しないはずなのであ る。 太陽エネルギーの利用手段というと、まず思い浮かぶのが太 陽光発電だが、それだけではない。太陽で温められた大気が上 昇気流を生み、その空隙にまわりから空気が流れ込んで風が吹 く。風力発電とは、太陽が生み出した風からエネルギーを取り 出すものである。 また、太陽熱によって蒸発した水分が、山の上まで運ばれて、 雨が降り、それが集まって川となる。水力発電も太陽エネルギ ーがもとになっているのである。 同様に、海の温められた表層と冷たい深層の温度差を利用す る「海洋温度差発電」も、太陽エネルギーを利用する一手段で ある。 さらに、トウモロコシなどから燃料を作り出す「バイオマス」 も、植物が太陽エネルギーを光合成によって変換・貯蓄したも のである。 こうして見ると、まさに地球は、太陽光の恵みをふんだんに 受けている「有り難い星」である、と言わざるを得ない。 ■5.現代文明の野蛮なエネルギー利用■ 欧米諸国が発展させた現代文明は、こうした「有り難さ」に 背を向けて、もっぱら石油石炭などの化石エネルギーに頼るこ とによって温室効果ガスをまき散らし、地球環境のバランスを 崩しつつある。変動し続ける地球環境が「希に見る安定した時 代」に遭遇したという幸運にも気づくことなく。 そもそも現代の石油エネルギー文明は非効率なことこの上な い。たとえば「文明開化」の象徴だった白熱電灯は、火力発電 でのロス、家庭への送電ロス、さらに電灯の発熱ロスを除けば、 我々が必要としている「光」になるエネルギーは、投入エネル ギーの1%もない。 また自動車にしても、ガソリンを燃やしても発熱で失われる ロスや、信号待ちでエンジンがムダに回っているロスを除くと、 エネルギー効率はせいぜい15%程度である。これで車体重量 1.2トンの車で体重60キロのドライバー一人を乗せて走っ ているとすれば、15%の1/20で、これまたエネルギー効 率は1%以下となってしまう。 電灯にせよ自動車にせよ、地中から大量の石油を掘り出して、 その1%以下しか利用せず、あとは熱と排気ガスを大気中にま き散らす。現代文明は、エネルギーの観点から見れば、なんと も野蛮な段階なのである。 現在の地球温暖化問題に関して、二酸化炭素の排出を何パー セント減らすか、という議論ばかりされているが、それはあま りにも視野の狭い捉え方であって、本来は、現代文明のいかに も野蛮なエネルギー利用をどう進化させていくか、という文明 のグランド・デザインから考え直さなければならない。 ■6.石油依存のリスク■ 石油エネルギー文明は、その効率の悪さ以外にもいくつか 本質的な欠陥がある。まず、石油資源は限られた産油国に集中 しており、そのために産油国と非産油国の格差を生ずる。我が 国も石油の輸入に年間17兆円も使っているが、貧しい国で石 油を輸入しなければならない場合は、経済的な負担が大きく、 それが成長の制約となる。 また石油資源の争奪が国際紛争の原因ともなる。そもそも大 東亜戦争は、アメリカが日本に対して石油輸出を禁止した事が 引き金になった[b]。現代でも石油をがぶ飲みする中国が、ア メリカの石油覇権に挑戦している[c]。 特定の産油国からの長距離輸送もリスクを伴う。我が国の石 油輸入の80%が、ペルシア湾の湾岸諸国からであり、海賊の 跋扈や、地域紛争により、湾岸ルートが閉ざされでもしたら、 石油輸入がストップする恐れがある。 さらに石油はグローバルに取引される商品として、価格変動 が著しい。産油国が談合して石油価格を一挙に引き上げ、我が 国も「石油ショック」に襲われたことは記憶に新しい。 石油エネルギー文明は、資源の偏在性による紛争、供給・輸 送不安定、価格変動などの重大リスクを人類全体に与えている。 ■7.平等で平和な太陽エネルギー■ 石油に比べて、太陽エネルギーは温室効果ガスを発生させず、 またテロや事故の心配もない。 さらに、その「偏在性」ならぬ「遍在性」も大きな特長であ る。太陽の光はどの国にも降り注ぐ。特に貧しい国の多い南方 では、より豊かな太陽エネルギーが享受できる。これは現在の 南北格差を縮小する効果を持つ。 そして「地産地消」型である事も見逃せない特長である。各 地域で太陽光発電なり、風力発電なり、その地域の特性にあっ た形で、太陽エネルギーを取り出し、各地域が自立できる。こ れはリスクの分散につながる。 言わば、太陽エネルギーはきわめて平等で、かつ平和的なエ ネルギーなのである。人類の文明が、石油エネルギーから脱却 して太陽エネルギーに移行すれば、石油エネルギーに伴う紛争 やリスク、貧富格差は大きく低減される道が開ける。 ■8.食糧問題や水問題にも資する海洋温度差発電■ 太陽光発電の技術開発において、日本は世界をリードしてい るが、さらにいかにも我が国らしい太陽エネルギーの利用方法 が開発されつつある。前述の「海洋温度差発電」である。 太陽によって温められた表層海水の25度から30度くらいの 温度で容易に揮発するアンモニアの蒸気がタービンを回し、そ れが今度は深層から汲み上げられた5度前後の海水によって冷 やされて液体に戻る、というサイクルが無限に回る。 原理はフランスなどで19世紀から予言されていたが、実用 可能な段階まで漕ぎ着けたのが佐賀大学の上原春男氏を初めと する日本の技術革新によるものである。日本のゼネシス社がプ ロモーターとなってインドや中東、太平洋諸国に実証実験プラ ントが建設されつつある。[1,p59] 海洋温度差発電には大きな副産物がある。第一に栄養豊かな 深層水を利用して、漁場を作り出すこと。深層水が自然に海表 面に湧き出すポイントは「湧昇」と呼ばれ、ペルー沖など世界 有数の漁場となっている。これを人工的に創り出すことができ るので、近海で魚類の「地産地消」化が進められる。 第二に淡水の供給。発電で利用した温海水を蒸発させ、冷海 水で凝縮させれば真水ができる。 温室効果ガスの発生ゼロで、なおかつ食料問題や水問題の解 決に資するこの技術は、パラオ共和国など南洋の島嶼国家やカ リブ諸国など30カ国以上から相談・引き合いが来ているとい う。 ■9.太陽エネルギー文明の自然観■ 石油エネルギー文明から太陽エネルギー文明への進化の根底 には、実は自然観の転換がある。石油エネルギー文明とは、地 中から採掘した石油で、密閉した建物をエアコンで冷やして廃 熱を窓の外に吐き出したり、舗装した道路に自動車を走らせて 排気ガスをふりまく、という光景に見られるように、人間が自 然を征服し、搾取する思想に立脚している。 今起こっている二酸化炭素削減の動きも、また各種のエコロ ジー運動も、人間の自然に対する影響を最小化しようというこ とで、根本的には人間を自然界の「異物」として捉えており、 人間による自然征服の「裏返し」なのである。 それに対して我が国の自然観は、人間は「生きとし生けるも の」の一つとして自然と共生するものと捉える。同時に治山治 水の技術によって、荒ぶる自然をうまく制御して、森や海や川 を美しく保ちながら、災害を無くしていこうとする。 海洋温度差発電とは、まさにこの自然と人間の共生、共進化 という日本的自然観を体現する典型的な技術と言える。 我が国は、古来から天照大神、すなわち太陽神を「生きとし 生けるもの」を養い育ててくれる最高神として崇めてきた。日 本語の「ヒ」は、太陽の「日」であり、人間が使う「火」であ り、太陽から与えられた生命力(霊)を宿したのが「霊止(ヒ ト、人)」「日子(ヒコ、男子)」「日女(ヒメ、女子」であ る。さらに我が国は「日の丸」を国旗に掲げる「日の本」の国 である。 今、生まれようとしている太陽エネルギー文明は、「生きと し生けるもの」とともに豊かで平和な世の中を創り出す、とい う自然観に基づくものとなろう。それを推し進めるのは、「日 の本」の国の世界史的使命である、と言えよう。 (文責:伊勢雅臣) ■リンク■ a. JOG(507) 地球温暖化問題に仕組まれた「偽装」 政府やマスコミは情報をコントロールしている。 b. JOG(513) 石油で負けた大東亜戦争 日本は石油供給をストップされて敗北したが、 現在でもその リスクはさらに深刻化している。 c. JOG(554) 米中石油冷戦と日本の国策 石油をがぶ飲みする中国が、アメリカの石油覇権に挑戦して いる。 ■参考■(お勧め度、★★★★:必読〜★:専門家向け) →アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。 1. 竹村真一『地球の目線』★★★、PHP新書、H20 _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ おたより _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ ■「太陽エネルギー文明と『日の本』の国」に寄せられたおたより Kimioさんより 伊勢さんのおっしゃる通りです。 これにて、毎朝昇る太陽に対して、祖母とか父母が手をあわ せて拝んでいた姿を想い起こしました。 本当に素晴らしいご文にたいし、こころより感謝します。 豊さんより 地球温暖化問題はいつしか科学的な議論を離れ、極めて感情 的な動きとなり、温暖化に疑問を呈することさえ憚られるよう な状態です。地球は人間が生まれるはるか以前から極端な気候 変動を繰り返しており、ほんの30年程前までは氷河時代が来 ると騒いだものです。要するに我々は地球の未来についてあれ これ予測するほどのデータを持っていないのが本当のところな のだと思います。いくら精緻なシミュレーションをしたところ で、前提の数値や条件が不確かではその結果も推して知るべし でしょう。 現在の文明の主流である欧米型一神教文化では正邪を截然と 区別して悪いものは何としても潰そうとする傾向があります。 現在の環境保護運動などまさにその好例で、環境に悪いと(彼 らが)考える者に対してはどんなことをしても良いと言う一種 の環境テロリズムに堕しているように思われます。 このような情勢下で25%の温室効果ガスの削減を打ち出し た鳩山首相にはがっかりしました。鳩山氏はバリバリの理系で す。もう少し科学的な思考が出来ないものなのでしょうか。 ■ 編集長・伊勢雅臣より 太陽への感謝の心と、冷静な科学的思考力とを持つべきです ね。© 平成21年 [伊勢雅臣]. All rights reserved.