１０月３０日午後０時２０分　　ママと大げんか

午前中ママはボクを服部緑地までつれてってくれた。お天気もよくて楽しかったけど、、おうちに帰ると即、ハウスへ入れられそうになった。ボクは「入りたくない」と思った。お昼からママはお仕事なのも知ってるし、ひとりきりも、ハウスで留守番もイヤだった。 ママがボクをハウスに押し込もうとした時、ボクは「イヤだ！」と叫んでママの脚に歯をあててしまった。傷ができて血が滲んだ。ママはとっさにボクの鼻と背筋をつかんでボクの身動きがとれないように押さえ込もうとした。いつもだったら、こうやられると大人しく従うようにしていたのだが、今日はママに噛み付いてしまったのだ、きっと、ただでは済まない、おしおきされる、、 そう思ったとたん、ボクはママが怖くなって手を振り解こうともがいた。ママはボクの予想外の反撃にビックリしてボクを自由にしてしまった。ボクはこれ以上押さえつけられるのはイヤだ、とママの両手めがけて攻撃した。今日はボクの方がママに勝てそうな気がした。 ところが今日のママは、ちょっと前のママとは違っていた。ボクが噛んでも噛んでも、手を出してボクを押さえ込みにくる。遂に顔をつかまれてしまった。それでもボクはまだまだ攻撃をしかけた。確かにガブッと深く噛んだ感触があるのに、ママは「そんなくらい、ちっとも痛くない！」と力をゆるめないのだ。何箇所からも血の匂いもしてきてるのに、ママは「オマエなんか怖くないんやから！」と叫んでいた。。。すごい迫力だ。 とうとうボクはお腹の上にのられ、首をしめあげられた。でも、ちょっとでもママの力がゆるむのを感じれば振りほどこうをもがいた。まだまだ降参はしないぞ！１０分、１５分、ママとのおおげんかは続き、そろそろダメか、、と思ったとき、ボクにとってラッキーなことに、ママが仕事に行かなければならない時間がきてしまったのだ。 絶対にボクをやっつけようとしていたママは、時計を見ながら悔しそうな顔をして、ボクに「待て」と命令をしてから手をゆるめた。一応ボクは上向きのままじっとしていた。「ハウスにはいりなさい！」今度は素直に小走りでハウスにはいった。カチャン、とハウスにロックをかけたママの手は腫れあがっていた。血のついた服を着替え、大急ぎでバンソウコウと湿布をはって、それでも「ぜんぜん痛くないワ」とボクをにらみつけて家を出ていった。 いつもの「行ってきます、おりこうさんにお留守番してね」の挨拶も今日は無かった。どうやらこのケンカはまだまだ尾をひきそうだ。だって、ボクだって、まだママに完全に負けたわけじゃない。この調子だったら、毎回ひと暴れすれば、ハウスにはいらなくてすむかも、、、ママが帰ってくる夕方までとりあえずはおとなしく留守番しておこう。

１０月３０日午後６時　　完全無視作戦

夕方、ママもお兄ちゃんもお姉ちゃんも、みんな帰ってきた。でもママがみんなに告げ口したらしい。誰も遊びに来てくれない。ワンワンいつもよりうるさめに吠えても、しかりもしないし、ボクの方を誰も見てくれもしない。ボクだけが家族じゃないみたい。淋しくなって、吠えるのをやめて寝そべった。 台所に立っているママを寝そべりながら上目づかいにずーっと見ていたけど、ママも一度も振り向いてくれない。ボクはだんだん自分がした事を忘れてしまって、今では何でみんなが冷たいのかもわからない。こんなのイヤダ。とってもつらいよ。 晩ごはんもママはだまってハウスの中につっこんで来て「待て」も「よし」も言ってくれずに行ってしまった。ボクはとまどいながらご飯を食べた。吠えなかったらいいのかな、とボクはそれ以後は一度も吠えなかった。そうすれば夜の散歩はつれていってくれるのかなあ。

１０月３０日午後１０時　　今日最後のかけひき

いつもはにぎやかなリビングなのに、今日はお姉ちゃんが一人でテレビを見ているだけで、ママははいってこなかった。パソコンの部屋でなにかしている。もうトイレに行きたいよー。１０時になってお姉ちゃんも寝てしまった。さびしい部屋にママがリードを持ってはいってきた。また一言も声をかけずにハウスの戸をあけボクにリードをつけた。これはお散歩だ。でも、ママはボクを見てはくれていない。トイレをすますとすぐに家に帰された。何を怒っているのかは、まったく解らなくなってしまっているが、とにかくママはボクにつらくあたっている。 家に帰って自然にボクからハウスにはいろうとした時、ママが声を出した。「ハウス！」って。その瞬間、ぼくの心に昼間の出来事がよみがえった。そうだ、ハウスにはいるのがイヤでママとケンカしたんだ！ ボクはハウスに頭だけつっこんだかたちで、動きをとめた。ママはしっかりリードを握っている。リードがついている時は絶対にかなわない。ボクは低く唸り声をあげてママを脅かそうとした。 ママはハウス、ハウス、と繰り返し叫び、リードでちょんちょんしてきたが、ボクはテコでも動かなかった。ホントは、ママが言うたびにはいろう、とするのだが、昼間の事が思い出され。足をふみいれたら今度はママが背後から襲ってくるように思えて動くことができなかったのだ。 ママとボクの睨み合いは延々と続いた。ついにママの方があきらめたのか、ため息をついた。「わかったわ、、勝手にしなさい、もうママは知らん。とっぽなんか大嫌い、バイバイ、もう誰かにもらわれていきなさい。」ボクはママの言ってる意味はわからなかったけど、ママがボクが悲しくなる言葉をいっぱいしゃべっているのがわかった。ボクは首を斜めにかたむけて、ママの言葉を聞き取ろうとした。 わからない、わからない、でも、ママが言ってる言葉はとてもいやな響きなのだ、、ボクはパニックになって、狂ったように吠えだした。ワンワンワンワン！！ママ、もうそんな言葉は言わないで！！泣き叫ぶボクにまた大きくため息をついて、とうとうママはリードを手から離してリビングから出て行こうとした。ボクはおもわずママにかけよって脚に手をかけて立ち上がった。「待って、ママ！！」 ママの優しい声がした。「ほら、抱っこしてあげよう。」ボクはそのままの格好で抱き上げられた。ボクはママの手をペロペロなめた。ママはボクが赤ちゃんの時みたいにゆらゆらゆすってくれた。「よーし、とっぽはいい子だね、とっぽのこと大好きよ」ボクの大好きな言葉がいっぱいいっぱい聞こえてきた。仲直りできたのかな。。。 床におろされたボクは優しい言葉にさそわれてハウスにはいった。戸をしめる前に、ママもハウスに一緒に入りそうなくらい身を乗り出してボクを「いい子、いい子」と撫で回してくれた。さわってもらえてることも、かけてくれている言葉もみんな気持ちよかった。リビングの電気が消され、ボクも散歩が足りないくせにすごく疲れててすぐに眠くなってきた。 明日は、ママとの関係はどうなっているんだろう。ボクも素直にハウスにはいれたらいいんだけど、、寝たら今日のこと、また忘れてしまって、わがままになってしまうかも、、フア〜。。。

１０月３1日午前１０時　　けんかの翌朝

今日はママいわく「保育園」の日。（訓練修了後も、いろんなお友達と遊ぶ方がいいって週２回教室に「デイケア」で行ってるんだ。でも２歳のボクに「保育園」はナイと思う！） 着くやいなや、さっそくママは先生に昨日の話をして、ボクが噛んだ跡まで見せ付けてるよ、、　ボクばっかり悪いように言ってないよね！ ボクがママに噛み付くに至った状況をこと細かく聞いてから先生はボクではなくて、ママに注意をした。「完全に自分が悪いと理解して、服従の姿勢になっているときには押さえ込みしてもいいけれど、興奮状態で今にも飛びかかりそうな時にはしないようにしてください。今のとっぽ君、お母さんより力強いですからね」って。「いつもと違う行動パターンをとった時によくある事なんですが、（例えば昨日なら緑地へ行ったように）それがすごく楽しい事だと、もっとしたいなー、とか、逆にいつもの事をまだしてないよー、とか　とっぽ君がなにかしら『欲求不満』を持ったままハウスへ入れられようとしたんだと思います。」さすが先生、その通りなんだよ！「久しぶりにお母さんに叱られて、とっぽ君は前に噛んで叱られていたころのことを一瞬思い出したのでしょう。」先生はボクがあの時思っていたことをママにちゃんと伝えてくれてるよ。 「今日は注意して見ておきますから」と先生に言われて、ママは安心して帰っていった。今日はずっとおりこうにしているからママ、ちゃんと迎えに来てよ！

１０月３1日午後６時　　ごめんね、ママ

ママのお迎えが遅いので、お友達もみんな帰っちゃって、すっかり暗くなったグランドで独りで遊んでいた。ちょっと心配。でも遠くからお姉ちゃんの声が聞こえてきた。良かった、お迎えちゃんと来てくれた。先生がリードをつけてくれてお帰りの用意ができたので、思わずママたちの待つ門まで飛び出して先生に叱られちゃった。門のところまではちゃんと先生と並んでいって「よし」と言われるまでママに駆け寄っちゃダメなんだ。わかってたけど今日は特別うれしくて早くママのところに行きたいのに、先生がわざと途中で止まったりするもんだから先生の足元で何度も足踏みしちゃったよ。お姉ちゃんはそんなボクを「カワイィ〜！」って言ったけど、これもボクが受けてきた訓練の成果なんだ「カッコイイ！」って言ってほしいな！ ママにリードを渡しながら「まったくいつも通りでしたよ。そういえば、ハウスに入るときちょっとノロノロしていましたが特に唸ることもなくちゃんと入りましたし。今から帰ってハウスに入れるとき、昨日のことは意識しないで自然に声かけして下さいね。お母さんが構えてしまうと即座に感じ取って、とっぽもハウスの前で身構えてしまいますからね。」と先生はアドバイス。 でもあんなにハデなケンカをしてしまった後だから、ママもボクもしばらくは腹のさぐりあいになりそう。ハウスにはいる前に「ウー」ってボクが言っても「噛み付くぞー！」って言ってるんじゃないんだよ。「もう入るのー？」ってグチをひとつこぼしたくなる時もあるさ。。。そんな時、ほんのちょっとだけ時間をくれたら、次の時は素直にハウスにはいるよ。ボクがしゃべれない分ママは苦労すると思うけど、早く前までのボクたちにもどりたい。まだ手が腫れてママの大好きなバレーできないね。噛んでしまったのはボクが悪かったよ、ごめんねママ。

１1月２日午後１1時　　うーん満足。

金曜はママもずっと家にいてくれて、今日なんか３回も散歩に行った。そして３回とも家に帰ってから自由時間をくれた。リビングの床で「へたれコーギー」すると気持ちいいんだ。ストレッチしてるんだよ、ああ見えて。ハウスでは完全にへたれないんだ。気持ちよくなったから３回とも、うー、も言わないでハウスにはいったよ。特に、たった今なんかボクももう眠かったからすぐにハウスにはいったもんだから、ママからすごくほめられちゃった。とってもいい感じだね。 もうすぐ最終の新幹線でパパが帰ってくるんだよ。ママは今からお迎えに行くみたい。明日はみんなでおでかけするみたい。だって保育園の先生に「土曜はお休みします」って言ってたもんね♪お天気もよさそうだし、、、楽しみだなあ！あ、ママ、気をつけて行ってきてね。ボク眠いけど、パパが帰ってきたらちゃんと起きて挨拶したいんだ、、、