8月1日  無償の愛?

 「犬という動物は、飼い主に無償でつくす」と言われているらしい。無償の意味を調べてみると《・ただ ・報酬、見返りが無い事》。いやいや、それは間違っている。ぼくらは、いつも求め続けている物があるのに、悲しいけど、ママもそれをわかってくれていないんだ。

ボクは1歳を過ぎてから訓練を受ける事になった。その頃のボクは、ママの言葉を全然聞かない不良犬だった。気にいらない事があるとウーと唸る。それだけで、ママはもう近くに寄ってこれなくなって、恐怖を感じたママがボクを学校に入れたんだ。

学校では、ツケ、マテ、スワレ、フセ、コイの勉強をさせられた。素直な犬はおいしいおやつや大好きなおもちゃで楽しそうに勉強してもらえるみたいだけど、わがまま放題だったボクは一筋なわでは行くはずがない。おやつなんてもらえずに、リードを強く引かれて、先生の言葉と、その時にしなければならない動きを徹底的に叩き込まれた。でも、ボクは先生が大好きだった。とってもコワイけれど、先生の命令は一生けんめい従おうと頑張った。残念ながらその理由をママは間違って理解してしまってるのさ・・・・・

学校を卒業して、ママの言う事も素直に聞くようになり、ママはよく人から、どんな方法で訓練したかを質問される様になった。「”よい事をするとおやつがもらえる”という動機付けで訓練する方法もあるけれど、うちの仔は動機付けを使わずリードでの誘導とハンドサインで訓練したんですよ」。そんな説明をするママは「ごほうび」なしで命令に従うようになった事への「優越感」に浸っているように見えてしまう。

ママ、それは違うんだ。学校で先生は、ちゃんとボクに「動機付け」をしていたんだ。そうでなきゃ、ボクが先生を好きになるわけがないじゃないか。ただそれが”おやつ”でなかっただけ。何をくれたか、、もう気付いてくれた?ボクがちゃんと出来た時の、先生の嬉しそうな笑顔と、抱きしめてくれる暖かい手と、「グーッドボーイ!」という弾ける声が 先生のくれる「ごほうび」だったんだよ。そして、それは、おやつをもらうより、もっと嬉しいごほうびなんだ。ママが人に「動機付けなしで・・・」なんて繰り返して説明している限り、ボクとの距離は、先生より縮まりはしないと思う。

 ボクたち犬は、無償で尽くす「ロボット」では無い事をわかってもらえたかな。ボクらはパパやママ、家族の、嬉しそうな顔を見たいんだ。ほめてもらいたいんだ。明日、上手に歩けるように頑張るから、周りに人がいてもボクに聞こえる声で「グーッド!」って言ってもらいたいな。。。。