「本物はどれでしょう!」
パッパラパパラパー
「みなさま、宴もたけなわですが、ここで本日のイベント『本物はどれでしょう!』を始
めさせて頂きます。
ステージにご注目ください。解答者のお嬢さんです」
パチパチパチ…
「こんにちわ!」
「こんにちわ!」
「さて、お嬢さんにはこれから本物を当てて頂きます
これから…」
「あの…もう説明はいいです」
「そうですか…では、始めますか?」
「でも、ここのって、高いのよね…」
「全部同じ値段ですよ。そっくりですから…
どれをとってもそっくりです」
「あら、一つだけ安いのがあるじゃない」
「あ、これはおすすめできませんねぇ…」
「いいわ、これにする」
「あとで後悔しても知りませんよ。いいんですか?」
「ええ」
「間違えて選んでも、死ぬまであなたのものですよ…」
♪間違えて選んでも 死ぬまで君のもの
間違えて選んでも 死ぬまで君のもの♪
あくる日
ある子供連れの夫婦がやってきた。
「まぁ、みんな同じなのね」
「団地だからかな」
「パパママ、こっちきてよ!」
子供が展示場のはずれの方に来ていた。
「もう、あんまり遠くに行かないの!迷子になるでしょ」
「ここに変な家があるよ!」
そこには、人がようやくひとり入れる位の家があった。
形は他の家とそっくりだが、大きさだけが小さい。
「この家、入れるのかなぁ…」
子供はその家の玄関を開ける。
「こら、やめなさい。危ないわよ」
構わず家の中に入っていく。
「へぇ…なんか中は普通っぽいや」
中にはこの家のサイズに合わせた家具が置いてあり、そしてその奥に誰かが居た。
「あ、そこのお姉ちゃんなにしてるの?」
「わたしは…ここに住んでるの…」
♪そっくりだけど違う 違うけど平気
なぜなぜ平気のなの?
そっくり だ・か・ら!♪
「全然、平気じゃなーい!」
(完)