そっくりハウス展示場(2)


「本物はどれでしょう!」
パッパラパパラパー
「みなさま、宴もたけなわですが、ここで本日のイベント『本物はどれでしょう!』を始
めさせて頂きます。
 ステージにご注目ください。解答者のお嬢さんです」
パチパチパチ…
「こんにちわ!」
「こんにちわ!」
「さて、お嬢さんにはこれから本物を当てて頂きます
 これから…」
「あの…もう説明はいいです」
「そうですか…では、始めますか?」
「でも、ここのって、高いのよね…」
「全部同じ値段ですよ。そっくりですから…
 どれをとってもそっくりです」
「あら、一つだけ安いのがあるじゃない」
「あ、これはおすすめできませんねぇ…」
「いいわ、これにする」
「あとで後悔しても知りませんよ。いいんですか?」
「ええ」
「間違えて選んでも、死ぬまであなたのものですよ…」

♪間違えて選んでも 死ぬまで君のもの
 間違えて選んでも 死ぬまで君のもの♪

あくる日
ある子供連れの夫婦がやってきた。
「まぁ、みんな同じなのね」
「団地だからかな」

「パパママ、こっちきてよ!」
子供が展示場のはずれの方に来ていた。
「もう、あんまり遠くに行かないの!迷子になるでしょ」
「ここに変な家があるよ!」

そこには、人がようやくひとり入れる位の家があった。
形は他の家とそっくりだが、大きさだけが小さい。
「この家、入れるのかなぁ…」
子供はその家の玄関を開ける。
「こら、やめなさい。危ないわよ」
構わず家の中に入っていく。

「へぇ…なんか中は普通っぽいや」

中にはこの家のサイズに合わせた家具が置いてあり、そしてその奥に誰かが居た。

「あ、そこのお姉ちゃんなにしてるの?」

「わたしは…ここに住んでるの…」

♪そっくりだけど違う 違うけど平気
 なぜなぜ平気のなの?
 そっくり だ・か・ら!♪

「全然、平気じゃなーい!」
(完)


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