急性中耳炎


1) 訴え・症状

 耳痛,発熱,耳閉感,難聴,耳鳴,鼓膜穿孔があれば耳漏の排出がみられる。発熱あるいは悪寒戦慄を伴うこともある。鼓膜所見では鼓膜全体の発赤や膨隆,鼓膜穿孔のときには耳漏を認める。耳漏は漿液性,膿性,ときに血性である。

2) 経過・予後

 全課程は訳2〜3週間である。しかし、患者の抵抗力が弱まっている場合、鼓膜穿孔が閉鎖せず慢性中耳炎に移行することもある。

3) 原因

 上気道感染に引き続き、細菌が鼻咽腔より耳管を経由して起こることが最も多い。耳管は小児では太く、短く、水平に近く位置するので中耳炎に罹患しやすい。その他、経外耳道性、血行性などもまれにある。細菌はインフルエンザ菌,溶血性連鎖球菌,肺炎球菌が多い。他にブドウ球菌,緑膿菌,大腸菌などである。

4) 診断・検査

 訴え、症状および鼓膜の所見により容易に診断される。聴力検査では伝音性難聴を呈する。X線上乳突含気蜂巣のびまん性陰影が認められる。

5) 治療

 近年、抗生物質の発達により、ほとんど治癒するが、まれに慢性中耳炎に移行する場合や頭蓋内合併症を発症することがあるので、慎重な治療が必要である。

@全身療法
 安静にし、栄養をとる。抗生物質および消炎剤の投与、鎮痛剤は耳痛の激しいときに必要である。耳漏のある場合はその細菌感受性のある薬剤を使用する。
A局所療法
 鼓膜に発赤,膨隆,耳痛の激しいとき,高熱が続くときに鼓膜切開を行い、分泌液を排除し、抗生物質を含む点耳薬を点耳する。
B原因疾患の治療
  鼻咽腔の疾患が原因と考えられる場合は、鼻咽腔の治療も必要である。鼻咽腔症状および鼓膜所見が改善されたあとに耳管通気を行い聴力の改善を図る。


看護

観察のポイント

 耳痛の部位・程度・範囲,持続時間,発熱,全身倦怠感,頭痛,咽頭痛,耳漏の有無・性状,めまい,悪心・嘔吐,耳鳴,難聴,
痛みによるストレスの有無・程度,精神状態,睡眠状況,食欲・食事摂取状況。

援助

@疼痛を軽減させるために局所の冷罨法を行い、また必要に応じて指示された鎮痛剤投与を行う。
A全身の安静をはかるために静かですごしやすい環境の提供に努める。
B食欲の出る食事内容や食べやすい食事に配慮する。
C自然穿孔や鼓膜切開により排膿している場合は脱脂綿で耳漏を吸収し、湿ったら取り替え、外耳道・外耳孔部清潔を保つ。
Dセルフケアのできる範囲を把握し、必要に応じて援助する。なかでも発汗が多い場合は、清拭・寝衣の交換に努める。
E円滑なコミュニケーションを図るために、以下のような配慮をする。
  健側に立って話しをする。
  患者の顔の見える位置でわかりやすい口調・音の強さでゆっくり話す。
  静かな環境のもとで話すようにする。
  患者の反応を見ながら話す。
  内容が理解できているか確認をする。

指導

@安静の必要性、運動を避けるよう説明する。
A十分な睡眠をとり、規則正しい生活をすることの重要性を説明する。
B耳に水を入れないことを強調し、耳の清潔保持の方法について指導する。
C洗髪時の注意事項について説明する。
D感冒に罹患しないように、うがい・手洗いの施行を促す。
E耳管内に病原菌が入る可能性があるため、鼻を強くかまないよう指導する。
F急激な気圧の変化をさけるように指導する。
G再発・合併症を予防するため、症状が軽快しても指示された期間、確実に治療を(内服など)継続するよう指導する。
H耳痛・耳漏など異常を認めた場合は直ちに受診する。
I幼児の場合、聴力の変化に注意する。(徴候;注意力散漫・ポカンとした目つき・問いかけに対する応答の欠落・患側の耳を引っ張る行為)


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