本症は上気道感染に引き続き発症することが多い。
耳閉感,自声強調,耳鳴,難聴,時には耳痛がある。難聴は軽度ないし中等度であるが、慢性化になると聴力低下の程度が大である。
急性の場合は数日で軽快するが、原因を除去せず、急性期の薬物療法が不十分の場合、あるいはアレルギーなどの原因により、遷延化に移行する場合がある。
長期間病変が持続すると組織化が起こり、中耳癒着症など難聴が残る場合がある。
耳管機能不全がその主因である。耳管の炎症,耳管筋の機能不全(口蓋裂,老人)アデノイド,ローゼンミュラー窩リンパ組織の肥大,鼻咽腔の炎症,アレルギーなども考えられている。
耳管狭窄により中耳腔内が陰圧になり、繊毛運動の機能不全により、中耳腔内に血漿成分が漏出する。滲出液は漿液性と粘液性のものがあり、病態によって、その性質が違ってくる。
耳鏡により、鼓膜に貯留液線や黄褐色の特有な鼓膜所見が得られ、可動性の低下や聴力検査により、伝音性難聴を認める。インピーダンスオージオメトリーでは、B型あるいはC型の曲線を示す。
また、鼓膜穿刺で貯留液の吸引により診断できる。
耳管通気を行い、これを通じて薬剤注入、狭窄が強度の場合はプジーを通す。鼓膜穿刺,切開により貯留液を吸引し、鼓室内にステロイド剤を注入する。長期間持続の場合、経鼓膜的にチューブを挿入留置する。
原因の除去には、アデノイド切除,鼻咽腔の処置など、また、消炎剤,蛋白分解酵素剤,抗ヒスタミン剤などを投与する。
a,観察ポイント 耳閉感,自声強調,耳鳴,難聴,耳痛等の程度、持続時間や発生の誘因などの観察。
b,鼓膜切開や鼓膜穿刺の際、患者の頭部の固定をしっかり行い動かさぬよう指導する。切開や穿刺後の二次感染の防止が必要となる。
c,鼓膜切開又は穿刺後は耳漏,出血,疼痛の有無に注意し、外耳道を清潔に保つよう指導する。入浴、洗髪時には外耳道に水が入らないよう十分注意する。
d,鼻をかむときは、片方ずつゆっくりかむよう説明する。
e,症状は感冒に伴うことが多いため、感冒罹患時にはうがい手洗い等注意を促す。
f,耳管閉塞時に気圧変化を伴う場所(航空機,エレベーター,新幹線など)に行くと、耳痛,めまいなどが起こる可能性があることを説明する。
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