ワンス・アポン・ァ・マットレス

2000年11月3日〜11月30日青山劇場

***** Official Data ****

製作/東宝
作/ジェイ・トンプソン
マーシャル・ベアラー
ディーン・フラー
作曲/メアリー・ロジャース
作詞/マーシャル・ベアラー
訳/丹野郁弓
演出/青井陽治

音楽監督/北川潤・塩田明弘
声楽監督/北川潤
編曲/佐藤俊彦
指揮/塩田明弘
振付/上島雪夫・南 流石・藤井真梨子
装置/和田平介
照明/塚本悟
音響/大坪正仁
衣装/小瀬川雅敏
演出補/寺崎秀臣

製作/酒井喜一郎・宮崎紀夫

出演

プリンセス・ウィニフレッド/大地真央
プリンス・ドーントレス/植草克秀
アグラヴェイン女王/前田美波里
魔術師/尾藤イサオ 騎士・ハリー/宮川 浩
レディー・ラーキン/飯塚雅弓
吟遊詩人/ジェームス小野田
道化/吉野圭吾
セックスティムス王/鶴田 忍

小笠原みち子/斉藤文華/麻希 光/丸山知津子/千葉桃子/森本麻祐子/
中川菜緒子/池谷京子/辻 奈緒子/長山志津香/板倉リサ/柏木ナツミ/
北林優香/浅野実菜子/吉田ひかる

井上仁司/沼沢 勉/岡 智/香取新一/中尾和彦/NIRO/仲沢克裕/
中本雅俊/佐藤宣美/佐々木しんじゅ/平野 亙/
祖父江 進/川口雄二/ 桑原辰旺

***** STORY ****
(2000年11月のLETTER BOXで連載したレポートです)

CHAPTER 1

舞台には大きなお城。このお話の語り部も兼ねる吟遊詩人(ジェームス小野田)が登場し、みんなが知ってるアンデルセン童話の、愉快なスペシャルバージョンのはじまりを宣言します。
お城・中央の扉が開いて、王宮の人々が次々に登場。
早く結婚したくてたまらないプリンス・ドーントレス(植草克秀)。
息子を結婚させたくなくてたまらない母・アグラヴェイン女王(前田美波里)。
その女王に何も言えない(物理的に)父・セックスティムス王(鶴田忍)。
アーンド王様に付き従う我らが道化(吉野圭吾)←一応書いたりして
そして女王のふところ刀・魔術師マートン(尾藤イサオ)。

物語は、王子のお妃候補をテストする「プリンセス試験」で、最後の有望なレディが落選してしまう場面から始まります。本当のプリンセスは知力・美貌・繊細さすべてにおいて優れていなければならない…という建前から、女王とマートンが毎回すごく難しい試験問題を用意して、これはという候補を片っ端から落としてしまうのです。

*** T S U B O ***
・お城の女官を追っかけまわすのが大好きな王様を女王から隠そうと四苦八苦する黄色いツノの人、女王の怒声に身を縮めるところがしょっぱなからSatomiさんのいわゆる「らぶりぃ」。
・王子を溺愛する女王様、「ドーントレスのためだったらいつでも離婚するわ!」と豪語したりして。
・落第したプリンセスにわたす残念賞の巨大クッキー缶(女王の肖像入り)を出してくるのは道化だったりする。
・プリンセス試験の数学の問題、答えわかったかたぜひ教えてください(^^;)

CHAPTER 2

プリンセス試験の失敗にがっかりしているのは王子様だけではありませんでした。この国には「王子が初夜を迎えるまで誰も結婚してはならぬ」という厳しい掟があり、若い恋人達はみんな一日も早く王子様が結婚してくれることを望んでいたのです。舞台はお城の廊下に移りそこへ、法を守って結婚はしないが初夜は迎えてしまったある一組のカップルが登場します。(この辺からだんだん最初の「まあ、ほほえましいわね。子供ミュージカル?」感が引いていくんですね、さーっと…いや、子供でも楽しめると思うけど、大人がある程度意地悪に観た方が10倍面白いなーと(^^;))
騎士・ハリー(宮内浩)は、恋人である女官のラーキン(飯塚雅弓)とできるだけ早く結婚するため、新しいプリンセスを探す旅に出る決意を固めます。「何年かかっても…」と約束するハリーにラーキンは「今すぐ行って連れてきて!」と尋常ならぬ真剣さで詰め寄ります。ラーキンのお腹には既に赤ちゃんがおり、一刻も早く王子様を結婚させなければ大変なことになる…のっぴきならない立場のハリーは恋人のため、国のために旅立ちます。

*** T S U B O ***
・スカートの下に20cm(もっとか?)の厚底ブーツを見え隠れさせながら「あたしたち社会的に抹殺されちゃうわぁぁ〜!」と舞台をかけずりまわるラーキンがかわいいのなんの。

CHAPTER 3

吟遊詩人の語りと歌でハリーの旅路が語られます。諸国を巡り「本当のプリンセス」を捜し求めたハリーは、ついに旅路の果ての「沼の国」で綺麗で明るい本物のプリンセス・ウィニフレッドにめぐり会い、4月のある朝、彼女を連れて帰ってきたのでした。
「ハリーが帰ってきた!新しいプリンセスを連れて!」の報にお城じゅうが沸き立ち、騎士も女官もお城の前庭に集まってお姫様の到着を待ち構えます。塔のてっぺんに上った道化が、馬に乗って走ってくるハリーとプリンセスの様子を興奮した口調でみんなに伝えます。
★実況要約★
クロッカスの野を走ってくる二人、ハリーが遅れ、プリンセスは凄い速さで走ってくる。お城の跳ね橋が下りるのが間に合わず、プリンセスは馬を下りてそのままお堀に飛び込んだ!大きく息を吸ってもぐったプリンセスはちっとも上がって来ない…心配する一同がいる中庭で、噴水の水が突然止まった。噴水がぶるぶる震えている。そして…!
舞台は回転し中庭に移り、中央の噴水からスモークが吹き出す。音楽が高まり、晴れていく煙の中央に、びしょぬれのプリンセス・ウィニフレッド(大地真央)がついに登場!

*** T S U B O ***
・道化モードで観てて最初のヤマ場というべきザ・実況中継。「もぐったっきりだ〜!」とか「えープリンセス、ぜんぜん上がって来ない。」とか「どうした噴水、何が言いたい?」とかとにかく長台詞、ツボだらけ(笑)。全部書いちゃいたくてしょうがない(覚えた(笑))マジでここは面白いです。
・実況によればプリンセスがお堀に飛び込んだ頃、クロッカスを摘んで花束を作っていたのんき者ハリー…長旅だもんラーキンにおみやげ持って帰らないとね。

CHAPTER 4

お堀に飛び込んで秘密の通路を泳ぎ登り、噴水から登場した沼の国のプリンセス・ウィニフレッドは、「どの方?私と結婚なさる超ラッキーな王子様は!」と叫んだその口で「信じて、私はShy〜!!」と高らかに歌ってお城と客席の心をたちまちGET。「お堀を泳ぐなんて…」と彼女を一目で気に入ったプリンス・ドーントレスは、「お堀を泳ぐなんて!」といきり立つ母親を説得してプリンセス試験の実施を承知させます。
一同が去った中庭。専任の女官として王女の世話をすることになったラーキンに、王様が激励の言葉をかけます。口がきけない王様の通訳はもちろん道化。
王様と吟遊詩人と道化は、王子の結婚と王国の幸せのため、お妃&マートンの連合軍に3人協力して対抗することを誓い合います。

*** T S U B O ***
・登場から退場までとにかく沸かせまくりのウィニフレッド、可憐な微笑みの合間に「まさか」と思うようなギャグをガンガン交えてくださり、魅せられること請け合い。
・プリンセスにひとめぼれする「プリンス・ドーントレス・ザ・パッとしない」自分でそこまで言っときながらもプリンセスとの波長の合いっぷりはさすが。
・王様がラーキンに言葉をかけるシーン、ラーキンに気付いて呼び止める前の道化の能天気な歩みが毎回、楽しみで…(マニアですから…)たいてい能天気なちょーちょみたいにてれてれ駆けてるんですが、たまに「平泳ぎ」とかしてたりね…。
・評判の道化の「通訳」、ここで軽く前哨戦が披露されます。王様のみぶりてぶりに合わせて1オクターブ高い声で「王様しゃべり」する道化、いまだかつていちども聞いたことない声で最初どこの誰かと思いました。また王様のジェスチャーがかわいくて。
・「3人いるーのにー歌はーデューエットー」…初日、爆笑してこの続きが全然聞こえなかった…実際、笑うのがもったいないくらい綺麗なハーモニー。ホントに3人分聞こえてくるのですよ…。

CHAPTER 5

明日のプリンセス試験の問題作りにいそしむアグラヴェインは、何としてもウィニフレッドを落第にすべく、マートンと知恵を絞ります。あのプリンセスに欠けているのは繊細さ=センシティヴィティだ!というところから彼らが思いついたテストは、「20枚のマットレスの下に小さなえんどう豆をひとつぶ入れる」というものでした。本当に繊細な「本物のプリンセス」であれば、マットレスの下のえんどう豆が気になって眠れないはず。今夜、ウィニフレッドが熟睡したら不合格!
王子のゲストルームに案内されたウィニフレッドは、王様(もちろん通訳つき)の訪問を受け、楽しい「会話」を交わします。ウィニフレッドをすっかり気に入った王様はなんと王妃へのプロポーズ以来、20数年ぶりに王冠を脱いでひざまずきます(ここんとこの道化のべらぼうな台詞はインタビュー参照)。王様の口がきけなくなったのは、女王の安産祈願と引き換えに「ねずみが大鷲に噛みつく日まで、セックスティムス王は何も語らぬ!」という呪いをかけられたからなのでした。
ノックの音をお妃と思った王様+道化は秘密の通路から脱出しますが、次にやってきたのはドーントレスでした。ウィニフレッドは故国である沼の国での生活のことを語ります。

*** T S U B O ***
・ゲストルームにぴょこんと入ってきた道化、王女と目が合い「ぽっ」となるさまがみんなからカワイイとかぷりてぃーとからぶりーとかブリッ子とかいろいろ言われてまして…最後のは私か。
・道化は首の下にひもつきのぼんぼりを一個下げてて、これをマイクみたく持って「えー記録によりますと」とやってます。
・呪いをとくために「大きぃーいねずみとちつちゃぁーいミニミニ大鷲を連れてきて…」と提案するウィニフレッドに「やってみました」と道化。…見たいな、ミニ大鷲。
・ノックが聞えた時の王様と道化の慌てっぷりがまた…。
・沼の国の王女のペットはたくさんのカエル達。ウィニフレッドの歌に合わせてはねまくり。多いし。

CHAPTER 6

花瓶をひっくり返してしまったウィニフレッドが慌てて床を拭いていたところへやってきたラーキンは、彼女をメイドと勘違いしてしまいます。それがきっかけで、ウィニフレッドが出て行ったあとハリーとラーキンは大ゲンカ。プリンセスがテストに合格しなかったら二人の未来はおろか、国全体が危機におちいる…という焦りをかかえた二人の会話を物陰で聞いていたウィニフレッドは、自分にかけられている希望の真の大きさを悟ったのでした。
えんどう豆のテストの準備に余念のないお妃様とマートンは、美味しい食事、睡眠薬入りのお茶などなど、念に念を入れたプリンセス安眠作戦を整えていきます。きわめつけとしてお妃が企画したのはプリンセスを踊り疲れさせるための大舞踏会。すばらしくノリのよい曲「スパニッシュ・パニック」を躍らせるべく騎士たちにやや無理矢理にコーチします。

*** T S U B O ***
・王子からたくさんのドレスと靴を与えられたウィニフレッド。踵の高いブーツを見て「こういうの国じゃ、拷問する時に使うのよっ(実践)」
・マジになるほどのどかなハリーとラーキンのケンカ。「大嫌い!」「ではなぜ騎士を愛した!」「愛しはじめた頃、あなたは騎士ではなかったわ!」「そっかー。」
・場内大受けの、お妃がスパニッシュ・パニックを騎士たちに振り付けるシーン…美波里さんならではのおかしさ加減というかちょっと文章では語れない(^^;)毎回いじられるマエストロの塩田さんはじめ、オケピットの面々もガンガン芝居に参加しておられるのが楽しいし、NIROさんはじめ騎士たちの果敢な踊りっぷりがまた(笑)。

CHAPTER 7

場面かわってお城の庭にある迷路。
今日も女官たちを追いかけ回す王様は、剣突をくわされてお拗ねあそばし、道化と吟遊詩人になだめられています。そこへ通りかかったのはハリーとの仲違いでやけになり、荷物をまとめてお城を出ていこうとしていたラーキンでした。思いつめて泣き出した彼女を王様は優しくなだめ(全然、違和感なく「王様」がしゃべってますがもちろん声は通訳の方がお出しになってます…)最後には笑顔になった彼女を送り返します。ダテに女官の尻を追っていたわけではない王様は(笑)ラーキンの妊娠にも既に気付いており、彼女とハリーのことをとても心配していたのです。王子のため、ラーキンとハリーと子供のため、そしてすべての恋人達のために結束して事態に立ち向かうことを3人は誓い合うのでした。

*** T S U B O ***
・旅装のラーキンを不審に思い、散らばった荷物を拾いながら彼女に問いかける道化は、いつものおちゃらけモードが急に取れて素に戻っており「おっ」と思わせるカッコよさ。「あ゛ーやっぱり泣いちゃったよもー…」といった風情の脱力リアクションのまま王様の台詞を言うところとか大変オトコマエだ(笑)。
・あまりに自然でほとんど笑いとかおきないんだけど、この場面での王様のけっこう抽象表現もからめた長広舌ジェスチャーを道化がスラスラ訳しちゃうさまはむちゃくちゃおかしい…「今、この瞬間の怒りと絶望でこれまでの長い年月の忍耐と希望をを真っ黒に塗りつぶすような…」ってそれ、手話というよりテレパシーすよ、あなた方。
・ラーキンの妊娠に驚く道化、「ハリーの奴ーっ!」とか「いいなァ…」とか…このへんが「道ちゃんのみ彼女いない」説の根拠なんですがみなさん、どう思われました?
・落ちついて考えるとこの場面、道化の口は始めっから終わりまで開きっぱなし。締めの3人のすばらしいハーモニー「王様と吟遊詩人と道化」リプライズも、ためしに歌ってみたらむちゃくちゃ長くて文字どおり息つくひまもない。ラスト前で道化が「ハァー」って合いの手入れるところでは笑いがおきるし(^^;)アップテンポの「ヘイノニノニ」では最近「あと少しよファイトーっ!」と念じてしまう。名曲だけど凄絶だ…。

CHAPTER 8

夜は更け、大舞踏会が始まります。 ドレスアップして現れたウィニフレッドは「スパニッシュ・パニック」でもお色気ダンス(なんだそりゃ)でも何でもござれと踊りまくります。舞踏会はお妃もドーントレスも騎士も女官も巻き込んでガンガン盛り上がり、疲れ知らずのウィニフレッド以外はすっかり果ててしまいます。
舞踏会を終えてドーントレスと語り合うウィニフレッドは、パパだけが呼ぶ自分の愛称で「フレッド」という名前で呼んでほしいと告げます。フレッドへの恋心を歌うドーントレスに、城中のみんなが和していきます。

*** T S U B O ***
・誰も一生忘れないであろう「スパニッシュ・パニック」byアグラヴェイン。高まるイントロの中、お妃様がばりばりとスカートを取っ払って脚線美をあらわにする場面では客席中に響くどよめきがホントにすごかった。
・ウィニフレッドの本名はずっと「ウィニーフレッド・ザ・ウービー・ゴーン」とかだったはずだが楽日が近くなるとラストネームが「あけぼの」に定着してしまった。「力持ちの男の子みたいでしょう?」ごもっとも…。
・一幕ラストを飾る「Song of Love」が最高に楽しい(^^)

CHAPTER 9

舞踏会は終わり、いよいよお妃は特製のベッド作りにとりかかります。夜9時以降は物音を一切立ててはいけないという厳重な命令のもと、騎士や女官達が静かに、しかし忙しく働いており、王様たちは「油断できないのは今夜だ」と警戒していました。
明日に備えてウィニフレッドの受験勉強を手伝っていたドーントレスは、明日はきっと大丈夫…と彼女を励ましながら優しくおやすみの挨拶をします。
夜が更けて行く中、ウィニフレッドは、バルコニーでカエルの声に耳をかたむけながら、後にして来た沼の国を思います。両親と別れて結婚に踏み出すことに小さな不安を覚える彼女に、窓の下にやってきた吟遊詩人と道化が大丈夫!と励まします。新婚旅行や子供たちとの里帰りなど、結婚後に広がっていく楽しくすばらしい人生を(お花と旅行パンフのおまけつきで)ウィニフレッドに語って聞かせ励ますのでした。

*** T S U B O ***
・2幕冒頭、客席を縫って進んでいく女官・騎士たちは気持ちだけは「静かに静かに」だが、どつきあったり階段口で派手にこけたりこっそり空いてる客席に座り込んだりと、実は相当賑々しい。
・王子と王女の受験勉強はすごく楽しそうだが「ウィニフレッドはあの受験勉強で何を学んだのだろう?」は道ちゃんのテレパシー通訳と並んでこの話の最大の謎だと思う。四字熟語、お伽話、宇宙語と…。
・プリンセス&吟遊詩人&道化が、美しい魔法に満ちた土地への旅を歌う「ノルマンディー」。「まるで騎士の遍歴」の道ちゃんの遍歴ポーズ・「空がさっとみどりに…」のとこの手つき、エメラルド色に染まる照明の下の3人の表情・ちっちゃなプリンスぶる道化・ちっちゃなプリンセスぶる吟遊詩人・3人のすばらしいハーモニーああ全然語りきれない。

CHAPTER 10

場面は再びお城の迷路に移ります。夜の闇の中、一番小さなひからびたえんどう豆を手に、お妃とマートンが悪巧みを進めるのを、密かに聞いていた王様と道化と吟遊詩人。
再び隠れる3人の前に、悩むハリー、落っことした豆を探すマートン、そしてベッドから抜け出してきたドーントレスが次々に現れます。ママに寝かしつけてもらうのは沢山だ!と真情を吐露するドーントレス。彼はもう立派な大人だ…というわけで王様は「男親の務め」を果たすべく、結婚とはなんなのか、愛し合って子供が生まれるとはどういうことか…をドーントレスに言葉ではない言葉で語って聞かせます。

*** T S U B O ***
・客席の上手・下手でお妃の悪巧みに耳をすましていた道化と吟遊詩人。「吟ちゃん!」「道ちゃん!」とお互いにかけよるんだった…本当に名前ないんだなあ…。
・忠誠心とラーキンへの思いに板挟みになったハリー。一人でラーキンの「愛と忠誠とどっちが大切なの?」とかの言い草を反芻するさまは物悲しいのを通り越して死ぬほどおかしい。宮川さんミュージカル誌で「二枚目路線」って言ってたがなあ…。
・ドーントレスと王様を置いて席をはずす吟・道コンビを心細そうにひきとめる王様はものすごくかわいい。にしても「結婚式の夜は初夜初夜初夜初夜!」コールを置いて去っていく2人は何物だ?

CHAPTER 11

王様とドーントレスの愛情あふれる語らいを陰で見守っていた吟遊詩人と道化。実は魔術師マートンも話を聞いて深く感動していました。親父と息子の愛情を見ながら、みずからの父親の愛を語り合う3人。あの親子を幸せにしてやらないか?と語り掛ける二人に、マートンもついにある決心を固めるのでした。
一方、一人勉強を続けているウィニフレッド。ラーキンが「特別の寝室に移るように」とのお妃からの伝言をもって訪れます。ハリーとまた喧嘩して絶望しているラーキンに、彼を幸せにできるのはあなただけだと勇気づけるウィニフレッド。元気になったラーキンを送り出した後、自分の問題に立ちかえるウィニフレッドは、お伽話と同じ「いつまでも、いつまでも、幸せに暮らしました」にたどりつくため、一人で立ち向かっていくことを強く誓うのでした。

*** T S U B O ***
・100回でも大好きと書きたい「ソフトシューズ」。幸せいっぱいの曲にあわせてマートンのマジックが披露され、そして我らが「踊る道化の王様」が「オーレレ・オーララ」並みのテンションで(爆笑)踊りまくる。曲も詞もなんかもうとにかく「愛」でいっぱいで本当に素敵な曲だ。タップなのにソフトシューズとはこれいかにってとこは目下調査中。
・ここへ来て「カリスマ・コメディエンヌ」の意味がわかってしまうウィニフレッドのオヤジギャグ連発。文字にしたら全っ然面白くないので敢えて書かないが(あの方がおっしゃってこそ…)とにかく初見の時は「ぽかーん」と口を開けてしまった。
・ウィニフレッドの最後の曲「いつまでも幸せに」は、シンデレラや白雪姫のような助けはないけれどがんばる!という、明るくてコミカルでいながら決意に満ちた力強い歌。これとソフトシューズがこのお話でのMYベストナンバーだったりする。みなさまは?

CHAPTER 12

王様たちにある秘密を打ち明けられ、その企てに参加してきたハリーが、一人ほくそえんでいました。そこへ意を決して現れたラーキンは、相変らずずれまくったハリーとの言葉のすれ違いをも克服し、ついに二人は仲直りします。
いっぽうお妃はプリンセスのための特別ベッドを完成させていました。ふかふかのマットレスが20枚、その一番下に母の愛(と呪い)を込めた小さなえんどう豆をセット。女官達に連れられて入ってきたプリンセスは、最前に飲んだ中国のお茶が効いてすでにフラフラになっていました。さらにそこへ阿片入りミルク、スペシャルケアーのサマルカンドのウグイス(嬢)の美しい子守歌まで添えて、完璧な作戦を終えたお妃はほくそえみながら退出していきました。
あまりの眠気にあっという間に寝入ってしまうはずのウィニフレッド。しかし彼女はふと何かの違和感を覚えます。マットレス20枚のベッドなのに、どう横たわっても体が休まりません。眠くてたまらないのにどうしても眠れない…最後の手段、ひつじちゃんたちを呼び出す彼女のカウントと共に、舞台はクライマックスの王座の間に移っていくのでした。

*** T S U B O ***
・「重大なことがわかったんだ!秘密だよ?」→「王様と吟遊詩人と道化と僕の秘密!」→「(何をしたかは)絶対に言えない!」…こういう自分のご無体さに気付いてないところがハリーのいいところなんでしょうきっと。私にはわからんよ…。
・自分に正直に生きるため、「私、厚底やめる!」と叫んで命と同じくらい大事だったブーツを脱ぎ捨てるラーキン。20cm引いた彼女の身長は抱き合うハリーのウエストに留まり、ハリーの腕はさわやかに宙を切るんだった。
・どうしても眠れないプリンセス。ベッドの上をあっちへゴロゴロ、こっちへゴロゴロ、ついにぶち切れてナイチンゲールに怒鳴りつけた後、「こうなったらひつじちゃんたちを呼ぶしかないわね…」と振り返る目の鋭さが素敵だった(笑)。

CHAPTER 13

キャメロットのお城についに朝が訪れました。いよいよプリンセス試験だ!といきごむドーントレスに、アグラヴェインは試験が既に終わっていることを告げます。20枚のマットレスの下に小さなえんどう豆、眠ってしまえば不合格…そんな試験に合格できるはずがないと絶望するドーントレスをよそに、プリンセス・ウィニフレッドが大広間に呼び込まれます。居並ぶ面々の前に現れた寝間着姿のウィニフレッドは…まだひつじの数を数えていました。「あのベッドは拷問道具よ!目を閉じることすらできなかったわ…」憔悴しきった彼女にドーントレスは「合格だ!」と叫び、城中の恋人達が喜びの声をあげます。嬉しいより眠いが先に立つプリンセスはその場で沈没。ドーントレス達はそれを優しく見守るのでした。
めでたしめでたし。
とはいきません。(by吟遊詩人)何がなんでも納得できないお妃様はたいへんな剣幕でウィニフレッドをののしります。「この娘以外ならどのプリンセスだってかまわない!」とまくしたてる母親に向かってついに「黙れ!」と一喝するドーントレス。僕の花嫁はウィニフレッドだけだ!と叫ぶ息子に唖然としたお妃様はショックで口がきけなくなってしまいました。
半分夢の中のウィニフレッドはドーントレスにこれからのことを語ります。お城の中庭に離れを建てて、お爺ちゃまとお婆ちゃまに住んでいただきましょう…と語る彼女に、「なんと優しい娘だ!」と叫んだのはなんと王様でした。王子が「黙れ!」と叫んだ時「ねずみが大鷲に噛みつくまで」の呪いがついに解けたのです。
こうして自ら命令が出せるようになった王様は長年積もり積もった文句も愛の言葉もまとめて話そう、とお妃様と仲むつまじく去って行き、ウィニフレッドはついに20枚のマットレスのベッドで安らかな眠りにつこうとしていました。

「さて、フィナーレ、そして種明かし!」

吟遊詩人と道化と魔術師マートン、そしてハリーと騎士たちは、夜中ずっとマットレスの下に入れてあった槍や大鎌、斧に楯、ヨロイ兜etcを次々と取り出していきました。ふかふかのマットレスの下には彼らの手によって、豆じゃない、あらゆるボコボコな代物が詰まっていたのです。
これがほんとのめでたしめでたし。

…ところでプリンセスは、それでもまだ熟睡できていませんでした。
彼女がついに眠りについたのは、20枚のマットレスの一番下に入っていたえんどう豆を、マートンが抜き取った後のことだったのです…。

こんどこそ、めでたしめでたし。

*** T S U B O ***
・お城の大広間に居並ぶなんかプリティーな人たち。@すそを地べたにひきずるラーキン、Aワクワクを隠し切れないハリー、B寝不足でぐらぐらしてる道ちゃん。
・一晩に三万びきを超えるひつじを数えたらしいウィニフレッド。千秋楽には三千三百万くらい数えていたようだ。
・「バリアフリーの離れを建ててちょうだい…」泳げないと生きてけない沼の国のバリアフリーって水準が高そうだ。
・ちょっと以前の発音が抜けてなくて上っ調子になる王様。長い間あれが「自分の声」だと思ってたんだろうなあ。
・王様が喋った瞬間、ツノが取れてしまったお妃様。表情も柔和になってジェスチャーしながら王様に通訳してもらう彼女はずっと幸せそうだったりして。
・マットレスの下から大鎌を引っ張り出して振り上げる道ちゃん、なんか異様に似合う…ちょっと、しっぽとか翼(黒いやつね)つくとちょうどいいような…。
・カーテンコールでは白い衣装のドーントレス、そしてもちろんウェディングドレス姿のウィニフレッドが登場。くちづけする二人の後ろで両手で目を隠している道化は確かにラブリーかも知らないが性格的に絶対なんか隠してると思う。私は。


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