ミュージカル
砂の戦士たち

2003年11月11日(火)〜11月19日(水)
サンシャイン劇場

***** Official Data ****

原案・演出:謝珠栄
脚本:高平哲郎
音楽:斉藤恒芳/YANCY・高橋誠
美術:金井勇一郎
照明:小川幾雄
音響:山中洋一
振付:謝珠栄/川崎悦子/平沢智
衣裳:浜井弘治
ファイティング:渥美博
舞台監督:鈴木正憲
宣伝写真:相澤伸也
企画・製作:TSミュージカルファンデーション

主催:TOKYO FM/TSミュージカルファンデーション
提携:サンシャイン劇場

出演(五十音順)

阿部よしつぐ 石川禅  川本昭彦  駒田一  坂元健児  縄田晋
平沢智  福永吉洋  本間憲一  幸村吉也  横田栄司  吉野圭吾
伊織直加

***** about Numbers ****

「砂の戦士たち」に登場する曲とストーリーについての覚書です(主観込み)。

□□□一幕□□□

■砂の決闘
「人の一生はこの砂のようだ…」独白と共に寺田の手からサラサラとこぼれる砂。
スピーディに始まる曲の冒頭では天井からも砂がザーっと落ちてきます。砂の戦士たちのメンバーが2人、3人と出てきて踊るダンスは、アクロバットやカポエィラの振りを絡めたダイナミックな振付。最後は勝負するペドロ・バラとボルタ・セカ、それを見守るメンバー。

■何故?
砂の戦士たち全員でのナンバー。抱きしめられることも愛されることもなく、答えの得られない疑問を慟哭する面々。途中でリズムが変わるところで振り上げるガトの手に注目(^^)。

■上屋倉庫
上屋倉庫とは砂の戦士たちのねぐら、海辺にあるうち捨てられた倉庫のことです(この作品のタイトルを始めて聞いたとき「砂」は砂漠の意味かと思ったんですが海辺の砂なんですよね)。意気揚揚と飛び込んできたガトはかっぱらってきた自分の指輪を仲間に自慢し、からむセンイと大喧嘩をやらかします。…しかしこの曲のタイトルが「上屋倉庫」なんだろうか?勘違いしてたらすいません(^^;)。

■砂の戦士たち
仲裁に入ったペドロは、ジョアン、センイ、ガトを呼んで仕事の話を始めます。 ギターを抱えたボア・ビダが歌う旋律に乗せて踊るメンバーたち。聖母の絵姿に祈るピルリト、名付け親のランピオンを自慢するボルタ、それぞれに嫌味を言うセンイ、誰も彼もが満たされない思いを何かにぶつけている姿を眺めながら、聞こえてくる口笛にペドロが耳を傾けます。

■ぼくらの箱船
場面は変わって劇団シーン(設定上、1980年代だそうですが普通に「現代」の感覚でした)。かつての主催の追悼公演である「砂の戦士たち」の客演としてやってきた寺田は、劇団の主催になったばかりの旧友・神山が始めた合宿に加わります。「人が集まることの意味を見詰めなおしたい」という神山のことばに疑問を憶える寺田。長い間殻に閉じこもる間に夢や熱意を失い、色あせた日々を過ごしていくメンバーたちの歌です。

■喜びの光の中の、哀しみ
街を走るペドロとプロフェソール。虹よりたくさんの色のある、けれどもどれも悲しそうな人の顔ばかりの街を眺めながら二人が歌います。通りがかりのジョゼ神父はプロフェソールの絵の才能に心を留めますが、未来への希望ばかりを語るペドロに反発するプロフェソールは希望に背を向けます。

■さよならのサンバ
ボア・ビダが歌うサンバ。恋人との別れ、新しい恋に向かう哀しみと情熱を歌う歌なんですが、これにあわせて全員が踊る踊る踊る。何回でも聴きたい、見たい!曲です。フィナーレではこれを全員で歌いまわす(^^)。

■父 ライムンド
波止場で未来を語るペドロとジョアンとボア・ビダ。労働者のために何度もストライキを起こし戦った父のように、革命家になりたい…と歌うペドロのソロに、ジョアン・グランジとボア・ビダが加わります。

■金持ちの息子
かつて足の悪い息子を失った過去を持つエステル夫人の住む裕福な家に、芝居のうまさを活かしてスパイとして潜入したセンイ。8日経っても戻らない彼を、裕福な生活に浸って帰ってこないのではないか、自分達を裏切ったのか…と苛立つ仲間達の歌です。

■おふくろの匂い
戻ってきたセンイは仲間達になじられますが、家に盗みに入るための見取り図を作るという仕事は果たしていました。ペドロと二人きりになった時、襲撃はやめにしないかともちかけるセンイは、内心ではエステル夫人に愛情厚く接してもらえたことに深く動かされていました。世の中を憎んできたセンイが「おふくろ」に出会えてしまった心の動きを歌う悲しい歌です。

■俺たちはどこへ流れてゆくのか
気持ちがバラバラな劇団員たち、それを見詰める寺田。なんとなく日を過ごし、それぞれに悩みを抱えながら無為に流れていくメンバーの歌です。本来だと「あーあ…」と嫌になっちゃう場面なのですが、河原君始め研究生たちのぼやきトークとかいろいろ合間に入ってピシっと楽しめるシーンになってるのはさすが(^^)。

■メリーゴーランド
バイトでメリーゴーランドの操作をまかされたガトとジョアン。仲間たちに、夜中にこっそりお前らを乗せてやるよ…と歌うガトのバックにはメリーゴーランドの夢のような映像が舞っています。(この後逃走しちゃうってことは結局、乗れなかったのかなあ?(;_;))。

■逃走のダンス
ジョアンが拾ってきたのは両親を天然痘で失った少女、ドーラ。演じるは劇団出身で今は外部で仕事をしている紅一点の千島です。 警察に追われて逃げる砂の戦士たちの曲です(歌はなし)。ドーラを含むメンバーが街を走り、入れ替わりつつ踊ります。

■ドーラの危機
途中ではぐれたペドロを除いた12人はやっとのことで上屋倉庫にたどり着きますが、そこで女の子が混ざっていることが発覚します。さらってきた女はみんなのものだ、と迫るボルタとガトに、仲間にしたいから連れてきたんだ、と反論するジョアンとプロフェソール。止めようとするメンバーを巻き込んで大乱闘が始まります。

□□□二幕□□□

■ドーラの危機(承前)
ガトの雄叫びから再開。一幕では一応、メインは2対2だったんですがこの辺からホントにただの乱闘になり(^^;)。なんでいつの間にかセンイに殴られてるんだろう、ガト…。おなじみのペドロの「何やってるんだ!」で終了。

■漂う小瓶のように
砂の戦士たちに加わった孤独なドーラのソロ。踊るドーラはやがて一人で黙々と稽古する千島に変わります。

■仲間
かつて劇団になじめず退団したことを今でも気に病んでいる千島はかつて失ってしまった「仲間」という絆を再び求めていました。千島と話して「仲間」という言葉に思いを馳せる寺田。すっかり合宿生活に嫌気がさし、テンション落ちてくばかり…の団員達の中にも、心の底には「仲間」を求める気持ちが潜んでいる…な歌。だと思う(^^;)。

■ドーラ・母・妹・恋人
「あんたたち、くさい!」と尤もなことをのたまったドーラ(ボルタやプロフェソールのリアクションから察するにガトは香水?つけてるからくさくないらしいが(笑))、みんなの服を洗濯してやる彼女を中心に少年たちが歌います。「砂の戦士たち」の一員として盗みもし洗濯も縫い物もし…と次第に仲間達に溶け込んで行くドーラ。ジョアン、ピルリト、ガトそしてボルタが彼女の中に「母親」を見つけていきます。

いっぽう劇団では、アルミロ役の河原が急遽実家に帰らなければならなくなってしまいます。合宿の意味を木村に問い詰められた神山は、本当は今後主催としてやっていく自信がなかったこと、合宿を通して仲間との絆を見つめなおしたかったことを語ります。反発して去っていくもの、考えこむ者、どっちつかずなもの、それぞれの中、千島は自分が残りたいから合宿に残る、と宣言します。

■街の天然痘
太鼓が響き、奈落から登って来る白装束の踊り手たち、そして熱にうかされるアルミロ。歌はおそらく原作に登場する女神オモルに捧げる儀式で歌われる「カボノよ、太鼓をたたけ!オモルが天然痘をまきちらす」みたいな歌詞なんだと思います。踊る白装束の面々(アンダースタディの宮さん含む)は天然痘そのもののイメージなのかな。

■神様の罰
天然痘に冒されたアルミロを囲み恐慌におちいるメンバー。センイは隔離所へ行けといい、ピルリトはこれは悪事を繰り返す自分達への神様の罰だと訴え、混乱したボルタは銃をつきつけて残るか出て行くか選べと迫ります。戻ってきたペドロに残っていいと許されたのも束の間、アルミロは息を引き取ります。

■刻み込まれた憎しみ
運び出されていくアルミロを見つめるボルタ・セカのソロ。ボルタにとって祈りも信仰も、死んでいく友を救ってはくれない無意味な存在です。死んでいった友の分も生き抜くこと、人生に勝ち残ることを誓います。

■星のムラート
白人と黒人の混血(ムラート)のボア・ビダは自分も天然痘にかかってしまったことを知り、仲間に伝染させないために、誰にも知らせずに隔離所へ行こうとします。それに気づいたプロフェソールひとりと挨拶を交わし、去っていくボアのソロに、祈るピルリトの歌が加わります。「勇敢な男は心臓に星を持ってる」とボア・ビダに呼びかけるプロフェソールは、泣きながら「星の海に立つ男」の絵を描きます。

■自分を信じて
いっぽう劇団では睦田が振付の練習中に怪我をして病院へ。振付が遅れたために事故を招いてしまった井坂は黙って外部のオーディションを受けていました。憤然とする木村やシニカルな保川に、「すべてうまくいく」と語りかける神山は「勝ち負けを決めるのは自分自身だ」と強く告げ、千島や黒藤もそれに加わります。トラブルにあって絆が強まっていくメンバーの歌に、寺田自身も暖かいものを感じ始めます。

■ドーラそしてペドロ
まとまりかけた劇団でしたが、過労の重なった千島が倒れてしまい、いっぽうドーラも病に冒されていました。一晩だけ置いてほしいと願うドーラと、それを聞き入れるペドロ。思いを告白するドーラとペドロのデュエットと、倉庫の外で歌う砂の戦士たちの声が響きます。

■終わりの日・始まる日
ドーラは夜明けとともに死を迎え、愕然とする砂の戦士たち。祈るピルリトのレクイエムに乗せて全員が歌い出します。冷酷な事実の前に、もう過去には戻れないこと、上屋倉庫での仲間たちとの生活に終りが来たこと、ついに一人一人、世界と向き合う日が来たことを悟り始めた少年達の歌です。

■新しい旅立ち
河原(=アルミロ)、睦田(=ボア・ビダ)、そして千島(=ドーラ)までがいなくなり、公演中止の瀬戸際に立たされた劇団。保川が神山に続行の是非を問い掛けた時、「自分はどう思うんだ?」と切り出す寺田。この芝居を作る仲間の一人として、メンバー一人一人に向かって問いかける寺田はやがて、リオへ行って画家になることを決意し「それぞれが自分自身の責任で世界と向き合う時が来た!」と仲間に告げるプロフェソールにチェンジします。ピルリトは修道士に、ガトは恋人のダルバとイレウスへ、ボルタは山賊としてランピオンのもとへ、ジョアンたちは残ってペドロを手伝い…とそれぞれの決意を歌い、ペドロは革命家として立つことを決意します。

■サーカスのブランコ乗りに
「あとはお前一人だ、センイ」
ペドロに問われたセンイは仲間たちを振り切って駆け出します。追われるばかりで誰にも認めてもらえず、愛してもらえない人生を生き、世間への憎しみを抱き続け、仲間たちのように自分の道を見つけることもついにできなかったセンイは、別の世界、別の人生をもとめて宙に身を投げます。

寺田が目覚めたとき、「砂の戦士たち」の舞台は終わり、河原、睦田、千島も帰ってきていました。団員たち「あの人、観ていてくれたかな」と話しているのが前主催でなく自分自身のことだと気づいたとき、寺田は自分が死んでしまっていたこと、千島が倒れた日に事故に遭った事を思い出します。劇団を去ることや残ることや別の道を見つけること、それぞれが自分で道を選んだ団員たち。神山が寺田=プロフェソールへ「ありがとう」と呼びかける言葉を聴きつつ、寺田は去ります。冒頭と同じく手から砂を零しながら、砂の感触を覚えているように、仲間達と一緒にいた確かな記憶を抱いて。

***** about Members ****

「砂の戦士たち」登場人物についてのメモです(私情込み)。順不同敬称略。

ペドロ・バラ(神山)/石川禅
劇団主催の神山は「砂の戦士たち」の首領ペドロと同じく、集団を統べるリーダーでありながら、仲間から信頼されず自分にも疑問を持つ難しさを抱えています。いっぽうのペドロは、みんな何かあるとペドロにおんぶにだっこ…になってしまうのも頷ける頼れるリーダーです。何つっても喧嘩の仲裁に入るところがいちいちカッコいい(^^)。基本的に超然としてる神山さんですが、「みんな聞けー」と入ってきたら女豹ポーズで「生まれたての子鹿」になっている黒藤に「…黒ちゃん…?」と覗き込む仕草が大変ツボでした(楽ネタ)。
ジョアン・グランジ(木村)/本間憲一
演出助手の木村は制作っぽいところを仕切ってて、前半では神山への内心の不信を隠して働くけど実は一番キレている劇団のNo2(かな?)。演じるジョアンは木村とは対照的にペドロを心から信じてついていく信頼できる片腕です。ツボはドーラを連れてきたことをプロフェソールに相談しようとして後ろでシガレットケースをかちゃんかちゃん落として開けようとしているとこ(^^;)と、乱闘シーンでドーラを守ってナイフを構えて「最初の奴を刺す!」と凄むところ。
ボルタ・セカ(黒藤)/駒田一
原作の解説によるとボルタ・セカは実在の人物なんだそうで。「砂」の設定とは違って11歳でランピオンのグループに入り、15歳で逮捕されるまで暴れに暴れた山賊なんだそうです。凶暴なボルタと違い、劇団の古株の黒藤は大らかな性格で、人の名前を決して覚えない、とかマイにんにくを持ち歩く、とかネタ満載の方です(プロフィールになるのか、これ(^^;))。守島や河原を呼び間違えるシーンは公演中、日に日にエスカレートしていきまして…「三笠宮」とか「武者小路」とか「アレキサンダー」とか「エリザベス」とか(^^;)。ストリートチルドレンの飢餓感と飽食の現代に生きる余裕を、対照的な個性で表現してくれてる感じですね。
ガト(井坂)/吉野圭吾(一応、書く(^^;))
某「厚さ9.7ミリのノートパソコン」の宣伝を見て「これならお腹に隠しやすそうだ」と思った貴方は井坂ファン(強引な)。映像(ドラマ)のオーディションに誘われて、座付き振付師の仕事もおろそかになり…と「いそうだなあ、こういう人…」と苦笑いしてしまうイマドキのワカモノ(やや死語)です。寺田の説教が一番こたえたのはこの人じゃないだろうか。 ガトは恋人である35歳の娼婦ダルバに尽くし尽くされているお洒落な少年。「俺はこんな生活をするために生まれたんじゃない、女を幸せにしたい、もっとでかいことやってやる」とうそぶく台詞は、純粋さと凶暴さをあわせもつ子供である彼がよく現れてるなと思いました。ほか、「袖なし」「髪ゴム外し」「正座」「女豹」そして「痛ーーてーーーー」(笑)等々ネタはここいらに山ほど蓄積されてますのでご参考に(^^;)。
ボア・ビダ(睦田)/坂元健児
「砂の戦士たち」「街の天然痘」「星のムラート」そして「さよならのサンバ」…歌う歌う歌う、なんかもう顔を見ただけであもーれ!みすてりーおー!と叫びたくなるサンバの王様。でも自分が天然痘にかかったことを知って自ら仲間の元を去る勇敢さを持つ「心臓に星を持つ男」でもあります。鉄アレイの似合う睦田は腕立て伏せ千回とか寺田にいきなり「たつおさん」と呼びかけるとことか何気にツボの多い方(^^)。でも一番のお気に入りは救急車が来て運ばれていく場面での「僕の靴下、僕の靴下」だったり(笑)。
アルミロ(河原)/幸村吉也
天然痘で死んでしまうアルミロを演じるは洗濯係にして劇団のツッコミ役を一手に引き受ける河原くん。黒藤さんの日替り名前間違いへのリアクションは最高です(笑)。 研究生同士話しながらの「おまえらみんな役者をやめてしまえぇぇ!」は癖になりそうなくらい好きです…途中で実家に帰ってしまいますが、あの日数、フェリーで高知往復したとすると実家にはあんまりいられなかったんじゃあ…とかいらんことを考えてしまった(^^;)。ときどき「かわちゃん」と呼ばれてます。
バランダン(関口)/縄田晋
料理担当のせきぐっちゃん。抱え込んでいるカレーなべ、似合うけど熱くないんだろうか…と人に言ったらば「あれは洗い物だろう」と言われました。そうなのか。センイが金持ちの家に潜入してることに8日間気がつかなかった大らかなバランダン、背はおっきいですがエンリケやアルミロとどっこいの年なんじゃないかと。かわいい(^^;)。
ピルリト(守島)/川本昭彦
会計係の守島は親子三代、日本共産党の人。信心深いピルリトといちおう同様に「堅物」なわけですがなんか「融通利かない大人」と「何かを信じぬく子供」は同じでかつ違うもんだなとこの人の演じ分け見てて感じます。アルミロが天然痘にかかった時「これは神様が僕たちに下した罰だ!」と叫びだすシーンや、ポルトガル語やラテン語歌詞での歌もたくさん心に残ってます。
グリンゴ(広瀬)/福永吉洋
いつもお腹を好かしているグリンゴ=小道具係の広瀬くんは、パンが好き、カレーは飲み物、歯は磨かない派、と…めっさ食べ物系ネタ多い方です(笑)。高知は九州じゃないよ(^^;)。いっぽういつもお腹を空かしたグリンゴはそれでも楽天的で、子供っぽいことを言う度にセンイにいじめられてます。アルミロを追い出そうとする仲間に「おいてあげようよ!」と叫ぶ姿は切ないです。
エンリケ(竹林)/阿部よしつぐ
裁縫の才能を生かして劇団に尽くす竹林くん、「砂」を2回くらい観るとこの方のことを「タケ」と呼ばずにいられなくなります…。ツボは睦田が怪我したところ、寝っ転がった寺田の上をぴょーんと偉い勢いで飛び越えるところでして(^^;)。砂では最年少のエンリケのほか、一幕ラストでは「竹林」としてなんとドーラの代役も。
ドーラ(千島)/伊織直加
物語の中盤から芝居に参加する千島は、人付き合いがヘタだけど実は努力家、「仲間」を素直に求める紅一点です。演じるのは天然痘患者の娘にして「砂の戦士たち」に新しい風を吹かせ、そして去って行ってしまうドーラ。みんながドーラに「母親」を見ますが彼女自身は普通の女の子な感じがします。原作ではプロフェソールだけが最初からドーラに恋するのですが、できたらそこのところも見たかったなあ。せっけんのシーン大好きだ(T_T)。
センイ・ペルナス(保川)/平沢智
飄々としたリアリストの保川は嫌味を言いつつも自分の才能と向き合うことに悩んでます。演じるセンイ・ペルナスはかつて虐待を受けて足に障害を持つ(が、ガトとの乱闘シーンはすごいぞ(*^^*))と共に、心も捻じ曲げられた、だけど根は繊細な少年です。 原作では警官に追われ、追われて町の大エレベーターによじ登り、誰にも捕まらない、と「サーカスのブランコ乗りのように」空中から身を投げるセンイ・ペルナス。劇中劇では仲間たちがみんな自分の道を見つける中、一人どこへも行けないまま新しい人生へと飛び立つ(サーカスのブランコ乗りに「なる」)センイ…この人の最期は原作と同じようでかなり違うと思うのですが、どっちも切なすぎ(T_T)。
プロフェソール(寺田)/横田栄司
「砂の戦士たち」のメンバーの中でただ一人読み書きができ、絵の才能を持つプロフェソール。客演として芝居に参加し、劇団を外から見つめる寺田。この2人はほかのメンバーと比べてキャラクター的にも重なっている感じがします。クライマックスのきっかけ、全員に語りかける寺田=プロフェソールの台詞、この作品で一番好きです。私も最初の頃「こんな魅力的な物語を二重構造にしてしまう必要があるのかな?」と思っていたのですが、あの「それぞれがそれぞれの責任で世界と向き合う時が来たんだ!」で「ああもうオッケー、二重構造万歳!」となったんだった(^^;)。

■付記■2004.1

劇団の物語の登場人物の名前は黒澤明監督の映画「椿三十郎」の登場人物から来ているようです。井坂、寺田、保川、黒藤などなどほとんどの名前の侍が登場しますし、「千島」とは微妙に違いますが「千鳥」という女性キャラも出てます。一人だけ見当たらないのが「神山」なんですが…名前の由来をご存知orお気づきの方、いらっしゃいましたらぜひ教えてくださいm(__)m。


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