ウォーターバー
フォトエッセイ

No.003 スキャナーで翻訳
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女房は某女子大学に通っている。
一時期膨大な英訳の宿題が出され、英語が苦手な彼女はすぐに徹夜の毎日となった。
女房の辞書を引く回数から、そばにいると英訳に付き合わされると察した私は、その対策として「スキャナーによる翻訳」環境の構築に思い当たった。
「スキャナーでの翻訳は実用レベルでない」と聞いていたが、背に腹は変えられない。早速エプソンのGTー7700と「翻訳ピカイチ」という間の抜けた名前の翻訳ソフトを購入した。
「スキャナーなんて誰が買うのだろう?」と疑問であったが、売り場には黒山の人だかり。
みんなそんなに英訳で苦労しているのか?と訝りながらも製品を見る。
ちょうど中年の男性が何やら店員に質問をしているところであった。
「このスキャナーで翻訳をしたいんだけど…」
やっぱり。
が、冷静に考えるとこの男性は学生ではない。
どうも大学の教授のようである。
翻訳システムを手に入れるには、まず自分の専門分野(医学?)の辞書から選定に入らねばならないことを悟り売り場を去っていった。
こちらは専門分野も何も一瞬で衝動買い。
何しろ背に腹は変えられない。やむなし。
さて、買ってきたスキャナーと翻訳ソフトである。
とりあえず使ってみる。
どうしても認識してしまうゴミの斑点を除去するという地味な作業はあるものの、何とか読み取りが完了しワンボタンで英訳。
しかし、訳出された文章は英文よりも難解な日本語であった。
ひどい。
これならば中国語を訳す方が簡単に思えてくる。
訳を読んでいるうちに、自分が何語を訳しているのかわからなくなってくる。
自分の母国語が何かもわからなくなってくる。
やはり英語は自分の頭で訳さねばならないかなあ。

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