美しく着飾った貴婦人たち。 隣で窮屈そうに小さな椅子に腰をかけているでっぷりと太った男性。 対照的にキリギリスのように痩せこけた年老いた老人。 様々な人々の見守る中、黒服の男達が運ぶ白い布に包まれた物体。 好奇心の凝縮された無数の瞳が1点に集中した後、流れるアナウンス。 「続いてご紹介する品は、フランスのルイ14世が愛用しました…」 ギリシャ彫刻のような顔立ちをした若い男が布を取り去ると、照明の光をたっぷりと照り返し薄暗い会場をなぎ払う輝く物体が現れた。 こいつは世界遺産クラスのお宝に違いない。 おそらく日本円にして10億は下らないだろう。 オペラグラスを持った老婦人が圧倒され腰を抜かし椅子から転げ落ちる。 入札額を告げる合図が次々に慌しく交わされる。 人々は目の前の物体に対する欲望と財力を天秤に図りつつ、冷静に入札額を上げてゆく。 金額が人々の財布の大きさを超え始めると、入札を告げる人数が一人二人と着実に絞られてゆく。 そしてついに、終焉を告げるハンマーの音が場内に鳴り響いた。「600万ポンド!600万ポンドが出ました!他はありませんか!」 歓声が上がる。息を呑む瞬間。 「650!」 老紳士が静かに手を挙げる。 「670!」 「690!」 瞬く間に値段がつりあがってゆく(まるで戦後のあずき相場のようだ)。 そして…。 「700!ついに700万ポンドがでました!700万ポンドでダンさせていただきます」 日本円にして約13億。 ひとりの人間の一声によって、大金が動く瞬間…。 このようなゴージャスさは、残念ながら「Yahooオークション」では味わうことが出来ない。 しかしながら、商品毎に定められている終了時間に向かうにつれて金額が上がってゆく様は、オークションの雰囲気を見事に再現している。 残り時間に目をやりながら、その商品価値と自分の財力を考慮。 オークションに参加している他の人々との駆け引きを楽しんで入札する。 値段が上がる。 また入札額を上げる。 また値段が上がる。 又入札額を上げる。 そうして入札終了時に最も高値をつけた人間に商品が渡るのである。 参加方法は至って簡単。YahooのIDを取得する手続きを経て、取得したIDでオークションに参加するだけである。 翌月より毎月280円必要となるが、そのくらいの費用は身の回りの不要品を逆に出品して賄おう。 以外に不要なものが意外な高値で売れる。 お金を払ったのに商品が届かないなどのトラブルを避けるために「エスクローサービス」(第三者による支払仲介)もある。 Yahooもようやく「ヤッホー」と呼ばれずに「ヤフー」と呼ばれ認知度も上がってきた。 オークションで買う買わないは別にして、商品を眺めているだけでも楽しめること間違いなし。 くれぐれも無駄遣いにだけは気つけよう。 |