早春、とでも言うのだろうか。 つい先日まで手放せないでいたコートが、急に暑苦しくなった。 今年は桜の咲くのも早い。 通勤途上で通り抜ける日比谷公園の桜も、まだ春分にもかかわらず、 はや満開となりそうな様相を見せている。 ![]() 「そろそろ梅でも見に行くか」と季節はずれなことを平気で口にし 失笑を買っている私は、それでも季節の変わり目には人並みにきちんと風邪をひく。 不覚にも数日寝込んでしまった。 毎年かわらず花が咲き 毎年かわらず風邪をひく 咲く花は同じに見えてその実去年の花とは違う、と古人は言った。 日々花を愛でる余裕ももたない私には、その風情をいまだ肌で感じるまでには至らない。 しかしだからこそ、せめてこの時期くらいは花見をしようと考える。 桜花の散りはじめるこの時期、人ごみは外して花見をする。 人に酔わずに花に酔い、酒に酔い、春風が吹く宵。 ここにも、人生の疲れを癒す刻がある。 |