ウォーターバー
フォトエッセイ

No.018 バリ島にて(その2)
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ぎらつくような太陽を想像していた翌朝は曇りだった。
おまけに乾季であるはずのこの島で、小雨に出会う。
少々期待外れな雰囲気の中で、「バロンダンス」の鑑賞に向かった。

今回の旅行で鑑賞したものは他に「古典舞踊」「ケチャダンス」の合計3つである。
ケチャダンスについてはいまさら説明は不要であろう。
あの「ケチャケチャ」叫びながら男たちが踊り狂うやつである。
よく見ると、コント赤信号の島崎が混じっている気がするやつである。
”ケチャ”というのは猿の鳴き声を模しているという。
ここバリ島では猿が多いようで、ウブド地方にはモンキーフォレストなる「猿の森」があり、300匹以上の猿が生息している(思いっきり観光地となっているが)。

「バロンダンス」とはてっきり社交ダンスの一種「男爵(バロン)ダンス」かと思ったらそうではなく、バロンは神様のことだという。
見た目は日本でいうところの「獅子舞」。
中国にも「中国獅子舞」なるものが存在しているが、並べて比較してみると日本のが一番貧乏くさい(幼少期に見た獅子舞は唐草模様の風呂敷を身に付けており、新手のコソ泥かと思ったものである)。
このダンスには、神様であるバロンと、猿、モンスターと美女が出てきて、ダンスというよりはミュージカルか何かを見ているような感じである。
動きがコミカルで素人目にも視覚的に楽しめるものであった。

3つめの「古典舞踊」であるが、これが一番期待していなかった(古典と聞いてやはり古めかしいものを想像した)わりには、一番これが楽しめた。
役者一人一人に動きがあり意味があり、全体が幾幕かに分かれていて見やすかったせいもあろう。
素早い鳥の動きや緩慢な老人の動き、美女たちの舞、男性的な動きを取り入れたものといった様々な舞踊が私たちを飽きさせなかった。
ただし一番仰天したのは、ステージを終えた美女の一人がかつらと化粧はそのままで、シャツとズボン姿で男性の乗るバイクの後ろに跨って、私たちの車を追い抜いていった瞬間である。
(そういえばケチャを終えた数十人の男たちが、トラックの荷台に詰め込まれて運ばれてゆく姿も、臓器売買のために人間が売られてゆくシーンと重なって、まぶたに焼きついて忘れられない(っておいおい^-^;))

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