ウォーターバー
フォトエッセイ

No.021 3分間「PC解体新書」
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PCの調子がおかしくなったので大手術を行った。
別に私のPCがかの悪名高い「オウムPC」だったからといって、尊士を称える歌を歌ったりサリンガスを撒くようになったわけではない。
単にインターネットの接続ができなくなったのである。
当初はLANカードのみの不具合だと思われたが、ここのところOS自身の調子もよくないことから、「いっそのことヤルか」「よしヤロウ」といふ次第である(陰陽師風)。

最近のPC関連の雑誌には、「自作のツボ」「パーツ特集」といった、ユーザー自らがPCを「組み上げる」ことを前提にした記事が目に付くようになった。
こうした動きは既に2,3年前からあったが、一般誌にもこのような記事が載ることから判断しても、「自作」「改造」がヘビーユーザーのみならず一般ユーザーにも広く浸透し始めたと考えてよいであろう。
しかしながら果たして、「パーツの交換」といった以前であればメーカー保証対象外となるような逸脱した行為が、一般の人間に許されるのだろうか?

今回挑戦したのは、いきなり高度な「マザーボード換装」という作業である。

(これまで使用したマザーP6SBA)

これは、PCを構成するパーツというよりは、PCの中身をそっくりそのまま別モノにしてしまうという必殺技である(もちろんPCに死なれては困るが)。
CPUのみを載せかえる場合と違い、マザーボードは各パーツを統括する部品(すなわちPCそのもの)であるため、これを換装する場合は同時に他の部品の交換も必要となる。
ちなみに今回の変更にあたっては、「CPU」「メモリ」「電源」の3つのパーツ交換が必須となった。

私が従来使用していたマザーボードは440BXというチップセットのもので、これは2,3世代くらい前のものである。
よりわかりやすくいえば、最大搭載可能能力としてPentium3/700MHz、メモリ768MB(転送速度PC133)、HDDの転送性能ATA/33といったクラスのものである。

(愛用していたPen3)

これを今回は845Eというチップセットに変更する。つまり最大でPentium4/2.80MHz、メモリ2GB(転送速度PC266)、HDDの転送速度ATA/133と数値上約3〜4倍の性能のものに交換するのである。

845EというチップセットはPentium4を載せるためのマザーボードである。
このPentium4が曲者で、Pentium3よりも電力を食うため、通常専用の対応電源が必要となる(電源の交換が不要であるボードも一部あり。電源のソケットを交換することでも対応可能なケースもある)。
また、メモリの種類がSD-RAMからDDR-266へと変更になるため、交換が必要となる(これもSD-RAMが使用できるボードがある)。

(交換後のPC内部)

変更するとどうなるのか?
結論から言えば、今まで1キロくらいの鉄アレイをもって作業を行っていた感じから、羽毛を乗せて作業を行っている感じに変わる。
逆をいえば体感速度でそれだけの差である。
これまでもPentium3/450MHzを500MHzにクロックアップし、メモリを384MHz積んでディスク転送速度をパーツの追加によってATA/100にし、OSにチューンアップをかけていたため、よほど重たい作業をしなければほとんど遜色はないと考えている。
しかし、「何世代も前のPCを使用している」という方にとっては、場合により役に立つことと思う。

【材料】
・マザーボード 1枚 15,000円〜
・CPU(P4) 1個 18,000円〜
・メモリ 1枚〜3枚 2,500円〜
・電源 1個 5,000円〜
・HDD 1個 8,000円〜

【今回の変更で変わる点】
・CPU Pentium3/450MHz → Pentium4/1.6GHz(4倍)
・メモリ SD-RAM133/384MB → DDR-266/512MB(2倍×1.3倍)
・メモリ最大搭載量 784MB → 2GB(2.6倍)
・電源 250W → Pentium4対応300W(1.2倍)
・HDD転送速度 33MHz/s(100MHz/s) → 133MHz/s(理論上4倍、実質1.3倍)
・HDD容量 48GB → 120GB(2.5倍)
・PCIスロットの空き 0 → 4

マザーボード換装の詳細は市販の書籍・雑誌に譲る。
ここではその感想のみを述べると、換装自体はそれほど大変なものではなかった。
雑誌に載っているパーツと同じ物を購入し、手順どおり組み立てただけなので当然なのであるが。
今回苦労したのは各種のコネクターを差す「向き」に気を使ったくらいである。
(しかしながらこれだけで、完全に起動しなかったり、電源のスイッチが入らなかったり、FDが認識できなかったりした)
プラモデルを作るような感覚で組み立ては完了した。

ただ思うに、動画編集などの重い処理をしない限りは、Pentium3/1GHzクラスからPentium4に載せかえる必要性はあまりないようである。
ベンチマーク上は以前の性能を2〜3倍上回っており、3Dゲームなどは比較的以前より軽快に動くようになったとは思われる。
結局のところ今回の最大の収穫は、LANや音源をオンボードにしたことによってPCIスロットの空きが確保できたことであろうか。
一応、大手術は成功したわけである(>お〜い!話の発端となった肝心のLANなおってへんでー!)。
この空きスロットを利用して次回はこのPCをテレビパソコンに改造しようと思う(おーい、LANは?)。

余談であるが、このマザーボード(以下M/B)構成には実は隠された戦略がある。
実はこのPentium4 1.6AGHzというCPUは現在最も「オーバークロック」されているCPUである。
(Pentium4。上のPen3と比べてほしい)
Pentium4のクロックはFSB×規定倍率(CPU固定)により決定されているため、FSBさえ上昇させることができればその分だけクロックアップ(=CPU性能のアップ)が可能である(1.6GHz=FSB100MHz×16倍)。
これを「オーバークロック」というのである。
固体ごとの特性にもよるのだが、恵まれた固体にあたれば、3GHzを越すこともあるようだ。
もっともこれは「MAX」でという話であり、過剰なクロックアップによる誤作動も発生するようなので、常用するとなれば2.0〜2.4GHzくらいが限界であろう。

一方、マザーボードについてもFSBが1MHz単位で変更が可能となっている。
加えて、マザーボードのツールとしてBIOSの設定をいじらなくてもFSBを調整することができる「EASY TUNE」なるものが付いている(これはもうクロックアップしてくれといわんばかりの環境!)。
ただし、オーバークロックはCPUについてもM/Bについてもメーカー保証対象外の行為であるので注意したい。
これらのポイントから、将来さらにスペックアップした時に性能向上の余地が十分にあるわけである。
(まあ、もっともその時には規格自体が変更となっていることが多いんだけどね)

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