「ミチノネ」: 後藤幸浩×小濱明人

“ストリートミュージックの原点がここにあった”
“大道音楽”の原点=琵琶と尺八。そのデュオによるまさに現在を呼吸する音楽。

 後藤幸浩(薩摩琵琶)さんとのデュオがついにCDになりました!琵琶と尺八は大道(ストリート)にルーツを持ちながら、これまであまり共演されることがありませんでした。5年以上に渡る後藤さんとのデュオ活動を通して、私は琵琶法師と虚無僧の思想・背景に共通するもの、またそのアウトローで放浪的な格好良さを改めて感じる事が出来きました。
 後藤さんの琵琶は戦国〜江戸時代以来の伝統を持つ、四弦・四柱(柱=ギターのフレットにあたる)の薩摩琵琶。このシンプルな楽器から多彩な音を導き出し、語り・歌では古語・方言・現代語までを幅広く聞かせます。また、私は『地無し管』を含めた5種類の尺八、そして鹿児島に伝わる幻の笛『天吹』を使用し、「音色」に焦点を当ながら古典・自作曲・即興演奏と幅広く演奏しました。今だから出来る琵琶×尺八の音楽をこのCDに収める事が出来たのではないかと思っています。





1.「開ーKAIー」作曲:後藤幸浩・小濱明人
 新たな扉を開く。薩摩琵琶・尺八の激しさとスピードが、先の見えない今を駆け抜ける。アルバムの一曲目として、そしてCD全体を貫く代表曲として仕上がりました。(小濱)
琵琶はダビングを行い、計二面(琵琶は一面、二面と数えます)の掛け合いという感じになってます。琵琶二面のアンサンブルは珍しくありませんが、ここでは綺麗なアンサンブルというより道、あるいは自然のノイズ的なイメージの音になっています。(後藤)
 
2.「恋して眠れ」作詞・曲:後藤幸浩
 私の4作目のソロ・アルバム「恋して眠れ」に収録した際は、おとなしい3拍子でしたが、デュオで演奏するうちにリズムも変わり、歌・楽器のインプロヴィゼイション両方を生かす展開になりました。(後藤)
 
3.「門琵琶〜仏は常に」
門琵琶 編曲:後藤幸浩・小濱明人 仏は常に 詞:梁塵秘抄より 作曲:後藤幸浩
 門琵琶は、江戸時代以来の四弦・四柱(=フレット)薩摩琵琶に伝わる伝承曲。演奏者の系統により若干、音使いが違ったりするのも面白いところです。盲僧(座頭)琵琶の人々が檀家周りの際に弾いた曲が原点、とも言われている、琵琶の仏教的側面が良く現れた曲です。
 今回は中世の庶民的な歌謡を集めた“梁塵秘抄”の中の、仏教歌を続けました。門琵琶に尺八が入ることはほとんどありませんし、後半の歌の節も“越天楽”風になりましたが、結果的に地唄のようにも聞こえる“不思議な純邦楽”になったと思います。(後藤)
 
4.「祈りの舟」詞:梁塵秘抄より 作曲:後藤幸浩
『仏は常に』と同じく“梁塵秘抄”より。“梁塵秘抄”には桃山晴衣さんを始め、いろいろな方が取り組んでいらっしゃいます。確かにそれだけの魅力に溢れた歌詞が満載、という感じです。
全く根拠のない節付けになってしまいましたが、舟に揺られている感じは良く出たかなと…。尺八も琵琶も、日本の楽器というより、東南アジア的な雰囲気でしょうか。(後藤)
 
5.「テンノネ」作曲:小濱明人
 薩摩に伝わる幻の笛「天吹」。四百数十年前、島津日新公が薩摩士風を高揚するため薩摩琵琶と「天吹」を奨励したと言われています。その素朴で神秘的な音色に導かれ、この曲は生まれました。(小濱)
 南九州の、どこかの海岸の近くの小さな神社の祠で、一日中ぼーっとして、波の音といっしょに聞きたい演奏…です。(後藤)
 
6.「波の下にも」ー平家物語よりー 編曲:後藤幸浩・小濱明人
“平家物語”からの抜粋です。祇園精舎、壇ノ浦の合戦描写、二位尼と当時八歳だった安徳天皇の入水、三場面から成っています。合戦描写の場面のみ、大正時代の琵琶歌本「琵琶秘曲集」の『壇ノ浦』(作者不詳)から引用しました。
 尺八との組み合わせにより、琵琶弾き語りだけの時以上に、物語の情景、心情は伝わり易くなったと思います。今回は抜粋の録音ですが、ライヴでは様々な題材の長尺演奏も行ってます。ここから3曲は2008年1月のNY、LA公演でも演奏し好評だったものです。(後藤)
 
7.「手向」(古典本曲)編曲:後藤幸浩・小濱明人
 禅宗の一派である普化宗の僧侶、「虚無僧」が修行のために吹いていた尺八の独奏曲を『古典本曲』と言います。手向とは、神仏や死者の前に物を供える事を指しますが、この曲はその名の通り亡き人を偲ぶ曲として吹奏されて来ました。数ある古典本曲の中でもとりわけ深い哀しみをたたえた曲です。今回は琵琶が加わることにより、この曲の新たな側面が浮き彫りになったと思います。(小濱)
 
8.「五木の子守歌」編曲:後藤幸浩・小濱明人
 子守の気苦労、山の民、あるいは勧進聖など放浪芸人の心情が歌い込まれている、“道=ストリート”で生きてきた人々のテーマ?ソングのような歌。歌詞は熊本弁で歌われ、土着性も強烈でこのアルバムのラストにふさわしい曲でしょう。「波の下にも」と同様の、語り・歌、琵琶、尺八の有機的なからみはこのデュオの真骨頂だと思っています。(後藤)
 

 
[CD Review]

 本誌にも鋭い原稿を寄せる薩摩琵琶奏者、後藤幸浩が昨年、アメリカでも一緒にやった尺八の小濱明人と作ったデュオ作。 “ストリート・ミュージックの原点”とでも言うべき“門付け”の精神を現代の中に溶け込まそうと、様々な場所で ライヴを行ってきた現時点での成果をまとめようということだろう。
 何かを開きたいとのメッセージがこもった「開〜KAI」に始まり、『梁塵秘抄』や『平家物語』か らのもの、後藤のオリジナル「恋して眠れ」や最後に置かれた圧巻の「五木の子守歌」など多彩な曲が選ばれ、 二人が5年間やってきた豊かな世界が広がる。薩摩に伝わる幻の笛“天吹”を使った「テンノネ」も面白い響きで 興味深いが、圧巻は『平家物語』からの「波の下にも」で、壇ノ浦の合戦場面なのだが緊迫感を持った琵琶と 語りで展開する物語に尺八が鋭く切れ込んでくる展開など、思わず膝を乗り出して引き込まれていく。 いつか屋外でこのデュオを体験したい、そんな気分にさせてくれるアルバムだ。 (「レコード・コレクターズ」より)


[Concert Review]

 「後藤幸浩×小濱明人」Live at ムリウイ (2009年1月31日)

 昨年12月に発売されたCD『ミチノネ』は傑作だった。だから僕は彼らを生で聴きたくてたまらなくなってしまった。 後藤幸浩と小濱明人。かたや薩摩琵琶の弾き語りで知られる(音楽評論家でもある)ベテラン、片や“歩き遍路 四国八十八カ所 奉納演奏Tour”に挑んだ尺八の気鋭だ。演目は「五木の子守歌」、「平家物語」に題材を得た「波の下にも」、鹿児島 だけに伝わるという小型尺八“天吹(てんぷく)”を用いた「テンノネ」などなど。 バリバリの邦楽といっていいだろう。が、そこは、さまざまな音楽に造詣の深い両者だけあって、 とにかくサウンドの風通しがいい。オープニングを飾った「開-KAI-」は、まるでハード・ロックとモード・ジャズの 融合といった趣だ。 (「Music Pen Club,Japan」原田和典氏のConcert Reviewより )



2008年12月17日(水)発売開始
Waternet Sound WQCA-1022 定価:2800円
発売元:Waternet Sound Group
販売元:バウンディ株式会社

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