星の瞬き(ゆらぎについて)
 


 人はなぜ星空を美しいと感じるのでしょうか?

 最近の研究では、星の瞬きのゆらぎと人のα波(安らかな気分の時に出る脳波)のゆらぎに共通性があることがわかってきたそうです。そして、このゆらぎを”1/fゆらぎ”と呼んでいます。

 ここでは、この”1/fゆらぎ”について少し詳しく解説してみようと思います。少し数学的な話になりますが、なるべく簡単に説明しますので数学が苦手な人も読んでみてください。

 なお、このページは、”ゆらぎの不思議な物語”(佐治晴夫 著,PHP研究所 発行)を参考にさせていただきました。

 *タイトルの横で瞬いている星は、1/fゆらぎで明るさを変化させたアニメーションになっています。 


 

 はじめに、”1/fゆらぎ”と言う言葉の意味から説明します。

まず、”1/fゆらぎ”のfとは何でしょうか?

これは、英語のfrequency(周波数)の頭文字をとったものです。ところで、”周波数って、なに?”という人もいると思いますので、簡単に説明します。

 私たちが自然現象を観測するとき、その現象を何かの値(数字)に置き換えなければなりません。例えば、音の大きさを測るときは、マイクで音(空気の振動)をうけて、この大きさを電気信号(電圧)に変換し、測定します。星の瞬きについても、その明るさの変化を光度という値で表現することができます。 

 ここで、星の瞬き(明るさの変化)を、グラフ(横軸:時間、縦軸:明るさ)に書いてみます。(図1)

図1 星の明るさの変化(パソコンによるシミュレーション)

 星の明るさの変化を横軸を時間にして、グラフにしてみると図1のような複雑な波形になります。ゆらぎを調べるには、このように時間によって変化する星の明るさをグラフにして、波として表現します。

 


 

 ところで、波(波形)には、このように複雑なものばかりでなくもっと単純な形のものもあります。たとえば、次のような波形を考えてみてください。

図2 単純な形の波形

この波は、規則正しく1から−1の間を振れています。このように単一の周期で振動する波を正弦波と呼びます。そして、この1から−1までの振れ幅を振幅と呼び、波のエネルギーの大きさを表します。

 また、この波は1秒間(1sec)の間に2回振動しています。この1秒間に何回振動するかを振動数又は周波数と呼びHzという単位で表します。この波の周波数は2Hzということになります。このように周期的に振動する波の形は、振幅と周波数で表すことができます。

 


 

 つぎに、1/fゆらぎを説明する上で重要な数学的手法について簡単に説明します。それは、フーリエ変換という方法です。

図3 フーリエ変換の理論

 まずはじめに、図3の一番上の波(合成波)をみてください。図2で説明した正弦波と比べると複雑な形をしていて、これまで説明してきた周波数(又は、振動数)と振幅という値では表現できそうもありません。

 しかし、その下の3つの波(正弦波A・B・C)を見てください。これは、図2で説明した正弦波であり、周波数と振幅で波の形を表すことができます。そして、なんと一番上の波は、この3つの正弦波の合成でできているのです。

 すなわち、複雑な合成波もこのような周波数(振動数)の異なる正弦波に分離すれば、それぞれの正弦波の周波数と振幅という値で表現することができるわけです。そして、複雑な波を周波数の異なる単純な波(正弦波)に分離する数学的手法フーリエ変換と呼びます。

 波というものは、どんなに複雑なものでも、このように単純な波(正弦波)の合成で表すことができます。言い換えれば、規則正しい波のグラフは、リズムをあらわしているともいえます。そして、音楽がそうであるように、宇宙全体もまた幾重にも折り重なったリズムから出来上がっているんだと言うことが解ります。

 そこで、フーリエ変換という手法をつかって、どんな周波数の正弦波がどのくらいの大きさで含まれているのかを調べれば、複雑な波でもその性質を調べることが可能になります。そして、このようにどんな周波数の正弦波がどれくらい含まれているかを調べることをスペクトル分析といいます。

 太陽の光を、三角形の形をしたガラス(プリズム)に通してみると、赤から紫までの美しい虹色の光が見えます。こうすることで、無色透明にみえる太陽の光は、このような違った色の光の組み合わせでできているという事が分かります。これも、一種のスペクトル分析といえます。 

 


 

 それでは、いよいよ本題の1/fゆらぎに入りましょう。

はじめに書いたように、1/fゆらぎのfは、frequency(周波数)のことです。そして、1/fでゆらぐと言うことは、ゆらぎをスペクトル分析すると、その周波数と振幅の関係が1/fの関係にあることを示しています。すなわち、1/fゆらぎとは、高い周波数の波ほど振幅が小さく、低い周波数ほど振幅が大きくなっている正弦波の合成波であるといえます。 

 この関係を、グラフに書くと図4(a)(b)のようになります。

図4(a) 1/fゆらぎの周波数特性(スペクトル分析結果)

 

図4(b) (a)の関係にある正弦波の例

 

 このような周波数特性を持つ波を図5に示します。これが、1/fゆらぎの波形の一例です。

 

図5 1/fゆらぎの波形

 

 次に1/fゆらぎのおもしろい特徴についてお話ししましょう。図6は、図5の矢印の部分を拡大したものです。

 

図6 1/fゆらぎの波形(拡大)

 

 このふたつの波形を比べてみると、とても似かよっていることが分かります。このように、一部分に全体の形が畳み込まれているような性質は、”フラクタル(fractal)”と呼ばれています。

 これは、1/fゆらぎの重要な特徴の一つです。

 そして、このフラクタルという特徴は、自然界に非常に多く見られます。例えば一本の樹木や草木を注意深く見ると、幹から枝への分かれ方や、枝から葉への分かれ方など同じようなパターンのくりかえしが見られます。また、山の形や雲の形などもフラクタル性を持っています。

 そしてまた、1/fゆらぎも自然界に多く見られます。はじめにも書いたように、星の瞬きやα波の波形、そして波の音や風の強さなども1/fゆらぎであると言われています。とくに、人の耳に心地よく聞こえる潮騒の音やそよ風などは、1/fゆらぎの傾向が強く見られるといいます。

 音楽でもクラッシック音楽や心の鎮静効果を伴う宗教音楽などに1/fゆらぎが多く見られるそうです。

 このように、1/fゆらぎという性質は、”美”や心地よさという人の感情と深く関わっているようです。

 (C) Toshiya Ohtake 1997 

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