(産地の声)vol.727                     2006.3.27
 今日から、私たちの地は大栄町から成田市となります。3月27日が合併の日
という事でしたから多分今日から成田市となるのでしょう。
 平成の大合併などと騒いで全国的に合併が進みましたが、我が町は成田市に吸
収合併となりました。吸収合併というと聞こえが悪いのか編入合併などという言葉
を考え出していますが、実体は成田市の条例規則に右にならえですから大栄町
で積み上げてきた価値観はそのほとんどが消されることになります。
 内山節さんという哲学者が、ローカルな思想という言い方をしていました。人は
皆ローカルに生きている。人は、それぞれの地で生きています。それぞれの地
は、気候も違えば地形も違う。自然のありようも違うし、生態系も違ってくる。そ
こに住む知恵や工夫が文化となってローカルな思想になる。私たちの実感的に
言えば、都市と農村の違いもある。農村の中でも畑地帯と水田地帯の違いもあ
る。また山村地帯か海辺かと言った違いもある。
 そんな違いが生活の仕方、生き方の文化となる。例えば、私たちの町に訪問
する人がいた。訪ねる家を聞かれて「隣です」と教えたら、教えられた人はすぐ
隣を見て、「何もないですが、」となる。これを聞いた人は都市暮らしで、隣と言
えばすぐ隣を想像し、隣を見ても畑しか見えない。ここに暮らす人は農村地帯
で畑の中に家があることを十分知り尽くしているから、隣と言っても畑の向こう
に家があることを想像し理解する。
 大地自然に暮らす人は、土がついたりしても気にしないが、都市に住む人は
ちょっと土が付いても汚れたと言って大騒ぎする。自然に暮らす人は自然の豊
かさに感謝し、私たちの命を育む土の豊かさを想い願うが、都市に長く住むとそ
きましたが、この国とは正反対の動きです。都市が農と自然に近づこうとしてい
ます。彼らの一人が言う。「人間は自然から離れると人間らしくなくなる」クライ
ンガルデンも希望者が自転車で通える場所を確保する野が目標という。市営
や民間でもできるよう奨励している。これが130万人都市の目標です。
 話しが、よじれてしまったしまいました。
 市町村が合併しても普通の人は、何も変わりません。郵政が民営化されまし
たが、何も変わっていません。誰のための民営化、市町村合併なのでしょうか。
それとも私たちが無頓着なのでしょうか?。     おかげさま農場・高柳

(産地の声)vol.717                     2006.1.16
 14日15日と続けて降った雨が大地を潤し、畑にある麦や玉葱が心なしか生
き返ったような気がします。乾燥しきった畑にはいい雨でした。(北国の豪雪に
遭っている人たちには申し訳ないのですが)

 毎年のことですが、このマイナス10度にもなる厳冬を生き抜く麦の生命力が
すごいと思います。北海道の麦作も秋に蒔いて、積み重なる雪の下で根を張って
生き延び、春を迎え茎立ちをし立派な穂をつけます。
 それでも根張りが悪かったり、十分な生育量がなく冬を迎えると息絶えてしま
うものもあります。大きければいいかというとそうでもない。秋に生育が良すぎ
るとこれも正常な生育をしない。麦に限ったことでなく、きゃべつなども生育が
過ぎると中から痛み始め、終いには腐ってしまいます。適当な生育と言うのが肝
心です。それは、蒔き時や、撒き方を経験によって知るしかないのですが。それ
も地方によって違います。
 冬の代表的野菜であるほうれん草。そのほうれん草も店頭に並べば、皆同じよ
うに見えます。が、すっと茎が伸びスマートな見栄えの良いほうれん草とガッチリ
したちょっと見栄えのしないほうれん草がある。片方は、ハウスで予定通り生育
させたいわば人間の都合で生育させたホウレン草で、後者は自然の生育にゆだ
ねたホウレン草の違いとなる。私達は迷わず後者のホウレン草を選ぶ。
 麦とホウレン草が一緒の話になってしまいましたが、麦もホウレン草も冬の作
物です。麦は夏の収穫物ですからいいとしても、野菜類は冬に食べるものです。
豪雪と乾燥と厳冬のせいで生育がままならず高騰していると言います。テレビで
は、5割高くなったとか6割高とか騒いでいますが、作る側に立った報道はあり
ません。
 近所の自動車屋さんが「野菜が高くていいだろうや」、農家「高くても半分しか
穫れないとしたらおなじだよ!」「ああ、そうか。そうだよね」「穫れないから高く
なっているんじゃない」「食べるだけの人は、高い安いの問題かもしれないけど、
作る方は生活の問題だよ!」そんな会話がありました。
 そんなことは報道にもならない。命あっての物種なのに、命を育てることを忘
れ値段や経済に奔走し、うまくやった人間だけに注目にしているマスコミ。
 そんな人間社会の動きなど知らんぷりするように、麦や玉葱はひたすら根を張
り、たくましく生きているように見えます。
                      おかげさま農場・高柳

産地の声・・・これは、週一度おかげさま農場からの発信です。
これまで休止状態でしたが、10月から再会しました。

(産地の声)vol.711                     2005.12.5
 一昨日は、隣の家のお葬式でした。享年95歳のおばあさんでした。で組内と言うこと
でお葬式のお手伝いをしました。一軒で二人出るのが決まりで、男衆は、会場準備やら
受付やらの外回りの仕事、女衆は親類縁者の食事まかないの準備です。お葬式となる
と、決まりものの煮付けが出ます。ゴボウのきんぴら、里芋の煮付け、こんにゃく、そして
厚揚げなどです。
 式が済むと上記のものをテーブルに並べ、慰労の振る舞いとなります。お酒が入っ
て、「昔からずっと里芋とゴボウは定番の料理だけど、どういうわけか飽きないし、おいし
いねえ!」「うんだ!葬式の料理の里芋は栄養があるし、ごぼうは繊維質も豊富だし、厚
揚げやこんにゃくも体にいいものだ。よく考えていたものだと思うよ。」と合いの手が入
る。振る舞いだけでなく、前日のお通夜からの食事も同じものがでていたのですが、、。
 ご飯とみそ汁それに野のものを加えた食事は、滋養によい食べ合わせであり、バラン
ス、体力を考えた理想的な食事のように思います。若い人も年老いた人もたべられ、ほ
どほどに続けて食べられるメニューなのです。そういうものを食べて、腹をこわしたり、風
邪をひいたなどと言うことはあまり聞きません。
 頑固に昔ながらの食を守る風習?ですが、まんざら捨てたものでもありません。むし
ろ、昔の人に学ぶことがおおいように思います。私のムラは長寿の傾向で、90歳を超え
る人はめずらしくありません。おかげさま農場の仲間にお葬式ができたと話したら、「あ
あ、あのかわいいおばあさんが亡くなったのか!」と。 かわいらしいと言われるように
年が取れることは素敵なことだと思います。
 そんなことで、しばらく畑に出ませんでしたが、家の前の麦畑が一斉に芽を出し、きれ
いな緑が広がりつつあります。そこに、毎朝のように霜が降っています。野菜達は毎朝、
霜の薄化粧をし太陽に照らされては、息を吹き返し、少しづつ成長していますが、ちょっ
と間に合わない野菜もでてきています。キャベツやブロッコリーなどの生育にブレーキが
かかっています。ほうれん草や小松菜は、11月のあたたかさで進んでしまったものもあ
りますが、なかなかうまくいかないものです。
 クレームも出ています。長ネギのトロケなどはなくなってきましたが、大根にスが入っ
ていたとか、こかぶが筋っぽいとか、です。問題がありましたらお知らせ下さい。
 収穫の時点では、判断出来ないものも時にはでます。外からは見えないものですか
ら。こんな事も何度か書いていますが、難しいのです。毎年同じように作っても同じよう
にいかないように、同じような目で見てもよくないものが入ってしまうことがあることをわ
かってほしい、と思います。            by おかげさま農場・高柳

(産地の声)vol.710                     2005.11.28
 私のうちには農業新聞が3種類届きます。日本農業新聞、全国農業新聞、そして農業
共済新聞です。その中の全国農業新聞が今手元にあります。佐賀県唐津市の山下惣
一さんという農民であり作家の紹介です。’「身土不二」に勝る妙薬なし’という見出しで
す。山下さんのところは、周囲を山と海に囲まれた風光穏やかなところという。そういうと
ころで農業を営んでいます。
 そこのご先祖達は自分たちの作った里の穀物や野菜とこの土地に見合った「流通」の
方法でやったりとったり生きてきた。三里四方或いは、四里四方のものを食べていれば
人は健やかに生きてゆける、と言う教えそのもので生きてきました。身土不二とは、人と
土は一つだと言う考えであり教えですが、つい最近まで人々はそうでした。
 田圃はほとんどが棚田。その棚田と景観として見る都市の棚田ファンがこの田に立ち、
眼下の海を見れば「自然て素敵!」「こころが癒される」などと声を上げる。山下さんは、
「人々が自然だと思って眺めているのは、実は『農の風景』なのだ」と言うが、まったく同
感であると記者はいう。
 同じようなことを民俗学者の宮本常一さんが書いている。宮本さんという人は日本中
を歩き回った人です。その宮本さんが言うには、日本の自然と言うがそのほとんどは人
間の手が加えられている。田圃や畑だけでなく里山や木々も人が入り豊かな自然を作り
上げていた。そうした自然と人間の調和が見事に図られていた営みが明治に日本に訪
れた外国人が感動した姿だっただろう、と言っています。
 そういう目で見ると私たちの郷土もそうだった。田や畑から始まって、山や川まで、人
の手が入らないところは殆どなかったと言っていいと思われます。山々は薪や炭の供給
源として又地下水や清水の水源地としてあったし、杉や松を植えて家屋の材として使わ
れ、時々に人は山に入った。又キノコの採集や薬草や栗や自然薯など山の恵みもいた
だいて、あらゆる場所が人の営みとつながりを持ってきました。
 ここ3.40年の中でそうした繋がりは切れ、山は荒れ、果ては人為的?な不耕作地化
が進行しています。「身土不二」とは単に食べ物だけのことでなく、人にとってもっと広い
大きな意味もあるのではないだろうかと思います。最近の世相は、犯罪の多様化、低年
齢化などを見ると人間社会にとって良き社会ではなくなってきているのではなかろうか。
かって「人間は、自然から離れると、人間らしくなくなる」と教えられた言葉が妙に思い出
されます。 
                      by おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.670                       05.2.21
 夕ご飯で好きな料理は、ハンバーグ、カレーライス、餃子、スパゲティ、鶏の唐揚げ、
シチューの順。肉、脂肪がらみの料理がずらり。農林中央金庫が東京近郊の小中学生
400人に聞いた結果だ。日本の伝統料理はどこへやらだ。・・・これは今日の農業新聞
の「四季」欄の出だしです。
 問題は、下線の部分肉脂肪がらみの料理がずらり、と言うところです。10年くらい前
おかげさま農場で医食同源の科学という研修会をしたことを思い出します。つくば市の
農林省に研究機関があります。そこの研究者が医食同源の科学という題名で論文を出
しました。その内容は、都内の小中学生1万人を調査したところその2割が成人病になっ
ている、もしくはその兆候を示している、と言うものでした。
 そこで、その研究者に依頼し、勉強会をしたのです。結論から言えば、既に日本人の
食事は成人病の食事になってしまっている。年配者はもともとあまり肉脂肪類は食べな
いから、子供から若年者はより成人病食になっていることになる。日本人全体の食事が
そうなっていて年配者が食べないとすると、若年者は相対的により成人病食の密度が
高くなります。それが問題です、という。
 それが10年前だとすると依然問題は抱えたまま、と言うことになります。むしろ増大し
ていると見た方が当たっているかも知れません。85年頃だったと思いますが、上院で
マクガバン報告というものがでて高タンパク高脂肪食をやめよう!警告し、その対抗策は
日本食だ、と全米にパンフレットを配布したと聞きました。が、その反対にこの国はその
ダメな食事に邁進しているとは皮肉なことです。
 念のために言えば、理想食と言われる日本食は、昭和30年代前後の食事のことで
消費カロリーの7割以上を穀類でとるべきだというのがポイントのようです。その結果、
アメリカでは寿司や豆腐など日本食ブームが始まるのですが、反対にこの国は、前述
のようにハンバーグなどを筆頭に、高タンパク高脂肪の食事へと進んでいます。
 それに加えて加工食品のオンパレード、全盛時代に入っています。加工食品と言え
ば食品添加物がつきものです。その結果、アトピーやアレルギー、花粉症、不妊症な
どが増大していると思えるのですが、どうでしょうか。
 食品添加物の素朴な疑問として、塩を10g以上とらないようにと言う減塩運動をして
いるのに、食品添加物は80万トンを超すと言いますから年間一人あたり6.6kg、1日
当たり18g食べていることになります。品質保持?や見栄えのためには有効としても、
人間の命ある体にとってはほとんどが有害無益と思うのですが、、、、、。
                          おかげさま農場・高柳

(産地の声)vol.666                        05.1.23
 人参の種まきが始まっています。今の人参蒔きは、気温の低い季節なので、
ポリマルチングをして地温を暖めながら育てます。12cm〜15cm間隔の穴の
開いた所に種を蒔きます。その上にトンネルをかけ、更にその上にトンネルを
かけます。いわば3枚の布団を掛けるようねものです。そうして2.3週間かけ
て芽が出ます。
 今頃畑に種を蒔くのは人参くらいのものですが、苗を育てて植える夏野菜の
種まきもそろそろ始まります。なすやトマト、スイカ、メロンなどです。なすやトマ
トはなり始めるまでが長く、2月上旬に種まきしても収穫は早くて5月下旬、だ
いたい6月頃が収穫始まりとなります。100日から120日くらいかけてようやく
収穫となるわけです。
 事務室の本棚から10年前の産地の声が見つかりました。10年前は1995年
ですが暦が同じだったのですね。1月23日が今日と同じく月曜日です。・・・サニ
ーレタスが出来はじめてきました。と書いてあります。そして、神戸沖地震のこと
もありました。震災から6日目に書いたものです。前後を読み返すと、今でもその
まま使えるような文章です。仲間曰く、「産地の声は、日記のようなものかな!」
という事がありましたが、そうかもしれません。
 書くと言うことは、続けていてもおっくうなことです。また仲間曰く、「今日の産
地の声はなんか仕方なく書いたような感じがするな!」などと言われたこともあ
ります。気分や体調はいつも同じとは限りません。途中から400字詰め原稿用
紙3枚分を書く、と決めてから今日まで、何とか書いてきましたが、書けるときも
ありますが、進まないときもあります。今日がそんな日です。
 頭の中がまとまっていないのです。あれもこれもと頭に浮かび、アレをと思うと、
違うことが頭の中をよぎり邪魔をするのです。仲間のみんなは、畑や作業場で
人参を詰めたり、サツマイモを作ったり、荷作りしています。『仕事をしていた方
が自分のやることが見えるなあ』、とか『田んぼの畦の枯れ草も燃さなければ
ならないなあ』、とか『除草を思うと整地や耕耘も急がなければ』とかいろいろ
と想ってしまいます。
 集中心が足らないからだろうな、などと思ったりするともういけません。私の弱
さが一気に出てしまいます。九州の無着先生から手紙を戴いて、「ワープロを使
うようになってから誤字が目立つようです!」と指摘されてしまいました。
 ですが、おかげさま農場の仲間達は正常です。毎日予定通りの仕事をし、野菜
を収穫し、荷作りをし、出荷場まで運び、トラックに積み込みします。良い仲間達
に恵まれたと思います。仲間達が私の誇りです。
                         おかげさま農場・高柳

(産地の声)vol.665                        05.1.17
 一昨日から降り続いた雨がようやくやみ、ほっとしています。冬の雨は仕事をす
るには厳しいです。寒さと水ぬれではかどらず、やった仕事も手間がかかる上に、
仕上がりがよくありません。体もきつい。
 と書き始めたところにお客さん。落花生を煎って欲しい、と町内の農家が来ました。
何回か来て、「これで最後だから」という。
「いやーこの落花生が人気で、あとは種しかなくなってしまった」 と。
それから庭先での立ち話が始まってしまいました。
 「見栄えが悪かろうと、やはり千葉半立ちはおいしい」
 「見栄えじゃないね、おいしさは」
 「良いの悪いのと、見栄えだけで基準を作ってしまっているけど、そうじゃない」
「我々が味や中身を考えに入れずにさも見栄えが基準であるかの様にしてしまった」
 「もう一度原点に返る必要があるように思うね!」と。
 我が家の庭先落花生煎りの仕事は、おじいさんの仕事です。4.5年前に落花生の
商売をしていた知り合いが、事情があって商売を辞めることになり、片づけを手
伝いにいったのです。その際、煎る機械を「使えばあげるよ!」と戴いたことか
ら、おかげさま農場で収穫した落花生を炒りはじめたのでした。
 庭先でやっているものですから誰でも見えます。で親戚や近所の農家が少し
ばかりだけど炒って欲しいと頼まれたのが始まり、今ではだんだん広がり毎日
のように頼まれるようになってしまいました。
 最初、じいさんが「結果は責任もてないよ!」といい、知り合いだから代金は
いらない、といっていたのですが、そうしたらそれでは良くないとお菓子を持っ
てきたり、たばこを買ってきたり、お返しがすごい。こりゃまずいではないか、と
言うことで代金を戴くようになってしまったのですが、縮小する農業の中でおい
しいものを食べたいという欲求はあるのだなあ、と感心します。8割以上は年配
の人たちです。少々の畑を持ち昔とった杵柄をもち、おいしさを知っているから
かもしれません。
 畑に作っても炒ることができなかった(食べられなかった)けれど、これで食べ
ることができる。まわりの人にも喜ばれるので炒って欲しい!。喜んでもらえるな
らば、じいさんも張り合いがあります。・・・作る人も作る楽しみがあり、近所や知り
合いに喜ばれるからと我が家にきて、頼まれた我が家のじいさんも喜ばれるなら、
とやれる仕事をやる。お金や欲を越えた世界があるように思います。落花生を縁
にした人間模様があります。
                         おかげさま農場・高柳

(産地の声)vol.664                        05.1.10
 昨日は、さあ落花生の脱穀を始めよう、と言うところにお客さんが来ました。
堆肥場までノウに積みあげた落花生をトラックで運び、脱穀機で脱穀するの
ですが、トラックに乗ったところで、電話です。昨年、野菜が欲しいと一度送っ
たことのある女性二人です。
「どこにいるんだ、これから畑に行くところだけれど」
「おかげさま農場の出荷場です。畑にいるなら連れて行って下さい!」
「役には立たんけれど一緒に行くか、今行くからついてきて」
 仕事を持っているので、日曜日と言うこともあり、二人で示し合わせての突
然の訪問でした。一人は、食のコーディネーターとか言う仕事で、もう一人は
種苗会社に勤めているまだ若い二人です。二人とも、都内の学校に行き、千
葉県にはいろいろな産物があると言うことを知らなかったし気がつかなかった。
ある時、アースマーケットという場で、隣町の寺田酒造に出会い、そしておか
げさま農場を紹介された。都市の人に県内の産物や技術を紹介する場を提供し
たい、という。
 畑に行ったところ隣で、ゴボウの堀取りをやっていたので飛び込み見学。二人
は珍しそうに写真を撮ったり、話しかけたりしていました。私は妻と、落花生の積
み込みをするため移動し、トラックに二つノウを積み、ロープで縛り付けました。そ
こへ二人が来て、早速の質問。いつ種を蒔くのか、どんな仕事をするのか、これ
はなんというのか。ノウとはどんな字を書くのか。好奇心旺盛な人たちです。その上熱心にメモをとっています。
 「ノウという字は、どういう風な字でいいですか?」
 「うーん、ひらかな!」
 「ひらかな?アハハハ・・・、わかりました。」
 何がなんだかわからない会話をしながら、私もそういえば昔からノウと言ってき
ましたがそのいわれや字源はわかりません。わかる人いたら教えてください。
 今月末にまた鎮守の森のごはん市というのをやりますから協力をお願いいたし
ます。と言うことで帰りました。
 話変わって、先週合併問題で、町長と語る会をしました。おかげさま農場の主
催でしたので少人数でしたが、おかげさま農場のメンバーは合併に疑問を持っ
ている人がほとんどです。今なぜ合併なのか、納得する理由が見つからない、
と言うことだったので話し合ったのですが、ほとんどすれ違ったままの感じでした。
住民投票で決めるべきではないか、と言う提案に対し、議会は取り上げないと
いう。この国の民主主義は、エセ民主主義のような気がします。住民で決めよう、
と言うことを拒否する民主主義だからです。
                           おかげさま農場・高柳

(産地の声)vol.663                        05.1.3
 新年あけましておめでとうございます。
昨年は、暖冬が続き、と書いてきましたが年末年始頃から急に冷え込み、寒
さが続いています。畑の野菜は凍り付き、午前中は収穫不能になっています。
屋根のあるハウスはまだいいのですが、屋根のない路地のものは凍り付いて
包丁が入りません。本来の冬が来たと言えばそうですが、寒いのはこたえます。
 4日が出荷はじめですが、今日3日が仕事始めになります。今日から始めな
いと明日の出荷が間に合わないからです。
 昨年暮れにメールを戴きました。インドで暮らした、今は2児の母親の方から
です。
 ・・・2004年を振り返って思うのは、自然災害の多さではないでしょうか。水
害は温暖化の影響とも言われています。日本の2003年の温暖化ガス排出量
は1990年に比べて8%も増えているそうです。EU諸国が着実に減らしている
のとは対照的です。恥ずかしいですね。国際社会で名誉ある地位をのぞむので
あれば、まずはこういう分野で手本となれる国となる国に日本がなることではな
いでしょうか。
 この問題については、政府に対策を待たなくとも私たち個人でできることがたく
さんあります。車に乗らないで歩いたり、服を一枚多く着て暖房費を節約したり、
・・・ガンジーも次のように述べています。「政府依存の風潮が私たちを役立たず
の人間にしてしまっております。・・・”村の清掃、美化、保護の責任は自分たち
にある”という自覚が村人達に育ってくれば、費用をかけずに多くの改良がすぐ
にでも実現できるはずである」と。できることから始めてみませんか。
 戦争は最大の環境破壊です。「愛すべき国土、国民を守るためには武力も必
要だ」と言われる方もありますが、地球環境は、沈没寸前のタイタニックに例えら
れるほど危機的状況にあります。戦争をしたり、戦争の準備をすることに膨大な
エネルギーを使う余裕はないのではないでしょうか。環境問題に国境はありませ
ん。ある国の破壊的行為が地球全体に影響を与えます。子供達の未来を考える
なら、戦争以外の方法で問題を解決できないか、知恵を絞るべきではないでしょうか。
 「国やぶれて山河有り」ならまだ復興も可能ですが、今戦争をすると言うことは
「山河破壊されて、人類も滅びた」となる可能性が高いのではないでしょうか。愛
する人を守ろうと一生懸命やった結果がこれでは、あまりに悲しいことだと思いま
す。・・・
 少々長い引用ですが、平和と安泰を願うのはいつの時代も変わらないと思いま
す。自然を征服などと考えるのではなく、地球に生かされていることに感謝し、謙
虚に(なかなかできませんが)生きていければ、と思います。   
 byおかげさま農場・高柳

(産地の声)vol.662                       04.12.26
 今年最後の産地の声です。12月もあと何日もないのに寒さが来ません。例年
ですと霜が降り畑は真っ白という日が続き、ほうれん草や小松菜も葉がぐっと厚
くなり、うまみが増すのですが、どうしたことでしょう。
 気象庁始まって以来の真夏日を記録し、台風来週が夏から秋にかけて続き、全
国各地で暴風雨の被害が広まり、続いた年でした。それはこの国だけでなく、世
界的にも同じだったようです。人間活動が、地球という生きた惑星のいろいろな
システムを狂わしているようです。
 前にも書いたような記憶があるのですが、かって新潟大学の先生だった守田史
郎先生が、機械文明、科学文明というのは破滅への文明だからない方がいいけれ
ど、それもできないのなら、なるべくゆっくりと進んだ方がいい、と言うことを
話されていました。それと同じことをインドのガンジーが言っていたようです。
 地球自然の循環は、すべてのものが生産されて消費され、やがてゴミや廃棄物
になる。それが時間の経過と共に分解され、新たな命のもととなってまれ変わ
る。そして新しい命がまた別の命を生み出し生態系という生きた地球を造ってき
ました。その循環システムが壊れようとしているのかも知れません。
 だから今年も南米の方でC02の排出抑制の世界会議が開かれているのでしょ
うが、アメリカやこの国はそれよりも、経済成長が大切のようです。この国の場
合京都会議以来、目標値に近づくどころか10%も排出オーバーしているという
のですが、そうしたことの報いなのではないか。今年の自然災害は!と思えずに
はおられないのですが皆さんはどう受け止めますか。
 京都会議の際、「大人達の議論を聞いていると、真剣に討議しているとは思わ
れない。あなた達が受け継いだこのすばらしい地球環境を私たちの時代にも引き
継げるようにして欲しい」と当時13歳の女の子が訴えていました。その女性が
今は成人し、「地球を大切にというが、地球のためでなく人間のために自然環境
を大事にすることが大事なのだ。なぜなら、地球はそれなりに営みを続けること
ができる。だが実は人間はその地球に守られて生きているのだから、人間社会の
ためにこそ環境問題を考え、生きていかねばならない」といったようなことを
言っています。
 太陽系の 中の地球の 蟻地獄 無着先生の句です。もう2句
 大寒も 地震も地球の 贈りもの  そして  否応もなし 正月が来てしまう
 この一年おつきあいありがとうございました。良いお年を!
                        おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.661                       04.12.20
 12月は、行事の多い月です。先週は、恒例のおかげさま農場忘年会、土地改
良区の総会などが続きました。忘年会は、年に一度(当たり前ですが)の夫婦一
緒で参加します。お客さんを含めて50名くらいになります。6時開始で、10
時半頃まで続きました。
 毎年、名付け親である無着先生が参加してくれていたのですが、九州の大分県
の泉福寺へと赴任してしまったので、変わりに最近の著作「忸怩戒」という俳句
集を出版された本を配りました。先生のサインを頂き、息子さんである福泉寺住
職に解説を戴きながら一人一人に手渡ししました。おかげさま農場のメンバーは
私を含めほとんどが俳句など縁のない人たちばかりです。わかったようなわから
ないような顔をしながら、がやがやと始まった忘年会でした。
 振り返ってみれば、無着先生が来てから早19年?位になります。隣の多古町
の福泉寺というお寺の住職として住み始め、今度は縁があって九州の泉福寺へと
行かれたわけですが、「私は泉に縁があるようですね。得度をしたのが、沢泉
寺、そして多古町の福泉寺、今度は泉福寺と。」と話していました。
千葉県に来て詠んだ句を少し紹介します。
 住むときめ 境内を出ぬ 赤とんぼ
 住職は 住むことが職 秋秋桜
 金はなくとも 大根が 芋がある
 飛んでいる 形で死んで 赤とんぼ
筍1本 くださいと 竹に言ふ
  ・・・福泉寺の周りは竹山が多く季節には筍がたくさんでます。こんな句を
詠んで福泉寺におられたのですが、その他とても含蓄のある句集です。解説(自
句自解)もすばらしいです。(よく理解できないところも多々あるのですが)
 その晩1時過ぎとなり、泊まり客と一緒に帰ったのですが、どうも体の調子が
イマイチでなく結局風邪を引いてしまい、熱が出てしまいました。健康なものを
食べていれば健康とは限りません。不摂生な生活や、お酒の飲み過ぎは行けませ
ん。寒さを我慢したり、働き過ぎもいけません。昨日は、家族には、「俺は今報
いを受けているから午前中は寝るから後は頼む!」と汗をかきましたら、ほぼ熱
は収まりました。
 隙間風 言って詮無き ことを言ふ 句集にはありませんが、この産地の声も
そんな感じかなあ!などと思いながら今回は終わりにします。ではまた。
                       おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.660                       04.12.13
 ようやくと言ったらいいのか、霜が降り冬らしい寒さがきたようです。今年は暖冬と言っ
ていいと思いますが、寒さがあっての冬です。霜の朝はうっすらと霜の薄化粧です。こう
なってくるとほうれん草など葉物や大根などがおいしさを増します。まさに自然が作るお
いしさです。人工では作れないものです。
 先日、昔お世話になった先生が来られ、泊まっていったのですが、「この前の里芋もお
いしかった。またここの食事の野菜もおいしい。スーパ−の野菜はまずい!。」と盛んに
言っていました。一緒にいた仲間が、それを聞いて「先生の言うように、特別は思わない
けどそういうものかねえ!」
 先生−「それは、そのまずい野菜を作っていないからだよ。」
 仲間−「そうかな」
 先生−「よそで食べてみればわかるだろ」
 仲間−「よそに出かけるとあまり野菜食べない。どちらかというと日頃食べない肉だと
     か寿司だとか喰ってしまうんで!」
 先生−「なんで、東京の野菜がまずいのか。多分ハウス栽培や見栄えさえ良ければ
     いい、といったことや効率主義だからなんだろうな!」
 そんな会話を交わしながら、おかげさまのお酒「大須賀郷」を飲み交わしました。私も
仲間と同じく、先生が言われるほど感動を覚えながら野菜を食べているわけではありま
せん。正直なところ、、、。例えば、おかげさま農場の人気の人参など、私は好きではあ
りませんでした。おかげさま農場を始めて、お客さんからおいしい、おいしいと言われて
から、「では少しくらい自分でも喰ってみようか」と思ったくらいの感覚です。
 私は、家であまり人参を食べませんでした。で、人参の違いと言うより人参そのものが
あんまり好きでなかった、ということだったようです。おかげさま農場を始めて数年の頃、
産地見学の際、仲間の農家が人参ジュースなどやったらどうかという提案があり、飲ん
でみたらこれがおいしい!人参ジュースっておいしいんだ、と思ってから人参をよく食べ
るようになった、というのが私の人参体験です。
 野菜のおいしさは、基本的に旬だと思います。冬には、寒さの中を生き抜く命をいっぱ
いのもの。見栄えや形を求めるのではなく、大地にしっかり根を張り、ちゃんと生き抜く野
菜が一番だと思います。冬は暖かい煮物がおいしい季節ですが、そんな時は聖護院大
根や三浦大根がおいしいです。煮物など段違いにおいしいのです。
 最後は大根の話になってしまいましたが、これは一つの例です。旬を食べましょう。
                          おかげさま農場・高柳

(産地の声)vol.659                      04.12.6
 昨日の、低気圧は台風と言ってもいい暴風雨でした。日本各地で暴風が
吹き荒れたと新聞にも書かれていましたが、ここ大栄町でも深夜から朝方
にかけ吹き荒れました。「いやー、台風とは呼ばれなかったけど台風以上だ。
ともかく風がすごかった」「ほうれん草畑のトンネル資材をきれいにとばされ
た。」「我が家も大根畑も全てきれいにとばされた!」「かけ直すのも一苦労
だが、心配なのはほうれん草の葉先がやられてしまうことだ。時間が経た
ないとわからないけれど、、、。」
 などと、暴風雨被害の話で持ちきりでした。そして、9月の害虫食害、10
月の台風、もうないと思っていた12月という今頃にはあり得ない台風?の
襲来で、「もう踏んだり蹴ったりだな!今年は!」そんな話が飛び交う昨日
でした。
 まだ脱穀されていない畑の落花生のノウも強風で、ころんと倒されてしま
いました。
で、すぐにも修復すべく「仕事をしようにも風が治まらず、仕事にならない!」
状態でぼやいて解散しました。今朝はようやく風も治まり加減でいくらかほっ
としていますが、どうなる事やら心配の種が尽きません。
 被害もさることながら、12月はおかげさま農場の野菜が一番増える時期
でもあります。大根も青首だけでなく、聖護院大根、三浦大根など煮込みな
どには最高の味がでるものや暮れ、正月の八頭、などの出荷も始まりまし
た。白菜や春菊など鍋には欠かせない野菜も何とか続いています。
 落花生の脱穀が始まり、我が家の庭先で炒りはじめました。なにせマニフ
ァクチュアにも届かない手工業?的作業でやるものですからなかなかはか
どりませんが、注文に間に合わせようとじいさんばあさんの手を借りて忙しく
やっています。
 今日は、おかげさま農場の視察研修を頼まれ、午後はその接待?です。
どうした訳か農林省から電話があり、引き受けてしまったのです。でアジア
の人たちだというので農家の方かと思ったら、そうではなく農業省などの役
人さんだったのです。名簿がファクスされてきてはじめてわかったのですが、
引き受けた私も安易と言えば安易です。
 タイ、ラオス、カンボジア、マレーシア、フィリッピン、インドネシアなどから
通訳も含めて20名くらいがバスで来るというのですが、それのテーマがWT
O時代に向けての研修だというのです。そのテーマも私に意に添いませんが、
引き受けてしまったものはしょうがありません。食は命、医食同源、身土不二
を語り、視察してもらおうと思っています。
 アジアは豊かです。同じアジア人として欧米主義に巻き込まれず、アジア
の誇りを持って欲しいと思います。                    
                          おかげさま農場・高柳



(産地の声)vol.658                      04.11.29
 今年の11月は暖かすぎます。例年であれば毎朝のように霜が降り、寒風が吹きすさ
び始める頃なのにどうしたことでしょう。新潟地震の被災者のことを思うと雪もなく寒さが
和らぐ方がいいのかなあ、とも思いますが。それにしても冬らしくない気候が続いていま
す。
 先日、落花生の脱穀のために、トラクターに脱穀機を取り付けました。我が家の脱穀
機は、昨年で壊れてしまいました。取り付け部分が腐ってぼろぼろになり枠がぐだぐだに
なってしまいました。もう一人の生産者である石上に聞いたところ、「俺んちでも去年壊
れてしまった。それで燃やしてしまった!」という。
 我が家でもばあさんが、「使えないのなら邪魔になるだけだから燃やしてしまえ!」と
言っていたのですが、それでも作業場の奥にしまい込んであります。そんなことはどうで
もいいのですが、取り付けた脱穀機を早速、佐藤が持って行き、たぶん今日は脱穀作業
中だと思います。
 落花生を作り始めたのは、業者中心で(農協などはほとんど扱っていません)産地や
品種などかまわず流通させてきました。また、千葉産の千葉半立ちという品種はお米で
言えば、コシヒカリのようなとてもおいしい品種です。落花生は、外国産に押され、今や
外国産が9割と聞きます。産地の作付けが少なくなってしまい、何とかつくり続けよう!と
言うことで栽培したのが始まりです。
 全国的にも、この地は落花生を始めとし、里芋、生姜、ごぼうなど有数の産地でしかも
とてもいいものが獲れます。そこで業者は九州や果ては外国まで行って買い付け、そし
て千葉産と称して販売してきたようです。今では、産地を表示しなければならなくなりいく
らか改善されはしましたが。
 ですから、今の日本人は、何が本物なのか分からなくなっているのではないか、と思
います。包装のきれいな、見た目のきれいな、形の揃ったものだけが判断基準になり、
中身のことなど分からなくなっているように感じます。
 で、添加物の一杯入った加工食品をいっぱい食べて、アトピーやアレルギーなどと言
う奇病に冒されて、今度は機能性食品がいいとか言う時代になって、家のばあさん曰く、
「商売人が巧妙なのか、買い手が無知なのか。どちらにしてもおかしな時代になってしま
ったな!」「人間がどんどん愚かになっていくようだ」「ちゃんとした食い物をそのまま食べ
ればいいんだ。そうやって皆生きてきた。」「進歩していると思っていたが、人間は退化し
ているようだ。そんなことも分からぬようでは。」とぼやいています。
                        おかげさま農場・高柳功 

(産地の声)vol.656                      04.11.15
 ここのところいろいろな調査が入りました。9月下旬には税務調査と称して2
日間おかげさま農場への立ち入り調査です。10月には農林省農政事務所と言う
ところから、無農薬栽培の実態調査をさせてくれと2名の事務官が来て栽培歴や
畑を見ていきました。
 どちらもありのままで説明しましたが、調査されると言うことは、あまりいい
気持ちのもではありません。人の家の中にずかずか入り込まれる様な感じがする
のですが、そう感じるのは私だけなんでしょうか。出荷場で調査の話をしました
ら、「調査するところが違うではないのか。もっと他にいくところがあるのでは
ないか。」「農林省も暇だね、国内農業の振興はたいしたこともしないのに、、、」
などと言った意見が続出しました。
 で、農林省の担当官にどのようなことで調査と言うことになったのですか?と
聞きましたら、本省の方で上の方が現状を調査すると公言してしまい、我々とし
ては、その指示に従ってのことなのです、と。ちらっと見えた文書におかげさま
農場の会員農家の名前が見えましたので、「それはどこで調査されたのですか?」
と聞くと、「都内の自然食品店で表示されていた調査をまとめたもので
す。」と。よく調べてあるなあと感心しました。
 で、「上から下への調査も時には必要かも知れないけれど、我々農家がどれほ
ど苦労して無農薬に取り組んでいるか農林省のお偉方は知っているのですか?」
「EUや隣の韓国では有機栽培や、無農薬をする農家には減収分を補填したり、
経営保証をして農業体制の整備に取り組んでいる。」「ですがこの国は、自給率
50%にするとかアドバルーンはあげているけど具体的な施策はない。それでい
いんですか。上からの指示ばかりでなく現場からの声や、実情を上に上げて施策
を充実させてもらいたいものですね、」と注文をつけたのですが、たぶんどうにもな
らないでしょう。
 調査なるものは我々にとってあまり益のあるものではありませんが、むしろこ
ちらの方でお役人たちが、何をどれだけやっているのか調査して見たいものです。
 13.14日と、昨年に引き続き、京都大学の西村先生とIFOAMの今井事務局
長さんを呼んで研修会をしました。参加者は少なめでしたが、活発な発言を交えて
の研修交流会でした。農業の道はない、歩いた後に道ができる、と言った農家が
いましたが、一生勉強です。災害や困難を乗り越えてゆくことが私たちの生きる
ことなのかも知れません。         おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.654 04.11.1
 またまたの雨です。まだ引ききらない土中の水にまた雨が降り積もり?畑が冠水状
態を抜け出せません。これまで育ってきたものが全滅したりしたことはあきらめるとして
も、次のために種まきしようとしてもできないことが困りものです。
 これだけ雨続きですと、来春まで影響が長引くでしょう。今種まきできないと言うこと
は来年の1月から2月の収穫がない、ということになります。それが継続されると3月、
4月の葉物ができない、と言うことになります。排水が良く、雨のかからないハウス栽培
ですともう少し良いのですが、私たちのように露地栽培が主力の産地は壊滅的です。
 馬の背中のような高台の様なところは何とかやれるのですが、そんなところはそうそ
うあるものではありません。先日おかげさま農場の定例会で次善策など話し合ったの
ですが、皆一様に、「もうやりようがないよ!」。とは言っても「少しの場所でも種が蒔け
る所があったら蒔いて欲しい!」と話し合いましたが、出荷計画に間に合わないことだ
けは間違いがないです。
 ビニールハウスの小さな直売所では、買い占め騒ぎが起きています。おかげさま農
場のお母さん方が運営する直売所ですが、「開店するやいなやぜんぶ買い占められて
しまった。」と言うのです。近所の人や、アトピーの人やこだわりを持つ人がお客さんの
直売所で買い占められてしまったら、困ります。
 買い占める人は、どうも商売のための人のようだとわかってきて、「お母さん方も買
い占めは困ります!。と断るようにした。」と語っていました。それで良いと思うのです
が、おかげさま農場の直売所は、世間で高くなろうとも、それまでと同じ価格で販売して
います。そうなると、なお商売人としては好都合と言うこともあるようです。あさましいと
いうか、ご都合主義というか、何か嫌な現象?です。
 テレビや新聞では、不足する分中国やアメリカから輸入し始めているようです。農産
物は、工業製品のように足らなくなったら工場で稼働して間に合わせることはできませ
ん。お米やサツマイモ、ゴボウなどは1年に1回しか穫れません。葉物であっても今時
でしたら3ヶ月はかかります。時間がかかるものです。それでいて人間の口は、毎日食
べ物を必要とします。
 こんな状況を招いたのは、農政ならぬノー政だ、と考える人はまれなんでしょう。だ
から日本国民としては、その報いを受けているのだ、というのはあながち間違っていな
いように思います。こうなると、食べられない人が出ますが、作る人は出荷できず収入
がなくなるわけですから、生活の問題です。そういうことはあまり報道されません。
                               おかげさま農場・高柳

(産地の声)vol.653 04.10.25
 台風が去って、次の24号も上陸なし、ということで秋の天候回復を願っていました
が、また雨模様のようです。今日は曇天の肌寒い日になっています。台風の影響で残
ったほうれん草や一部の葉物も天候さえよければいくらか回復するのではないかと希
望的観測でいたのですが、うまく行かないものです。
 3日ほど前、長寿院の住職から台風の影響でまだ水が引かず、陸の孤島になってし
まっているところがある。でボランティアで救援しているのだが、ともかく食べるものがな
いので、野菜など食べられるものを提供をして欲しいと依頼されました。兵庫県の豊岡
市なんだそうで、未だに水が引かず船で物資を運んでいる始末だという。
 で私の家にあるものと言うことでお米、人参、カボチャ、ジャガイモ、玉葱などを段ボ
ールに詰めて送りました。早速というので車で包装したらすぐに近くのクロネコヤマトに
2往復して運びました。できた順から車に積み集荷所に運ぶ姿は本当に急いでいるよ
うで、多分一刻も早く!といった気持ちだったのでしょう。
 あったものといえ、いわば残り物で、出荷のはね出しばかりでした。ちょっと気の毒の
ような気がしたのですがそれしかないので仕方ありません。住職が言うには、「いろい
ろな方がいて中にはお金を、という人がいたが断った。お金は食べられない。それも緊
急なのだ。だから残り物でもなんでも食べるものでなければ意味がないんだ。」と。
 そりゃまあそうです。腹を空かしているときにいくらお金があったとて、足しにならな
い。そこは盆地で水の引きが悪く、船以外の交通、輸送手段がなくなっているというの
です。私たちの方でも、畑が水没してしまっているのですが、それ以上に大変な状況の
ようです。私達農家も、そういう状況を聞くにつけ、自分たちは家を流されたり床上浸水
などの被害からすればまだ被害が少なかった、と思えばいいのかな、など慰め合って
いますが、災害はない方がいいです。
 それにしても、地球の動きは人間活動の予測をはるかに超えています。地球が怒っ
ているかのようです。台風の被害がまだ収まらないうちに新潟で地震が起きてしまいま
した。
 コンビニエンスストアというのは訳すと、便利なお店と言うのだそうですが、道が分断
され孤立してしまうと手も足も出ません。地域的に独立したライフラインがストックされ
ていればと思いますが、全てのものが外から運び込まないと人間活動ができないシス
テムになってしまった社会のもろさがより困難を拡大しているようにも思うのですが、ど
うでしょうか。
     おかげさま農場・高柳

(産地の声)vol.652 04.10.18
 おととい、お客さんと会員農家の畑を見回ってきました。時間がたち水たまりは殆ど
なかったものの水たまり跡は、畑が泥でテカテカになっていますのでよくわかります。そ
んな所はまずだめでしょう。葉は見えるものの根っこが窒息し、下葉から黄色くなり始
めています。
 最初に伊藤のこかぶを見たのですが、これは水没地区と残った所があったのです
が、多分根っこが窒息したのでしょう。葉が黄色くなり始め、それに病気が蔓延してしま
っています。水分過多で蕪が割れてしまっていたり、葉に白い斑点ができてしまってい
ました。
 次に大竹のほうれん草、レタス、春菊を見たのですが、レタスはほぼ全滅です。水害
の前にヨトウムシなどの害虫による食害がひどく、それに冠水があり、葉が黄色に変色
し始めています。ほうれん草は出たばかりの芽が豪雨にたたかれ、株がなくなっていた
り残ってはいても、湿害をうけて健康とは言えません。春菊は、近年にないというヨトウ
ムシの食害をうけていました。
 その後、鈴木のハウスレタスを見たのですが、ハウスのため高いところは雨から逃
れましたが、低地の3分の1くらいは水没の跡が見え、多分収穫不能でしょう。どういう
ものかと足を踏み入れたら、どぼんと足が潜ってしまい、あわてて引き返す始末です。
 そして、伊東の小松菜、ブロッコリー、カリフラワーを見たのですが、小松菜はほぼ全
滅です。草取りをしているおばあさん曰く、「水がたまって見事が池だったよ!」そこに
見に行くと、踏み固められた道だけは歩けましたが、一歩足を踏み外すとどぼんと落
ち、長靴が畑にはまってしまいました。見た目は水が引いたように見えても、土が水に
浮いているような状態で手が付けられません。
 高木のほうれん草も同じく、次に椿のキャベツブロッコリーを見たのですが、こちらは
虫害の被害がひどく、キャベツは芯喰い虫にやられ3分の一収穫できればいい方か
な、という感じでした。上からは害虫でやられ、下からは水害で根っこがやられ、といっ
た状況で、近年にない災害だな!というのが同行した高木との感想でした。
 水害もひどいものですが、今日の農業新聞の一面に「温暖化の影響・農業にじわり」
と題し、害虫の異常発生/着色の進まぬ果実、とありました。暖かすぎて花が咲かな
い、害虫が異常に発生した、という兆候はここ千葉でも全く同じ現象がでています。
 以前には経験したことのない、害虫の大発生で出荷できないものが相次ぎ、そんな
所に大雨台風の被害で、路頭に迷いそうです。   
                                     おかげさま農場・高柳

 (産地の声)vol.651 04.10.11
 台風22号は大変な爪痕を残しました。台風が去って1日が過ぎましたが、畑のあち
こちが池になってしまっています。私たちの畑は、北総台地と言われるところですが、
台地といえどもでこぼこがあります。30センチの差でもその差が命取りで低いところが
水たまりになります。
 絶対雨量が多いために普段の雨量でしたら地下に浸みてしまうのですが、地下が飽
水状態ですと水たまりになってしまいます。さらに、高いところからの水分が次々と集ま
ってきますので、当分の間は畑に入れないような状態です。
 昨日の昼、出荷場に集まった農家に聞きましたら、もうやりようがない、低いところは
あきらめるしかない、といった話ばかりでした。レタス農家の大竹に電話で話を聞いた
ら、「うちのレタスは全滅だ!」「虫にやられていた上に、水をすっかりかぶってしまいも
うだめです!」。小松菜農家の伊東は、「5.6反歩の池ができてしまっている。11月出
しの小松菜が全滅だな!」
 といった感じで多かれ少なかれ、被害のない農家はなさそうです。一部高台の所や
ハウスの中の野菜は助かっていますが、これとて風害などの影響を受けています。根
もの類である里芋やサツマイモはまあいいとしても、ほうれん草や小松菜、レタス、キャ
ベツなどの葉物が一番問題です。
 当面の被害の影響もありますが、成育中の葉ものがどの程度影響を受けたのか、
日がたたないとわからないことも心配です。いつもは台風が去ったあとはカラリと晴れ
ることが多いのですが、太陽がでず、曇り空というもの気になります。暴風雨で痛めつ
けられた成育中の野菜は、その後の天気が良ければかなり回復することもあるのです
が、天気が良くありません。
 今年は、九州から四国、中国、北陸と台風が何回も来て、それも豪雨の連続で大変
だな!などと話しながらも他人事でしたが、私たちにも番が回ってきたようです。夏のカ
ラ梅雨の分、いつかはお返しが来るぞ、と話していたのがほんとになりました。
 聞くところによれば、全国的に被害が広がっていて、どこでも同じような大雨と暴風雨
によって全滅だの収穫皆無、といった話が出ています。農家は大変だといいますが、
その結果は農家でない人たちが食べられない、といった状況を生み出します。
 輸入すればいい、という話もありますが、その結果輸入した国で野菜の高騰や貧し
い人たちが食べられなくなるという循環ができてしまいます。そうならないようであって
欲しい、と思います。ある程度は我慢することも必要です。
おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.650   2004.10.4
 先月、おかげさま農場の後継者の結婚式がありました。お嫁さんは、隣の茨城
県の大学教授の娘さんです。結婚前から仕事の手伝いに来ていて、時々おじゃ
ますると真っ黒になって二人で仕事をしていました。3kなどと言うはやり言葉もあ
りましたが、そんなことお構いなしに体を使い、仕事に励む姿は健康そのものとい
う感じがします。
 人は、想いをもって生きるものだと思いますが、何とか健康な野菜を作ろう!と
働いている姿は見ていても気持ちがいいものです。人参の間引きやら、ゴボウの
種まき、トンネルの除去、収穫、ゴボウの種まきや、ピーマンの手入れ収穫など、
一緒になって頑張っています。婿さんは、農業も一生懸命ですが、自動車にこっ
たり、ロックンロールが大好きで歌ったり踊ったりの元気青年です。
 そんな二人が農業後継者として新しい時代を作っていくことに期待したいと思い
ます。「食は命」人間は、どんな時代になろうとも食べなければ生きては行けませ
ん。生き続けるということは、食べ続けるということです。その食べ物を作る仕事
が私たちの農業という仕事です。そんな挨拶をさせてもらったのですが、会場は皆
明るく盛り上がった式でした。
 話は変わって、今年の作柄です。今年は台風の多い年でしたが、この千葉は
直撃が少なく、良かったと思っていましたら、害虫の被害がひどい状況です。大根
キャベツ、ブロッコリーなど芯喰い虫や青虫、ヨトウ虫が大繁殖し、芯=成長点を
食べられ先行きが怪しくなっています。芯喰い虫は小さな虫で、2.3ミリから5ミ
リ程度の小さな虫ですが葉の裏に隠れ成長点を食べてしまいます。そうなると、
次の葉がないことになります。どうなるのかわかりません。
 葉はすでに網状のものがぼつぼつ見られ、それより手前の成長のものは芯が
食べられ、根切り虫なども現れ根本から食いちぎられる株も見受けられます。先
ほど電話で取引先とも話したのですが、私たちばかりではなく全国的な状況のよ
うです。
 西から東まで、台風にやられ、日照りにやられ、ここに来て適当な温度と適当な
水分=(雨)があることによって、絶好の虫の生育条件になっているようです。困ったものです。
 昨日と今日は、雨が降り続き、明日も雨模様です。虫食いにたたられ、その上こ
の雨と低温で生育が停滞し、予定通り出荷できないと生産者からの申し出があり、
あちこち連絡を取って今になっています。今、午後1時45分。昼の出荷が終わり、
朝から書き始めたこの産地の声もようやく終わりにできます。
                        おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.629                                            2004.5.10
 田植えが終わり、久しぶりに朝から雨が降っています。昨日まで田植えの終わった水田に米ぬかペ
レットを散布してました。私の管理する田んぼを全部無農薬にすべく挑戦しています。毎年少しづつ無
農薬田んぼをやってきたのですが、今年は失敗しても言い!と腹をくくっての全田のペレット散布です。
 去年今年と民間稲作研究所の稲葉さんの話を聞き、ペレット製造器も購入しました。去年はペレット実
践田を4枚やり、除草機を使った田んぼが2枚と無農薬栽培を約6反部位やってきたのですが、米ぬか
ペレットの成績がよかったのです。条件はともかく水を切らさないことです。それも深水にして雑草を押
さえる、と言うものです。
 畑は、無農薬にして久しいのですが水田は、除草剤1回以外は使わずに栽培してきたのですが、雑
草だけが問題でした。雑草さえクリアできればお米の無農薬栽培も可能だと考えて一部の水田を試験
して来たのですが、なかなか決め手がなかった。これが決め手になるかどうかは分かりません。農業
は自然との折り合いを付けながらの仕事です。その自然は人間の手に負える相手ではありません。ち
ょっとづつその自然環境に教わりながら、これでいいか、と聞きながら管理していくしかありません。
 田植えが3日に終わり、見回るとモグラとザリガニが畦畔を歩き回り、穴を開け始めて水がなくなって
いる田んぼが出始めています。その穴を埋めたり、わき水を利用していたところが水が突然来なくなっ
たり、水のパイプが詰まったり、反対に水が多すぎたりするところは、白鷺や鴨が稲を踏みつけたりして
います。
 農業は、こうすればこうなる、と言う機械的な方法論では済みません。米ぬかペレットを使えば除草効
果があるとは言ってもそれだけで問題解決という訳にはいきません。問題の雑草ですが、その雑草も数
10種類になります。自分の田んぼを知り、どんな雑草が多いのか、多年生の雑草には秋と冬の耕耘で
、ヒエには深水で、コナギという雑草は米ぬかで、というように全体を見ながらの観察、管理が必要となり
ます。
 結果は全て自分が始末しなければなりません。不安と覚悟が交錯しながらの始まりです。田植えして
2ヶ月間草を押さえることが出来ればまずまずです。それ以降は稲の生育が草に負けないだけになって
いるのでほぼ問題を除去できます。
 田んぼにかかりきりで、畑を見たらトウモロコシがトンネルの中でつかえるほどに成長していました。2
個蒔いた種が出ているのをハサミでちょん切り1本にし、脇芽も掻いてしまったら、トウモロコシ農家に脇
芽は掻かない方が良い、と教わりましたが手遅れです。まだまだ未熟で無知です。先達にちゃんと教わ
るべきでした。
                        おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.565       03.03.17
 昨日種籾を浸種をしました。もう田圃仕事の始まりです。水に浸した種籾の量は、約
200kg。約2週間水につけて飽和水分に達した時に種まきとなります。逆に言えば、
種まきの日を決めて2週間前に浸種しているのですが、、、。
 以前も書きましたが、米作りの歴史は数千年にのぼります。稲作りが可能になった
のは、種の実が落ちないものが見つかった時から、という説があります。たいていの
植物は、その種の存続のために実ったらはじけて地上に落ちます。そして土に紛れな
がら再び芽を出し花を咲かせ実を結びます。そのことの繰りかえしで命の連続が今に
続いてきました。
 ですが、実を付けてはじけてしまったら収穫ということが出来ません。稲刈りしながら
実がバラバラと落ちてしまったら効率が悪くて仕方がありません。実っても落ちない品
種を育成し育てて数千年です。先祖に感謝です。そのおかげで私たちに続く歴史があ
ります。
 籾の浸種は、最低積算温度100度は必要といわれます。10度の水で10日間必要
と言うことになります。我が家の実際は15度で2週間位です。十分過ぎる位の方が発
芽揃いがよいようです。大体の種は、飽水量に達して、温度が加わると発芽となりま
す。余談ですが、雑草の種は全部がすぐには発芽しないで、2年後3年後時には10年
後に動き出すように遺伝子が働くそうで、1株で数万個の種子を作り、生き残っている
というと言います。
 野菜も稲と同じで、種を蒔き、種が十分水分を含み、膨らんで温度が加わって発芽に
なります。2月に蒔いたトマトやナスが芽を出しましたが、その種の状態は、乾いてぺし
ゃんこのような状態ですが、発芽時にはプリンと膨らみプチッと皮が切れ芽を出します。
発芽の第一は、まず水分、その次ぎに温度です。
 この宇宙の中で地球だけが命豊かな惑星であるその訳は、水があるという事だとい
いますが、命の豊かさ、連続性は水の存在、水の循環があってこそです。
 昨晩から降り始めた雨が降り続いています。如何に必要な水とは言ってもここのとこ
ろの天気だともういらない、と思うのですがしかたありません。田の畦塗りや、肥料蒔き
など天気でないと出来ない仕事が進まないで困っています。
 仏教では地、水、空、風、日と言いますが、大地、水、空気、風、太陽は人間が作る
ことは出来ません。また、それがあって私たちの命があることを忘れてはいけないと思
います。ですが、ついそんなこと忘れて不平を言ってしまう私たちです。
                        おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.565       03.03.10
    いざや 神楽が 舞い 遊ぶ   朝日 輝く 伊勢の山
    天の 岩戸を 押し開く      めでた めでたが 重なりて
    泰平 楽世と 改まる      どっこい どっこい 
 以上は、私のムラの神楽舞いの中での謡いの一節です。
 先週も書きましたが、3月7日はムラ祭り、オビシャのの日でした。神楽舞いの
前には、産土神である大須賀大神で代表者がお祭りの儀式をし、その後ムラの
公民館に、鶴と亀の置物を鎮座し、お米と雑穀をお供えし、村人が見守る中で笛
太鼓の下座連の演奏で神楽舞いが行われます。その神楽舞いの中で語られる
一節が上の語りなのです。こうしたことを数百年前からずっと続けてきたのです。
 今はあまりにも時代が変わりすぎて都市に住む人には古くさい行事だと言われ
たりしますが、どっこい、そうでもないと思うのです。春には、五穀豊穣を願い、秋
には稔りに対する感謝の祭りをし、それが一段落する11月15日は帯解き(七五
三)を村がします。村に生まれた子供の成長を祝い、村を継ぐものを大事にしてき
た行事と続きます。 宗教の自由は大切なことですが、そのためかこうした行事が
少なくなってきました。ですが宗教の自由を口実にしてその心までなくしてしまうの
はどうか、と思うこの頃です。今風に言えば、自分の地域のことを考え想い、地域
作りにみんなが参加する。その地域が次の子孫のために祝い、自分の住む地域
を大事にする心は大切なことだと思います。
 そろそろ田圃が始まりますが、道路わきの田圃は、空き缶やペットボトル、買い
物袋などが散乱しマナーの悪さが続いています。農作業の前にそうして捨てられ
たゴミを拾うことが仕事になっています。一昔前はそうではなかった。自分たちの
土地を提供し道路を造り、道普請や排水溝の掃除、川刈りなど地域に住む人たち
が皆でムラを作っていました。そう言う姿を子供たちも見て育ち、川に遊び山に遊
びそして畑や田圃をみて育ったふる里がありました。そうしたふる里のために体を
使わなくなってきたことと反比例してマナーのない振る舞いが増えてきたように感
じます。
 ともあれ、命の本である食べ物を与えてくれるふるさとに感謝し、命の豊かさを
願い、かつ天下泰平を願うことはこれからも続けていきたいと思います。
 いまイラク問題で戦争論が盛んですが、マスコミも含めこれでいいのか暗澹たる
想いがします。私たち一人一人の力は小さいですが、平和に暮らすこと、そのこと
が世界の平和につながることだと思います。
                        おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.565       03.03.3
 今日は桃の節句、ひな祭りの日です。私事になりますが、いつの間にか私も年を
とり孫が出来る年となってしまいました。で2番目の孫が女で初節句。桃の節句と言
われるように桜餅をお祝いに持ち、御礼かたがたお祝いをいただいた親類を回って
届けました。でもこれが惣領だと祝いの席を設けるのですが2番目なので簡素化です。
 節句は毎年決まっていますが、最近の祝日は体育の日や成人の日など、日にちを
決めていたものが連休作りのために、第2月曜日にするなどと変えてしまいましたが
おかしな気がします。我が家の生きた先祖である母などは、そんな馬鹿な話があるか
!季節の移り変わりの中で人間は生きているんだ。つとめの都合とか会社の都合と
かは間違っている!と息巻いています。
 今の我が家は家族10人、3夫婦4世代の人間が暮らしていることになります。宮大
工の棟梁が3世代の人間が暮らすと約200年の経験や知識が得られる、といったこ
とを言っていましたが、良い面もあれば困ることもあります。価値観の違いは家族とい
えどもどうしようもないところがあります。明治を引きずったおしんのような生き方を言
う年寄りと、パソコンだウルトラマンを喜ぶ孫と、まるで人種が違うかと思うほどで、そ
の中間に立つ私たちはウム、と腕を組みだまって見守るしかない時がままあります。
 話変わって3月7日は、我がムラのオビシャの日です。各村々でもオビシャや初午と
いったりして1月から3月にかけてまつりごとが行われています。村人みんなが五穀豊
穣と天下泰平を願う行事でです。生きるための食の豊かなることを祈願し、ムラの安
泰を願うまつり事です。数百年と続いてきたこの行事は、天地自然に対する感謝と飢
餓や天変地変のない世の中への願いがづっと続いてきたことと言えます。
 今はそんな口上は述べませんが、産土神に祈願し、神楽を奉納し、引き継ぎの儀式
をし昔からのやり方を踏襲しています。面倒なところもありますがムラの人が出会う良
い場となっているように思います。
 今週3月6日は啓蟄の日です。地中で冬ごもりをしていた虫たちが這いだしてくる
頃、と言う日です。梅の花が咲き、森の木々も今は土中から一杯に水分を吸収し新芽
を出す準備を始めていますが、虫たちも這い出す季節になってきました。
 育苗ハウスの中ではレタスやナスがようやく芽を出し始めました。雨の合間にジャガ
イモや人参など少しづつですが種まきしています。秋の台風で倒壊した農具置き場も
ようやく元に復元できました。田圃の籾種も届き、本格的な植え付け準備が始まりま
す。虫たちと同じように一年の糧を得るべく季節にあわせて動く準備が始まります。
                       おかげさま農場・高柳 功

(産地の声)vol.564       03.02.24
 久しぶりに町内を歩きました。4月の選挙で一人の候補を応援する為に歩きま
した。何十年と同じ町にいるのに、足で歩くとまた違った新鮮さがあります。違っ
たところもあれば全く同じ風景もあります。前には泥んこ道であったところが舗装
された畑道。杉や雑木があったところに家が建っているところもあります。
 以前と全く同じにそのままの家並みが続いているところもあります。農村の風景
は家が建ちその周りにもちの木やつげの生け垣などで取り囲むようにして住まい
がつくられています。風雨から住まいを守り、またそれが絵になっている。その静
かなたたずまいは妙に落ち着きます。
 挨拶する為に訪れるとなにやら作業場の方で人声がします。言ってみると人参
やサツマイモの選別や箱詰め作業に忙しい。堀りとってきた人参やサツマイモが
コンテナに入れられ作業場に積まれています。農協出荷は人参やサツマイモは
洗わないと出荷できないので水洗いをし、乾かしてその後選別、箱詰めとなりま
す。冬の仕事は寒いので作業場をサッシやガラス戸で囲い込む。それを夫婦でラ
ジオを聞きながら仕事している家が多いのです。
 今年の人参は秋が寒かったので大きいものは少ないのですが中にはまるまる
太った人参もあります。ついいつ蒔いたのか、どんな品種なのか水をかけたのか
などという話になってしまいます。大きくはなったけど洗うと割れが入ってしまって
B品になってしまう。食べて同じなんだけどしようがない。むしろ食べてはこちらの
方がおいしい感じがするのだけれど、、、などと愚痴もでます。
 また、大きな家におばあちゃんが一人住まいをするようになってしまった家や農
業を辞めてしまった家が多く、今は何とか畑も畑になっていますが、やり手がなくな
ったらどうなるのだろうか。苦労して田圃や畑を開墾してきた耕地があれ放題の地
になったらどうなるのだろうか。などと思ったり、この地域をどうするのか、どうなるの
か心配になります。選挙は本来地域のビジョンとつながる要素が強いと思うのです
が、どうでしょうか。それが総体として日本の国となる訳ですから大事なことです。
 朝から降り始めた雨に雪が混じり始めました。ここのところの雨続きで人参やジャ
ガイモなどの植え付けがいっこうに進まないでいます。雨がやめば仕事が出来ると
いうものでなく畑が適当に乾かないと種まき植え付けが出来ません。収穫もままな
らなくなり寒さの中での雨の収穫はきつい仕事になります。そんなことお構いなしに
ほうれん草が食べたい小松菜が食べたいと、好き勝手なことを言う側にまわりたいね!
と思ってしまった今日の天気でした。            おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.563       03.02.17
 どうも最近は不自然なことが基準となって考える人が多いようです。おかげさま農場
に出入りするN氏がちょっと教えてくれませんか?と言うので、どういうことですか。と
問い返したら、NHKでもやっていたんですけれども45日で育つほうれん草を60日か
けた方がおいしく品質が上がる、と言うことを聞いたのですがどういうことでしょうか?
というものでした。
 季節にもよりますが秋冬栽培の場合60日以上かかるのが自然の姿です。45日で
出来るというのはビニールハウスで効率をよくする栽培であって、露地の自然の栽培
の場合は早くて60日はかかるでしょう。つまり今市場ででているほうれん草はほとん
どがハウス栽培の促成栽培と言うことになっているのかも知れません。
 似たようなことでおかげさま農場の隣で豆腐を作っていますがこれが国産大豆とニ
ガリだけの豆腐なのですが、40.50代の人は、これは昔食べた豆腐だ!となるので
すが、20歳代の人は、匂いがある、味が濃すぎる、堅いなどと言う評価でどちらかと
いうとあまりいい感じではありませんでした。よくよく聞いてみるとスプーンで食べる豆
腐で味もないものを最初に食べてしまったのでそれが豆腐だとインプットされてしまっ
たことのようです。豆腐の場合、国内の9割近くがグルコンやすまし粉と言った凝固剤
で固めたものが流通しています。本来豆腐はニガリで作るのが昔からの作り方だった
のですが経済効率や生産性の向上?によって本来の作り方が少なくなってしまって
いるようです。
 ほうれん草にしても豆腐にしても不自然なものの方が基準となり良い悪いが論じら
れるとなると、それでいいのか心配になります。この国は世界で有数の学歴社会なの
に自分が食べるものがどういう育ちをするのか、どんな作り方をするのか知らないな
んておかしいではないでしょうか。どこかが狂っているとしか思えません。
 で、先週も2組のお客さんを畑に案内しましたが、こだわりのものがほしい、とおっし
ゃる。ではどうこだわりたいのですか?と聞くと見えにくいのです。ちょっと意地悪にな
ってしまいましたが、私たちはこだわっていませんよ、本来の作り方に挑戦しているだ
けです。私たちは生産者であると同時に消費者でもあります。自分が食べるものとし
て、これで良いんだと言うものをつくる。それが原点だと思うのです。無農薬は目的で
はありません。人間も植物もお医者さんにかからず丈夫で健康に天寿を全うできるよ
うな環境を整え、かつ極力自然の摂理を超えないで育てることが肝心なのではない
でしょうか。そんな話でした。
                       おかげさま農場・高柳 功

(産地の声)vol.562       03.02.10
 久しぶりにフランスで暮らしている従兄弟が我が家を訪問しました。旦那の母親が
病床に臥せりその看護のために帰国したのです。何の話からそうなったのかは思い
出せないのですが、彼女が住むブルターニュ地方はイギリスに近く何国人かと聞くと
、フランス人ではない、ケルト?人だ(と言ったような気がするが記憶があいまいで
違うかも知れません)と言って決してフランス人とは名乗らないと言う。過去の歴史の
中でフランスに組み込まれてフランス国籍なのだろうけど、フランス人ではないと言っ
てその民族の子孫であることにこだわっているという。
 パリなどのフランス人と違って、かっての日本人とそっくりでよく働くし人情は厚いし、
今の日本人が失ったものを大事にしているように感ずる。伝統や誇りを持って生きて
いると言う感じね!と言う。で向こうでも朝市があって、無農薬コーナーなどは盛況で
おじいさんの売る牛乳を買った。おじいさんが自分のうちで絞ったそのまんまの牛乳
を買うのだけれど毎回値段が違う。で「いつも値段が違うけど?」と聞くと、「そうかね
!」と別に気にもしない風なのだそうだ。でその牛乳を大瓶で買ってきて順番に飲み
始め、最後に瓶の底に青いものがあったから何だとよく見たら、これが牧草。それで
次ぎの機会にそのおじさんに、「草が入っていたよ!」って言ったら、「搾ったまんまを
持ってくるのだから少々草が入るのは仕方ないね」と平然としているのよ!
 そんな話を聞きながら、急に向こうのサクランボはおいしいよ、日本のサクランボは
高いね、と言う話になり、買うと言ったってスコップでハイ!と言って売っている。日本
は大きさ形が整えられて売られているけどパリなどの一部の都市は別にして、国中の
大体が野菜や果物などが大きいのもあれば小さいのもある。虫が食ったのもあれば、
傷が付いたのもあればしなびたものもある、何でもありでと言った具合なのだそうだ、
それで誰も文句を言わない。そんなものと受け止めている。私は日本人だから?つい
選んでしまう癖がでてしまうけどそれはよく思われない。
 そういう話を聞きながら昔メキシコで出会った日本人を思い出します。彼は世界巡り
をし日本の常識が如何に世界の非常識なのかよくわかった。日本にいると当たり前の
ことで何の疑問も持たなかったが、よく見れば如何に非常識なのか世界を歩いてよく
わかったと言うことだったのですが、、、。
 観光旅行ではわからないのでしょうが、農家であろうがなかろうが自然や食べ物に
対する感謝や大事にする思いは皆一緒だ、という意識がEUの国々で感じます。そう
言えばバリ島でもそうでした。水の神様、稲の神様とまつり上げ感謝しながら生きる
姿はその根が同じように思います。          おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.561       03.02.3
 昨日は産地見学のお客さんを迎えて畑を案内しました。とは言っても冬の畑は寂し
いものです。緑の最も少ない季節ですから何処に案内しようか迷います。土作りの始
まりである堆肥場を案内し、ほうれん草や小松菜の畑を始めに案内しました。
 馬糞や豚糞、牛糞などを腐熟させたものや野草や籾殻などの材料に米ぬかや燻炭
などを入れ1年から2、3年かけて熟成しそれを畑に入れるのですが、単純に反当2ト
ン入れるとすると平均耕作面積2町歩として1農家当たり40トンの堆肥が必要となり
ます。おかげさま農場の会員農家が25名として約1000トンの量になります。堆肥は
熟成する中で3分の1から5分の1くらいに減少しますので反対に堆肥の元が3倍か
ら5倍は必要となってきます。となるとその場所も3畝〜5畝位はないと堆肥作りがで
きません。(1畝は30坪)そういう場を農家は各自持っています。原材料の確保と1年
から2年という時間をかけることが大変と言えば大変なことです。
 おかげさま農場の栽培の特徴の一つは、土作りの為に堆肥を入れることですがこれ
は野菜だけを見ていると見えない部分です。堆肥が十分でない場合は麦類やソルゴ
などの飼料作物を栽培し土作りをしています。3つ目は連作をしないということです。こ
れらを基本として作り回しをして畑を自然状態に保ちつつ毎年野菜が健康になるよう
にするのです。
 こうしたことは都市に住む皆さんには見えない部分です。手間暇がかかり時間をかけ
ての行為はいわば土台作りであり地味な仕事です。その土台があって始めて種まきが
あり、栽培管理があります。今登録農薬問題や特定農薬問題などが政府機関で審議
されていますが、果たしていかがなものなのか。環境汚染(大気、水質、土壌汚染のこ
と)や土作りと言った土台を抜きに先っぽの議論はしているようですが、木に例えれば
根っこや幹を無視し、枝の先のことばかり良し悪し言っているような気がします。
 そのような努力を重ねても干ばつ、台風や雪と言った自然の猛威に対抗出来ないこ
とがままあります。その結果野菜たちがどうなったのか今回は、小松菜の積雪被害の
惨状を見てもらいました。畑に案内すると、まあこれが食べられないのですか?!と言
う。でどっちみち製品にならないからいいですよ!と言ったら畑からむしり取っていきま
したが、、、。もったいないと言えばもったいないのですが、作った農家からすればもっ
たいないと言うよりは作った苦労が報われない残念な気持ちの方が強いのです。
 今朝は風もなく晴れています。今日は節分で今日から春になります。台風で倒され
た育苗ハウスのビニールも張り終え、その中で温床育苗の準備がが始まりました。
                         おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.560     03.01.27
 秋冬野菜の白菜やキャベツが終わり、畑に残った野菜たちは見た目がだんだん悪く
なっています。大根なども首だけが残りちょっと無惨とも見える姿になっています。毎日
霜にあい寒さの連続で痛めつけられている感じです。全くの露地で元気なのは麦くら
いです。
 おかげさま農場の野菜もぽつりぽつりと出荷が出来なくなって12月に出荷できたも
のが今では10品目くらい姿を消しています。来月の見通しをみるとさらに少なくなって
きそうです。今頃の野菜のできは秋の出来具合が肝心です。前にも書きましたが、秋
の台風、日照不足と低温、そして雪というトリプルパンチは私たちばかりでなく関東地
域全般にわたってその影響が出ています。
 それでも昔から見れば贅沢だよ、と我が家の年寄りは言います。今は選んで食べて
いるが、昔は食べるものがあっただけでありがたく食べていた。今の時代はおかしい!
あるもので工夫してみろ、昔からずっとそうしてきたんだ、と私たちに向かって叫んでい
ますが、そうなのかも知れません。
 貧しいと質素は違う、と言うことを言った人がいましたが、豊かさを追い求めすぎてい
るところはあると思います。人と比べて或いは他と比べてどちらの方が進んでいるとか
遅れているとか、ブランド志向が果たしていいものなのかどうか、利益追求の経済主
義でいいのか、お金を持つことがいいことなのか、成功することがいいことなのかどう
か。そもそも成功するとはどういうことなのか、時々は考える時間を持ちたいように思
います。
 情報の時代とか言われながら実は流されているだけで、本当に必要な情報や本質
的な議論はどこかにいってしまっているかのような気がします。BSEや登録農薬問題
など、してはならないことを放置して、問題が起きても作り出した張本人はおとがめな
し。で使ったものを罰するという。本末転倒のことが当たり前のように報道されていま
す。以前九州の有機農家がおかしな時代ですね!野菜を作っていて罰金があるなん
て言うのは。だったら問題になるものは(化学農薬のこと)最初から作らせなければい
いんですよね!全くその通りです。
 今年の年賀葉書の中に、農業がゆがんで衰退してゆく中でなぜ農家はものを言わ
ないのか。と言うのがありましたがちょっと身に詰まる言葉でした。農家でなければ言
えないことがあるのではないか!と言うことだったのですが、私たちもまだまだ未熟者
です。何とかしなければと思うのですが目の前のことで精一杯です。                               おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.559     03.01.20
 先週の続きになりますが暦の上では今日20日が大寒の日です。昨日から雨が
降り出しましたが、寒中の雨はきついものです。畑で仕事をしていると手足がしび
れ始めて仕舞いには痛くなってきます。そして感覚が無くなってきます。作物はと
言うと太陽が出ないため一日中凍り付いたものは凍りっぱなしでした。ハウスやト
ンネルのものは何とか収穫できましたがともかく寒かった日でした。
 とは言っても時間が経つにつれ春に向かって暖かくなるでしょう。月末になるとナ
スやトマト、人参の種まきが始まります。人参やほうれん草などはそのまま畑で成
長させますが、トマトやナス、キュウリ、ピーマンと言った夏野菜の多くは育苗して
畑に植えることなります。一番長いのがナスです。約3ヶ月かけて苗を育てます。そ
の間、鉢に植え替えたりして管理するのですが、それだけの時間がかかります。夏
野菜は霜に弱くたった1回の霜でも全滅してしまいます。育苗管理は手を抜くことが
できません。
 先週は寒い日が続きましたが私の家での最低温度はマイナス6度でしたが、おかげ
さま農場の農家の中にはマイナス7度、8度と言うところもあったようです。そうなると
畑は霜で真っ白になります。
 真っ白になったキャベツ畑や麦畑などご覧になれる方はインターネットでおかげさま
農場のホームページをご覧ください。冬の野菜紹介にでています。
アドレスは、http//:www9.ocn.ne.jp/~okage02/ です。
 コンピュータは便利なところもありますが、時々故障があります。おかげさま農場の
コンピューターはウイルスでやられ、個人で使っていたものは雷で全てがクラッシュし
てしまい、まだ立ち直れないでいます。たぶん私の個人メールへもアクセスできなかっ
たと思います。高柳農場のホームページは無更新状態ですが、おかげさま農場のホ
ームぺージは最近作り替えたばかりです。ご意見等ありましたら頂戴したいと思いま
す。1週間に1度程度しか開きませんが必ず返事を差し上げます。
 話が途中で変わってしまいました。
 もっと変わって先日フジテレビのディレクターさんと会う機会がありました。報道の中
でも最近はインターネットなどの普及で何でも机の上や部屋の中で何でも知ることが
できる。だがそれでは本当の姿を知ることができない。現場でなければわからないこ
とがあることがわかっていない。とそういう話でした。
 時間や空間の体験がないことは想像力や判断力、感性、創造力が育たないように
思います。インターネットはあくまでも入り口です。一度は現場においでください。
                        おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.558     03.01.13
 私たちの住むアジアモンスーン気候では、陰暦が今でも自然界を知る手がかりになっ
ています。今は寒中。1月6日が小寒で20日が大寒の日となっています。一年でもっと
も寒い時期となっていることになります。やがて20日が過ぎ2月の節分で春を迎えるこ
とになるわけですが木々は既に水分を蓄え始めています。春を待って一斉に新芽を出
す準備を整えつつあるわけです。
 隣の家の人が語るにはもうタケノコができはじめているという。5センチから10センチ
位というのですが、地中の中で春の準備をしています。私の家の庭には蕗の薹が出始
め、蕗味噌が食卓にのりました。寒い冬ですが自然界は黙々とその営みがつづいてい
ます。時々思うのですが、人間界は自然界から収奪しっぱなしですが、林や森の木々
たちは命ある限り生き続け成長し続けます。そして勝ち負けもありますが棲み分けをし
つつ共生しています。人間の手を借りない杉や松、ケヤキや楢の木など不平を言わず
黙々と成長する様に人間は負けているなあ、と思います。
 自然界があっての人間社会。食べ物があって命がある。そのことは自明の理ですが、
そのこと自体を意識しなくなったら人間は終わりですね、と言う無着先生の新年の言葉
でしたがまさにそういう時代になってしまったようです。BSE問題や登録農薬問題など大
元になる自然界の命の理のことなど忘れて議論している様は、お正月だからおめでとう
などと言っていられない感じがするようです。
 話は変わりますが、先日おかげさま農場に電話があり、話をした人が私に語るには「お
かげさま農場の野菜はなぜ虫が食っていないのですか!」という抗議調の問い合わせだ
ったようです。で、自分たちは手で取ったり、化学農薬を使わず自然界のもので防除をし
ている、また栽培方法の工夫や出荷するときは虫食いのものは取り除いて出荷している
ことなど話し、まして今は冬でもあり虫たちが冬眠の時期でなおさらいないなど話したので
すが先方は納得しないようで、話していて腹が立ってきた。種をまき育てたことのない何
もわからない人間が何を言っているのだ!頭にきたから、おかしいと思うなら買ってくれ
なくて結構、自分で納得できるところを探してくれ!と言ってしまった。と言うはなしでした。
私はそれでいいんでないの。信用できないものは致し方ない。納得できないのなら自分
で納得するものを自分で見つけたらいい、としか言いようがありません。
 どんな法律や基準ができようと自然界の摂理を超えたり、その摂理を基にしない論理は
破綻を来すと思います。なぜならば私たちは自然界に生かされているのですから。                      おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.557     03.01.06
 新年おめでとうございます。
 暮れは、座敷周りの十数枚の障子を張り替え、正月様をまつります。正月様は、お餅を
二重にしたお供え、大根に松の枝を差し幣束を立てます。そして太陽神である天照皇大神、
産土神である郷土の大須賀大神の2つの掛け軸をかけます。そして上部に大きなしめ縄を
飾ります。これで正月を迎える準備完了。
 その後、1年の締めくくりの年越しソバ。今年は自前のソバを食べるためにソバを作ったの
ですが、台風のため少量のソバしか穫れませんでしたが、何とか残ったソバを粉にしてソバ
作りをしました。そば粉8割、地粉の小麦粉を2割の二八ソバです。何とかまとめ、そば切り
して家族10人で年越しをしました。
 お正月は毎年恒例の無着先生の福泉寺で迎えました。手作りの甘酒や持ち寄りのお肉
や野菜のけんちん汁をすすりながら一年を語り新年を迎えるのもいいものです。新年の挨拶
の後無着先生の話があり解散。それが2003年の始まりです。
 おかげさま農場も4日に初出荷が始まりました。台風を始めとした昨年の天候のつけがこ
こにきて現れ始めてきています。春菊は終わり、白菜も終わり、キャベツも小さいまま年を越
しこれからの生育は見込めません。ほうれん草や小松菜も1月分を12月に無理して出荷し
たため数量不足になりそうです。その他大根、ブロッコリなども寒さのため首が痛んできたり
しています。12月の雪に相当影響されています。立ち直れないまま寒を迎えてしまった、と
言うのが私たちの分析です。
 市場でも野菜の品不足が伝えられていますが、おそらく日本中この寒さにまいっているの
ではないかと思われます。九州の鹿児島県でも雪に見舞われているというのですから、、、。
前にも書きましたが、秋口の気象庁の暖冬予想は大きく外れむしろ何にも言わないでほしか
った、などと語り合った正月でした。
 世界は、アメリカ主導の戦争を仕掛けるのが当然のような様相ですがそれでいいのでしょう
か。北朝鮮の報道も連日のように報道されてきましたが、それで問題が解決できるのでしょう
か。多くの日本人は、平和を望み、社会の安定、安心を望んでいると思います。私たちも農業
をしつつ今日の日が明日も続くようにと願って暮らしています。 WTOの思想のように世界中
と競争したりするのではなく、この国の先人たちが積み上げてきた経験や知識、知恵を土台
として歴史を引き継ぎ、引き渡せるような世の中であってほしいと思います。
 本年もよろしくお願いいたします。
                       おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.553     02.12.2
 2002年も早12月となり野菜のおいしい季節になってきました。白菜や春菊が出て
くると思い起こすのは鍋料理です。野菜にキノコやお魚、肉を入れポン酢や醤油などで
味付けし、それに卵や鰹節などのだしを入れたりしていろいろな食べ方ができます。
 いろいろな食べ方でやってみるのも楽しく食べる方法です。家庭料理の面白さがそこ
にあります。冬はなんと言っても温めて食べるということが体を温めてくれます。
 旬の野菜を食べる、旬の野菜を食べた方がいいという理由は旬の野菜はそこで(寒さ
や暑さの環境の中で)しっかり生きているからでしょう。暑さや寒さの環境の中で生きる
力を持っている、と言うことです。そういう生命力のあるものを食べることが私たち人間の
命を支えてくれるというのは一理あると思います。人間は弱いもので体温36度を維持し
なければ生きていけない生き物です。マイナスの気温では死んでしまいます。
 今は冬でもキュウリやトマトなど食べられますが、本来夏のものです。今時の露地の
ほうれん草などは大地にべたっと張り付き、冬を乗り越えようと太陽エネルギーをしっか
り蓄え葉を厚くし、しっかりと生きています。私などはそういう野菜たちを見る度にこの力
が私たちを生かせてくれるんだなあ、と思います。
 自然界の動物は旬の食べ物を食べ、身土不二をやっています。それしかないと言えば
それまでですが、餓死や事故で死ぬことはあっても病気は少ないそうです。都市のゴミ
箱をあさる野良猫や野良犬は糖尿病や虫歯があると言う話を聞いたことがありますが、
そういうものを人間が食べている、と言うことになります。人間も自然界の一員であると
いうことを忘れてはいけないと思います。
 話は変わりますが、先週おかげさま農場への取材があり、一瞬でしたがテレビ報道
されました。フジテレビの小倉智明の朝の番組でした。こだわり野菜の産地の取材が
したい、と言うことで前の晩に電話があり、そして翌日取材したいと言う急な話でした。
 でその後あちこちから問い合わせがあり、おかげさま農場は今はやりのユニクロと
取引することになったのか、とか、なんだあの番組はとか聞かれました。私も番組を
見たのですが、ユニクロが野菜の販売を始めた!ということからの放映だったのでそう
思ってしまった人が多かったようです。
 後日、私に取り次いだ人がきて「いやあ、申し訳ない。あんな番組になってしまった
とは申し訳ない、、、」と平謝りでした。おかげさま農場も何度かテレビ取材がありま
したから、「取材する側がそれなりに意図を持って番組を作っていることは承知して
いるからそんなに気にしなくてもいいよ!」・・・そんなことがありました。
                        おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.550   02.11.11
 農業者の多くは現代農業という雑誌をとっていますが、12月号の緊急特集で「無登
録農薬」問題が取り上げられています。農家の側からみると、無登録であるかどうか
農家は知らされないこと、日本で無登録であってもアメリカや中国で使われればわか
らないこと、登録には数百万円から数千万円費用がかかること、有効な資材としてあ
ってもメーカーが採算が合わなければ作らなくなってしまうなどなど問題がありすぎる
ように思います。
 農家が知らされないことというのは、通常農協や農薬店で進められ効果があれば何
の疑いもなくそのまま使用してきた、と言う経緯があります。その成分や毒性など知ら
されないまま、使わないと等級が落とされるとか言われると、そう
か、となり使ってしまってきた、と言うのが実情のように思えます。今年も農協から栽培
歴や防除歴に使う肥料や農薬のパンフレットが一冊の本になっ
て配られたのですが、よく見てもそれがどのようなものなのかホルモン剤なのか化学物
質なのかさえ不明で、それを使うための効能ばかりが紹介され
ています。そういう状況がいまも続いています。農家の不勉強もさることながらそれをき
ちんと知らされる状況にはなっていません。
 消費の面で考えれば日本は食料輸入大国ですが、仮に日本で規制しても外国で使
われればどうしようもなく、そういった野菜や農産物はどんどん入ってきています。それが
端的にでている問題が中国産野菜等の残留農薬問題でもあり
ます。そしてその無登録農薬が東南アジアで作られ、輸入され格安農薬としてホーム
センターに並んでいます。
 こうした現象は農産物に限りませんが、生産性や経済能率主義、見栄え主義、科学
主義と言った自然の摂理を亡失してきたところに本質的問題があるように思います。
 私たちの命は自然の営みの中にあります。自然あっての私たちの命です。豊かな水
があり、豊かな自然が私たちに食べ物を与えてくれます。自然生態系の外に私たちは
生きることはできません。そうでありながらそのことを失念し、地球の自然環境を利用し
尽くし、大地を傷つけ、大地からいろいろな資源をむさぼり、人間の都合だけを優先して
きた結果でもあるような気がします。
 BSEの問題から無許可添加物問題そして今回の無登録農薬問題など食の現状はW
TOの貿易自由化問題とも絡んで出口の見えない状況が当分続くでしょう。数百年続い
た伝統を受け継いで生きるか、科学や規制で生きられるのか、
そういうことになるのかも知れません。
     おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.532                       02.06.24
 月初めの産地の声には,雨が欲しいと書きましたが、あまり雨が多いとこれまた困り
ます。畑に入れなくなったり、刈り取りができなくなってしまうからです。昨日ようやくの
晴れ間で麦刈りをしました。
 麦というのは雨が続くと品質が落ちてきます。刈り取りの時は、からっとした天候が
よいのです。今政府は自給率の向上などといっていますが、その実状はお寒く、ます
ますやる人は少なくなるような価格です。燃料代や乾燥代や機械代を考えるとそれだ
けで経費オーバーになってしまいます。昨日お客さんと話していて、やはり口先だけか
(国は)という話になってしまいました。
 その国策は、検査制度という管理だけが生き残り、その結果価格が8分の1、ひど
い場合だと10分の1という話も聞きます。それで、自給率を高めるとはよくいったもの
です。アメリカや欧州は自国の生産維持のため数兆円もの補助金を用意しています。
いわば、再生産可能の範囲を超えると補助金を出す、という政策です。
 農家の補助金が欲しいという単純なことではなく農業の宿命である天候、1年に1回
しか収穫できない、というハンディを越えるためには必要なことだということです。何処
の国もそういうハンディを承知しつつ国全体の且つ長期的な農業政策をとっています。
その事が国民の安心と安全を維持する基本的な政策として定着しています。
 この国の場合は、全然違っていてそういう思想は持ち合わせていないようです。世
界中から買いあさる商人が跋扈し、かき集めそれが日本人の食となっています。そうし
たことがひいては、狂牛病の元である肉骨粉を輸入したり、基準値の数百倍の残留農
薬の野菜輸入であり、添加物まんじゅうの輸入となっています。
 3年ほど前に農林省の野菜の委員会で、消費者委員という人が中国の冷凍野菜は
忙しい主婦にとって便利だし、食べても結構美味しい、という発言をしていたことを思い
出します。そういう人はいっぱい食べてもらっていいのですが、国民を巻き込むことだ
けは止めて欲しい、と思うのですがどうでしょうか。
 先日聞いたことですが、その中国野菜のことで、中国では日本のいろいろな検査に
かからない農薬の開発を研究している、という話を聴きました。本当かどうかは確認し
ていませんが、そういうことは十分考えられる様な気がします。
 先日、私の小麦粉を持って隣り町の製麺屋さんにうどんを作ってもらいました。白い
うどんでなく小麦色したうどんになりましたが結構いけます。あの真っ白なうどんがどう
してできるのか、今度会って聞きたいと思っています。
                        おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.531                       02.06.17
 時代とともに「心」がなくなる。
心よりも科学が優先されるからだ。
 泥棒しようが、殺人しようが心を失ってかかれば社会は通用する。立証される科学
的な裏付けがなければいいからだ。そのうちに疑わしきは罰せずで時効になって放免
される。はやい話が心をどこかにおいて完全犯罪に拍手を送っているのだ。
 ・・・これは最近読んだ読み物の1節です。
 狂牛病問題から雪印問題、そして掃除会社のまんじゅう添加物問題、ほうれん草な
どの輸入冷凍野菜の残留農薬問題などが毎日のように報道されています。添加物は、
許可されているものだけで360種を越え、無許可というか範囲に入らないものが同じ
数だけあるという話があります。またこの国はアメリカ基準で遺伝子組み換え作物が
大量に入る国になってしまいましたが、科学で立証される裏付けがなければと流通し
ています。
 その科学が生み出したものが後になって問題になると、やむを得なかった、知らな
かった、申し訳ないなどと言い訳して終わる。食べ物は入れ替えがきかない。食べてし
まったものだから、取り返しがつかない。
 以前食生態学の中で西丸震也氏が添加物のAF2の問題で指摘していたことがあ
ります。この添加物は防腐剤として使われ既に危険物質としていまは使われていない
のですが、この添加物が使われていた8年間に日本人の体に入ってしまった。やっか
いなことは体に取り込まれたものがそのままに次の世代まで影響される可能性を持っ
ているという。そうなると日本人の総体的生命力は衰えていくだろう、というのです。
 元はといえば、その時点では国が認可したものです。認可されて、後で問題になり
製造停止したものがたくさんあります。いわば国民は実験台のようなものです。開発し
た方は動物実験などで良しとして申請するのでしょうが。
 そういうことから学ぶことは、国の基準ということも一つの基準ではあるけれども不
完全ということになります。食べ物は保守的でよい、という考え方があります。なぜなら
ば、今まで長い間食べてきたものは体験済みです。それによって私達の先祖から今ま
での命が繋がってきたのですから。
 冒頭の続き・・・科学では人間が見たり聞いたり触ったりする範囲のことしか扱わな
い。それで済まそうとするから恐い。命を再生することも他人と心を入れ替えることも科
学がどんなに進んでも不可能の分野なのだ。心や命は科学によってはかれない大き
な存在なのである。・・・その科学によって善し悪しを決めている現代です。by.高柳

(産地の声)vol.530                       02.06.10
 一昨日(8日)は、川崎市から総勢37名の皆さんが産地見学に訪れました。夏野菜
のトマト、キュウリ、ナスの生育状況を見学し、最後は出荷の始まったジャガイモ畑に
行き、堀取り体験で土にまみれながらジャガイモ掘りをしてもらいました。
 畑に出る前におかげさま農場の隣にある豆腐工場を見学しましたが、ここは昔なが
らの国産大豆とにがりだけの豆腐作りの工場です。戦前までは何処の豆腐屋さんでも
ニガリが普通だったのですが、戦後の物資不足の時代、スマシ粉や通称グルコンとい
われる凝固剤で代用したのが代用で済まなくなり、一般的になり近代の豆腐つくりにな
ってしまった、というのが豆腐の歴史です。
 なぜそうなったかというと、にがり以外のものの方が生産効率が良いからで、にがり
と比べて150%〜200%の生産効率、それに加えて外国産大豆ですと価格が3分の
1、場合によっては10分の1ということで経済効率、生産性という面で、国産でニガリ
で作る豆腐は極めて効率が悪いのです。その上作りづらいというと必然的にニガリ豆
腐は敬遠されてきてしまった、ということでしょう。
 隣りで作った豆腐の食後感は、50代以降の方は、うん、これは昔食った豆腐だ!と
いう言うのですが、20代30代の人の反応は違います。この豆腐は匂いがある、味が
濃すぎる、固すぎる等、どちらかというとあまりいい印象ではない反応です。なぜなの
か聞いていく中にわかってきたことは、化学凝固剤や外国産の効率主義に寄ってでき
た豆腐しか食べていないので、それが豆腐だ、という味覚ができあがってしまっている
のだな、ということです。
 味覚や感覚は十代の中に決まってしまうということですから、本物や昔からのものは
その経験に入っていないのです。ですから判別できない。代用品で作ったものの味が
最初にインプットされてしまったものだから、昔からのものに違和感を感じてしまう。
 加工食品が氾濫し、本物と添加物の入ったものの区別が付かなくなるような食事だ
とすればアトピーが出たりアレルギーが増加したりする現象が容易に理解できます。
人間は数百年数千年という歴史を生きぬきてきましたが、ここ数十年で、かって体に入
れた経験のないものを数百種と食べていることになります。となれば、体に変調が来て
もおかしくない、という結論がでます。
 こんな事を書くつもりはなかったのですが、産地見学で話したことを思い出してしま
いました。食は命です。産地見学にこられた方は自分で調理し、ちゃんとした食事を心
掛けている方々ばかりでした。問題は、それが次の世代に継承されるかどうかです。
                         おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.529                      02.06.3
 人参が新人参に変わり出荷されていますが、ほうれん草や小松菜、こかぶ、チン
ゲンサイなど冬作物と言われる葉物がごく一部を残して終わりになりました。夏野
菜に変わる季節なのですが、ようやくジャガイモ、玉葱ができてきました。トマト、
キュウリなどの夏野菜の出荷が始まりましたが、ナスやピーマンなどが遅れています。
 大根なども一次出荷休みがありましたが、早いものは薹立ちしたりその次の作が
遅れて、といった状態で出荷に谷が出来てしまったようです。4月は気温が高く推
移しましたが、今年の5月は低温気味で生育が順調でなかったためのようです。虫
の発生も激しく、ナスやカボチャネギなどにはアブラムシが、キャベツやブロッコリー
には青虫や各種のヨトウムシなどがたくさん湧いてきています。
 一方、ここ数日の日照りと気温の上昇で田圃の稲もぐんぐん生長しています。稲
は熱帯植物の本領を発揮して水さえあれば成長するぞ!と言う感じです。分けつが
進み緑が濃くなっています。とはいうものの私の田圃は周りの田圃と違って、まだ
分けつが少なく、いくらか淡い育ちをしています。それを見た知り合いが通りかか
り、栄養失調の稲みたいだ、と言われました。遠くから見ても私の田圃はわかりま
す。他の田圃のように緑が薄く、見ようによっては白っぽく見えるからです。
 私の田圃は、殺虫剤を撒かないのでハモグリバエという葉を食う虫が付いていま
す。それだけでも葉が白くなるので目立ちます。その上化成肥料を使わないので肥
効が緩やかで濃くならない、その上に薄植えなので、と言うように作り方がまるで
違い、知人のように栄養失調じゃないか、となるわけです。後1ヶ月もすれば逆転
するから見てくれよ、と言っておきましたがどうなることやら。
 先週ゲンジボタルの見学会と言うことで佐倉市に行って来ましたが、何とこの大
栄町にもそのホタルがいました。メンバーの高木が家の周りにいるというので行っ
てみましたら、優雅に飛んでいました。大栄町の自然もバカにしたものではありま
せん。それだけ良い環境と言えます。ホタルは湧き水があり綺麗であること。カワ
ニナなどの餌になる貝が生息することなどが条件だそうです。
 北総環境再生会議を発足させたことを前に書きましたが12日にこの大栄町で第
3回目の意見交換会が開かれます。食の安全と自然環境は切っても切れない関係
があります。関心のある方はご一報下さい。
 田圃は水を汲めばいいのですが、畑が乾燥気味です。雨が欲しいです。
                        おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.528                       02.05.27
 我が家にツバメが巣を作り始めました。10日くらい前からツバメが飛んできて、今年
はツバメが多いねえ!などと話していたのです。で、板に釘を打ち付け軒下につけた
のが私。ところがツバメは母屋の中の開け放たれた部屋を飛び回り始めたのです。
 そこで息子が玄関に入ってすぐのところに板を釘で打ち付けたはいいのですが無視
され、土間と台所と居間の最も人の出入りの激しいところの上に留まり始めました。そ
こにツガイのツバメが泥を運びはじめたのです。我が家は日本壁と呼ぶつくりですか
ら、壁と角材の間にちょっとしたへこみができます。
 尺貫法で云う処の5分の幅です。そこから泥つけして始めようとしたのですが、付け
た泥が、これまた良くつけたワックスがきいているのか落ちてしまう。ツバメがその3日
前から我が家に泊まり始めてしまい、そこで登場したじいさんが3番目の板つくりの巣
を打ちつけたのが一昨日です。どうなるか見ていたら失敗(ツバメの泥つけが落ちてし
まう)の経験からか、じいさんが取り付けた板の上に巣作りを始めました。
 男共が何とか巣を作れるようと努力している間、女衆は、「人間が手を入れ過ぎると
巣を作らなくなるよ!」「こんなに泥やゴミが落ちて困るねえ!」「ツバメの方が利口な
んだからツバメの方で何とかするよ」、「まあツバメは縁起がいい、という話もあるくらい
だから」とか言いながらツバメの止まる下に新聞紙を敷いたりゴミの始末をしています。
 家中がツバメ騒動でなんだかんだと言いながら、巣を作り始めホットしているところ
です。昔の農家の家はどこかが開いていましたからツバメが出入りできたのですが、最
近はサッシができ密閉度の高い家の造りになり、巣が作れないようになってしまったこ
ともツバメの少なくなっった一因だったように思います。
 ツバメと日本の農村の風景は昔からのもののようです。ツバメは生きているものが
餌で、人間の生活を邪魔せず、作物の害虫を食べてくれる共生できる鳥でした。長い
間にツバメの方も人間の住居は安心できる、と言う判断をするようになってきたのでし
ょう。人間を怖がらず目の前で飛び回ります。カラスやモズ、鳶などの猛禽類、ヘビや
ねずみなどから身を守れる場所として農家の家の中を選んだと言う話しがよくでますが
そうなのでしょう。
 先日お邪魔した佐倉市のお宅でもツバメが巣を作っていましたが、昨日来た近所の
家でも巣作りを始め、もう卵が孵ってピヨピヨやってるよ!と聞きました。
 今晩は北総環境再生会議のメンバーで源氏ボタルの見学会です。源氏ホタルは私
も見たことありません。平家ホタルは我が町でも見学会をします。6月の末に計画して
いますので希望者はお知らせ下さい。       (おかげさま農場・高柳功)

(産地の声)vol.527                       02.05.20
 そろそろ夏野菜に切り替わります。ほうれん草、小松菜、チンゲンサイ、こかぶなど
は今月いっぱいで終わりになります。今は季節に関係なく何でもあり、ですが本来はこ
れらの野菜は冬野菜です。5月という気候も冬とは言い難いのですが消費の希望もあ
り作っています。5月の出荷はFGと言う袋からP−プラスという袋に替えて出荷してい
ましたが気付かれましたか?P−プラスという袋は呼吸を抑え消耗を防ぐ役割があると
して特殊に開発された包装材です。
 そう言うこともいいのか悪いのか考えてしまうところもありますが、ともあれ野菜が黄
ばんだり弱ったりしなく、貯蔵性がいいことは実験済みです。問題は経費がかさむこと
です。昨年の経験からするとはるかに問題が少なくなりました。
 今年の5月は気温が低く推移し、雨が多いせいかキャベツが割れて大被害を被って
います。5.6人キャベツを作っているのですがその多くが割れはじめ、「キャベツが爆
発してないか?」と話しが飛び交っています。困りものです。一時的に出荷がなくなりま
す。次の作の間があいてしまいます。1週間くらいは休むことになるでしょう。
 低温で推移しているもののジャガイモや玉葱は順調に生育しているようです。少なく
とも見た目にはよいです。農業は、やってみないと分からないところがありますから、掘
り取りししないと確実なところは言えません。とはいえ来月から出荷する予定です。
 自然栽培も良いのですが、自然の被害も多い。今私の家の前の畑はスズメが大群
で麦をついばみ困っています。なにせ数が数ですから麦作の間には彼らがついばんで
後の麦殻が大量に落ちています。大根の種まき後にもハトが、枝豆や落花生の後も鳥
にねらわれます。ハトやカラスそして生育途中のキャベツやブロッコリーの葉をねらっ
て椋鳥やヒヨドリが飛んできます。畑に青い葉のものが少ないので余計ねらわれるの
でしょうが、これらも悩みの種です。
 昔と言ってもそれ程古くないのですが、無農薬だと結構鳥たちも畑に来るようになる
んだね!と感心してたことがありましたが、何のことはない、種まきしていたその種をね
らって鳥たちは来ていたのです。その結果、目は出ず(当たり前ですが)半分くらい食
べられてその原因が分かった、などという笑い話が我が家にありました。
 18日のガイアシンフォニーに行ってきました。おかげさま農場のメンバーも参加、鑑
賞してきました。600人くらいは来たように思いますが、地球環境に関心がある人がこ
れだけいると言うことが素晴らしいことだと思います。私達は地球という生命体の一員
であり、その地球環境に生かされているのですから、、、。
                        おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.526                       02.05.13
 とうとう風邪をひいてしまいました。昨日最後の田植えをし、機械を洗って収納した
のですが、ちょっと寒気がしたのです。私達の周辺でもなんだか風邪がはやっているよ
うだな!と話していた矢先に感染してしまったようです。私の場合、腰にその徴候が現
れます。腰がズーズーしてくるのですが、それに寒気が重なれば間違いなく風邪です。
夕方、梅肉エキスを舐めて夜に風邪薬を飲んで寝てしまったのですが、今朝は体が重
く起きているのがちょっと辛いです。
 おかげさま農場のみんなには、食は命というのだから何食ってたんだ!などと冗談
を言われますが、生き物は食べ物が第一であることに異論はありませんが、それに自
然環境、災害などの用件が加わります。ご飯を食べずに仕事をし過ぎたり、極度の寒
さや暑さにあったり、水や空気の汚染などがあります。まあ私の場合、食べずに飲み
過ぎて寝込み、寒くて目が覚めたり、健康的な生活態度でなかったのが原因のようで
す。
 ここまで書いた所、お酒を頼んだ寺田酒造の当主が来て、今週末のガイアシンフォ
ニー自主上映会の打ち合わせをしました。少し紹介します。
1・(地球交響曲)第1番4番 自主上映会の案内
2・上映日 2002年5月18日 13:30〜20:45
3・会場 成田国際文化会館大ホール(成田市土屋303 tel0476-23-1331)
4・チケット 前売り通し券1,000円 当日1,200円 高校生以下無料
*地球の声が聞こえますか。・・・から始まる第一番、是非鑑賞下さい。
 おかげさま農場の野菜も並べますので。

 話しはかわりますが、冷蔵越を片づけしたら一昨年のお米が出てきました。でもった
いないからとそのお米を搗いて食べているのですがやはり味は落ちます。が、上野で
の大衆食堂のごはんよりは、羽田空港内のカツ丼のご飯よりは美味しい。昨年古米が
欲しいからと頼まれていたものを忘れてしまったのが原因のようです。
 そんな話しをしたら、我が家のじいさんが、昔はわざわざ新米と古米とを取り替えて
くれ、と言う家があった。それは、新米だと2杯が3杯と食べ過ぎるので、家族が多い家
は、秋までにもたなくなってしまう。古米だと食べる量が少なくて済むから、という話な
のですが、家によってはそう言う方策も生きる知恵だったようです。
 我が家の米倉もちょっと不足気味なので、昔風の食べ方です。 
                        おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.525                       02.05.6
 テレビや新聞では、連休の交通渋滞や、空港の混雑状態が連日報道されていまし
たが、私達農家は農繁期で田植えや野菜の植え付けなどで多忙な日々です。どういう
訳かこの連休の頃はそうなります。旧暦で言えば5月5日が立夏です。昨日から夏に
なったということです。
 ですから、もう霜の心配もなく何を植えても安心できる季節になったということになり
ます。家庭菜園でも農家でも大雨、大風、干ばつなどの特別の備えは別として、自然
の状態で育つ環境になってきたということになります。今、近辺の店先にはナスやトマ
ト、キュウリ、ピーマンなどの苗がところ狭しと並んでいます。
 ここまで書いたところで東京の知り合いから電話があり、「連絡したけどお米が届
かない」とのこと、で、「この忙しい時期に個人的な振込用紙の連絡など見ていられな
いよ!」「それは分かっているけど食事ができなくなってしまうでしょ。だから電話した
の!」「わかった!」と答え、早速お米をつき始めました。
 前にも度々書きましたが、種まきや植え付けは時期があります。どうしてもそのとき
でないと時機を逸します。まだ農作物の多くは一年に1回しか作れないものがありま
す。そう言うことが都市で生活していると分からないという人がいます。2.3日前に来
た新婚夫婦もそうで、そうなることは不自然だから、自然の中で暮らしたい、と言って一
晩泊まっていきました。そうはいっても我が家は忙しかったので、堆肥入れとトマトの植
え付けを手伝ってもらいました。
 今、おかげさま農場の農家の畑には、トマト、ナス、キュウリ、ピーマン、トウモロコシ
スイカ、メロンなど夏の野菜がハウスやトンネルの中で育っています。露地では、人参
や大根が、その他出荷中のレタスやほうれん草、小松菜、ネギなど夏の暑い陽射しの
中でぐんぐん育っています。育ちすぎて困っているところもありますが、、、、、。
 ネギが出てきたところで、ちょっとお知らせ。今日からネギが1本ネギから分けつネ
ギになります。1本ネギはネギ坊主が出てきてしまいました。ネギ坊主がでてきたと言
うことは花芽ができてしまったと言うことで栄養成長から生殖成長へと転換したもので、
私達が食べるところの茎や葉が固くなります。分けつネギはネギ坊主ができませんの
で柔らかく食べることができます。1本ネギからするとちょっと細めで白身部分が短め
ですが食べやすいものです。
 何の脈絡のないことを書いてしまいました。途中、電話があったり集金が来たり、お
米を付いたりごたごたしている中でしたのでご容赦下さい。
                        おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.524                       02.04.29
 今日は、久しぶりの朝から雲一つない晴天です。ムラの田圃はほぼ田植えが終わ
り、後は私の植える田んぼだけが残っているようです。昨日、数年前までは5月の連休
が中心で10日頃植えていたこともあったのに、10日以上早くなってしまったなあ、と近
所の人と語っていたのですが、あまり早いと冷害が心配になります。
 私のおじいさんの頃は6月に田植えであったといいますから1ヶ月以上早くなってい
ます。それが早まったのは収穫時期が台風の季節となり、稲の倒伏やらその被害の回
避などの理由から分かるのですが、今は余りにも早すぎる気がします。稲の生育適温と
いうものがあります。稲は元々熱帯性のものです。早く植えすぎた稲が寒さや風のため
に枯れてしまっている田圃もある、という話を耳にします。そこまでして早く作る意味が
あろうかという気がします。
 農協などの集荷業者が早く出荷すれば高く買う、という状況がそうさせているようで
すが、自然の摂理を越えてしまうようだと問題です。高く買うといってもたいした額では
ないのですが生産費ぎりぎりのところで、バランスシートで計算したら赤字のところです
からそうなるのも無理がないのかも知れません。
 前にも書きましたが、隣の中国は人件費が50分の1から20分の1で、アメリカは耕
地が100倍の平均規模が150〜200ヘクタールと、条件が極端に違っている中で競
争をしろ!というのがWTO=国際化の言い分です。それでいいのか、ということが現在
の課題だと思います。対してEUや私達、韓国などはその歴史や自然、環境の違いを考
慮して守るべきものを守らねばならない、として国際的議論となっています。
 湿地に畦をつくり、雑草を取り除き、水路をつくり全て田を作ってきました。畑も同じく
木を伐り、その根っこをトンビ鍬で掘り起こし草や収穫物の残査などを畑に入れ肥沃な
畑を作ってきました。それらは全て人力でやってきたことを思うとその苦労は大変であ
ったと思います。それは数百年の苦労の積み重ねで現在に続く私達の命の元となって
きました。そう言う歴史を断ち切るかのような急激な農業人口の減少、農村の荒廃、社
会不安の増加となっています。
 今国は、有事立法などと言って戦争準備を始めようとしていますが、私達の生きてき
た地域を守れずして何を守ろうとしているのか、疑問に思います。山形県で農家同士
でつくる影法師というフォークバンドがあります。その歌に、この国が滅びようとも俺た
ちゃ米を作る、という歌詞があります。多分私達もこの国が滅びようとも、お米を作り、
野菜を作るだろうね、と冗談を言いながら畑に通っています。
おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.523                      02.04.22
 五穀豊穣と天下泰平を祈願する祭礼が昨日終わりました。村中総出で公民館に集
まりマンドウを先頭に練り歩き、踊りながら大須賀大神まで、行列を組んでのお祭りで
す。昨年の暮れから準備を始めてのことです。その間踊り、笛太鼓、神楽舞、そして歌
舞伎などのの練習を重ねて4月17日の祭礼が行われて来ました。
 最近は、勤め人が多くなり、17日だけ神事を行ってしまい、練り歩いての祭りの踊り
や舞台を使っての歌舞伎などはその週の日曜日として継続をはかって来ています。昨
日は途中から雨が降り始めてしまいましたが、予定通りに進行し、雨がやみませんで
したが、お客さんも途切れることなく終えることができました。
 この大須賀大神は産土(ウブスナ)神として古く、とおく鎌倉時代に大須賀郷という地
の史実があります。この地はその大須賀という地名で数百年語られてきました。ちなみ
にこの大栄町は旧大須賀村と旧昭栄村の名の2文字をとって大栄町とつけられたので
す。
 この伊能の祭礼は、4つの地区が交代に行うもので4年に1回当番区として主催す
るのです。今年は私達の区が当番区として準備、実施しましたが今日(22日)は、経
費の支払いやその始末にそして使った道具の片付けです。それで万事終了となるわけ
ですが、勤めている人が大半となった時代ですのでやりくりが大変です。
 一方で田圃や畑の準備をしないわけにはいかないので村中がここの所休みもなく動
きづくめです。それでも今年は当番と言うことが分かっていましたので、手回し良く仕事
を進めてきたせいか、むしろ例年より代かきが早いようです。早い人は田植えが終わっ
てしまった人も居ます。
 田圃や畑の忙しい時期ですが、数百年の伝統行事を絶やすわけにはいかないでし
ょう。五穀豊穣と天下泰平と祈ってきた先祖からの願いから離れ、今は田圃は作りす
ぎてはいけない、有事立法だ、とか先祖の願いとは別の方向に社会は進んでいるよう
に思いますが、これでいいのかと思うようなご時世です。
 今年は、例年より生育が進む年のようですが、地球温暖化が更に進んでいるようで
す。気温が上がりすぎ、育苗に失敗したり、野菜の弱りが出てきたり、例年と同じ管理
や判断ではうまくいかないところがあります。おかげさま農場の農家もちょっと困ってい
ます。村内のしいたけ農家さんが、ともかく陽気でできてしまうので、祭りの都合と言う
わけにはいかない。そこがたい変だ、などと話ながらの参加でした。
                        おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.522                      02.04.15
 メールをいただきました。といってもお名前は分からないのですがおかげさま農場に
とっては非常に嬉しいメールなので紹介します。以下・・・・・
 初めまして!・・・といっても、高柳さんには以前何度かお会いしたことがあるんで
す。私はつい先日まで、「アニュー高輪店」で勤務していました。初めて高柳さんにお会
いしたのは、昨年の3月半ば高輪店の周年祭でした。
 高柳さんはその時、ニンジンの生ジュースを作っていらしゃいました。
私たちスタッフにもジュースを作って下さったのですが、ニンジンが苦手な私はジュー
スを飲むのを一瞬ためらいました。でも、思い切って飲んでみたらあまりの美味しさに
ビックリしました。
「ニンジンって、こんなにも甘かったんだ!」と・・・・。
 それ以来ほぼ毎日、ニンジンジュースを飲んでいます。時にはスティックサラダにし
て生で食べています。ニンジン嫌いが直ったのは、高柳さんのおかげだと思っていま
す。本当に有難うございました。
 これからも、美味しい野菜をたくさん作って下さい。そして、1人でも多くの野菜嫌い
の人達に野菜の本当の味を教えてあげて下さい。
 私も1人でも多くの人に、「おかげさま農場」の野菜の美味しさを伝えていきたいと思
います。・・・・・・・・・という内容でした。
 で、私からの返信です。・・・・・
 食べられなかった人参が食べられるようになったとのこと。食は命を標榜している私
達としては嬉しい限りです。どんな良いものと言われているものでも食べなければ血に
なりません。私達が食べたものは胃腸で吸収されやがて血液を通して体中に運ばれ体
中の細胞に運ばれます。そこで栄養補給と新陳代謝が不断に行われそれが生きること
そのものの実体です。
 ともあれ、食べられることが始まりです。それがなければ始まりません。その次が調
理で時によって目で見て、舌で味わって、食卓を囲む家族と語り合いがあって、となれ
ば食事になります。 そうしたことが普通に日常性のあることになれば食生活になると
思います。 今は、食事が餌状態になり(家畜の餌の栄養計算と学校給食の栄養計算
は基本的に同じ)調理をせずに、間に合わせのチンするだけの食事が多いことに疑問
を持ちます。 楽しめる食生活を築いて下さい。・・・・・以上ですが、食生活は一生のも
のです。そこに住むことと食べることは生きることの基本中の基本と思うのですがどう
でしょうか。      (おかげさま農場・高柳功 E-mail/okage@msi.biglobe.ne.jp)

(産地の声)vol.521                      02.04.08
 春キャベツが出てきてクレームをいただいています。冬キャベツから見ればはるか
においしいのですが、見栄えがよくありません。どういう訳か冬キャベツのようにきれい
にまとまるのではなく、立性で葉がまとまりにくいのです。外葉が青く結球部分が薄緑
色となって、結球部分がおいしい分?痛みやすい感じです。で保護のため出荷すると
き外葉をつけて出荷するのですが、これまた見栄えを損ねています。レタスにも時々あ
るのですが、何枚か内側にトロケという葉が出てしまう場合もあります。
 今のキャベツは昨年の10月に種蒔きをし、冬を経ての栽培です。この作型は秋のう
ちに成長しすぎて巻き始めて冬を迎えるとトロケ始め痛みが出て出荷できなくなりま
す。また成長が足りないと冬を越せず消えてなくなってしまいます。そこの案配が難し
いのです。種蒔きが1週間違っただけで全く違った生育になることがままあります。同じ
千葉県でも銚子の方に行くともっと栽培が楽なのですが、ここ大栄町は北総のチベットと
いう話があるくらい冷え込みます。マイナス10度を記録する位ですからその影響が出て
くるのではないかと思います。ともあれ、問題がありましたら今後ともお知らせ下さい。
 長ネギも1本ネギが蕾を持つようになってきました。春ですから当たり前と言えば当
たり前なのですが、そろそろ品種の取り替えの季節が迫ってきたようです。先月出荷分
の大根や小松菜などは蕾から花が咲き始めたのもあります。これも出荷を考えなけれ
ばそれなりに菜の花となってきれいなのですが、そんなことも言っていられません。トラ
クターで鋤き込むとか処分を考えないと、次の作が困ってしまいます。
 菜の花で思い出したのですが、今千葉県ではちば環境再生計画というものに取り組
み、県民レベルでも取り組もうとしています。県北の環境問題に関心を持つ人たちが集
まり、菜の花計画に取り組もうとしています。皆で菜の花を作り、油を絞りとりあえず自
給だけでもしよう、と言うことです。そして使った食用油は石鹸を作り、循環と持続型の
環境システムを考えようというのです。あるいは、ディーゼルエンジンの燃料油に加工
して有毒排気ガスの出ないシステムもやってみたい、などという提案もでています。
 どこまで出来るかわかりませんが、地球環境を考えると今の私たちの環境は、破滅
型システムに突き進んでいます。オゾンや炭酸ガスによるオゾン層の破壊、温暖化、そ
して大気汚染、水質汚染、そして土壌汚染が進んでいます。
 私たちの生活、経済活動をそのままのしての解決策は見いだせない、と言う認識が
あります。北総地区の何人かですが、その試みを始めようとしています。
                        おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.520                       02.04.01
 予定していた籾の種まきがほぼ終わりました。7軒分で約3000枚を蒔きました。面
積にして15町歩分くらいです。30cm×60cmの育苗箱に種を蒔くのですが、1反で
約20枚必要です。これを田植機に載せて植え込むのです。これから25日から30日
の期間をかけて育てます。前にも書きましたが、最初は水分と保温に気をつけて、芽
がでて2.3cm位になると換気や灌水をしながら徐々に自然環境に合わせるよう育て
ます。
 最近は殆ど失敗しませんが、失敗するのは大体が過保護による失敗です。最初は
温度を必要とするので囲います。囲いすぎて気温が上がり過ぎ、高温障害で種が煮え
てしまったり、水分過多でカビが発生し、根張りが悪くなったり生育が著しく悪くなったり
します。必要なものが必要以上になると障害がでます。過ぎたるは及ばざるがごとし、
です。
 昨日3軒分の種まきをし、その人達とも話していたのですが、大抵はやりすぎによる
失敗だね!と言うことで話が合いました。と言うことは、それぞれが1回か2回はその
経験をしているとも言えます。加減の問題です。いい加減というのは経験しないと分か
りません。加減は、天候を見て予測を立て理想とする環境を用意するものですが、天
候はそれこそ天のみぞ知る、です。長年の経験とカンが必要です。
 孔子の言葉だったか、敵を知り己を知るならば百戦危うからず!?と言うのがありま
したが、私達の場合は敵?が天候を始めとする自然環境であり、己は自分の能力、経
験、実践力であったりします。それらをよく見て勘案して仕事をすることが大切、と言う
ことになると思います。
 ともあれ春は、作付けの準備やら植え付けの忙しい季節です。これも毎年のことで
すが、1年に1回しか作れないものは春が肝心なのです。私達の作っているもので1年
に1回しか作れないものは、お米、麦、サツマイモ、ごぼう、里芋、玉葱、ジャガイモ、大
豆などがありますが、それらを早生品種や晩生品種と組み合わせたり、貯蔵技術を使
って、長い間食べられるようにしてきました。
 庭先の水仙が咲き始め、チューリップも蕾をふくらませています。春の一日は目で分
かる成長をします。地元の小学校の子供達が蒔いた麦も50cm位に成長しています。
茎をむいて見ると、小さな穂が1〜2cm位に成長をしています。今月の下旬には穂を
出すでしょう。子供達は、”麦さん大きくなったかな!”などと言いながら楽しみにしてい
る、と先生達から聞きました。成長の姿を感動しながら体験できることは一生残るでし
ょう。春よ来い!です。               おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.519                       02.03.25
 桜が咲き始めました。町内の学校やお寺など桜が一斉に咲いています。8分咲きく
らいでしょうか。こんな年も珍しいです。報道でも言ってましたが、例年から見て10日
から2週間くらい早いようです。
 ここの所4,5日寒さがぶり返していますが、育苗ハウスは順調に成長が進んでいま
す。2月から蒔き始めたナス、トマト、ピーマン、カボチャ、レタス、キャベツ、ネギ等の
野菜が育っています。レタスやキャベツのようなものは蒔いたままで、そのまま成長に
合わせて植え付けになりますが、ナスやトマト、カボチャなどは育苗期間が長いので、
更に管理をしなければなりません。で、ズラシと言って、それまでの場所から間隔を大

きくとり、葉が重ならないように広げます。1坪にあったものを2坪に、そして4坪くらい
の広さに、と広げて生育空間をとるようにするのです。そうしないと軟弱になりやすく、
ガッチリとした根張りのよい力強い苗になりません。
 昨日は、午前中に籾の播種、午後にはレタスの植え付けをしました。となり町で無農
薬で稲を作るグループがあり、そのメンバーがきて手伝ってもらいました。息吹という
資材を使い無農薬栽培をしているというので、その資材の使い方を教えてもらったので
す。その資材は化学資材ではなく、いわば鉱物資材で酸素欠落型磁性酸化鉄と呼ぶ
ものです。土の水分を活性化し土壌を団粒構造にして作物の生育を旺盛にする、と言
うものです。
 資材というものにも防除型資材と生育活性化型資材がありますが、わかりやすく言
うと防除型は病気や虫をどう防ぐかと言うものですが、生育活性化型は作物をより健
康に且つ丈夫に育て病気や虫、また風雨に負けない体つくりをすることが目的とされま
す。従来型農業は、病気が出たらその病気をやっつけると言う対症療法型であるのに
対し、有機農業、自然農業は作物本来の能力を引き出し、健康で丈夫な育て方をする
と言うところにあります。
 で、その資材は作物が育つところの土壌を団粒構造にし、活性化すると言うのです。
正直なところ半信半疑なのですが、ともあれ有機認証を取るまでの団体ですからその
実績もありその代表とも縁があり、やってみよう、と言うことにしたわけです。その結果
は半年先になりますが、何事もやってみないと分かりません。研究心、向上心は大切
だ、と自分に言い聞かせながらの種まきでした。
 私達が食べるものは1年生の作物が99%を占めしかもその収穫物によって私達人
間の命が支えられています。その事を意識されない社会は何なでしょうか。
                        おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.518                       02.03.18
 子ども達の口腔の不健康は、歯科医師だけの力では到底取り戻せないところまで来
ています。子ども達の歯というとまず虫歯が問題にされますが、歯磨きの指導に力を
入れるています。ですが、大切なことは汚さないように食べることが求められている。
歯科医学では自浄作用という言葉があります。文字通り「ものを噛むことで口の中が自
ずからきれいに保たれること」を意味します。
 例としてペットフードのの歯が虫歯に犯され歯茎が赤黒くなっている。それに対して
野生の動物の歯は驚くほどきれい。その違いは自浄能力の差にある。ペットはドッグフ
ードという栄養素が濃縮された食べ物だけ与えられ、口の中の汚染を防ぐ術がないの
に対し、野生のものは繊維質に多い自然物をたっぷりと摂取して、噛めば噛むほど口
の中がきれいになっていく。
 人間も最近は高度な加工食品に依存した食生活になって、自浄作用が著しく低下す
る中でブラシでみがくことでかろうじて見た目だけをきれいにしている、と言うのが今の
人間の口腔の現実だ。そして今の口腔の汚れというのは、自然環境における富栄養
化タイプの汚染と同じで、海や湖といった自然環境では、排水によって富栄養化が進
み、これにともなって生物層が変わります。これと同様に人間の口の中でも栄養素が
濃縮された食べ物がふんだんに入ることによって、自浄能力を超えた汚染が進んでい
く。口の中でも同じく生物相が変わり虫歯をおこす最近が増えていく。
 ではどうしたら歯の自浄作用を復活させることができるか。昔の食生活に帰って自
然物だけをとるというわけにはいかないが、食べ物の物性に光を当てる=噛む力、繊
維質を食べることが大事ではないか。と指摘するのは東大の井上尚彦助教授です。
 で、歯に自浄作用を復活させるために、物性=繊維質から食生活を改善していく場
合、まず野菜から取りかかるのがいい。野菜を火を通した後の固さを頭に置き、柔らか
くなるナスやカボチャを一方の極に置けば、対極にはごぼうやタケノコなどの食事の工
夫です。20〜30年前の加工食品が普及する前だったら気を使わなくともよかったの
ですが今は栄養士や母親が意識的に組み立てねばならなくなっています。
 また虫歯以上にゆゆしき問題は歯周疾患の低年齢化と指摘しています。子ども達の
歯が、口腔内がどんどん不健康になるのは避けなければならないと思います。食べ物
が私達の体に与える影響は大きいことを歯医者さんが指摘するのを初めて知りまし
た。医療現場からみて医師の力だけではどうにもならない食生活の乱れを、今の私達
がどうするかが問われる時代になってきたとも言えるのではないでしょうか。
                        おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.517                       02.03.11
 例年より1週間早く籾種を浸種しました。秋の刈り入れが遅くなると台風時期にぶつ
かるので仕事がやっかいになる可能性があります。近所の農家がやれなくなり畑や田
圃が集まる傾向があり少しづつ秋の仕事量が増えてきているからです。
 浸種時間は1週間から10日あればいいという人もいますが、私の場合2週間位の
時間をとります。(今この町では水道事業が始まっていますが、水道事業と言うことに
なれば殺菌のため塩素を入れることになります。そう言う水は自然の種にとって好まし
いものではありません。昔から種は清水の流れる所に浸しておくのが一番いい、と言
われてきたことからすれば不自然と言うことになります。)
 種子は毎年購入します。自分で種を取る場合は、刈り取りも緩やかに、その後の乾
燥も自然乾燥で、そして選別、保存と言うことになります。自分で種を取ってもいいので
すが、秋の忙しい最中ではなかなか面倒な仕事なのです。種が無ければ始まらず、種
まきしなければ芽がでません。当たり前のことですが農業にとって、種と畑は無くては
ならぬ絶対の条件です。
 先に書いた2週間というのは発芽揃いをよくするためにやっています。発芽がばらつ
くと強いものと弱いものができてしまい、結果として弱い苗が負けます。蒔いた種が全
部根張りのよい、ガッチリしたものに仕上げるには最初の生命活動であるところの発芽
がとても大切になります。くどくどと書いていますが、苗半作という言葉があるように苗
の段階でその後の一生が決まります。
 よくできた苗はその後が楽です。自力で根を張り、しっかりと光合成をし成長します。
軟弱な苗は、水が多いととろけたり、倒れたりし、そうすると水の駆け引きを頻繁にした
りしないといけなかったり、果てはその間に草が生えて余計な手間がかかったりするこ
とがままあります。
 発芽だけは水分、酸素、温度の最高の条件で出発し、風雨から守りますが、発芽が
うまくいったら、水分を控え風に当て、気温も自然に慣れさせます。徐々に自然環境に
近い状態に持っていき、植える頃には根張りのよいガッチリした姿にするのです。そう
なれば、植えた直後から根が動き始め、自力で成長し始めます。
 育苗管理と言いますが、人間社会と違って管理する側にとって都合のいい育て方で
はいけません。苗が自立するように管理するのが農的な育て方です。そうしてその種
が自力でその能力を精一杯発揮し、力強い成長をするように育てられればグッドです。
                        おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.516                       02.03.4
 暖かい日が続いていましたが、昨日今日と寒さがぶり返し冷たい風が吹いていま
す。それでも春と言うことで家の前の麦はどんどん生長し畑の青さが目に付きます。麦
は、今茎を増やしつつ成長し続けています。4月下旬の穂作りに向けて体つくりに精を
出すことになります。それまで体つくり(栄養成長期)をし、その後穂つくり(生殖成長)
を迎えます。充分な体でないとよい穂が出来ませんから、大事な時期です。
 麦も稲もそうですが、一旦穂がでたら根の伸張をやめます。それまでの根や体で光
合成をし、精一杯花を咲かせ受粉し、栄養を体の維持以外は全て実=種に運びます。
そして50日くらいで熟します。その実りを収穫し、私達の命の糧の収穫となります。そ
の収穫によって以後1年の食料となるわけですから作柄は気になるわけです。
 そういうことから今の季節はどこの村でもオビシャ祭りが行われています。オビシャ
は御歩射と言って、五穀豊穣、家内安全などを祈願してきました。私のムラは毎年3月
7日がその日で、村中が集まり、神楽舞をし郷社である大須賀大神に奉納します。 今
は、村中が集まるからと、区の総会も兼ねて役員の選出や事業報告、会計報告なども
一緒にやってしまっていますが、相変わらず神楽舞などオビシャの行事も続いている
のです。いわば伝統行事ですから今までもそうであったように今後もづっと続くでしょ
う。どんな時代でも食べ物の確保は最大重要事であったに違いありません。
 今輸入すれば買える、となって既に7割も輸入に頼った国になってしまいましたが、
果たして今後も将来に渡って食が確保できるのか、分かりません。皆農業から離れ、
少数の者が食料生産している状況となっていますが、復活させるとしたら大変なことで
しょう。畑の疲弊、荒れた田圃を復活するのは何年もの時間と労力を要します。そして
農業も技術ものですから素人がやろうとしても仕事にならない、となったらどうなるでし
ょうか。 
 畑の方は、ほうれん草の一部が薹立ちを始めました。春を感じて生殖成長に切り替
わってしまったようです。芯が立ち上がり花を咲かせる準備に入ってしまい、そうなると
葉を食べる野菜は食べられなくなってしまいます。固くなったり味が変わってしまいま
す。小松菜やチンゲンサイ等も同じです。おかげさま農場では順番にいつも種まきして
いますが、こればかりは自然のなせる技で人間の都合など聞き入れてくれません。
 自然は恵みを与えてくれますが、人間の都合通りと言うことはまずありません。薹立
ちした野菜はトラクターでかき回し鍬込むことになります。
                        おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.515                       02.02.25
 知り合いの人が、高柳さんお酒を造らないか!と持ちかけられ3年目。ようやく自
前?の日本酒ができました。私の田圃のお米がお酒になったのです。声をかけてくれ
たのは秋山さんという人で「大栄町のお酒が欲しい。どこに行ってもその地域の地酒と
いうものがあるがこの大栄町にはない。だから何人かに声をかけて来たんだが、やれ
ないかなあ・・・」ということでした。
 私の方は、添加物や合成アルコールなどの混じらない本物のお酒をつくってみたい
、ということで話しが進み、隣町の造り酒屋の当主に協力いただきながら作ったので
す。昨年の秋に仕込み、麹と酵母菌だけで作ったお酒ができあがりました。で試飲会を
計画し、12人ほど集まりました。日本酒は焼酎より後が悪い、という人が何人かいまし
たが、当主曰く「本当に麹と酵母菌だけのものは頭が痛くなったりすることはまずな
い」、ということでしたが本当でした。
 その後、酒蔵に案内していただきその作り方を見させていただいたのですが、いわ
ばお酒の有機栽培だな!と思いました。当主曰く、原料にこだわり、作り方にこだわり
そうして作るとその段階で数倍の経費になってしまう。だがそれを守りたい、というので
す。参加者の1人が「じゃあおかげさま農場と一緒ではないか。似た者どうしと言うがそ
んな縁はつながるものだなあ」などと言っていましたが、話しが合うのです。
 お酒は酒税法という法律により大蔵相の管轄に入りますから、酒蔵さんに頼むしか
ありません。税金をがっちり取られるしくみになっていますので仕方ありません。自前
の名前にして分けてもらうにしても税金やら手続きは酒蔵さんにやってもらうしかあり
ません。まあ今度産地見学にお出で下されば一献差し上げたいと思います。
 お米や野菜は自分で調理できますが、味噌や醤油、小麦粉などは加工という過程を
経ないと食べられません。常々8割は自給したい、と思っています。それというのもあま
りに加工産業が発達し、何が本物だか分からなくなっていることやその加工技術が添
加物だらけの実状を見るとき伝統の味が分からなくなってはいけない、という危機感も
あります。私達の味覚がおかしくなっています。
 生産者と消費者という分け方がありますが食べ物関する限りそうではいけないと考
えるものですがどうでしょうか。私達は生産者であると同時に消費者でもあります。産
地見学もそうですが現場を見ることはとても勉強になります。
 3月3日夕方から小さなお祭りがあります。近くのかたはお出で下さい。私達の野菜
やおもちそしてお酒をいただきながらオールディーズの音楽を楽しむ会です。 
     おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.514                       02.02.18
 今この千葉県でもエコ農業に取り組むべく委員会が設置されました。委員20名での
委員会ですが消費者(生協、主婦、ホテル関係者など)流通関係者(青果市場、食品
業者、量販店、農協)学識経験者(元試験場長、農林省)生産者代表(3名)などの20
名の委員会です。
 こういう委員会はあまり期待できないと思っていたのですが、2年前に県に有機農業
の認証を陳情してきたこともあり、断わる訳にはいかないだろうと2回出席してきまし
た。余談になりますが、これまで成田空港問題解決のための農的価値の実験村の委
員会、1昨年は農水省の野菜価格の安定委員会と、委員会の端くれとして出席してき
ましたが、正直なところがっかりしてきました。そういうことで、二の足を踏んでいたので
す。でもいくらかでも期待が持てるなら、と出席してきましたがどうなるでしょうか。
 参考までに、県として取りあげていることは、@食品の安全・安心への関心の高まり
A農業生産環境の保全、が背景としてあり、「環境にやさしい農業」「消費者に顔の見
える農業」を目指すのが「千葉エコ農業」の目的となっています。
 何となく分かるようで分からない、というのが私の感想でしたが皆さんはこれで理解
できるでしょうか。@では、近年の環境問題や食品の安全性への高まり、有機認証制
度の開始など、農産物の栽培情報公開等の高まりがあり。Aでは農業生産の現場で
は土壌への塩類集積、硝酸性窒素の窒素による地下水汚染問題が問題となっており
農業生産の環境保全が課題となっていること。などから減農薬減、化学肥料を推進し、
そういう農産物には認証を行っていく認証制度を作ることになっています。
 で、前回の委員会で、それならば個々の農産物だけでなく、県として5年後には5割
の削減を目指すとか、それができないのなら3割でも県全体として目標を掲げることが
あってもいいのではないか、と提案しましたら案の定、それはできません、という。
 私達も無化学肥料栽培とか、無化学農薬栽培とか言っていますがそう言わざるを得
ない状況がおかしいと思います。化学肥料や化学農薬に頼った農法はここ40年で環
境問題や食の安全を脅かし、持続的生産でないことが分かってきています。行き詰ま
っているのです。農業生産は人間社会の食べ物の確保でもあるわけで、農業者だけで
なく社会全体で守るものだと思います。命を守ってこそその意味があると思うのです。
 経済成長的次元で考えるものではなく、命は守るもの=その食の確保の環境保全
は社会全体でするものではないか、と考えるものですがどうでしょうか。今日の午後第
3回目の会合があります。また報告したいと思います。
                       おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.513                       02.02.11
 ここの所ぐずついた天気が続いていましたが、今日は久しぶりの快晴です。その
分?寒さがぶり返し寒い朝を迎えています。ですが立春も過ぎ一時の寒さからは遠の
いているようです。私の前の畑の小麦も一段と青さを増してきています。
 今年は昨年より少し温かい日が続いたことと、雨が多く土に水分が充分なせいか、
野菜達の生育が前進しています。3月に収穫予定のほうれん草や小松菜が成長し過
ぎ、そろそろ収穫してもよいほどに成長してしまっています。計画的に種まきしていても
天候だけはどうにもなりません。
 その昔に農業はポテンシャルエネルギーを有用なものに変える仕事だ!と教わりま
した。太陽エネルギーは無限に地球に注いでいます。我々が大地に種を蒔き育て、太
陽エネルギーを利用することによってお米や野菜、果物といった糧を得ることができま
す。またそれなくして人間は生きることができません。
 地球的に考えれば人間は消費者です。この地上に生きるものにとって唯一の生産
者は植物です。なぜなら植物だけが太陽エネルギーを蓄えることができるからです。人
間を始めとする全ての動物は、植物の蓄えたエネルギーを消費して始めて生きること
ができます。
 そして、単位面積あたり最も多くのエネルギーを蓄えることができる穀物はお米で
す。私達の住む日本はアジアモンスーン気候という温暖で雨に恵まれた地域です。そ
のことが、農耕・米食民族としての歴史を歩むことになって現在に至っています。一方
欧州の方では気候が寒く雨量も少ないことから、麦類、そして草しか生えない地域は、
草を食べる動物を飼い、牧畜・肉食民族として定住してきました。
 この地球は多種多様な気候風土によって様々な文化を形成してきました。それが最
近はグローバル化などといって世界が同じ規格によって統一するかのような動きが目
立ちます。それでいいのか?と思います。
 気候風土は人間の意志で変える訳にはいきません。逆に気候風土にあわせて人間
は生きてきました。それが世界各国の様々な食文化を作り出してきた人間の知恵であ
り、工夫であったと思います。各民族が気の遠くなるような時間をかけて歴史をたどり
文化を昇華させてきたのでしょう。
 今年も人参の種まきが始まり、各種野菜、お米つくりの準備に入ります。お米はこの
国では1年に1回しかとれません。数千年来そうであったようにこれからも変わらない
でしょう。自然は私達に恵みを与えてくれる一方、自然の摂理に従うしかないのです。
                        おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.512                       02.02.04
 昨日は味噌つきをしました。おかげさま農場の農家のお母さん、町内の農業青年、
都内葛飾区と習志野市からの娘さん2人、ナチュラル、多古町から2人と興味を持つ
人が見学兼手伝いとして集まりました。朝6時から大豆を煮始め、一方で麹をもんで塩
切りして、味噌つきの道具を取り出したりして午前の部は終了し、午後味噌をつきまし
た。 30日にお米1斗5升を蒸らして麹菌種をまぶし、米麹の仕込みをしてから4日目
になります。大豆は同じく1斗5升を前日に水に浸します。そういう準備をしての味噌つ
きです。米麹はいろいろなやり方がありますが、問題は温度管理で人間の体温くらい
の温度が維持できればいいのですが、麹の繁殖に伴って麹の熱がでます、時々見回り、
上がりすぎないよう、下がりすぎないように、また空気を入れてやったりして管理します。
つき上がった味噌は約4斗で、樽に仕込みました。
 雨模様でもあり、お茶をし、以下のような話しが続きました。
 私のメ−ル仲間からの配信で。題して、日本中雪印じゃないのか!
・・・雪印食品の問題が大騒ぎになっているが、ちっぽけな百姓として一言いいたい。
 徳島県は有数の野沢菜の産地。これはみんな長野県に送られて長野産の野沢菜漬
けに化ける。千葉産のショウガ、ピーマンはほとんど全量が高知県に送られ高知のショ
ウガ、高地のピーマンの箱に入る。輸入のソバが、信州ソバに化ける。輸入桜エビが伊
豆の桜エビに化ける。非常に多くのサツマイモが(特に関西方面)鳴門金時に化ける。
こういうことをあげていくと、日本中がみんな雪印ではないだろうか。小麦粉もそうだ。輸
入の粉と国産を混ぜて「国産」。雪印は犯罪会社、企業なんかじゃない、などとわめい
ている評論家ばかりだが、このような論法でいったら農協なんかどうなるだろうか。・・
・というものです。そうしたら、福島県の農家からこういうのもあるよ、と
 腐らない中国産しいたけ・・・「国産と中国産の干ししいたけをを水に入れたビーカー
に浮かせ封をしておくと、国産は3日で黒くなり1週間で水にとけ出す。中国産は50日
経っても形が崩れない(週間文春)、農水省、米国産の鶏肉輸入停止(家禽ペスト汚
染)を発表、EU、中国産冷凍エビ(抗生物質残余)を輸入停止(日経)、米国米の袋か
ら基準値超える鉛検出(読売)ハンバーガーから農薬発見(月刊女性)中国産ごぼう
から基準値の3.4倍のBHC検出、スナックエンドウからキャプタン剤、絹サヤエンドウ
から発ガン性のppDDE、アメリカ産ブロッコリーから有機りん系殺虫剤(同上)など。
 このことを私に教えてくれた福島の農家曰く、「なんか世の中がものすごいことになっ
てきているように思います。」と結んでいました。
                        おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.511                       02.01.28
 いくつか私達の野菜に問題がありました。サツマイモに腐りが入った、キャベツが萎
れていた、人参が折れてしまっていた、などです。サツマイモは寒さに弱いものです。
貯蔵適温は12度以上ほしい、と言われています。そうでないと冬を越せない。ですか
ら畑に1.5m位の穴を掘り、その上に30cm以上の藁や土を被せて貯蔵してきまし
た。ただ1週間や10日くらいなら0度以下にならなければ持ちます。
 で、貯蔵場所の端などは温度が保てないところもたまにはでてきます。そうしたもの
は荷つくりの段階で、選別し処分するのですが、見落としがあったりします。目で見て
判別し難いところがあるからです。それが出荷されてしまったことが原因のようです。ま
た、キャベツはこの季節寒さのため限界温度に近くなり、外葉から傷んできます。その
葉をつけて出荷すると、萎れていますので見栄えが悪くなります。
 今回の場合生産者は、一枚葉をつけた方が運送の傷みの保護にもなるからと良い
のではないか、といわば善意でつけたつもりが、受け取った方は葉が弱っている、と見
られたのではないか、と推測されたようでした。農家であればこの季節はそうなるのが
当たり前で、一枚とって使えばどうと言うことはないのですが、難しいものです。白菜な
ども表面の葉がちりちりになって枯葉のような部分がでてきたりしますが、この辺の農
家にしてみれば、そういう白菜ほど味が詰まって美味しい、という話になるのですが、
どうも違う反応が来たりします。
 食べられないものを売ってしまってはいけませんが、季節の変化や状態の変化はや
むを得ない、と思うのです。工業製品のようにいつも同じ形同じ色でいるとすれば生き
ているとは言えません。寒さが進行するに連れて畑の姿が徐々に変わってきます。
 私は20カ国近く歩いてきて野菜や食べ物がどんな風に流通しているのか見てきま
したが、ごく一部を除いて日本の野菜規格であれば到底規格に入らないようなものが
当然のようにお店に並んでいます。それは、自然の変化によって変わるものをそのま
ま受け容れることを知っているようにも見えます。
 農産物を工業製品と同じように見ることなく、季節の変化を理解して欲しいと願って
います。規格と見栄えにこだわるあまりに農薬の使用や不自然さの農業になってはい
けない、と思うからです。
 ですが、問題を感じたり、おかしいと思ったことは率直に教えていただきたいと思い
ます。その事が私達の勉強であり反省になりますので。
                       おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.510                       02.01.21
 昨日は、暦の上で一番寒い日大寒の日でした。その日息子の友達が訪ねてきまし
た。福井県で有機農業をしているのですが、奥さんが千葉県の船橋出身で子どもがで
き臨月とのこと。送りついでに夫婦での来訪ということになった、と言うわけです。
 で豆腐を作り始めた、と言ってその豆腐をいただいたのですが、こくがあり美味し
い。普通は大豆を摺り、煮て豆乳とおからにして、豆乳ににがりを入れてお豆腐を作る
のですが、おからを出さない作り方というのです。おからを出さないで大豆をまるのまま
お豆腐にすると言うのは聞いたことはありましたが食べるのは初めてでした。
 製法を聞くとにがりにグルコンとすまし粉を加えてつくるという。できればにがりだけ
で作れたらいいね、と話したのですが丸ごと大豆というのは面白いと思います。ただ丸
ごととは言っても機械で皮を剥がなくては行けない。そこが問題と言えば問題かも知れ
ません。ですが、それ以外はよいと思うのです。なんでも丸ごとと言うのが食の原点か
らすれば理想に近い、と思います。丸ごとというのは命がちゃんと詰まっていることで
すから。
 玄米がいいというのは玄米には命があるからです。芽がでて成長する力がありま
す。現代の日本人の食は命を丸ごと食べる、と言うことからはかなり距離があります。
身土不二からほど遠く、加工の上食品添加物という化学物質が数十種類入っていま
す。その上、遺伝子組み替えと来たらまともな食べ物なのかわからなくなっています。
 そんなことで、彼も有機農業だけでなくお豆腐も!と言うことで町の施設で3人の仲
間で挑戦しているという。まだ始めたばかりと言うことですからどんな風になるかわかり
ませんがめげずに頑張ってほしいものです。
 食生活から見ると機械文明と経済主義はつまるところその正体が分からなくなる歴
史でもあったと思うのです。例えば、お米や野菜がどこでどんな風に育ち、栽培されて
いるのか皆さんは知らない。毎日食べる(味噌や醤油そしてお米離れの一因であるパ
ンなど)にしても原料に何が使われているか、どんな風に作られているかわからない。
もちろん私達も知らない。
 狂牛病騒ぎで肉骨粉が騒がれましたが、その肉骨粉が調味料、化粧品や薬品な
ど、数千種類に使われていたという話しもあります。我々に伝えられるのはその効能だ
けであり、その原料や製法などはその殆どが知らされないままでいます。
 ともあれ、福井県の方でも何とか本物を!とチャレンジしています。全国各地にそう
いう人達が増えることはよいことだと思います。切磋琢磨で頑張ろう!で送りました。
                        おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.509                       02.01.14
 今年は寒さが厳しい年です。1月出荷予定のブロッコリーが寒さのためほとんど成
長しません。おかげさま農場の屋根裏部屋がマイナス10度を記録したというのですか
ら大地にある野菜は凍り付くのも当たり前なのかもしれません。日当たりのよいところ
なら凍り付いた野菜が10時か11時頃には生きかえりります。曇り空だと一日中凍り
付いたままで終わってしまいます。
 で、日がかげる4時頃には気温も下がり始める訳ですから、生きて成長する時間が
4.5時間しかないことになります。その日の気温が低いとただ生きかえっただけ、と言
う日もあるでしょう。生育適温というものが作物にはありますが、ぎりぎりのところで今
時の野菜は生きています。ほうれん草や小松菜などは強いには強いのですが、やはり
じっと成長を止めて生き抜くことだけで終わっているようにも見えます。
 そんな中でも既に人参の種まきが始まっています。それだけの寒さですから露地栽
培では芽がでません。それで、畑にビニールマルチングをし、穴の空いたところに種ま
きをします。その後すぐにトンネルをかけビニールで覆いをします。2枚から3枚くらい
着物をかけるようなものです。それで時間をかけて芽がでます。場合によってはもう1
枚保温資材を掛けます。この手間と資材が大変なのですが1年を通じて人参を供給す
るためには必要なことなのです。
 今季節は暦の上では、小寒から大寒に向かっていて1年の内で最も寒い時を迎えて
います。そんな時は、午前中は収穫できず、午後収穫(作物が生きている内)になりま
す。それでも日が短いので、もたもたしていると日が暮れてしまい手がかじかみ足が棒
のように感じが無くなります。
 太陽のありがたさがしみじみと感じる季節です。太陽といえば私のところのお嫁さん
が石川県の能登半島の出で暮れからお正月にかけて2週間ほど里帰りしていたので
すが、我が家に帰ってきて、こっちはお日様がいっぱいあるんだね、まぶしい!と言っ
ていましたが日本海側は毎日が曇りか雪で太陽は時々しか拝めない、といいます。そ
れを思うとまだこの千葉は太陽があり、仕事ができるだけいいのかもしれません。
 考えてみれば伊勢神宮は天照皇大神ですし、我が家は真言宗で大日如来が信仰
仏です。この地球上の全ての生き物が太陽によって命を与えられていると言っても良
いのかも知れません。
 見かけは悪くなりましたが、白菜がおいしい。頭が寒さでごしゃっとなってきましたが
おいしさは格別です。そのまま半分に切り、鍋に中に入れ、シーチキンを入れるだけで
いいのです。お試しあれ!            おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.508                       02.01.07
 明けましておめでとうございます。
今年は、平和そして食の安心と安全が築かれますように・・・
と、今年の賀状のあいさつで始まりました。が
 昨日は、有機農業研究会の集まりがあり千葉市まで出掛け交流をしました。千葉県
内の研究会のメンバーは約150人いて、集まったのは3分の1の50人でした。午前1
0時から始まり、午後5時まで講師や実践発表があり、その後8時過ぎまで懇親会をし
てきました。懇親会は半分になりましたが、新規就農者もいて結構盛り上がりました。
 遺伝子組み替え食品に詳しい人も話してくれました。害虫に強いジャガイモ、除草剤
で枯れない大豆、腐らないトマト、害虫が食べると死ぬトウモロコシなど、そんな作物が
あれば農家は楽で商品も安くできる!というふれこみでアメリカから始まった遺伝子組
み替えというバイオテクノロジーが安全なのか!という問題です。
 正月の最初の電話が北海道の農家からあり、新年のあいさつをしながら様子を聞い
たのですが、やはり経営は厳しいということでしたが、ジャガイモが加工でさばけたの
で何とか息がつけた、といっていました。どういうことかというと、遺伝子組み替えの輸
入ジャガイモが発見され、ポテトチップの加工業者が輸入物は破棄し、組み替えのな
い国内産を欲しいとなってさばけたというのです。
 そして、その加工会社は中玉が主流でしたが大玉はマクドナルドが引き取っていた
といいます。でマクドナルドは厚生省に圧力をかけ問題なしの了解を取り付け国内流
通させたといった噂がある、などと話していました。で、半額セールなどといってバーガ
ーを売っているのかな、などとなんだか流通の裏側をちょとかいま見た気がしました。
 ついでに、「ファーストフードが世界を食い尽くす」エリック・シュローサー著と言う本
を紹介します。これはアメリカで出版された本で、訳書が草思社から出版されていま
す。全米ベストセラーノンフィクションというものです。是非お読み下さい。副題として、
マクドナルド方式が経済・社会。産業構造の根幹を崩壊させる!というものです。
 正月早々願いとは逆の情報が入り込み、少々食傷気味ですが、私は遺伝子組み替
えは間違っていると思います。なぜなら自然の摂理にそむく技術は信用ならないから
です。人間も自然の摂理の中で生きています。我が国は、既にかなりの遺伝子組み替
え食品がアメリカにならって安全としていますが、スリランカでは全ての組み替え食品
の輸入を禁じました。
 今年の冬は寒いです。今日の畑の大根は11時を過ぎても凍っています。
                       おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.507                       01.12.24
 地球から  三浦大根  引っこ抜く
 地球から  お米をいただき  我が命
 先週、鍋料理を囲んでの集まりがありました。その名を無限塾といい、俺にも言わせ
ろ!などと好き勝手な事を言い合う集まりなのです。で、年末だから鍋でもやろう!と
言うことになって私は飼っているニワトリを絞めて、その肉を持参しての会でした。
 六時半集合で、十一時過ぎまで飲んで食べての会でしたがその内に、無着先生が
詠んだ句が上の一句、とはいえ「思いつきだな、考えた句ではないが大根が入ってい
るから一応俳句になるかな」 などと自作自評?しつつ、テロ問題や教育問題などを語
り合い、時間が過ぎました。下のは句とも言えず単なる語呂合わせですが、ともあれ、
地球に生かされていることが始まりであって、、、と言う無着先生の話にはみな同感。
 昨日は友人の息子の結婚式に出席しましたが、そのときでた話しです。知り合いに
中国から野菜を輸入している人がいて農薬中毒が問題になっているという。ホリドール
やパラチオンと言う日本では禁止されている農薬が使われている、という。この農薬は
毒性が強くあまりに危険というので日本では禁止されたのですが、語ってくれた人曰く
「仕方ねえよな、日本から持ってったものがまた日本に帰ってくるということだからな。
その農薬を売っているのは日本の商社だろうからな。」
 前にもちょっと書いた気がしますが、日本から開発援助と称してアジア各国に50万
トンを超える農薬が野積みされ、一方ではきれい物好きの日本人向けには農薬をバン
バンかけられている。その中には日本で使用禁止の農薬がかなりあると聞きます。ま
た本当かどうかアジアの国で、そういうものは援助でもいらない、と言ったら日本が援
助すると言うのに受け取らないと言うのか!と言った政治家?がいるとかいないとか、
そんな話も聞いたことがあります。
 2001年も間もなく終わろうとしています。テロが戦争に拡大し、ますますへんな大
儀が叫ばれ、命を大事にすることがおろそかになっているように思えます。 WTO・グロ
ーバル化を推進するアメリカの中からマクドナルド化が経済、社会、産業構造の根幹を
崩壊させる!という指摘がアメリカの中からでてきました。「ファーストフードが世界を
食い尽くす」エリック・シュローサー(草思社)を是非お読み下さい。正月の読書にいい
と思います。
混沌とするこの世の中ではありますが私達は来年も数百年かけて作られてきた田や
畑を耕し続けるでしょう。来年もよろしくお願いいたします。よいお年を!
おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.506                       01.12.17
 今年は暖冬ではないようです。毎朝霜が降り、畑や田圃の大地が 真っ白になりま
す。大根やほうれん草などの葉っぱは凍り付き、手でさわるとガラスが壊れるようにポ
キポキと折れてしまいます。ですから霜の薄化粧した野菜はそっとしておくより他はあ
りません。
 太陽が出て霜が解け始め本来の青さが戻るまで2時間くらいはかかる?でしょう。そ
こからでないと収穫作業は始められません。毎年のことですが、凍り付いた野菜が元
に戻る事が不思議です。霜のかかるようですと今朝あたりではマイナス3度を記録して
いますが、地表近くは更に低くなりマイナス5度くらいになります。そうなると野菜も凍り
付き大根などは、凍り付いたのが目で確認できます。
 凍り付いた野菜はよく見ると、透き通るような潤んだような感じになります。そのまま
引く抜くとよく分かるのですが地下部分は本来の大根なのですが、地表部分の寒さに
当たった部分だけが凍り付いているのがよく分かります。で、そうなった大根を食べる
とガリガリで煮てもガリガリで食べられたものではありません。
 畑にある大根は一旦はそうなるのですが太陽の温もりで凍り付いた大根が生きかえ
ります。太陽の暖かさと大根の生命力で生きかえるのです。人間がしようとしても息を
吹き返しはしませんが、畑でならば元に戻ると言うのが不思議です。
 で大根抜きやほうれん草の収穫は、霜が解け、凍り付いた野菜が生きかえるのを待
って、と言うことになります。ほうれん草などの葉物は、土とほうれん草の間に包丁を入
れて根を切っての収穫となります。地表が凍っていては包丁が通りません。ちょっと日
陰ですともう午後でないと仕事になりません。
 ですが、そういう季節の大根や葉物は美味しくなります。先日、娘の友人が5.6人
来て鍋パーティをしてましたが、野菜が美味しい、何故こんなに美味しいのですか?と
言っていましたが、別に特別なことではなく、皆さんが美味しいと感ずるとすれば季節
が作るおいしさですよ!と話しましたが、どうなんでしょうか。
 で、自分達がかってきたお肉は半分以上食べ残し野菜は綺麗に食べたようです。お
かげで残った肉は我が家の食卓にのり、我が家の鍋になったのです。
少々宣伝になりますが、今年は落花生が人気です。去年の倍は出ています。何で
だ!と聞くと、だって美味いんだもの!野菜であれ、落花生であれ美味しい、と言って
くれることは私達にとって何よりの励みの言葉です。皆さんも食べてください。
                       おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.505                       01.12.10
 今朝は寒い朝でした。我が家の玄関前の温度計がマイナス3度を記録しました。畑
は真っ白になり、雪化粧のようです。冬が来るのは毎年のことですが、寒さが身に凍み
るようになり、野菜達が霜の衣をかぶるようになると本当の冬を実感します。
 朝からお客さんが5,6人来て今11時になろうとしていますが、空は快晴、いくらか
北風が吹いています。どういう訳か庭先のニワトリだけは元気です。
 昨日2回目の味噌作りを始め、お米を蒸かし、麹種をまぶしてねかせました。温度を
とるため電熱カーペットを下に敷きその上にムシロを広げます。その上で麹つくりをす
るわけです。今朝見たらまあまあの具合で菌がまわっているようでした。1日だけは熱
が全体にまわるように多少かためてムシロで覆っておきます。そうすると菌がまわって
固まり状態になります。それをほぐし、暑さ5.6p位の厚さに広げます。それから3日
位で全体に麹菌が繁殖するように管理します。
 これから食文化講座のようなものを開きたいと思いつきで考えているのですがどうで
しょうか。この国には味噌作りから始まって、数十年数百年の経験から生み出した食
文化があります。秋であれば沢庵漬けや白菜の漬け物、冬は近所の川魚の佃つくり、
春になればワラビやタケノコなどの加工、夏はなすびやキュウリの古漬けやなど、など
それに旬の野菜を材料に料理を実際に作りながら学ぶ講座のようなものがあってもい
いかな、と思うのですが、、、、、。
 7日には、小学校の生徒全員での麦踏み授業がありました。雨あとでちょっと心配し
たのでしたが天気は晴、皆が自分の種を蒔いた処に行き、農家のにわか先生が班長
になり麦を踏みました。最初にやって見せて号令と共に始まりました。最初は、大事に
していた麦でしたからこわごわという感じでしたが、大丈夫だからとか、踏まれて強くな
るのだとか言ったら、踏むと言うよりは踏んづけると言った子もでてきて注意するほど
でした。
 それが終わって、焼き芋を用意していたのですが火の管理がうまくいかず間に合い
ません。幸いというか、おかげさま農場の仲間がしんこ餅を用意してくれて(ようじで突
っついて団子のようなもの)をあげることができ、助かりました。で焼けきれない焼き芋
が焼き上がったのが午後3時近くで、それを学校に届け火の始末をして結局1日かか
ってしまいました。
 子どもは発想が豊かです。純粋です。むしろ私達の方が勉強させられるなあ!と言
うのが協力してくれた人達の感想でした。
                        おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.504                       01.12.3
 昨晩NHKで「再生なるか日本農業2・構造改革をどう進めるか」という討論番組があ
りました。こういう番組を見ると、この国は社会主義国家なのか管理国家なのかと考え
てしまいます。つまり上からの発想でであって、我々普通人の側に立っての設問設定
でない、と思うからです。
 消費者と生産者という分け方をし、対立させる討論形態は今も変わらない。司馬遼
太郎はこの国のかたち、という論の中でこの国の有り様を問題提起していた様に思い
ますが、国民全てが立場を変えればお互いが生産者であり、消費者でしょう。
 人件費が20分の1、或いは50分の1と言った国からの野菜が安いのは当たり前で
す。人件費と言う表現でなく生活費と言う表現を使った方がわかりやすい。私達も今の
20分の1で生活できるならば充分競争力はできるでしょう。それは国情の違いであり
、平面的に比較することがWTOのいう自由化ということなのでしょうが、こんな理不尽な
ことはない、と思うがどうでしょうか。
 また税金の使われ方が問題となっていましたが、私の住む町の広報が届き町職員
の給与が公表されていましたが、年600万円を超えています。私の推察するところ、
農家の年収はおそらくその半分程度と思われます。この国には公務員準公務員と言
われる人が600万人います。
 300万農家と言われるところに30万人を超える農協職員がいて、農政に関わる公
務員が?万人いて、肥料会社がいて、農薬会社がいて、農業機械屋さんがいて・・・・
とどれだけ農家に関係している人がいるのか、そういう見方をしての討論会もあってい
いのではないか、と思います。
 そんなことを考えていくとこの国はどうなるんだろうかと、気が滅入ります。多分農業
や農村だけでなく、ものをつくる仕事をしている大工さんなどの職人さんの世界も同じ
運命に立たされています。それでいいのだろうか、と思います。
 夕べ息子と嫁さんとテレビを一緒に見ていたのですが、その時の話しで「経済でしか
語れないことが悲しいし問題だね。食や命、そして環境、歴史的な観点がないことが問
題ではないか」などと話しましたが、どうでしょうか。
 一方では、アフガン戦争などが毎日のように報道されています。情報は、流す方に
有利なように選択して報道される、と言うことですが、これはかっての大本営発表にマ
スコミが追随し経験済みです。そこから何を学ぶか、そこが問われている時代に思い
ます。競争して生き残ろう、などと言うことでなく共に手をたずさえて生きたいものです。
                       おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.503                       01.11.26
 農産物を工業生産物と同じように思っている人達が多いように感じます。量りをかけ
て作るものは良いのですが、大根やキャベツ、レタス、ブロッコリーなど一個ものはそ
の日その時で大きさが変わります。で大根だったら1kg以上のものをとか、ブロッコリ
ーだったら拳骨位のもの以上とかで収穫するのですが、それが不満らしいのです。
 私達からすれば、一株で1個しかならないものはどうしようもないのですが、私達の
悩みは数量を満足させるか、大きさを満足させるか畑で悩むことが多いのです。だから
一定の基準を守っているつもりなのですが、最初に大きいのが出荷されるといつもそう
だと思われてしまうようです。私達だって、時々はスーパーに行きどれくらいの物が出
荷されているか見ています。だからそれらに遜色ない物をとは思っているのです
が、、、。
 で、天候や注文の予測が野菜の生育がピッタリ合うことはないので、出荷できなくな
ると、何でないんだ!となります。他の出荷組織もそうですが注文にピッタリなどないの
が普通です。いつも注文だけ出荷できていると言うことは、余っている程と言うことにな
り、それらは畑に捨てられている、と言うことになります。
 作物は、生きていますから人間の都合のいいままでいることはありません。今年は
何回も産地見学をしましたが、こられた方は捨てられている野菜を見て、もったいない
ねえ、とおっしゃる。私達もそう思うのですが、これだとクレームが来る、と言って説明
するのですが、来てくれた人達はそれでも畑から拾って持っていってくれます。
 なんでも良い、とは思いませんが常々疑問に思うことです。何も知らず、形や生育の
ことを知らずの為なんだろうなあ、と言うのが我々の感想ですが少々気が滅入ります。
 愚痴はこの辺にして、小学生の麦蒔きについて。
 先日、麦蒔き体験をした小学校の先生達が来ました。校長先生が全学年の先生を
引き連れてきたのです。子ども達の様子を聞きましたら1週間に一遍畑を見に行ってい
るという。1週間目は畑に入らず見ただけ、畑に入っても大丈夫と言ったら畑に入った
そうですが、それが、もう抜き足差し足のようにそっと麦さんを大事にするそうです。畑
近くなると、麦さんは元気かな!と話し、帰りは麦さんさようなら!とまるでそんなふう
なのだそうです。
 種を蒔き、命の育つ姿を見て大事にする心がいいです。やさしさや思いやりは知識
で教えることができません。行動と体験の中からしか生まれない様に思います。たった
1本の麦でも大事にする気持ちを大事にしたいと思っています。  
                     (おかげさま農場・高柳功)

(産地の声)vol.502                      01.11.19
 今朝の霜は今冬の中では大霜です。寒さが強くなると作物の成長が止まりますが、
ほうれん草や小松菜などの露地野菜が一味おいしくなります。感覚的に言えば寒さが
おいしさをぐっと詰める様なものかもしれません。 ですが今年の天候の場合、秋の雨
量の多かったせいか成長が例年より遅れ気味です。品不足にならなければいいので
すが、雨量の多かったために、地温が下がり生育が遅れ気味です。
 反対に、寒さのおかげか虫たちが少なくなってきました。気温がマイナスの温度にな
ると虫も動けなくなります。越冬の準備が終えたと言うより寒さのせいでいなくなってき
たように思います。最近の虫は、暦のように動き回るのではなく、何かどん欲で気候さ
え良ければいつまでも繁殖、我々には食害をもたらします。前にも書きましたが、最近
は、WTOの自由貿易のおかげか病害虫迄もが輸入されているように思えます。
 先日知り合いの教授に会い話したのですが、『なんだかんだと言っても日本は豊か
だね。タイやカンボジア、東ヨーロッパなど世界から観ればこれでも豊かだよね!世界
中から食料を買い集め、残飯は大量排出国なんだから。そうだろう、高柳!』 彼は学
生を連れて、毎年タイやハンガリーなどに現地調査などに出かけています。そうした実
状からすると日本はまだまだ飽食の国だというのです。
 しばらく前のことですが、同じ農業をする仲間と話しているときに、『選べると言うこと
は良いことなのかどうか、疑問に思うね!』と話しましたら、『俺もそう思う。』と言う返答
が帰ってきました。私は1950年生まれですが、私達の育った時代は選べない時代があ
りました。なにせもののない時代は、ないのですから選べません。あるかどうかが第一
であって美味いとか美味くないとかは問題ではなく、食べられるか食べられないかが問
題でした。ですから、秋になればどこに柿があるか、どこの柿は甘いか、渋柿かなど皆
知り尽くしていたものです。
 多分そういう経験の中から、見かけや臭い、形状種類などで食べられるか食べられ
ないのか判断力が培われてきたのではないかと思います。ですから最近の賞味期限と
いう表現は何とも味気ないもののように感じられます。
 ともあれ飽食と大量輸入が日本という自然環境に及ぼす影響には不気味なものを
感じます。狂牛病が問題になっていますが、私の感想を言えば、とうとうでたか!と言
うものです。自然環境は循環しています。その循環と生態系の営みの中でかってなか
ったものが入り続けるとどうなるか。日本という大きな場での実験が行われているよう
に思います。                   
                       おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.501                      01.11.12
 11月6日に麦まきをしました。新規就農者の原くんの感想を紹介いたします。
・・・・・近くの小学校の全校授業として、畑での種まきに僕も参加させてもらいまし
た。最近の小学生は、携帯なんか持っちゃったりして、スレた感じなのかなぁ?な
んてちょっとドキドキしちゃいました。
畑に小学生がやってきました。高学年の子供たちは、顔つきもしっかりしていて、
僕と同じくらいの身長の子も、結構いて、「おぉ、スレてそうだ」と思いましたが、ト
ラクターでうない立てのふかふかの土を前に、「ここに入ってもいいの?」なんて聞
かれて、見た目は大人っぽくても、まだまだあどけない子供なんだなぁと、なんだか
ホッとしたりしました。
 この小学校は、全校生徒で約120人だそうです。1学年20名程度で1クラスです。
これくらいの生徒数は、いいですね。みんな顔見知りのようでした。
 種まきでは、高学年と低学年が混ざった班になっていました。高学年(班のリーダ
ー)は、「しょうた、そっちじゃねぇぞ」とか「かなちゃん、こっち、こっち」なんて、下級
生の面倒を見るリーダーぶりを発揮していました。結構、しっかりしているんですね。
 こんなところで感動したりしていた僕ですが、種まきの見本を見せるところになって、
「先生、お願いします」なんて言われちゃって、「いやぁ、おれも、小麦の種まくの、初
めてなんだよね。」って、正直に言ったら、大爆笑になっちゃって…、まいった、まいっ
た。
 種を無事にまき終わって、みんなで「手のひらを太陽に」を歌って、写真撮影をして、
終了となりました。子供たちは、みんな元気いっぱいで、先生たちも負けないくらい
元気で、僕もさらに元気になりました。
 食を大切にすること、自然や人に感謝する気持ちを持つことなど、そもそもの学習の
ねらいを、子供たちがすぐに得られたとは思いませんが、このような体験をしたという
ことは、大きなことだと思います。あとから、この体験を思い出して、消化・吸収(学習)できますから。
 このあとの草取り、麦踏み、収穫…が、どうなっていくのか、楽しみです。
あれ?卒業していく6年生は、どうなるんだろ?・・・・・

以上が感想でした。おかげさま農場の農家も6名が協力し、無事予定通り麦を蒔き
終えました。また折々紹介したいと思います。
おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.500                       01.11.5
 先月は、結構お客さんも来ましたし、私も出かけました。で、おかげさま農場の人参
はちがう。味が違うと言われます。またどこで調べたのか私のインターネットのメール
に、ブロッコリーがおいしい。市販のものとは違う。などの声が届いています。そう言わ
れると生産者としてはうれしい限りですが、その違うということが私達にはわからないこ
とが多いのです。
 それは、私達は野菜を買うことが少なく、私の家の場合野菜を買うなどと言うことは
殆どありません。ですから比較する対象がありません。かといってわざわざ買って食べ
てみようか、と言うのもめんどうですし、どう答えていいのか返答に困ります。産地見学
などでもきれいに食べてくれますし、皆が同じようにおいしいと言ってくれると、本当に
おいしいのかな?などと勘ぐってしまいそうです。私達にしてみれば、いつもの材料で
普通なものです。いつもいつもおいしいなどと言っていません。快食快眠という言葉が
ありますが、快食できればまあいいか、と思います。
 ともあれ、無農薬栽培とか有機農産物と言った作り方がありますが、まずは自分達
が安心して食べられることが始まりだと思います。仮の話しですが、皆さんよりはるか
に自分達の野菜を食べていますので、問題があるとすれば私達に最初にきます。いわ
ば自分達が人体実験しているようなものですから、、、
 そこまで書いて以前出会ったある社長さんの言葉が思い出されます。その方は、「農
家はずるい、農薬はいけないと言いながらそんなに気にせず販売している。そして自
分のものは別に作っている人もいる。」と言うのです。私達に話したと言うより、一般論
として話していたのですが、一理あると思います。しかし、ある農家(おかげさま農場の
農家ではありません)はそれに対し「でも俺は使うよ。なぜならばきれいなものが高く売
れると言うことは、そう言う評価をしていると言うことだ。それに虫が食ったらたたかれ
る、と言うのでは自分の生活が成り立たない!」そんな議論がありました。皆さんはど
う思われますか。
 何を書こうとしていたのかわからなくなってきましたが、今日5日は地元の小学校生
徒に麦蒔きをしてもらう日です。学校の先生の教育の狙いは、「種まきは命を生み出す
ことであり、それを育てることの経験を学ぶ・・・・・」と続きます。教育目的はともかく、命
の根源は食です。自分の命の根源の姿にちょっとでも触れ、命の大切さ自らの命のル
ーツがどこにあるのか学ぶことは大切だと思います。そんなことでおかげさま農場のメ
ンバーも協力しながらの麦蒔きが始まります。雨が降らなければいいのですが、、、。
                       おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.499                       01.10.29
 最近ようやく秋冬野菜が揃うようになってきました。11月の野菜の出荷予定は20種
類近くあります。26名でそれぞれの野菜を作っているのですが、未だにうまくいかない
ことが多いのです。農業を始めて10年20年のベテランのはずですが気候と環境に対
応できないことが続いています。
 先週も書きましたが、思わぬ大雨や大風は小さな野菜を窒息させたり、吹き飛ばし
たりします。また、例年だと発生しなかった虫が大発生して出荷できなかったり、何年
やっていてもその現実に遭わない年はありません。無農薬の世界は特に危険が高い
のです。
 産地見学の皆さんにも語ったことですが、私達の野菜つくりの場合7割できればいい
方です。特に葉物類は虫や病気にあう確立が高く、今時のキャベツやブロッコリーなど
は植え付けた半分が出荷できればいいと思うしかありません。その多くは害虫にやら
れる場合が多いのですが最近の虫はかっていなかったような虫が増えてきているよう
に思います。
 前にも書きましたが、わたしたち農家の話しでは虫も輸入種が増えているのではな
いか、という気がします。無農薬で作るトマトは温室コナジラミという虫が付くのですが、こ
れがここ10年くらい前からでてきて困っています。またピーマンに付くアザミウマという
虫も輸入種のような気がします。なぜならば、かってコナジラミもアザミウマもあまり見な
かったからです。
 狂牛病が問題にされていますが、そういう問題はこれからもっともっと出てくるので
はないか危惧しています。何しろこの国は輸入量数千万トンという世界最大の農産物
輸入国ですから輸入物に紛れて入ることは避けられない運命なのですから、、、。経済
のグローバル化という貿易優先のため、また競争の原理とかでの輸入の増大が雑草
や害虫、各種細菌の蔓延につながることは容易に想像できます。なんでもあり、という
ことは良い物も悪いものも環境になかった物も増殖することでもあります。
 国産の牛肉がダメならアメリカやオーストラリアの牛肉をとPRしているお店もあるよ
うですが、それが新たな問題を引き起こすことは充分考えられます。本来、身土不二と
いう食の確保を国がしていれば良いのですが、この国の方向は全く違っています。本
来、命は守るもので、その命を支える食も守るものだと思うのですがどうでしょうか。そ
こが始まりであってその次が経済だと思います。経済の豊かさがあったとしても、命が
病んでいては何のための経済か?ということになりかねません。
                       おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.498                       01.10.22
 10日の大雨は、ほうれん草や小松菜の畑を一時的に湖にし、その結果全滅してし
まったところが何カ所かでました。だいたい1日水に浸かっていたらそこの畑は根が窒
息し黄色くなり始め枯れてしまいます。ここ大栄町は北総大地の端にありますが、大地
だからといっても小さな起伏があります。50cm、1mの起伏があり、その低い部分に
は水が溜まります。雨量が少なければそのまま大地が吸い込むのですがその限界を
超えると池になってしまいます。
 おかげさま農場の畑ばかりでなく、地域の畑でもサツマイモやごぼうなど腐り始めた
という話が伝わってきます。今年の秋はここ千葉だけでなく全国的に雨量の多い天気
が続いています。梅雨時の雨がなかった分まとめて降っているのかも知れませんが困
ったことです。
 低い畑は出荷間近のものや種を蒔いたばかりの畑も全滅です。それならばそういう
ところに作付けしなければいいのではないか、ということもありますが例年だとそういう
ことがまずない、ということなのです。
 また、例年からすると生育が遅れています。雨によって冷やされ、低温が続いている
ことが例年の予想から遅れていると思われます。キャベツやブロッコリーなど昨年と同
じ日に蒔き、同じように畑に植えたにも関わらず生育が遅れ、出荷予想が外れてしまっ
ています。
 昨晩は、庚申様と言う講の集まりがありました。この村で数百年続いている講です。
かのえサルの日に講の仲間が集まり、拝み懇親する、というものですが年に6回その
日があり回り番で各家を回ります。最近は、勤め人が多くこんな時でないと近所の付き
合いができなくなってきました。で、お酒がでて狂牛病やテロ事件などそれぞれの情報
や考えなどが話しになります。
 アフガンと言うところは何百万人と難民がでているところであり、アメリカの空爆によ
って更に難民がでるだろうと言われています。そう言うところで、テレビ報道など見れば
岩山ばかりのところで何を食べているのだろう?という話になり日本では採算が合わ
ないとか経済成長がどうのこうの、といっているがむこうはそんな次元ではないだろう。
 日本人はぜいたくではないか。選んだり、嘆けるだけいいのではないか、という話も
でました。我々の農業もなかなか思い通り行きませんが、アフガンでは思い通り生きら
れないのです。天災は人間の意志ではありませんが、戦争は人間の意志です。今朝
の雑誌の”平和は平和的手段によって!”と言う記事が目に付きました。
                        おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.497                       01.10.15
 先週は食と防疫のことを書きましたが、食べものは人間の性格まで変えると言う人
もいます。肉食を多くとると凶暴になってゆく、見境がなく、感情をコントロールできな
くなってくることさえ有る、ともいいます。マクロビオティックの元祖とも言える桜沢如一
と言う人が犬で実験をしました。片方には植物性の食事を与え片方には動物性=肉
食のものを与え続けました。そうしたら肉食の犬は落ち着きがなくやたら一方の犬に
噛みついたりして攻撃的性格になり、片方はおとなしくやられてばかりいたが、時間が
たつに連れ肉食の犬にも動ぜず、丈夫に育っていった。肉食の犬は疲れやすくやが
て菜食の犬に劣るようになった、と言うことです。
 そういうことだけでなく、現在の日本人は世界中から食べ物をかき集め加工し食を消
費しています。私達農家から見ると、食べた人間に何が起こっても不思議でないと思え
るほどです。先週も書きましたが、狂牛病と言ったものだけではないように思われます。
食料を世界中から集めると言うことは、同時に細菌や害虫、雑草など、それに付随する
ものも全て世界中から集めることになります。
 それに加えて遺伝子組み替えなどという地球生態系にないものまで人間の都合で
作り替えて、その混入が日本にもじわじわと進んでいます。どうなるか誰にもわかりま
せんが、何かが起こることは避けられないと思えます。そしてそれが現在進行形である
ことが不気味と言えば不気味です。
 肉骨粉が狂牛病の元と言いますが、問題は羊の肉や牛肉を食べれば必ずその残査物
はでます。命あるものは大地に返せば自然循環します。それがそうせずに有価物として
(更に栄養あるものとして宣伝して)流通させたことから狂牛病は始まったとも言えるで
しょう。
 数年前台湾で発生した豚の口蹄疫という伝染病問題がありました。輸入豚肉の40
%を台湾から輸入していたので、急遽アメリカから輸入するように農林省は手配した、
と報道されました。日本向けの肉にするためには2.3ヶ月かかるとされていたのです
が、日本向けの肉とは柔らかくするために穀物とホルモン剤の一種を投与する時間で
もあります。そういうことを問題にしないのですが、私は問題にします。だから輸入肉は
安かろうが食べないのが我が家の方針です。
 グルメと言われ安いと宣伝され、世界中からピンからキリまでの食べ物が集められ
ていますが、少なくともそのルーツを知っておきたいものです。それで完全という訳に
はいきませんが自分でできることはしたいものです。
                        おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.496                        01.10.8
 おかげさま農場は、身土不二という考え方を支持しています。なぜならば、白人や黒
人、そして我々モンゴロイドと呼ばれる黄色人種がなぜ生まれたのか、という問いには
広い地球上の中で自然=気候風土の違いがそれぞれの人種の違いとして命が続いて
きたことが一つの理由としてあげられると思います。
 それが、最近はグローバルとかWTOとか言われ世界中から食べ物を買いあさってい
ます。食べ物が、気候風土が、それぞれの人種や民族を作り出したとしたら、これから
の日本人はどんな日本人が生まれてくるのか予想もつきません。
 今、狂牛病の問題が騒がれています。おかげさま農場にも牛の肉骨粉の問い合わ
せがありますが、本末転倒の気がしないでもありません。本来、草食動物に肉を食べ
させる事が間違っています。その根本的なことを問題にしないでアメリカやオーストラリ
アだから大丈夫などといった議論も出ています。本当にそうでしょうか。
 人間の栄養学もありますが、動物の栄養学もあります。その中で狂牛病の輸出国で
ある英国は96年まで狂牛病は人間には無害としてきました。それが、若い人が10人
亡くなって初めて英政府は、有害と認めるにいたり大パニックを引き起こしました。そし
て、その肉骨粉を輸出し続けていたのです。日本の農林省も自由貿易?のため規制
できないなどと言って来たのです。
 気の毒なのは真面目にやってきた牛飼い農家です。そういう事実は知らされず、狂
牛病が発生したら、農家が使っていた餌から出たなどとさもその原因が農家にあるか
のような言い訳をされてはたまったものでないでしょう。
 更に世界的には、狂牛病の問題を重要な問題だと取り組んでいたのに、この国で
は、狂牛病の判定さえできない体制であったのです。エイズ問題を思い出します。エイ
ズはアメリカ研究者に問い合わせて黒という呈示があったのに関わらず、血液製剤を
つかいつづけましたが、それよりはましか、とも言えますが、こと命に関する問題につ
いてこの国の行政は信用できないところが多くあります。
 命より貿易のほうが大事であるかのようです。肉を食べれば必ずその残査がでま
す。その始末をつける業者は零細企業で10円で仕入れ、40円で販売すると言います
それでとんとんの収支だそうです。それが焼却となると60円かかる。そこで業者達が
農林省に対策の掛け合いに言ったが物別れで終始したと言います。戦争に出すお金
はあっても、命をめぐる問題については冷淡のようです。防疫という考え方があります
が、日本の防疫体制は、自由貿易の名のもと規制が緩和され続けてきました。それで
いいのでしょうか。                (おかげさま農場・高柳功)

(産地の声)vol.495                        01.10.1
 昨日は、自然食品店のオープン記念で、お店の手伝いに行きました。手伝いといっ
ても商売などできませんから、おかげさま農場の人参を持っていきジューサーでジュー
スにしてサービスする、というものです。人参だけのジュースですが甘みがありなかな
かおいしいものです。飲んでくれた皆さんの半分くらいは、これ砂糖が入っているんで
すか?!と言われます。
 私自身生産の現場にいながら人参ジュースがこれだけいけるとは思いませんでし
た。7、8年前夏の時期に産地見学をしたことがありました。その時はバス2台で100
人近くが来たのですが、人参部長が人参ジュースで氷を入れて飲んでもらったら!と
言う提案があり、皆さんに提供したのが始まりです。私自身もそれまではジュースで飲
んだことがなかったのですが、これがおいしかった!煮たり炒めたりする食べ方はして
いてもジュースがいいとは、灯台もと暗しでした。
 開店から夕方までジュースつくりをしていたのですが、偶然にも知り合いの農家と一
緒になりました。同じ郡内のお米つくり農家で、ご飯の試食を兼ねての協力です。小見
川町と言う町で無農薬でお米を作り続けている御夫婦です。水田地帯ですので畑はな
く、お米専門で農業をしている方です。
 近頃は無洗米とかがはやりで、お米を研がなくともそのまま炊飯器で炊ける、という
のが人気だそうです。とぎ汁がでないから環境にやさしい、手間が省けるということで
す。で、実際に炊飯器で炊いて試食しましたが、その段階ではかわりなくおいしく食べ
られるように感じました。(普通の炊き方と比べて)
 私は、自分の家で精米し昔とかわりなく同じように食べています。が、買って食べて
いる人は色々なものを食べます。だから違いがわかるというか味がわかるというのか
違いがわかるのでしょう。都市部に住む知り合いに頼まれても、面倒であったり、都合
がつかなかったりして送れないときがあったりすると、催促の電話が鳴ります。どこが
違うかと聞くと炊きたてはともかく、お弁当や保温状態にすると他のお米はまずくなる、
という声が多い。私のお米はお弁当でもおいしく食べられる、と言うのです。我が家も1
日分炊いて食べたりすることが多いのですが、そこが私にはわかりません。
 我が家では80近い老人から1歳の子どもまで9人の家族がいますが、同じご飯でも
ぱっさりした方がいいという人と、ほっくらしたほうがいいという人がいて家の中でも好
みの違いで衝突します。味と言うものはやっかいなものです。
 何を書いているのかわからなくなってしまいました。時間がありません。また来週。
                       おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.494                        01.9.24
 稲刈りが終わって、すっかり風邪をひいてしまいました。微熱と咳がひどく声変わり
もしています。置き薬の中から、パブロンを出し、毎食後飲んでいるのですがイマイチ
です。
 今年のお米つくりは、新聞報道では平年作よりやや良、と言うことでしたが、昨年に
比べ1割減位と思われます。農協を始めとする集荷業者もお米が集まらない、と言う声
が聞こえてきましたが、どうも集まらないのではなく、収量が少なかったことが本当のよ
うです。
 半分は自分のために作っていますから、まず自分の家の必要数を確保し、親戚や
知り合いの分を差し引き、その残りが出荷数量となります。そうなると収穫減になると
当然集荷業者に集まる量が少なくなる、という年になったと言うことです。
 私の場合2町5反の作付けで約200俵のお米つくりです。その仕事量はどれくらい
かというと、(一人年間2俵食べるとして)100人の1年間の命の元を生産したことにな
ります。
 私達人間は1日あたり2500kカロリーが必要とされています。何もせず寝ているだ
けでも1800kカロリー必要といわれています。野菜も大事ですがカロリーはお米を始
めとする穀物が主役とならざるを得ません。お米は精米100gで約300kカロリーありま
す。小麦粉も同じく100gで約300kカロリーあります。
 だからこの国場合お米の値段の半分が小麦の値段であった 。穀物の段階では同じ
60kgでも食べられる量は違ってきます。お米は約1割が糠として、小麦は粉挽きで約
半分になります。ですから収穫時の1俵が同じでも食べられる量、カロリーの量は小麦
の場合お米の半分になってしまいます。必要カロリーの半分だから半分の値段という
のは理にかなっていたように思います。
 
 稲刈りの最後に新規就農者の原君の田んぼを刈ったのですが彼の作は、ちょっと少
なく1俵減位の収量でした。彼は完全無農薬で、草取りは2回3回と田んぼを歩いて頑
張りました。無農薬でつくって7俵とれればまずまずです。
 
 今日は秋晴れです。雲一つないと言う表現がピッタリの日です。秋の気配が濃厚の
今日この頃です。ほうれん草や小松菜もそろそろ出荷されます。夏野菜が終わり、秋
野菜に切り替わる時期となりました。
                        おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.493                        01.9.17
 この1週間は大事件のあった1週間でした。映画のアルマゲトンやインデペンデンス
のようなことが現実に起こるとは!と目を釘付けにしてみていました。何の関係もない
人々が犠牲になる事が悲しいことです。
 その後NHKは、連続して放映を続けていますが、世界の動きは一様ではないようで
す。そうなるにはそうなるだけのわけがあった。と言うことからすれば、問題は深そうで
す。私の家に来た人が語っていましたが、近年のアメリカは横暴とも言える政策だっ
た。WTOによるアメリカの一人勝ち、COP6の地球温暖化防止世界会議のボイコット、
敵のいなくなった中での新ミサイル整備計画の推進など、全てアメリカの利益だけを求
めて居たのではないか。という指摘です。なるほど、という感じもします。
 話が変わりますが、日本で初めて狂牛病が発見されました。狂牛病の始まりは、羊
のヤコブ病が始まりといわれます。そのヤコブ病が牛に感染して問題化しました。イギ
リスは羊の国ですが、肉や骨が残査として残ります。そこで、加工して粉状にして牛に
餌として与えたのが始まりです。羊の病気だから牛にはうつらない、とされていたので
すがそうではなかった。そして人間にはうつらないとされていたが、それがイギリスで1
00人を超す人が感染し、命を落としました。脳細胞がスカスカになってしまう恐ろしい
病気です。だいたい草食動物(牛)に動物質の餌を与えること自体不自然です。
 OIE(国際獣疫事務局)アジア太平洋地域事務所の小澤義博顧問は「来るものが来
たか。アジアで発生するのは時間の問題だった」と指摘します。世界的には、国連食糧
農業機関(FAO)が1月に、前述のOIEが6月に警告して居たのですが、農水省はEUの
狂牛病調査をその6月に断っています。聞き苦しい言い訳に聞こえます。
 数日前に有機農業会の機関誌が届きました。遺伝子組み替えの問題です。自然界
には存在しない遺伝子が人間の管理を超えて広まって来ているとのことです。かって
は肉骨粉も安全とされました。遺伝子組み換え作物も安全とされ次々に農水省は安全
としています。本当にそうなのか。人体実験をして10年後くらいにその結果はでるでし
ょう。大豆を例に取ると95%が輸入ですがその最大輸入国のアメリカでは68%が組
み替え大豆という。その大豆には除草剤の主成分であるグリフォードが残留する。そ
の基準は6ppmであったが農水省は、99年11月に20ppmに引き上げました。当然
アメリカからの要求の結果です。
 狂牛病の原因とされる肉骨粉にしても、大豆にしても命や健康よりも、貿易や経済を
優先する政策がある限り安心できません。そしてそのつけが何も知らされない農家に
行くとしたらやり切れません。           (おかげさま農場・高柳功)

(産地の声)vol.492                        01.9.10
 2日酔いです。 昨晩、おかげさま農場の2階屋根裏部屋の住人である原君から、
新規就農者の集まりがあるから、出られませんか!という話があり出かけてしまいまし
た。新規就農者が中心の県内の青年達でです。20代から30代の農業を始めてまだ2
年か3年という人達です。生活費を確保するのが課題という人達でしたが、皆元気で明
るい人達です。8時に始まり10時頃には終わるでしょう、という話を聞いた気もしたので
すが、そこにミミズの会のおじさんやら牛飼いのおじさんが来て、帰るに帰れず結局2時
過ぎまでいてしまったのです。
 というのも今稲刈りの最中ですが、昨日今日明日と雨が続き、稲刈りができません。
どのみち仕事ができないから、まあいいか、という軽い気持ちでいってしまったのが元
でした。もう村内は、私が刈り取る稲しかありません。台風15号が通り過ぎるまではじ
っと待っているしかありません。幸い台風は少しそれるようですから一安心しています
が、今しばらくは晴れの日が欲しいのです。
 で今日は、何とか起きましたが、まずはむらのお寺の住職の奥さんのお葬式です。
午前中の式ですから喪服に着替えて御焼香をしてきました。まだ50代ですが、癌であ
ったようです。胃ガンからあちこちに転移し、入院して1週間もせずに亡くなってしまった
ということで突然の訃報でした。

 秋の野菜が出回り始めましたがどうでしょうか。里芋、サツマイモ、長ネギ、ごぼう、
トマトが今月から出荷が始まりました。里芋、長ネギは、水分を多く必要とする作物で
すが、生産者の富沢の今年の夏は、毎日毎日が水かけだったということです。一度に
全部の畑を水かけできません。灌水設備を移動しつつやらなければなりません。スプ
リンクラー設置をし、水をかけては片付け、そして又設置の繰り返しです。
 ネギもちょっと細めかな、というのが生産者の弁ですが、今年の天候ですからまずま
ずと思います。夏野菜はトマトやなすびなど木になるものが多いですが、秋野菜は土
の中に育つものが多いです。夏野菜は体を冷やし、秋冬野菜は体を温める野菜です。
 私の家ではどんな野菜でもまずみそ汁の具になります。西洋風にいえば和風野菜ス
ープです。朝昼晩と3度の食事にご飯とみそ汁はつきものですから、必然野菜を食べる
ことになります。ここの所我が家のみそ汁はナス、カボチャ、里芋などがみそ汁の具とな
っています。その具がそのまま天ぷらになったり、煮物になったりしていますが、調理人
の気分次第でしょう。今年の里芋もおいしかったです。
                       おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.491                        01.9.3
 おかげさま農場では、会員農家が毎月定例会をしています。だいたい月末にやって
いるのですが8月は30日に集まりました。レタスやブロッコリーの植え付けの状況報
告や、白菜やほうれん草や小松菜の種まきの打ち合わせ準備と次から次へと進みま
す。
 9月からは長ネギ、里芋、サツマイモ、ごぼう、トマトと秋の新ものの出荷が始まりま
したが、一方では種まき植え付けが同時に行われているわけです。会員農家は一人で
5.6種類から10種類くらいの野菜を年間を通してつくるのですが、人参であれば10
人くらいでつくります。人参部長という人がいてつくる時期と出荷する時期を打ち合わ
せをして順番に仕事をするのです。
 そして予定したものが出荷できるように、そして皆が平らに出荷できるように案配し
たりするのです。ですが、種を蒔き、植え付けても予定の野菜ができないときが間々あ
ります。特に10月の野菜は難しく、秋の虫に食べられてしまいます。青虫、コナガ、ヨト
ウムシ、芯食い虫、アブラムシ、ダニ等が発生します。昨年は、10月のキャベツが全
滅し、大根、小松菜もほぼ出荷不能の畑も出たりで散々でした。
 今年こそはと思っているのですが、既に私の畑のキャベツは一株残らず青虫にたか
られているようです。おかげさま農場は、化学農薬は使用できませんので、漢方薬など
を撒布するのですが、効き目がそれほどでなく半分はばくちのような気分です。ですが
チャレンジ精神で頑張っています。
 病気は土つくりと連作の回避などで防げると思いますが、虫は成虫が蛾ですので空
を飛んできます。それまで見なかったのにキャベツを作るとどこからともなくモンシロチ
ョウが飛んでくるから不思議です。もう2.3匹が飛び始めたら卵が産み付けられたと思
って間違いがありません。
 ともあれ、防除の方法やら種まきの検討やらをしながらの定例会です。おかげさま
農場の出荷場の会議室でわいわいがやがやとやっています。
 ところでここの所7月8月と続けてテレビの取材がありました。一度は有名人の食
卓、と言う番組でおかげさま農場の野菜のお客さんであったことが取材のきっかけでし
た。8月はこれからの農業はどうなるか、という討論番組の取材でした。食の安全や食
の確保が社会のテーマとなることは喜ばしいと思いますが、何か上滑りしているような
気もします。農業や食の現実を見るとき、10年先20年先はどうなるのか。とても心配
になります。
                        おかげさま農場・高柳功

(産地の声)vol.490                        01.8.27
 私の稲刈りが始まりました。稲刈りといっても自分の分だけでなく、近所の人や親戚
の分などの分もあり、5ヘクタールほど刈ります。稲刈りを始めるときは準備が結構あ
ります。乾燥機を掃除したり、コンバインを整備点検したり、大体2.3日かかります。
 稲刈りの流れは、まずコンバインで刈って、籾を運んで乾燥機に入れます。その乾
燥機は灯油を燃料にして乾燥が始まります。最初は水分が多いので12時間から15
時間もかかるときがあります。そして翌日乾燥した籾を籾摺り機で玄米にします。その
玄米は選別、計量して30kgの紙袋に入れます、それを封をし積み上げます。ここまで
が一連の仕事で、そしてまた田圃に行き、稲刈りをします。それが刈り取りが終わるま
で続き、私の場合早くて約2週間はかかります。雨が降ったり天候不順ですとその倍の
1ヶ月もかかることがあります。天候次第で仕事が進まないことがあったりするので、
皆台風がくる前に刈ろうと急ぎます。コンバインは雨が降ったら作業できません。
 昔の稲刈りは手で刈っていました。鎌で稲株を刈り、それを藁数本で縛りながら稲束
にします。刈り終わったらその稲束をはざ掛けします。そして自然乾燥させます。乾燥
させたものをさらに大束にして肩に担いで耕耘機の運搬機に運び家まで持ってきま
す。そして、脱穀機で籾と藁にして、その籾をさらに庭に干して乾燥させます。その頃
は籾にするまで4、5日から1週間かかっていたものです。今は機械のおかげで翌日に
は籾になってしまいます。何より腰を使い、重いものを持つという重労働から解放され
たことが機械化の最も進んだ理由と思われます。しかし現実にはその機械代金が農家
の重い負担になっています。ですから小さな農家は自分の代で終わり、という人が大
半になっています。
 そういう小さな農家に頼まれて、私の稲の耕作面積が増え、委託作業も増えて居る
のが現状です。これから先どうなるのか、米つくりをする人がいなくなってこの国がそ
れでいいのか、疑問に思います。この町の田圃地帯の後継者はゼロです。ライスセン
ターをつくり対応しようという動きもありますが、肝心の運営を誰がやるかが問題です。
一口に言ってしまえば、誰も貧乏くじをひきたくない、という心情が働き簡単にはアイデ
ア通りには進みません。
 稲刈りの準備に片づけをしていましたら、鶏がいつの間にか卵を温め雛をかえしま
した。10数個を温めて居たのですが、その内5羽の雛が親の羽根裏からでてきまし
た。雄も居ますから有精卵には違いないのですが、まさか卵を孵すとは思いませんで
した。あわてて爺さんが雛箱作りを始めました。
                       おかげさま農場・高柳功