子供との対話

(1) 長男が鼻血をみて、どうして血は赤い?と聞いたので自分の
  血で塗抹標本を作って顕微鏡で見せた。

  染色はしないので白血球はわからないが、赤血球はみえる。
  次男はどうして血は固まるの?と聞いた。とりあえず、
  血小板の存在のみは教えた。凝固蛋白のことは、いずれ・・

 

(2) 子供たちと近所の川へおたまじゃくしをとりにいったら
  「おたまじゃくしはなにをたべるの?」ときくので
  川の水をすくって顕微鏡でミジンコをみせた。プランクトン

(3) セミが死んでいるのを見て、「どうして生き物は死ぬの?」
  と聞く。ロビンスの基礎病理学を読み返す。予定加齢仮説
  では、最終的に老衰に至る一連の過程は、あらかじめ
  遺伝的に決定されていると考えるそうだ。テロメアの
  短縮が細胞の老化に関連しているらしい。
  「死というものは遺伝子にプログラムされているらしい。」
  というと「へー、コンピューターみたいだね。」
  いずれ、ワトソン、クリックのことも話すか・・・
  子供が好きな「名探偵コナン」にはアポトーシス、
  テロメラーゼの言葉がよく出てくる。

 

(4) 現在、私が週1回、働きにいっている、豊田の桜ヶ丘病院の
  院長の太田昌幸 博士が今年6月アフリカのジンバブエで
  皆既日食の撮影をして、その写真を子供に見せるため戴いた。
   

 

  太田院長より、さらにオーロラと与那国島の海中の写真を
  拝借した。
   

(5) 長男と次男に書道を習わせることにした。ITの時代とはいえ、
  ワープロで最後に自分の名前を署名する時、みっともない字
  を書かせたくないから、と先生に説明した。

 

(6) 豊田の岩崎様より綿の木をわけていただき、子供に見せた。
  私はこの花を見たとき、リンカーンの伝記(アメリカ南部
  では黒人奴隷を使って綿を収穫していた。)を連想した。

(7) 日曜日の朝、朝食を摂っていた長男が「どうして、昔、日本は
  アメリカと戦争したの?」と聞くので、「今もそうだけど、
  日本は鉄、石油などの資源がないので、中国や東南アジアへ
  侵略して、アメリカと対立した。」と話をして、歴史マンガ
  を買ってやった。(今のところ、読む気配はないが・・)

  機会があったら、地球儀を買ってやろうと思った。

 

(8) 風呂でたまたま、次男がバスクリンがお湯と冷水で溶ける
  量に差があることに気付きかけた。「だいたいのものは
  高温の方が、よく水に溶ける。」と話したら、長男が
  「じゃ、人間も?」と聞いた。おりしも、熱傷のかたを
  在宅で訪問しているときだった。私は蛋白の変性-
  卵白を加熱したイメージを思い浮かべ、この機序に
  くわしい「ロビンスの基礎病理学」を思い浮かべた。
  それよりも長男は細胞が傷害されるのではなく
  お湯で多細胞生物がバラバラになると考えたようだ。
  なぜ、多細胞生物がバラバラにならないか、こどもに
  しゃべる前に「医科生理学展望(19版)」(私が学校を
 

卒業して10 年後に出版された。)の細胞間接着分子の

  部分をよんだが、ガラリと内容が昔と変わっていて
  愕然とした。

 

(7) しし座流星群を見た。もともとは「11月17日は愛知県
  三四会だし、11月18日は休日診療所だし、桜ヶ丘病院
  の太田昌幸院長がよい写真をHP用にわけてくださるなら
  寝よう。」と考えていたら、18日の夕食時に長男が
  「しし座流星群のことは本に書いてあった。その時間に
  起こしてくれ。」というので午前2時に目覚ましをかけ
  流星を確認してから、長男をおこした。
  (もともと夏休みにでも、いずれは北極星のまわりの
  星の回転を夜中に見ようという心づもりはあった。)
  デジタルビデオで撮ったものを静止画にした。
   

 

  上の写真をフォトプリント用紙に印刷し、「明日、学校へ
  持ってったら。」と言ったら、「もっとわかりやすい
  写真がいい。」というのでビデオをさらに見て(60分
  のテープのうち、はじめのは10分目ぐらいだったので
 

さらに10分ほど見てよい画像を探した。)

   

 

 

  じつは子供が買った本の著者、国立天文台の渡部潤一は
  東大理学部の同期(理学部3号館に天文、地球物理、
  生物化学の教室が入っていた。当時はほぼ毎日、顔を
  あわせていた。)で、また大学生の学力低下を主張する
  慶應大の戸瀬は数学科でやはり同学年である。戸瀬
  とは酒を飲み過ぎ、駅のホームでゲロを吐きあった。
  彼らとは20年近く会っていない。
   

 

(8) 大学へ入った時、同級生が先輩から「大学では高校の化学は
  物理、高校の物理は数学、数学はわからん。」といわれた。
  事実、化学の授業は、はじめは熱力学だったし、物理の授業は
  微分方程式を解くことだった。
  万有引力の法則と運動方程式から、地球が太陽を中心と
  する楕円軌道あるいは双曲線の軌道にあることをしめせ。
  これは私が入学する1年前の1学期の物理の試験問題の
  ひとつである。

 

  物理の教授は「去年、これを試験にだしたら、だれも
  できなかった。」と授業で講義していた。
  運動方程式を極座標に変換し、万有引力の法則を代入し
  あとは微分方程式を解くわけだが(今となったはできないが)
  当時は「これで、17-18世紀のニュートンの時代に
  追いついた。」という感慨は結構ショックであった。
  2学期の電磁気学を習ったとき、Maxwellの方程式から
  特殊相対論が導かれることを知り、やっと20世紀初頭に
  追いついた感触もよく覚えている。
  立花隆氏がよく指摘するように「自分が
  いままで、いかに無知だったか」を思い知った。しかし
  慶應大の戸瀬の本を買って読むと「このままでは大多数の
  日本人の頭は17-18世紀の人間と変わらなくなってしまう。
  ニュートンの方程式がわからないなら、ガリレオを
  宗教裁判にかけた人間と知的に違いはあるのか。」と思った。
   

 

  戸瀬は「新学習指導要領で大学生の学力は低下している。」
  という。彼の主張の根本は「本来、教育は社会階層の
  固定化を防ぐ役割を果たす。だから公教育は重要だ。
  問題は学習時間が親の学歴などの社会階層に依存し
  始めたこと。このままでは社会階層の固定化を助長する。」
  ということである。同感である。社会階層の固定化は他国を
  みれば明らかなように、社会から活力を奪う。
  「巨人の星」が高度成長時代の産物としても資源のない
  日本は人こそが財産である。テレビドラマの水戸黄門の
  言うように「子供は国の宝じゃ。」
  無駄な高速道路や、ばかばかしい万博をやる金があるなら
  20人学級を実現するよう予算を振り向けたほうが、将来への
  投資としては良いとかんがえた。何が「米百俵だ」だ
  「土建より教育だ」だ。
   

 

(9) 妻から「インターネットをやる時間があるなら狂牛病に
  ついて調べて欲しい。」といわれた。実は1冊本は読んで
  納得していたが、私の食事に関する記述をみれば、わかるが
  肉はあんまり多くたべるのはよくないとおもっているので
  あまり興味がなかった。畜産業者の人には悪いが、これで
  少し、日本人のコレステロールは下がるのではと思って
  いずれ、統計をとってみようと思っていた。
  ただ、長男が焼き肉やマクドナルドのハンバーガーを
  欲しいと言わなくなった。実はマクドナルドといえば
  学生時代、臨床実習で、ある関連病院におじゃました際、
  そこの先生が「子供にアトピーが増えたのはファースト
  フードのせいでは?」という仮説のもと学生アルバイトを
  雇って工場に潜入させ、材料を探った。という話を
  うかがった。その調査の最近の進展状況は知らない。