書名:夏が来なかった時代
歴史を動かした気候変動
著者:桜井邦朋
出版社:吉川弘文館
発行年月日:2003.9.1
価格:1700円+税
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冷夏が繰り返し襲った18~19世紀、気候の寒冷化は歴史に何をもたらしたか、火山の噴火、太陽活動、氷河の動きにその要因を探り、当時の世相を博物誌、文学や絵画、風俗から検証、気候変動と歴史の関係を科学する。
(本書本文より)
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(マウンダー極小期・・小氷河期)
オースティンの「エマ」にりんごの花が7月に咲いた(イギリス)と書いてある。天明の大飢饉と同時代。浅間山の噴火。タンボラ山(インドネシア)の噴火、ラーキー山の噴火。司馬遼太郎の「菜の花の沖」の高田屋嘉兵衛・リコルドの時代は小氷河期であった。その歴史を日記などにより花の開花時期、当時の服装、フェルメール、ターナーなどの絵、トルストイの戦争と平和など気候と関係を詳しく調べている。例えばロシアが南下して函館、長崎に開港を求めてきたのも寒冷化で不凍港を探している。英雄ナポレオンがロシアのモスクワに攻めていったが、寒さで敗退。自身も失脚。相次ぐ飢餓に立ち上がった革命がフランス革命。フェルメール、ターナーの絵の空の色、雲などは空想ではなくその当時の実際の色を書いている。寒冷化の時代は天候が安定せず、曇り模様の日々が続いていたようです。というような世界各地の文学、絵画、歴史などを比較しながら寒冷化の時代を描いている。フランスの女性のファッションなんかも胸元が大きく開くドレスは殆ど無く、寒さに備えた上着、スカートも厚い生地で、そんな絵が多いと紹介している。(りんごは5月に咲く(イギリス))科学が進んでいたわけもないのでその当時の人々はそれが当たり前の生活、温暖化なんか知らなかったので文学にしても、絵にしてもそのままありのまま記述しているところが多い。そんな断片を分析することで当時の気候を推測することができる。(これは科学的ではないけれど、事実をならべているところが良い)フランス革命、ロシア革命、アメリカの独立戦争など寒冷化で食糧不足が革命(社会を変える)一つのきっかけとなっているというこも成る程と納得できる。
紀元前600年-前200年 ローマ温暖期に先立つ名前のない寒冷期
前200年-紀元600年 ローマ温暖期
900-1300年 暗黒時代寒冷期
1300-1850年 小氷河期
1850-1940年 温暖化 1920-1940年
1940-1975年 寒冷化傾向
1976-1978年 急激な温暖化
1979-現在
この年表を見ながら小説、歴史などを見ていくとまた違った事が見えてくるような気がする。この本を読んでいて鎖国をしていた日本の周辺に開港を迫ってヨーロッパ、ロシア、アメリカの船がやって来たこともなんとなくわかるような気がする。食糧問題、人口問題(維持するため)も一つの原因だったのでしょう。人間の活動にとって気候がかなりの要因になっていた。いや今もそうでしょうね。この本を読んでいて寒冷化よりはずっと温暖化の方が良いように思う。