Subject: 「定住外国人」ラズロさんのまとめその1

発言 一覧

矢田 彩子です

読書の話題ついでに漢字について
読書が苦手な娘は当然漢字も苦手です。
私も最近はパソコンが漢字も入力してくれるので書く方は
すっかりおろそかになってしまっています。
先日の学会で二人の方が漢字について発表されました。
本当におおざっぱにいうと漢字を減らそう、無くそうという
議論です。個人的にはとんでもない、日本語が韓国語の
ように記号文字またはひらがな、かたかなだけになるなんて
お話しにならないと思って聞き出したのですが、幾つか
うなずく点もあって、インターネットのメール作法としても
考慮をしたほうがいいと思われる点がありました。

私が納得したのは、漢字の多用はさまざまな環境の人との
コミュニケーションの妨げになるという点です。
ラズロさんやルーマンさんはとても日本語が達者で漢字
混じりの私達の文章にもそれほど抵抗はないと思いますが
多くの日本語を母語としない方は聞き取り、話し方は
すぐ身につくが漢字の用法が複雑きわまるとおっしゃる
そうです。
新聞の社説を1週間に1回でいいから漢字を減らして書けば
外国からの留学生なども読めるようになるという提案
にも思わず納得。
視覚障害の方は漢字がなくても豊かな言葉のコミュニケーション
がとれるといわれると、それもそうだろうなと思います。
まためったにつかわれない固有名詞などのために、さまざまの
漢字コード(フォント)などを用意するなど情報機器でのコスト
の話も、私などには身につまされる話です。

インターネットの情報発信のためには英語を使用するべきか
という論点はおいておいて、実際日本語のメーリングリスト、
ホームページにもさまざまな方がアクセスしているのですから
私達はパソコンのかな漢字変換にまかせて、書けないような
難しい漢字を多用したり、へんてこりんな誤変換の文字を
書かないように注意しなければと思いました。


もうひとかたは日本語の文法などを教える立場から漢字は中国語
には相性がいいが、日本語に本当に相性がいいのかと
いう説明をされました。
中国語は"明日太郎登山"とか"昨日太郎登山"というように
語形変化しません。その点日本語では漢字を音、訓両用に
使用して曲芸的用法を生み出しているという説も説得力が
ありました。あの中学校で習った文法(さまざまの活用形)
は頭痛の種でしかありませんでしたから。

お二人の発表原稿は偶然(?)音読みは漢字、訓読みにするものは
ひらがなで書かれていました。

印象に残った話は「少年H」(妹尾河童でしたっけ)の本は
戦争体験を子供達につたえたいので全ての漢字に
ルビをふってあると作者がわざわざ断っている点です。
たしかに昔の本にはルビがふってあったのに、今は読み方が
わからないような漢字にもふっていないことが多いですね。
読み方さえわかれば、外国の方も私たちも簡単に
辞書をひけますが、漢和辞典で画数頼りに読みから調べようと
思うとちょっとおっくうになることもあります。

そうか、あまり娘にも漢字、漢字というのはやめようと
帰りの電車の中で思いつつ、今月号の小説新潮が創刊50周年
記念号で川端、太宰からM邦子、森瑶子まで短編が30篇も
のっていてわくわく読んでいたら宮本昌孝がエッセイで
たてがみという字を漢字でかいて(私のパソコンでは、でて
こない難しい字なので、皆さん辞書をひいていただけますか?)
疾駆する馬や獅子のうなじで風に靡(なび)く長い毛は
漢字でかいた方が、その一文字で颯爽(さっそう)とした
走りをほうふつ(こんな字が変換できなかった!)できると
書いてあるので、そう、そうやっぱり漢字はいいと
思ってしまいました。ああ、なんていいかげんなやつだと
思いながらも、そのいいと思った文章をここに入力
しようと思ったら難しいこと!!


Subject: [YMOL] 読書 、漢字、歩き (上田)

日本語を母語としない人のために、漢字の使用量を控えようという主
張は、明治以来のばかげた議論です。世界で一番外国語として学ばれ
ている英語は、英語を学ぶ人のために、英語そのものを変えたでしょ
うか。英国は、英語を普及するために、いろいろな方法で、語学教育
をしたと聞いています。もちろん、それは植民地政策と密接に関連し
ていたでしょうけれども。けれども、英語そのものを変えることはあ
りませんでした。「英語はクイーンズイングリッシュが最高」という
ことは、アジア英語を聞いていると疑問に思いますが。通じればいい
じゃん、と。

私は、英語の「同じ意味のことを違う単語で表現する慣習」を改める
だけでも英語を習得するために必要な単語数が激減すると思うのです
が。同じ事を何回も言おうとすると、だんだん難しい単語を使うよう
になるから。

漢字を使うことの優位性は漢字が伝来し、仮名が生み出されて以来の
日本語の伝統です。その優位性を失わせる結果になる、漢字使用自粛
論は、「なっていない」と思います。私達が英字新聞を読むために、
多くの単語を覚えるように、日本語学習者も漢字を覚えなければなら
ないと思います。

にほんごがくしゅうしゃがけいげんされるくろうよりも、にほんごを
ぼごとするひとがあじわうくろうのほうがなんばいもおおきいとおも
います。

日本ご学しゅうしゃがけいげんされる苦ろうよりも、日本ごをぼごと
する人があじわう苦ろうのほうがなん倍も大きいとおもいます。

日本語学習者が軽減される苦労よりも、日本語を母語とする人が味わ
う苦労の方が何倍も大きいと思います。

この文章ですが、最初の文章はひどく読み難いですよね。とくに「ぼ
ご」などは、漢字の方が意味がつかめます。小学校3、4年生が書く文
章が非常に読み難いのは、当然漢字で書くべきところが漢字で書かれ
ていないため、「音を読みとる−文脈から意味を想像する−漢字を当
てはめる」という作業をしなければならないからです。日本語を母語
としない人が読むかわからない文章をわざわざひらがなで書くのはナ
ンセンスなのではないでしょうか。

こんな事が未だに学会で議論されているとは。時間の無駄だよ、とい
いたいのは、私だけではないでしょう。そして、こんな学者に給料を
払うのは、おそらく、無駄でしょう。


Subject: kanji, zaitaku ( Yada.A)

多分、私の漢字の自粛の説明の仕方が悪かったのだと思いますが。
私がいいたかったのは、もちろん漢字をゼロにするべきだと
いうことではありません。(学会で発表した方も、音、訓使いわけて
いらっしゃいます。今の新聞の内容を全部ひらがなで書いたら紙面が
何倍必要になることでしょう!!!)
>日本語学習者が軽減される苦労よりも、日本語を母語とする人が味わ
>う苦労の方が何倍も大きいと思います。
ちなみに訓だけひらがなにすると以下のようになります。
この例ではあまり外国人にも日本人にもメリットがないと思いますが・・・・
>>日本語学習者が軽減される苦労よりも、日本語を母語とする人があじわ
>>う苦労の方が何倍もおおきいとおもいます。
漢字とか旧かな使いとか、もちろん何を使うかは表現する人の
自由です。
ただ発信したい情報を誰に読んでもらいたいかを意識して使いわける
(妹尾河童さんは子供に読んで欲しいから全部にルビをふる、
インターネットで日本語をある程度読める外国人にも読んで欲しいから
難しい漢字の利用を控える・・・など)ことは大事なのではないかと
思って話題にとりあげたのです。
頭から漢字を減らすなんてばかばかしいととらえるのではなく、
あらためて、日本人と漢字の関係を考える機会をあたえてくれた
学会の発表は私には有意義でした。
英語も上田さんと同じように、私にとっては同じ意味の単語が
どうしてあんなにあるのかt思っていたのですが、他民族の
集まりからできた英語がそれぞれの言語であらわされている少しずつ
ニュアンスの違う表現を生かした結果だそうです。
英語も日本語(漢字)も背景となる文化を勉強していくと難しさにも
必然性はあると思います。ですが、現代相手にいいたいことを
伝えるツールとしてどう利用していくべきかというのは考えて
損はないと思うのですが・・・・・


Subject: 漢字 (ラズロ)

> 新聞の社説を1週間に1回でいいから漢字を減らして書けば
> 外国からの留学生なども読めるようになるという提案
> にも思わず納得。

矢田さん、

*日本と接触している外国人の中で、「漢字圏」出身の人がたいへん多いのです。
特に、留学生の場合、最も大きな割合を占めていると思います。

*漢字を少なくして、文書を書くと、返ってわかりにくいものになることが
あると思います。
例:「...ポストれいせんいこうのげきへんするこくさいちつじょのなかで...」

*日本語を母語としない人とのコミュニケーションを妨げるものの一つは「国語」
と「日本語」の区別だと思います。つまり、自然な日本語でないものを日本語学習
者に教えたり、それを使ったりすることですね。

気持ちはわかりますが、あなたが提案したような社説には賛成できないのです。


Subject: RE:漢字について(K. 石井) #127

>世界で一番外国語として学ばれている英語は、英語を学ぶ人のために
>、英語そのものを変えたでしょうか。(編集御免)

 変えた事はなかったと思いますが、「変わっていった」と云うことは言える
と思いますよ。どんどん簡略化する方向に。それが英語が国際語になった一つ
の要素ではあると思いますが。(^O^)

 馬鹿げているかどうかは別にして、日本語を習得する人を増やすという考え
から「簡略化」を図ろうと云う議論は、私も本末転倒であると思います。現在
における英語や中世におけるラテン語、東アジアにおける中国語が、当時の
「国際語」であり得たのは、簡単であったからではなく、「必要があったか
ら」です。当時より深い、高い、新しい智恵や知識はその言葉で書かれていた
ため、それを求める者はその言葉を習得する必要があった、だから国際語化し
た、といえるのではないでしょうか。最先端のコンピュータ言語が「日本語」
を基本につくられていたら、きっと数多くの人が、日本文字を必死になって学
習することでしょう。その意味から云うと、日本語の習得者を増やすには、数
多くの人が求める価値の高い情報を日本語で記録されるよう日本語を母国語と
する我々が努力すべきで、単に簡略化を図るだけでは「文化」を陳腐化するだ
けで、余り意味のあることと云えないと思います。
 
 ただ、日本語自身をどの程度の複雑さで表記するのが適当かということを議
論すること事態は、時間の無駄であるとは思いません。数多くの人が情報を共
有するためには、言葉とそれを記述する「記号」=文字の複雑さとの接点をさ
ぐる必要があると思います。また、現実にそれらが行われた結果、我々は多少
複雑な漢字を記録する労力から解放されました。「學」と書かなくても良くな
りましたし、「障碍」とは書かずに「障害」ですますことが出来るようになり
ました。外国の地名も例えば独逸とは書かず「ドイツ」で通じます。文化性を
一部犠牲にしても、情報を広く共有するためには、ある程度の記号の簡略化は
必要なのです。そして、現在から未来をみる時間軸の中でその均衡点が「ど
こ」にあるのか研究、検討することは、大切な事だと思いますが、いかがでし
ょうか。


Subject: 住民税と住民票(飯牟礼)

 メールは、MOLへも転送しました。
 英語で書くのは難しいので、ラズロさんから英訳して
 「一緒」へコメントをしていただくと助かります。
 税金の話です。選挙権や住民権については後日とします。

 IIMUREの個人的意見

 住民税の課税は、住民票作成とは、関係がありません。
 主に経済活動による所得に課税されるものです。
 外国人労働者が所得を得て課税されずに帰国すれば、
 その国の財産が減少してしまいます。
 おそらく中には何億円と稼ぐ人もいるでしょう。
 合衆国やEUのように各国間で取り決めがあれば、
 共通の税法が成立するでしょうが日本では、まだ、
 先の話のようです。

 極端な話、市場経済の市場としてだけ国土を開放し、
 税収を求めなければ、独立国家としての国家財政が
 破綻することになります。
 また、犯罪所得や不正資金の隠し場所となるかもしれ
 ません。

 そこで、一時滞在者でも課税の必要があるわけです。
 ただ住民税という方法が絶対とは言い切れません。
 間接税という方法があります。
 イギリスを旅行すると税金の高さに驚きますが、
 医療費が外国人でも無料と聞きました。

 ただし、ラズロさんのご指摘が「勤労の義務」と
 「納税の義務」についての議論を求められている
 としたら、もっと調べてから書いてみます。
 
 先日「ジュリスト8月号」を読んでこれからが大変と
 思いました。
 電脳空間では、住民税は、課税できません。
 電子マネーによる所得は、どこの国で課税できるか不明
 です。
 電子マネーは、クレジットカードより強力です。
 日本人のわたしが外国の企業の仕事を日本でしていて
 給料も電子マネーで外国の銀行に入金されるとしたら
 所得額が不明ですから日本で住民税を課税することは
 困難でしょう。
 インターネットの規制を国が考えるのは情報だけでなく
 為替や資金流通にもあるようです。
 このへんは、側島さんの方がお詳しいと思います。

 以上、あくまで飯牟礼の私見です。
 職場の諸先輩にも確認してみます。
 なお、文中言葉として「外国人」「日本人」を使いましたが
法律用語としてご理解くださいね。


Subject: 住民税と住民票(ISSHO から転送)

地方自治法では「住民=住む人(日本国民だけでない)」となっています。

しかし、住民基本台帳法では、日本国籍を有しない人は住民票に記載され
ないようになっています(但し、1967年の通達では、「外国人が世帯
主だった場合、備考欄に記載されるように」というのがあります。現実問
題として、1967年の通達に従っている地方自治がたいへん少ないので
す。
さらに、外国籍の女性で世帯主として記載されたことがほとんどありませ
ん。


住民とされている外国人が住民税を払う義務、その他の義務を果たしなが
ら、住民としての権利が与えられていないようになっていると言えます。

この矛盾によってさまざまな二次的な問題が起こっていますが、ここでは
省略します。仕組み上、具体的な問題提起として、次のがあります。

1)外国人は住民なのか?
2)住民票は住民の票なのか?(日本国民票?)
3)住民票の記載以外に、住民登録ができない、

住民投票に参加できないという問題もあります。さらに、話が長くなりま
すが、選挙権にもつながります。日本憲法には、次の言葉があります。
「地方公共団体の長、その議会の議員及ぴ法律の定めるその他の吏員は、そ
の地方公共団体の**住民**が、
直接これを選挙する。(日本国憲法、九三条二項)」

「事実上、外国人は住民ではないので、住民税を返してほしい、請求しない
でほしい」という要望が外国人の一部から出ています。その要望は不合理な
ものなのだろうか?


Subject: RE:住民税と住民票(野水)

 ラズロさんから「住民票と住民税」という題名のメール(すでにラズロさん
がアップされました)をいただきました。

 自治体における外国人の権利と義務いう問題としてとらえてラズロさんにメー
ルを返信しましたが、この学級で皆さんのご意見をいただけるならその方がい
いのではないかということでラズロさんと意見が一致しましたので、ラズロさ
んへの返信メールをそのままアップさせていただきます。

(以下、私からラズロさんあての返信メールの転送です。)
- - ----------------------------------------------------------------------
ラズロさん、メールをありがとうございました。

運営委員会や開講式ではお世話になりました。

>仕事上の都合で、その議論に入りにくいかと
>思います。

 いえ、そんなことはありません。できるだけ発言したいと思っています。
 ネットの中では自由な発言が基本ですし、行政に属している者でも個人とし
て、一人の市民としての参加ですからオープンな議論をしたいと思います。

>オフレコで、どう思うか、聞きたくて、
>電子メールを送りました。

 お気遣いいただき、ありがとうございます。
 ラズロさんが提起されている問題は、重要な問題だと思います。ネットの中
で皆さんの御意見をうかがいながら議論して良い問題と思います。ちょっと長
くなりますが、ラズロさんのご意見や疑問に対して、現在の法制度の確認を行
いながら、私にできる限りのお答えをしたいと思います。

>地方自治法では
>「住民=住む人(日本国民だけでない)」
>となっています。

 地方自治法第10条では、自治体の区域内に住所を有する者は、国籍を問わ
ず「住民」ですね。この点はまた以下でも触れていきます。

>しかし、住民基本台帳法では、
>日本国籍を有しない人は
>住民票に記載されないように
>なっています

 そのとおりで、住民基本台帳は、市町村で作成する「住民たる地位に関する
記録」(地方自治法第13条の2)ですが、外国籍の住民については作成され
ていません。
 住民基本台帳法39条に次の規定があります。
- - -----------------------------------------------------------------------
[住民基本台帳法]
 (適用除外)
第39条 この法律は、日本の国籍を有しない者その他政令で定める者には適
 用しない。
- - -----------------------------------------------------------------------

>(但し、1967年の
>通達では、「外国人が世帯主だった
>場合、備考欄に記載されるように」
>というのがあります。現実問題として、
>1967年の通達に従っている
>地方自治がたいへん少ないのです。

 この通達は今手許に資料がなく(自宅にいますので)確認していませんが、
おそらく、各市町村の判断によってそういう取り扱いができるという趣旨だと
思います。実際にそういう取り扱いをしている市町村は少ないかもしれません。
 御本人が申し出ても記載してくれませんでしたか?

>住民とされている外国人が
>住民税を払う義務、その他の義務を
>果たしながら、住民としての権利が
>与えられていないようになっている
>と言えます。

 住民としての権利・義務は、二種類のものがあると考えられています。

 一つは、自治体のサービスを受ける権利と自治体の経費を負担する義務です。
 これについて、地方自治法10条では、次のように規定されています。
- - -----------------------------------------------------------------------
[地方自治法]
第10条 市町村の区域内に住所を有する者は、当該市町村及びこれを包括す
 る都道府県の住民とする。
2 住民は、法律の定めるところにより、その属する普通地方公共団体の役務
 の提供をひとしく受ける権利を有し、その負担を分任する義務を負う。
- - -----------------------------------------------------------------------
 この条文で言う「市町村の区域内に住所を有する者」には、日本国籍の人も、
外国籍の人も、自然人であるすべての人が含まれます。(実は法人も含まれま
す。)
 したがって、日本人も、外国人も、その市区町村に住所があれば、その市区
町村の住民であって、その市区町村と都道府県からサービスを受ける権利を持っ
ているし、税金や受益者負担金などを納める義務を負っていることになります。
 自治体はその地域に住む人を構成員とする団体ですから、その団体の構成員
にサービスすることを存立目的としているし、自治体が存続・活動するための
経費などはその構成員で負担しようということです。

 もう一つの住民の権利が参政権です。これには、選挙権・被選挙権の間接参
政権と、リコールや住民投票など直接参政権があります。これは、住民がその
自治体の政治・行政に参加する(またはコントロールする)非常に重要な権利
ですが、御指摘のとおり、このいずれの参政権も現在の法律では、外国人に認
められていません。
 これは、日本の国の主権は日本国民にあり(憲法前文、第1条など)、ラズ
ロさんも引用された憲法93条2項の「住民」(自治体の長や議員を選挙する
権利を持つ住民)は日本国民に限られる(参政権は日本国民固有の権利である)
という解釈が一般的となっているためです。
 そのため、地方自治法でも、選挙権・被選挙権と直接参政権を定める条文
(17〜19条、74条〜88条など)では、その権利主体を「日本国民たる
・・・住民」などと表現しています。
 こうした考え方は、自治体も国から独立して存立するものでなく、大きく見
れば国の機構の一部であり、自治体の政治に参加する権利(住民の自治権)も、
日本国民の主権に基づくものであるという考え方によるものです。

 しかし、これは外国籍の人から見れば大きな矛盾を感じられるでしょうね。
 一方では、外国籍の人を自治体の構成員として認め、サービスを提供し、負
担の義務を負わせるけれども、その団体の運営に参加する権利を認めないとい
うことですから。

 私見ではありますが、私も自治体に関する伝統的な国民主権論にはやはり疑
問を持っています。
 たとえ、国の主権を日本国民固有の権利とするとしても、それは国政におい
てのものであり、地域的団体であり、その地域に住む住民を構成員とする自治
体についても、同じレベルで考えるべきかどうかという疑問です。
 確かに自治体は国と無関係に独立したものではないとしても、地域を基礎と
して成り立っている団体であって、その地域内の問題を解決することを目的と
して活動するもので、国政を直接左右するものではありません。
 最近の沖縄の基地問題や原発立地問題など、自治体の姿勢が国政に大きな影
響を及ぼす場合もありますが、それは逆に国政がその自治体の基本的な存立基
盤に非常に大きな影響を及ぼす場合に限られており、基本的にその自治体に関
わる部分にのみ、国政に対して意志を示すに過ぎないとも言えます。また、立
法措置によって、このような例が回避され得る(それが良いかどうかは異論が
あるでしょうが)こともあるでしょう。
 自治体の運営の基本(自治体の存立目的)は、住民の自治に基づいて、住民
のために政治・行政を行うことにあり、特に近年では住民の相当部分を占めて
いる外国籍の人たちの参加を認めないのは、自治体の運営をいびつなものにし
てしまう可能性を持っているのではないかと思います。

 国家として国民の基本的人権を保証することは当然ですが、人権は何人にも
保証されるべきものであり、現在の自治体をめぐる法体系や行政運営によって
外国籍の人たちが不当な差別的取り扱いを受けているとすれば、あらためるべ
きことは当然です。

>1)外国人は住民なのか?

 住民です。上記のように、現行の法体系では、参政権を持っていませんが、
自治体のサービスを受ける権利を持っています。ただし、そのサービスを受け
る権利が、法律などによって、日本人と同等なものになっていない面はあると
思います。

>2)住民票は住民の票なのか?(日本国民票?)

 現行住民基本台帳法では実質的に「日本国民票」になっています。そのため
に、市区町村の行政現場でも混乱が見られます。
 これは実は、外国籍の人にも、行政側にも大きな問題です。本来、住民基本
台帳は、自治体の住民に関する記録であり、市区町村の住民(法人は除いて)
はすべて記録されるべきと思います。しかし、現行法では外国籍の人について
は作成されておりませんので、「自治体の住民=住民基本台帳に記録されてい
る人」と考えると大きな過ちを引き起こします。
 つまり、行政側が住民をなんらかの施策の対象として把握する際、住民基本
台帳だけを見ていると外国籍の住民が見えなくなってしまうのです。
 例えば、住民基本台帳だけを見ていると、その世帯の外国人の妻が見えませ
ん。また、世帯員全員が外国人である場合、世帯全体が見えなくなります。
 これは実際に行政現場で起こり得ることです。
 「住民」を把握するためには、住民基本台帳に記載された日本人と、次の3)
の外国人登録原票に記載された外国籍の人の双方を把握しなければならないの
ですが・・・。

>3)住民票の記載以外に、住民登録ができない、

 外国籍の人については、外国人登録法による外国人登録が行われます。(ラ
ズロさんも外国人登録証をお持ちだと思います。)そして、居住地の市町村か
ら「外国人登録済み証明書」の発行を受けることができます。この「外国人登
録済み証明書」は、社会的には日本人の住民票と同じように通用しています。

>「事実上、外国人は住民ではないので、住民税を
>返してほしい、請求しないでほしい」という要望が
>外国人の一部から出ています。その要望は
>不合理なものなのだろうか?

 現行法でも、外国人は地方公共団体の構成員(つまり住民)としての地位に
よってサービスを受ける権利があり、現に何らかのサービスを受けておられる
はずですから、自治体の存立・運営の費用を分担する義務を負わないというこ
とは論理的にはとおりません。
 そうしたことはもちろん承知で、世論に訴える意味でそのような要望を出さ
れるのはしょうがないと思います。
 ただ、法律は尊重して義務は負うが、地方自治法の参政権に関する規定や、
住民基本台帳法を改正して欲しいと、正道でいった方が「日本国民」の無用な
誤解・反発もなく、主張を堂々と展開できるのではないでしょうか。

>このことについての記事が来週の
>週刊新潮に掲載される予定です

 そうですか、読んでみます。

 ラズロさんの疑問やご意見にどれだけ応えられたかわかりません。オフレコ
で、ということでしたが、私自身の考え方はここに書いたとおりです。これは
オフレコでもオープンでも同じです。ただ、当市で起きた行政側の具体的な過
ちなどは、オープンなところで書けない場合もあるかもしれませんが。

 行政側だけでなく、日本の国際化(特に「内なる国際化」)は、在日韓国人
問題などを昔から抱えているに関わらず、特に地方では、ようやく人々に実感
として意識されてきた問題かもしれません。(私自身も、意識しはじめたのは、
自分の生活するまちに外国籍の方が急に増えてきたここ7、8年です。)
 残念ながら、まだ外国人の方に対する根強い偏見(一種の恐怖感かもしれな
い)があるようです。もっとお互いが日常的にコミュニケーションして、同じ
人間なんだということを実感としてわかりあっていくことが大切かと思ってい
ます。

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