起立癖(きりつへき):立ち上がる癖・立ち上がり

 立ち上がりは最も危険な悪癖の一つである。特に背や後躯の弱い馬にあってはこの危険が大きい。このような馬は騎乗者がすばやく手綱をゆるめ、前傾姿勢をとって体重を前にかえても、簡単に転倒し、人馬ともにけがをする結果を招くこともおおい。競走馬に於いてはゲート内での立ち上がりによって転倒したり、発馬遅れによって競走能力を著しく減退させることも多い。このような癖馬に対して、矯正には判断と勇気をもって立ち向う必要がある。起立の際に、馬の頭を棒や鞭で強打し、馬に叱責を与えるのも一つの方法であるが、これで完全に矯正できるとは限らない。(矯正できた例もある)
 参考として、これは現在使用されている鞍止帯(鞍のずれを防止する)のようなものを丁度髪甲の前部にあたる部分に4本の突起ピンを埋め込み、起立するのをやめさせようとしたのである。これも何度も繰り返していると手綱をその部分にあてているだけで起立しなくなったそうである。馬の立ち上がりの癖は、調教時あるいは育成時の苦痛からの逃避癖に原因しているものが多いものであるから、入念な野外騎乗や前方への推進、小輪乗り運動などによってその苦痛を忘れさせることも重要な要素である。(日本中央競馬会「馬学」上巻より)

 

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