さく癖(さくへき):空気を飲み込む癖・グイッポ

 この癖は退屈したためか、あるいは他馬のやるのを真似して覚える。これは主として上歯(門歯)で、ある物を支点にして空気を呑み込むのが習慣となったものでこの癖を覚え、それを頻繁に行なうと一般に胃腸を害して栄養不良になったり、疝痛を起こし易くなる。栄養障害は競走能力にも甚大な影響を及ぼすので競走馬には是非とも矯正する必要がある。
 さく癖はさきにも述べたように長期間馬房に休養させたり繋留させたとき、放牧中など他馬のやるのを見て覚える。これを矯正するには、毎日の運動を怠らないで馬を退屈させないことが第一である。ちょっとした逍遥運動でも気分転換には非常な効果をもっている。また青草や乾草をなるべく少量ずつ与えたり歯の支点とするような場所に馬の嫌がる薬品(ピッチロール、クリボックス等)を塗布する。止むを得ない場合は針金製の口篭やさく癖予防帯を用いて空気の呑み込む量を少なくする。それでも尚効果のない場合は手術することもある。さく癖は非常に矯正のむずかしいものであるからさく癖馬の近くに平常馬を近づけない(馬房を隔離、仕切り、戸を占める等)ようにして普段から気遣うことが大切である。(日本中央競馬会「馬学」上巻より)