私が骨折ライダーを無理やり走らせた渡辺です。神戸でチューニング屋をやっています。今回のレースは「賞金で屋形船おごるで」というささやきに心奪われ、同行しました。

 

中シャチは出発前相当迷っていました。「行くか、止めるか。」しかし、彼の勝負に対する執念はすさまじく、「鎖骨なんかあってもなくてもええ骨やね!」と人類のDNA構造を否定するような意見を吐いて参戦決意を固めたのでした。

東京への道中、彼は牛乳などを飲もうとするので、「溶接でも一度溶かしてくっつけるだろ?骨も同じ!」と物事の道理を教えつつ、「早く骨が治るように」とのささやかな心遣いでコーラとガリガリ君をご馳走し、晩飯の刺身も「ケガ人には毒」と明日の屋形船を想いながら私が全て処理しました。

翌朝1回目の走行後、あろうことか彼は「イタイ」「止める」などと言い出し、私から屋形船を奪おうとするので、「大丈夫、ゼンゼン腫れてないよ」「気のせいだって」と言いながら黙々と作業をこなし、反論する機会を与えませんでした。

彼は何かモゴモゴ言っていましたが、私は背中で語るタイプなので彼はそれ以上の交渉は諦めたと見え、「主催者と話してくる」とどこかへ行ってしまいました。その隙にチーフのモーリーと結託し、グルービング、ウオーマーを施し「止める」と言えない雰囲気を作りあげたのです・・・・

しかし、カルシウム不足のライダーが勝てるほどMOTO1は甘いはずもなく、中途半端なストッピーで私の屋形船は撃沈したのでした。

帰りの道中、「ガリガリ君喰う?」と彼をなぐさめながら見るレインボーブリッジからの屋形船は何故か滲んでいました。「ねえ、鎖骨、曲がってない?」後座席から何度も聞く彼に「気のせいだよ」と振り返りもしないで答え、全く動かない赤いテールランプ達を眺めながら「晩飯、何食う?」運転席のモーリーと相談しつつ、東京珍道中は終了したのでした。

 

以上は冗談ですが、このようなレースの場合、「迷うなら止めろ、後悔するなら行け!」が私の基本的なスタンスです。「痛み止めを飲んでまで走る必要はない」と彼にも言ったのですが、内緒で飲んでいたみたいですね。彼は勝負から逃げる事を最も嫌うタイプですから。

今回、結果は散々でしたが、彼のポリシーは貫き通したと思います。そういう意味で、見ていて気持ちよかったです。

「好きでやっているのだから、楽しもうよ。楽しくないなら止めりゃいいじゃん」

私がよく口にする言葉ですが、今回の彼の日記を見る限り、骨折していてもやっぱりレースは楽しかったみたいですね。何事も「楽しむ」それが一番大事だと思うのです。

みなさんもケガには注意して、楽しく走ってくださいね!