初乗車日 2日目 3日目 4・5日目 まとめ


初乗車日:10月27日(月)晴れ 

どこへ行ったらええんやろうか?
とりあえず、真っ暗な中、市民病院の前を通ってみた。
時刻は5時40分。
こんな時間にくすり袋を持って歩いているおじいちゃんは、そうそういてません。

つづけて、この時間に活動しているところを考える。「そうや!卸売り市場やったら人がゴロゴロいてるやろう」と国道25号線を大阪東部市場へと進ます。
走りながら気になることが1点。つり銭の用意ができていないことです。
どっかコンビニないいな?と車を走らせていると、黒い闇の中から手を上げている人が・・・。
「うそやん?」車と近づけると20代の女性がオイラの車に向かってきました。
ドアを開けてみると、息を切らして「南海のなんば駅までお願いします。遅刻しちゃった。」
とのこと。時刻は5時55分だった。
オイラの記念すべき最初のお客さまはパン屋に勤めるお嬢さんだった。

南海のなんば駅やったらアホでも解かるやん。25号線を大国町を抜けて進みました。
適当に右に曲がったら、そこにはオイラの知らない異次元のなんばがそこにあった。
へんな形をしたビルに段々になった建物。最近できた【なんばパークス】いう若者向けの施設である。
オイラの知っている大阪球場は露と消え、野村のホームランボールを拾った少年は今、タクシーのハンドルを握ってる。
その南海ホークスがこの夜、日本シリーズを制するのもなんかの定めかな?
野球の話しやってる場合ではなく、なんば駅周辺がなにしろ豹変している。
なんば駅周辺でオロオロ。一番近い駅への入り口はどこやろ?ドキドキしているオイラの鼓動。パン屋のお嬢さん方がもっとドキドキだったりして・・・。
なんとか到着でき、「どうも有難うございました。1260円になります。」
お嬢さんは千円冊と五百円玉を出された。
「オーマイゴット!つり銭の準備が出来てなかったんや。」
自分の財布をゴソゴソ。100円足らん。今度はポケットをゴソゴソ。ジャケットの内ポケットをゴソゴソ・・・
それでなくても遅刻しているパン屋のお嬢さん「運転手さん100円はいいですヨ」と優しいお言葉。つり銭も用意できず、ルートもアタフタ。
記念すべき最初のお客さんを送り出してからも、ドキドキはしばらく続きました。

その後、どこへ向かう目的もなく堺筋を北へ向かっていると、心の準備も出来ていないのに、またも手を揚げられたサラリーマン。
「おはようございます。どちらまでお送りしましょうか?」
「ミズノの向こう側まで。」
「すいません。まだ地理不案内で、いつもご利用されている道順を云って頂きましたら、そのとおり走らせてもらいますので宜しくお願いします。」
車を北に走らせると、途中のコンビニに立寄られた。
さて、ここでも問題発生。メーターはどうするんだったかな?【賃走】から【支払】にするのまでは覚えているけど、その後どうすんねん。
お客さが戻られ、また【賃走】のボタンを押した。これまたドキドキの勝負ですわ。
「7」「7」と並んで、最後のひとつを押す人差し指の心境でございます。
結果は、事なきを得ましたが、プロドライバー初日。緊張のしっぱなしです。

午後に、おばあちゃんを今里筋の病院にお送りして、日報を書き込んでいると「トントン」と車の窓を叩くおばちゃん。そのそばには車椅子のおじいちゃん。
初日から車椅子のお客さんが搭乗された。介護する方もいらしゃったので、車椅子の出し入れだけがオイラのすること。そして安全に丁寧にドアサービスをした。
支払は身障者チケットと地域チケットのダブル利用である。いったい現金はいくらもらったらええねん?
メーター料金から初乗り基本料金を引き、身体障害者手帳を出されたので、そこからまた1割引きである。
その後も三人つづけて地域チケットご利用のおばちゃんが続いた。
今里筋は病院も多く、おばあちゃんたちが足代わりにタクシーを利用しているようです。

その後、LPガスを補充し、目はショボショボ、頭はクラクラになって入庫。
一日中走り回って初日は11回・9640円の売上げだった。

入庫後、となりで洗車している先輩が「今日はどうでした?」と声をかけられた。
「今日が初日で、9640円でしたわ。」と云うと
「初日やったらそんなもんかな。前の人は2000円ほどの人もおったで。」と云いながら、売上げを上がるポイントとコツを教えてもらった。
8時まではAポイント。10時まではBポイント。この2ヶ所で1万近い売上げを上げたら2万近くは上げれるとのこと。
そして「うちの会社の看板で拾ってくれるお客さんが居るんやから、それをもっと利用せんとあかんで。」当日は何のこっちゃら解らんかった。

【今日の反省】
●日報の数値確認は確実に。5つの数値のうち2つも電卓ミス。疲れかな?
電卓の引き算が60点。こんなこと人生で初めてですわ。
●現金は意識しているのだが、タクシーチケットを1枚紛失。アホみたい。
●チケット無記入で金庫にほり込んでしまいました。
                                    


2日目:10月28日(火)晴れのちくもり

昨夜は熟睡だった。睡眠時間もばっちりで、頭をリフレッシュして暁の国道25号線を大国町に向かって走った。

今日も昨日みたいに、遅刻でタクシーを待っている人がおらんかなぁ〜。
このあたりやったなぁ。とこの交差点ちかくに来た時、パトカーが滑り込んで来た。
あれ?事故かな?パトカーが路肩に停止しているタクシーの横に止まった。
そのタクシー・・・オイラの会社のタクシーやんか。
オイラ昔から好奇心満々で、急いではいるが、わざわざ車を止め現場に立寄った。
おっさんとおばはんがオイラの会社の乗務員に怒鳴っている。
よくは解からないがタクシーに乗ろうと手を揚げたら、「このタクシーがおもいっきり突っ込んで来て当った。事故や」と警官に云っている。
乗務員は「言いがかりですわ。会社には連絡してますので、どうぞ行ってください。」
事実、当日も翌日の点呼の際、なんの連絡もなかったからよかったけど、
「いやや。いやや。事故は絶対せえへんぞ!もらい事故もせえへんぞ!言いがかりももらわんぞ!」と自分に言い聞かせてハンドルを握った。

今日最初の目的地は昨日先輩に教えて頂いたAポイントだ。
さすがだ。すぐさまお兄さんをゲット!そのお兄さんを送ってピストンだ。
また、すぐさまお姉さんをゲット!そのお姉さんの見事なタクシーの利用法。なんと移動距離は200m。先般の世界陸上で末次くんが21秒で駆け抜けた距離でっせ。
その日の昼間も御堂筋200m移動があって、タクシー乗るんやったら歩いたほうがエエとおもんやけどなぁ。まぁいくら短距離でもオイラは嬉しいですヨ。

3度目の乗客が、その日の最長距離を乗られた夜のお姉さん二組です。
「浜口から湯里へ。御堂筋までメーター倒さんといて。」なかなか云うお姉さんです。
このポイントオイラの会社のタクシーが多く、ちょうど後ろをみるとグットタイミングでオイラの会社のタクシーが走っている。「スイマセン。後ろにウチの会社の車がついてますので…」と料金メーターを【賃走】にさせて頂きました。
その代わり「お口直しにどうですか?」とガムを差し出しました。
浜口から湯里なら26号線から長居公園通りを走ったらええねんけど、もっと近道あるんかいなと、メガネをずらして地図を眺めていると「運転手さんなんでメガネそんなんしてんのん?」「おっちゃんな、近いもん見えにくくなってん。」「ふ〜ん」そんな会話しながら、ふと、この子のおとうちゃんはどうなんやろうと考えてしまった。
このお姉さんたちの売上げが4千円ほどあって、その後Bポイントへ向かった。

さすが先輩直伝のポイントである。またもすぐさまお客さまが乗り込んでくる。
それもたくさんあるタクシーの中からオイラの車をめがけて乗り込んでくる。
これが昨日先輩が言っていたことだ。「うちの会社の看板は絶大やで」と。
二日目は看板の大切さを実感した日だった。
午後、御堂筋を流していたらオイラの前に2台の空車タクシーが走っている。
本町あたりで、2台前のタクシーに乗り込まれたお客さんが何をおもったのか、すぐさま出てきてきた。
そして、こっちに来るじゃありませんか。それも、1台通り過ごしてオイラの車に。
お客さんがひとこと「乗車拒否しちゃった。」と。
お客さんが車を選ぶ時代なんだ。

そんなことを実感し、この会社の看板(信頼)を育ててくれた先輩たちに感謝し、オイラ新人もこれからも脈々と、この信頼という看板を大切に守っていかなあかんと意識した2日目だった。
【今日の反省】
●お客さまを降ろしても【支払】のまま2メーター(160円分)走ってしまった。
メーターをちょくちょく見る意識がいります。



3日目:10月29日(水)晴れ

今日乗車する車のドアを開けた瞬間、タバコのあの臭いが「もわ〜ん。」と漂う。
夜勤の運転手がプカプカしてマドを閉めたまま引き継いだようだ。

昨日はタバコを吸われるお客さんがいらしゃらず、
ある乗客が「きれいな空気ですね。マイナスイオンかなにかをされているんですか?そうなんですか、運転手さんがタバコを吸わなかったら空気がきれいで気持ちいいですね。私も吸わないのでタバコ臭いタクシーは最悪ですヨ」と言われた。
今日はまさしくノースモーカーにはキツイ車です。

マドを全開していつものポイントに車を走らすが、いつまでも臭く、その日の昼休みにオートバックスで車の消臭スプレイーを買った。
タクシーが偉そうに公共交通手段というなら禁煙と思うのはオイラだけかな。
お金払って、タバコ臭いタクシーに詰め込まれたお客さんが可哀想。
とくに通院されている方ならなおさらでしょうね。
この業界タバコを吸わない人が圧倒的に少なく、その心理は絶対解らないと思う。
オイラも20年以上スパスパのヘビースモーカーだった。
そんな時「禁煙?ほっといてくれ!」のクチでしたので愛煙家の気持ちは解ります。
でも、それってお客さんを見て商売をしていませんよ。なぜって?
タバコを吸われるお客さんの方が必ず「タバコいいですか?」と聞かれるからです。
お客さんがタバコに気を使って、運転手さんはスパスパ。へんなの。

朝の6時30分。焼肉屋の店員に介抱されているフラフラ兄ちゃんがいる。
こんなん乗って来たら難儀やなぁと思っていたら、しっかり手を上げてオイラの車に乗り込んでこられた。
ひとりでブツブツ云っては「ふぅ〜」と息を吐く。その息の酒臭いこと。
気になっていたタバコ臭さもふっ飛んだ。
「まっずぐ行っぐれっ〜」「地理不案内ですので、道の誘導願います。」と云うと、
しっかりと「そそそそその先の信号左。26号線の大国町を西へ700メートル走っでぐだざい。ふ〜っ。」  しっかり解かってはります。

俗っぽい街から出てきて酒息をのこして去っていったお兄さん。
ドアを閉めてすぐさまおばあちゃんが乗り込んでこられた。
「四天王寺さんお願いします。」朝早くから信心深いおばあちゃんです。
ひとつのドアから入ってくるふたつの人間模様。
この息苦しい時代。お酒にすがる人、御仏にすがる人。どちらもこれ人生。

牛女って知ってますか?今日乗っけましたで、「くちゃくちゃ。くちゃくちゃ。」「もぐもく。もぐもぐ。」なんか知らんけど、うしろで食してます。
ちらっとルームミラーで覗く。まさしく牛でございました。そのお姿。
どうも若い女性ほどマナーは悪く。男性は礼儀正しくそれこそ紳士が多い気がします。

午後からの何組かのお客様。
「○○ビルまで。支払はクレジットカードでしますので。」と言われた。
はじめてのクレジットカード支払だ。ちゃんとカード認識してくれるんかいな。
もし、認識せえへんかったらどうしよう。どうやったら御利用書が出てくるんやったかな?
もっと練習しといたらよかった・・・。またもドキドキである。
信号待ちのたびに、ドアポケットに挟んでいるマニュアルを覗く。
分ったような分らんような??? 
そして到着。落ち着いたそぶりであるが、挙動不審。
「そこのリセットボタンを押すと記名する利用書が出てきますよ。」と神の声。
その声はまさしく神の声。お客様からの声だった。ありゃりゃ・・・
「毎日利用して見ているんで、よく覚えているんですよ。」と神の声。
どんな業界でも、お客さんが最高のマニュアルである。
場数を踏んで、おおくのパターンを学び、本当のプロになってゆく。それを感じる。

御堂筋専科のオイラにとって、側乗のトシ先生に教わった【よ・い・こ・ふ・ど・ひ・あ・か・び・ほ】が実践にホント役にたつ。
【淀屋橋・今橋・高麗橋・伏見町・道修町〜】あたま1文字づつ丸暗記したら、およその目的地が予測できる。

【今日の反省】
●「累計」ボタンと間違って「支払」「賃走」ボタンを入庫後2回も押してしまった。
●会社の駐車場が空いている時に車をほり出しておかないと、入庫する車に囲まれ出庫できなくなる。


4日目・5日目ともなると、しっかり慣れてしまい。ドキドキもなくなってしまった。
お客さんとのコミュニケーションに関したら、オイラ自身が若い者に教育していた立場だったのでなんら問題なく、「運転手さんを指名したい」とか「楽しいひとときをありがとう」と嬉しいお言葉を頂戴してます。
また、おじいちゃんやおばあちゃんは昔話しをすると饒舌で
「この辺は、むかしトンボがぎょうさん飛んどってな、よぉカエルを捕まえて、遊んだもんでっせ。」とバリバリの大阪弁で古きよき時代のお話しをされます。
この辺て云われていたのは梅田のド真中ですヨ。
「このあたりでむかし牛車にぶつかりましてなぁ田んぼに落ちまししてん。おとやんにえらい叱られましたわ。」このあたりとは京橋のことです。
それはそれはまさしく落語の世界。【高津の富くじ】「子(ね)の一千三百六十五番」に当たったお方もいつか乗ってこられそうな雰囲気で御座います。
また、この1週間は月末で、週末も重なった日には市内はド渋滞。
タクシーに乗り出してまだ5日目という日に「今日は幹線が混んでますので、脇道から回らせてもらいます。」と、えらそうに、ほざいておりました。
えらそうに云ってるわりには、地図をちらちら覗いて「この道でええんかいな?」と一番不安なのはもちろんオイラ自身でございます。
こうして無事、無事故無違反で楽しく、ドキドキの1週間が終わりました。



    ■■■ここで第1週目の感想をまとめてみると■■■

1)先輩が売上げ聞いてきたら、水揚げの低い日報を見せて「新人なのでこんなもんです。」と言ってみて下さい。よい先輩なら売上げの挙がるポイントとコツ、さらに社内ルールなどを丁重に教えてくれます。よい先輩を見つけてください。良い先輩は入社まもない新人をしっかりチェックしております。一生懸命していたら、ちゃんと良い先輩が声をかけてくれます。ちゃらんぽらんな新人には、どんな会社でもそうであるように悪い先輩が近づいてまいります。

2)素人の時は会社の看板でタクシーを選ぶなんて考えたことなかったけど、ヘビーユーザーほど会社を選びます。タクシー会社就職の際はやっぱり大手が絶対いいです。1日何回もオイラの車を選んでお客様が乗ってこられます。また、それに応えるべくオイラも会社の看板を汚さぬように接客に誠意を示しております。そのおかげがどうか1日1度は「いい運転手さんで良かった。」と声を掛けて頂いてます。その一言がクタクタのオイラにとっては、なによりのエネルギーになってます。

3)仕事に関してはめちゃくちゃ楽しいが、収入に関しては気分が滅入る。売上げから計算すると、いくらがんばっても前職の半分以下だ。わかってはいたが我が家はこれを耐えれるのか・・・?昔なら給料が安くても楽しかったらそれで良かったが、今は子供も大きく金がかかる。タクシーでメシを食うには、もっと知恵と工夫が必要だ。日々勉強。


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