◆福岡県博多玄海島

                        平成7年11月4日

対馬、隠岐の島、玄海島と離島三連発

チロリとマムシとイソメで満タンのクーラーと共に10:28発のぞみ5号に乗車、一路博多へ向かった。

駅から博多港までタクシーで10分。おしゃれな都会的な港で秋の陽だまりの中、家族連れやカップルでにぎわっていた。

14:15の市営渡船で美しい玄海の海を渡ること小一時間、島に着くと正面山の中腹に「えびす屋旅館」の文字が見える。

島の急な階段を登って宿に着き、窓からキラキラ光る海が見渡せる部屋に案内された。

ここは人目を避けるにはもってこいの場所。なにやら小説が生まれそうな島である。

フェリーも無いから車が入ってこない。車が無いから信号が無い。だから子供たちは外で思いっきり遊んでいる。

ええ島や。ホントええ島や。宿のおかみさんもエエ人で松チャン曰く「V&R」である。宿代7000円也。

早速ヤマトで送った釣具を出して西波止へ向かう。

初日はまぁ下見みたいなもんで、噂通りのキューセン・イソベラ・チャリコ・チビフエ・ハゲにフグのエサ取りだらけ。

天気は快晴なるものの西の風が強く、潮も流され左へ左へと道糸がなびく。

まぁそんな初日、盗人も居ない島で、竿も釣具もポイントに置いといて18時には宿へ戻った。

ひと風呂浴びて夕食、ビールを飲んで麻雀。コレってただのオヤジ旅行やんか。

布団に入り目を閉じる。車が走らない島。シーンと静寂の音が聴こえてくる。

翌日は6時前に起きて西波止へ。

満潮の7時半、松チャンと喋っていると「当ってますヨ!」竿に飛んで行ってガツ〜ンと合わせる。

足元で下へ下へと潜り込むカレイならでは引き。

テトラの上に抜き上げたのは15号セイゴ針を飲み込んだ肉厚マコガレイ34p!

2泊3日、玄海島で釣ったたった一匹のマコガレイ。

この想いがどうしてこれほど深いのか…

それは、10年後テレビで見た福岡沖地震の受けた玄海島の崩壊的な映像。

たった一度だけ訪れた島なのに、ふるさとの島が無くなったような悲しみを受けた。

僕たちの泊まった「えびす屋旅館」を含め、全島7割の家屋が無くなった。

阪神大震災も東日本大震災も経験したが、釣りとの関連は無い。

唯一、釣りと関わっているのがこの玄海島福岡沖地震なのだ。