◆長野県中央アルプス天竜川支流

                        平成25年9月20日

午前3時 松川ICのセブンイレブンで入漁券を買った。

秋の晴天は約束されている。一眠りして松川上流へイワナ釣りだっ!

ダムから上の林道は先月徒歩で最奥まで進み、レガシィなら走行可能である事を確認済み。安心して未舗装の林道を登ってゆく。

車を止められるポイントも分かっている。車を止めハッチバックを開けてウェダーを身にまとった。


少し歩き堰堤ポイントへ。そこから一度下流へ向かってから沢を釣り上ってみよう。

のっけから小さな魚影が足元を走った!期待できそうだ。

だが、頭上に木々が生い茂り下り難い沢だった(と思う)それにすぐ堰堤で止められた。

勇気を出して左斜面から堰堤を下り、林の中を川のせせらぎ音を頼りに進んでゆく。

林の中に放棄されたタイヤを発見。人造物に出会い何故か安心。何しろこんな山奥まで来たことがない。

苔むした倒木の側には食べられるのか食べられないのかわからないキノコ類がニョキニョキ。もののけ達の棲む空間だ。

ちょっとした斜面を下りチャラ瀬の川面に出た。

もう少し下ってみようとするが又も堰堤。これ以上は下れない。ここから川を上ってゆこう。

タックルベリーで買った5.4mの竿を伸ばし、栃木で買った市販の渓流仕掛けをセットする。

高級竿は軽く、肘の負担はゼロに近かった。だが軟調竿は初心者には合わせ難い!慣れるしかないか・・・

みみずを針に刺してキャストし流す。キャストし流す。キャストし流す。キャストし流す・・・

ここは釣れるぞと思ったポイントにも目印に変化は無い。

ん〜困った。根掛りはするし、頭上の枝に引っ掛ける。そのくせ換え針は用意していない。なんたる事や。

でも、まぁこんな美しい渓相を眺め、マイナスイオンを存分に吸引できるだけでもええかと釣れない事を転嫁。
 

1時間チョイ本当の渓流釣りを体験し、さぁ帰ろうかとした時、ちょっとした不安が頭をもたげた。

そう、どこからこの川岸に降りてきたんだろう?

帰ろうと適当に林に入っていくがどうも違う。

それにこんな所に支流は無かった。その細い支流に釣り人が一人居ることにビックリ。

再び本流に戻り上流を目指すが、どうもこっちではナイ!

ここはどこや!!気が動転する!!帰り道はどこなんや!?オレはどっから来てん!?

これって・・・そーなんです遭難です??って言ってる場合か!

あせって沢の中を動き回わり尻もちをつく。危ないから岩に手にして体を支えようとすると、その岩がコケむしっていて滑ってズルッと前のめりになる。左膝とお尻がしこたま打つ。痛い!今も痛い!

迷える者はやみくもに動き回り、体力を消耗しパニックに陥る。

風が雨が闇が襲いかかり人は山の中で死んでゆく。

ギャ〜ア!!

幸い天気は良いし、真っ昼間で太陽が燦々と輝いているのが救いだが、事実やみくもに沢を登ったり下ったりした。

こうして動き回ったからか?それとも遭難の恐怖を想像したからか?心臓がバクバクしている。

喉が乾く。沢の水を一口ゴクリと飲んだ。

落ち着け時間はある。

そうだ!支流にいた釣り人に林道へ戻る道を尋ねてみよう。まだ居るだろうか・・・ 

おった!!

「すいませ〜ん」声をかけるが沢の水音で消される。

「すいませ〜ん!」今度は振り返った。

そのおっちゃんの腕に輝く【監視員】の腕章。ラッキー!

道を尋ねるより先に「釣れましたか?」と聞いてきた。

「イエイエ未熟者で・・・」ってそんな会話はええんや「林道へ戻りたいんですが…」

「そこの堰堤登って右の崖登ってよ」なるほど、本流を下って来たと思っていたが、実は支流だった。

監視員に会わなければアルプスで完全に遭難。

この日の事を教訓に、電波の届かない山奥でも自分の居る位置、進行方向がわかる地図ロイド山旅ロガーをインストールした。

これは使える!