◆愛媛県宇和島大良

 平成28年3月30日

春のやさしい風が港に吹いている。

防波堤の牡蠣殻に当り砕ける波音、裏山から響く鳥たちのさえずり、全てが心地よい。

ここは宇和島大良漁港。アマダイとイトヨリを狙いにやって来た。

当初は伊根でアマダイをと目論んでいたが、ポイントに行けないことが判明。

仕掛けは作ったし気持ちも釣りに向かっている。

遠征釣行に縁のない中島氏も気持ちはアマダイ・イトヨリになっているようで、この2種を投げで狙うなら宇和島!ってことになった。

29日W杯アジア予選対シリア戦を見て22時過ぎに自宅を出発。明石大橋を渡り四国に入り石鎚山SAで運転を代わった。残りは120㎞ほど、結構近く感じる。
4時半頃に大良に到着。

車中で一眠りし6時過ぎに波止先端に立った。


外海と言っても水平線は見えない山に囲まれたリアス式海岸、穏やかな水面にフルキャストした30号天秤が波紋を生んで仕掛けが海底に沈んでゆく。

深い。海図では水深10mとなっているが軽く20mはある。

そして泥砂感がある底はいかにもアマダイが潜んでいそう。

ただアタリはない。まったくない。穏やかな波音と鳥の鳴き声が優しく響くだけ。

噂のウミケムシも航路筋で一匹釣れただけ。生命反応の無い海。

ただこのことも織り込み済み。ドカンと一発がここの持ち味。

そのドカン?と一発サオが入ったのが釣り始めて2時間後。

それほど締め込みもなくあがってきたのはピンクの…アマダイに一瞬見えるイラ。

残念。コイツがアマダイ釣りの外道になる。

一度リリースしたが深い海底から高速で巻き上げたものだから既にお陀仏で海面にプカプカ。可哀想なのでタモですくってクーラーイン。

その後も攻め続けるがもうサオが入る事はなかった。
予定の正午よりも早く10時には竿を納め次なるポイント三浦半島・遊子(ユス)魚泊に向かう。

その深さはビックリの足元40m!
 

その目論んでいた浮き桟橋に着いてガックリ。

5つ連なる桟橋の先頭に行けない。
2つ目と3つ目の間を渡る橋が無い。

飛び越えることも出来ない幅でサビキ釣りのおいやん達も根元に集まっている。

最本命にしていたポイントだけに残念無念。

次に向かったのはこの先の水が浦埋立地。
中島氏が奥コーナーに私は手前コーナーに釣場を定めた。

のっけからアタリがあったが乗らない。2投目のアタリはしっかりとってガシラが登場。

ガシラならなんぼでも釣れるやろうと構えるが、その後中島氏に30㎝が釣れたのみで、またもや春のまどろみにたそがれてしまう。

椅子にもたれ夢の世界へ落ちかけていたとき奥角から中島氏の声がした。

ボヤっとした意識の中タモを持って駆けつけ海面を覗き込むと白い魚体が旋回している。

エイか?さにあらずマダイだ。

やわなタモですくい上げたのは53cmのマダイ。

山には桜咲き海にも桜舞う。まさに桜鯛。

初めての宇和島でそれも真っ昼間に釣り上げた相棒の見事な一尾!

写真撮ったるわと言うがエエよと言うのでオイラがフレームに納まった。
    
よしっ、これでオイラが釣ったようなもんだ!?

その後は何事も起こらず、次に竿を出したポイントはイソベラの嵐でアマダイ・イトヨリは現れず初日は終わった。

早めに宇和島ターミナルホテルにチェックイン。

明日の勝利を願いかつ丼を食し、20時には就寝。
一度起きて風呂に入り再び就寝。5時前の目覚ましでスッキリ目覚め。

二日目は一番水深があってエサとりもいなかった大良に向かった。

昨日と同じ釣り座に腰をすえて夜明けと共にフルキャスト。

1時間経過、2時間経過、3時間経過...確かにうるさいエサとりは居らず、鋭利に研がれた針には旨そうなマムシがそのまま装着されている。

針にエサが残っている時間が長いほどチャンスある。そう信じて静かに待つが春の沈黙の時間が続く。

そうこうしていると小さなおじいちゃんがキャスターをガラガラ引いてやって来た。

「なに釣ってのかな?」
「アマダイ狙ってるやけどあきませんわ」

「アマダイ?どんな魚かのぉ」等々他愛ない会話をしていた。

おじいちゃんのサビキにもアジが掛かるのはたまでほとんどがスズメダイ。

私の方もたまにアタリが出るが大きく食い込む事はなくマムシがニャンニャンされているだけ。

午前11時22分何度も港と筏を行き交う作業船が波止先端のラインを引っ掻けた。

三脚のサオが大きくお辞儀したので慌てて手にして船の進行方向に目をやった。

船は湾内に入ってゆくがラインは船が生んだ白波渦の中に留まったまんま。

???魚やん!来た!アマダイか!?

大きく抗う最初の一撃をかわすしすんなり上がってきたのは薄ピンクの…イラ…トホホ。

小さなおじいちゃん「これがアマダイかのぉ?」


結局二日目も納竿の正午まで釣れたのはこの34cmイラの一匹のみ。

オレと中島氏の間に入ってサビキ釣りをしていた農家の小さなじぃちゃんにアマダイを見せてあげる事なく桜咲く宇和の海を後にした。