◆宮城県牡鹿半島寄磯

 平成28年5月21日

午後8時30分、小雨降るJR仙台駅前には長いタクシーの列。

ワンメーターでホテルに向かうには申しわけなく、夜にもかかわらず青葉城に回ってもらうことにした。

さとう宗幸の歌で有名な青葉通りを走り真っ暗な広瀬川を渡る。高台の坂を登り仙台市内の夜景が一望できる場所でタクシーが止まった。

「あれが政宗の銅像です」と指さす先に青と緑にライトアップされた伊達政宗像があった。

逆光線に光るブルーの雨のなか、力強い脚が印象的な馬に跨る独眼竜。

もう少し早く生まれていたら秀吉、家康をも凌駕したであろう戦国の強者が私を迎えてくれた。

ホテルにチェックインして夕食。
仙台と言えばもちろん牛タン。地元で有名な専門店に入り、分厚い牛タンを3人前平らげ、夜の街に繰り出すこともなく22時にはベッドイン。


翌日の午前中に松島遊覧して単独牡鹿半島に向かう。

仙台市内から離れ沿岸部や河川道を走ると震災の傷跡が未だ見受けられる。

フェンスで囲まれた復興工事地帯に、多くの仮設住宅が並ぶ集落。

震災の慰霊なのか真新しい小さなお地蔵さんに手を合わせた。

ダンプの行き交う山道を走り牡鹿のリアス式海岸に囲まれた小さな横浦漁港に着く。


一通りの復興工事は終わっているようで赤灯も立入れる。

出来立ての真っ白な波止は大きく長く広くって足場もよい。海の相も最高で、テトラがある波止付け根で竿を出した。

14時から6時間ほど竿をだしたが釣れたのは小型のアイナメと餌にするためのリュウグウハゼぐらい。


釣れそうな雰囲気についつい長居してしまい時間と体力を浪費してしまった。

静かな港内で3時間近く眠り本命ポイント寄磯に向う。

牡鹿半島の名前の由来なのか道中は鹿だらけ。
クラクション鳴らしながらのんびり進んでゆく。

震災で有名になった女川原発の横を通り抜け、着いた寄磯漁港は予想以上の大きな港だった。

左右の大波止で竿を出そうと思うが、初めての場所での夜の単独釣行。無理は禁物(と言うより正直しんどく面倒くさかった)

煌々と灯りがともる護岸の荷揚げ作業場前
に車を止め、竿を出した。
 

こんな湾内で釣れるんかいな?

取り敢えず16号セイゴ針1本仕掛けを正面にキャスト。底は思っていたより浅い。

のっけから激しくアタリが出て上がって来たのは大きなマアナゴ。こちらではメインな投げ釣り対象魚だけどお呼びではない。

その後、投げ釣り竿をほっといてバスロッド片手に護岸を探り歩いた。

漁港コーナー
に仕掛けを落としたら小さな魚信。

二度目のアタリで穂先を送り大きく腕を上げると小さな魚が乗った。

取り込んだ魚は小さなメバル…?いやタケノコ色したタケノコメバル(ベッコウゾイ)??

ん~ん 残念ながらこれはクロソイの赤ちゃん。

このお手軽な探り釣りでも綺麗な魚体のチビナメや丸々したドンコも釣れる。
もちろん投げ釣りでもがひっきりなしに同二種が釣れてくる。魚影は濃い。



そんなさ中、今までと異なる引きで見慣れないサカナが海面を滑った。 ん? カレイやんか。

この時期、こんな時刻に30㎝近いマコガレイが16号セイゴ針を咥えて上がってくるとはビックリポン!

そして、もう一本ほったらかしにしていた竿を手前まで煽り三脚に立てかけるとすぐさまアタリ!

竿を持つと結構な魚信!

これはなんだ?エイ?んん?! 

…またもカレイやん!それもデ・カ・イ!

どっこいしょと護岸にぶり上げたのは40㎝近い立派なマコガレイ。

なんと連発でカレイが港内の近投で登場!

写真撮ってリリースすると筋肉質の魚体を波打たせ海底へ帰って行った。

考えてみれば大判マコのリリースって贅沢やね。

北海道で買った、赤と黄色エッグボールの付いた派手な仕掛けに食らいついた良型マコ

25号六角オモリを仕掛けにダイレクト付ける形状から根掛かりが頻繁に発生しそうなのに、これがまた全く問題なし。

ロックフィッシュ狙いでオモリロスを見込み、たくさんのオモリを持ち込んだが、なんとオモリロスゼロ!

どういうこっちゃ!

この午前1時過ぎがピークだった。そしてそれは突然来た!

16号セイゴ針にたっぷりのイソメを刺し港内40mほどにキャスト。

三脚に立て掛けるとすぐさま、穂先に付けていた鈴がけたたましく鳴り響いた。

着底後のすぐにアタリ。
こんな場合は大型魚の確率が高い!

すかさず竿を手にしたその瞬間からヤツは頭を振って抗う。

リールを巻いている最中も激しくシェイクヘッド!
そして凄い重量感!
間違いない!でかいアイナメだ!
この引きの凄さ半端ない!

わくわく感この上ない!

だが無情にも幸せな時間がプツンと切れた・・・

エエぇ?!何でぇ?

ぐやじぃー!!なんですっぽ抜けたん?

あれ?
モトスとハリスの連結部が抜けている・・・

あぁ何たる事だ。
すっぽ抜けならまだしも、自分の作った仕掛けのミスでは文句も言えない。

長いこと釣りをしているからわかる。間違いなく50cm前後の手応えだった。そして狙いのアイナメだった。

遠征しても絶対釣れるとは限らない。釣れる方が稀。
首振る重々しい引きが、感覚が、口惜しさがしばらく抜けないだろう。

釣りって残酷… 

でも予想もしていなかった真夜中の大判カレイに逢えただけでも良しとしよう。

大きな波止に囲まれた湾奥の護岸で、こんなに楽しめる牡鹿半島は凄すぎる。

あるブログで紹介されているのを後で知ったが午前1時がこの辺りの釣りのピーク時間みたい。

煌々と海面を照らす照明が小魚を呼び、それを狙うデカイ魚が外洋から港内へ入ってくるようだ。

そんな明るい港のど真ん中にある荷降ろし場で釣りをしていたものだから軽トラで兄さんがやって来る。

「釣れっぺ*йлжц・・・」あかんバーチャル東北弁だ。

カレイ2枚上げたと言うと「ほだなおおぎなカレイжй#ц!」やっぱり判らんがビックリしてはるみたい。

そして「土産さこいずをたがいで#йлцжっ」とホヤをドサッと9つもくれた。

頂いても持って帰れない…でも東北漁師の優しさに断わることなど出来ず「おおきにおおきに」とお礼。

兄さんが去ってからホヤをそっと海にリリースしました。

宮城県産が市場の8割を占めているホヤ。
そもそもどうやって食べるの?根っこみたいヒゲが生えているけど植物ではないよな…イソギンチャク系?
ほら、握ったらユムシみたいに水を吹きだしたやんか。


4時前、早くも山の端がうっすら浮かびここが日本の東に当たるんだと実感。

朝まづめに満潮が重なるベストの状況だが、あのデカナメを逃がしてから皆目ダメ。そして実釣12時間、疲れた。

ナメタガレイの実績がある波止の先端まで行きたいがもう無理。

気力もないし、風も出てきた。

2500円で買ったイソメは結構残っているけど、暑くもなりそうだし、日の出と共に納竿。

女川に戻る途中の空き地に車を止め眠った。

何時間眠ったろうか行き交うダンプの音に起こされる。

いつもならダンプに対して文句もでようが、女川から石巻の被災地を目の当たりした私は一日でも早い復興を願うだけ。

その後は温泉【ふたごの湯】の土色した湯船につかり、冷房の効いた畳の匂いがする有料の部屋を借りてひと眠り。

微睡ながらながら考えた。次は岩手県重茂半島でデカナメのリベンジだ!

釣れなかったからまた行ける。
でも東北は遠いよね。