◆三重県南伊勢神前

 平成28年5月18日

いつもの茶店で中尾氏とコーヒーを飲んでいた。

天気も良いし釣りに行こうと急きょ話しがまとまる。

行き先は先月に続き南伊勢・神前浦、狙うはイトヨリ。

午前0時三郷に迎えにゆく予定だったが1時間延ばして欲しいとの電話が入る。

ならば少し眠るかとベッドに入るが、ワクワク感いっぱいで眠れない。

遠足前の子供といっしょ。釣りはオヤジを子供にしてくれる。

午前1時に中尾氏を迎えに行き、高速移動で〔えさきち〕へ。イソメ2000円購入し、真っ暗な藪中の駐車場に着いたのは4時過ぎだった。

ライトを照らしてゴロタ浜を覗き込むと海岸線がすぐ手前まで来ている。

満潮が近いんだ。山の端もうっすら浮かび上がっている。

「最高のタイミング」と浜に降り適当な近場に釣座を構えた。
これが失敗。

一投目から気持ちいいアタリが出た。

リールをがむしゃらに巻く。ガツンと掛け上がりの顎にオモリが噛んだ。

あかん。全く動かない。のっけからばらす。

その後もほぼ根掛かりとの格闘。

朝まづめの最高の時合いに、この釣座の選択ミスは勿体ない。

PEと力糸を結び直すこと数回。三陸で全くロスの無かったオモリが4つ5つと海底に消えてゆく。

こりゃダメだと先月、竿出しした右側へ移動。

こちらに来ると根掛かりも落ち着き、椅子に腰かけ竿をゆったり眺められるようになった。

午前5時8分:鋭角的な段アタリが出た!

大きくあわし、竿を天に突き上げ高速でリールを巻く。
手前の掛け上がりをかわし海面を滑るのは大きなハゲ。


その後キャストして底を探っているとググッと来た。今度は20㎝超のガシラ。


この手持ちパターンで大きなイソベラを2匹。
釣れる魚がどれも磯モノ系。
そこでさらに右へ移動。

足元が砂地混じりのゴロタになって、ラインを通じて手元に伝わってくる海底の状況も根が少なく釣りやすい。

カウントは12~14と先程までのポイントより深く、釣れる雰囲気がいっきに増す。

数投目、一番右に投げていたジェット天秤25号1本針仕掛けのリョービ竿にシャープなアタリ!

予想外の24㎝キスが登場。


小さなトラギスも来た。やはりこちらは砂地の割合が高い。

この5時台がピークだったのか、キャストすれば何らかの反応があった。

いずれもおかずにするにはもってこいの魚。

昔はしっかり食べたけれど最近はキャッチ&リリースのフィッシングスタイル。

只今、母と二人暮らし。
魚好きなおかんのために持って帰りましょう。

背後から太陽が射し、潮が引いて浜が広がってくるとアタリも途絶えてきた。

ただ春の日差しが気持ちよく。幾色のグリーンに彩られたパッチワーク模様した山の風景と日の刺し方によって猫の目のように変わるブルーの海が、釣り人を和ませてくれる。


のんびりした時間が過ぎてゆく。
そんな時、車が止まり二人の釣り人が浜に降りてきた。

「こんにちは。何を釣っているのですか?」

「イトヨリを狙っているのですが…」

「あぁ。ここでは朝夕に、こんなサイズのイトヨリが釣れますよね」
と指を40㎝ほど広げた。

うわぉ!


午前8時30分 小さなキス針2本仕掛けと遊動天秤の組合せでフルキャスト。
底をさびいて三脚に立てかえると穂先が小さく揺れた。

その後の大きなアタリを待つがその後がない。

竿を手に持つとたよりない引き…
25号のオモリの重さだけを感じながらリールを巻く。

海面に現れた10㎝ちょっとの小さな魚。
トラギスか…

岸に引き上げてビックリ!
これは…
イトヨリ!!

小さいながら狙っていたイトヨリじゃないか!

サイズなんかどうでもいい。イトヨリが釣れたことが自体がメチャクチャうれしい。

写真では見事大きく見えるが、綺麗な可愛いイトヨリ12㎝!

水槽で飼ってみたくなる可愛らしさと美しさ!

何度もシャッターと押す。

今まで釣った魚のなかでもナンバーワンの美しさ。
見よ!このピンクのグラデーション!最高!

キス針を優しくはずしてリリース。
50㎝になったらまた会おうぜ!と先週の三陸ベッコウソイと同じフレーズで別れを告げた。

その時、空からトンビが舞い降り…

あれぇ~。鷲掴みされて空へ消えてった。

まぁ、よくあること。

大きくなった君とはもう会えないけれど、君のご兄弟との再会を楽しみにしているよと、午前11時 神前浦をあとにした。