◆三重県尾鷲古江~二木島

  平成29年03月06日

目の前に広がる穏やかな海

山里に住居を移し、こうして海を眺めていると気持ちが鎮まる

それこそ勝手知ったこの古江の海なら、なおさらだ

さて、ひな祭りを迎えると春アオリがやって来る

中尾氏の希望で古江にやって来たのは良いが、ここでアオリの実績はない

事実 この広い護岸に墨跡は二つだけ…

釣果より、冒頭のとおり、馴染みの海を見ているこのひとときが嬉しい


午後四時 えさきちで買ったアジを背掛けにしてキャスト

ドラグを緩め三脚に1号竿を掛け立てた

当初は3号磯竿で攻めようと思っていたのだが、リールシートのスライド部が欠落していて使用不可

車内を探すが無く、奈良宅の納屋にも無かった 信州の自宅に有るんかな?


「ジッ・ジィ」単発のドラグ音が静かな漁港に響く

が、これは元気なアジがノビノビ海中を泳いでいるだけ

日が暮れる19時まで粘ってみたが全く反応なし

長居は無用

漁船が停泊して釣り座を塞いでいるかもしれないが、実績場である二木島に移動することにした



沿岸部を通る311号線は綺麗に整備され、昔の獣道のイメージは今はない

でも、そこらじゅうで鹿に出会う

道が拡張され、高速道路が造られ、鹿たちの居住地が消えてゆく

開発を反対する気はさらさらない

されど自然が失われてゆくのを見送る傍観者ってのもやっぱり淋しい

すれ違う対向車もない細い坂道を下るとオレンジ色に染まる二木島漁港が見えてきた

おっ、船が泊まっていない 釣り人もいない
これは釣れたも同然!

私は実績ポイントの右角に釣座を構えアジを投げ入れた

時刻はベストタイムの20時

ここでアタリが無かった事などない

静かに その時を待つ

待つ

静かに待つ





シーーーーーーーン

時間が止っているような感覚なれど、星は淡々と回っている





シーーーーーーーン

アタリがない

静寂を切り裂くドラグ音がしない

エサのアジが減らない

残りのアジはどうする?

余っても仕方ない

手にしたバスロッドにアジを付け、中尾氏の右側に投げ入れた

その中尾氏 頻繁にリールを巻きアジを動かす

20時30分 中尾氏の竿が一度だけ大きくお辞儀した

状況を確認するため中尾氏がリールを巻く

今度は私のバスロッドが大きく揺れた

「あれっ?絡んでもた…」

確かに2本のラインがクロスしている

私は自分のラインを上にしたり下にしたりするがクロスしたまま
手元にラインを手繰り寄せた

私のラインに中尾氏のラインがぐるっと一回りしている

こんな事ってあるんかいな?と考えていると

「あっ!釣れてる」と中尾氏

「ん?」確かに海面にイカの姿!

アオリじゃない
大きな筒烏賊がビュッビュッ潮を噴いて海面で暴れている

中尾氏が用意していたアオリギャフでヤリイカを取り上げるのは難しい

私は自分のタモを伸ばしサポート役にまわった

イカを掬おうとするがヘッドライトの光源の弱い

護岸近くになると外灯の光が影となりイカの姿が見えない

「あっ、抜けてもた」と中尾氏

頭を落とされた銀色のアジがブラブラ揺れている

残念,,,,と海面のタモを抜き上げる

と、その中に大きな赤いイカの姿がーーー

うわぁ。上手いこと入ったんだ!


そして救い上げた後に知った事実

てっきりアジに刺した針にフッキングしたものだと思っていたら、ラインにアジを縛っていただけ

あれだけ海面で暴れまくり、暗がりの海 適当にタモを差し入れてゲットした大きなヤリイカ

よくもまぁ捕れたもんだ

この偶然の一匹がすべてで、その後まったく音沙汰成なし

寒さも増す

アオリにはちょっと早すぎたかな…

暇過ぎて、寒過ぎて、漁港をランニング

するとヘッドライトが近づき、ふたりのルアーマンがこっちにやって来た

挨拶を交わしたアジンガーさん

すぐさまアジを釣り上げた

「この周辺20km釣り回ってやっと釣れました」と言う

その後 我々の鳴かないヤエンをよそにアジをポツポツ釣り上げてゆく

今日のこの海は、アジたちが悠々と泳げる状況のようだ

アオリの居ない二木島

ほら


またそこで、アジが跳ねた