韓国旅行記 【韓国新正月旅行記】 3/5(全5話)


くりぐり
鬱陵島出身で、現在ソウル近郊のクリ市在住 小柄で可愛い女性
かんねぎ
くりぐりさんのお友達。いっこ下らしい。よく喋る女性。(^^;
こま
テグ(大邱)に住んでいる。ユーモアのある面白い男性。
パイザ
一応、この旅行記の作者で、このホームページの管理人です。

1998年 1月 2日(金)



01コリアンタイム

 今日は韓国のパソコン通信「チョルリアン」(千里眼)の日本語同好会のメンバーと一日過ごすことになっている。待ち合わせ場所は鍾路の「パパイス」だ。除夜の鐘が鳴らされた「ポシンガク」の横にあって、待ち合わせ場所としても有名らしい。

 今日は天気が良く晴れ渡っているせいか、とても冷え込んでいた。寒さに震えながらも、僕は待ち合わせ時間の10分前にはパパイスの前に到着してしまった。しかし、来るはずの「くりぐり」さん(女性)「かんねぎ」さん(女性)の姿は見えなかった。そしてそのまま「パパイス」の前で待ち続ける。そして約束の時間になった・・・でも誰も来ない。これはもしかして、いわゆる「コリアンタイム」なのだろうか? いや、場所を間違えたのだろうか? 「コリアンタイム」というのはご存じの方も多いと思うが、10時集合と言っておいて、実際人が集まり出すのが10時30分を回ってからというような「時間感覚」のことを言う。そこのところを韓国人に聞くと、「バスがよく遅れるから」とか、「渋滞するからしょうがない」とか言うのだが、はたしてどうだか。

 そして十数分遅れて、くりぐりさんが登場した。彼女は約束の時刻より前に到着していたのだが、僕へのお土産を買っていて遅れたようだ。とりあえずパパイスに入ってさらに待つことにした。そしてさらに10分ほど遅れて、かんねぎさんが現れた。因みに今日はこのメンバーだけ? と思って聞いてみると、もう少し増えるらしいのだがまだ連絡が取れなかったりしているらしい。この辺が流動的というか、臨機応変というか、実に韓国らしい気がした。

 ところで、くりぐりさんが選んでいたお土産は、一人用の茶器とお茶のセットだった。茶器の方は湯飲みが二重になっていて、急須なしでお茶を入れることが出来るようになっていた。お茶の方は緑茶で「ユビ茶」(劉備茶)というものだった。三国志に出てくる「劉備」にまつわるお茶のようだ。それに正月用の「もち」も何種類かくれた。薬味が入ったものとか、お菓子っぽいもの、漢方薬っぽいものまである。「もち」と言うよりは和菓子に近いのかも知れない。材料も粳米(もち米じゃない普通の米)を使用しているらしく、いわゆる日本の「もち」とは違っていた。



02ハガリ スジェビ

 さてパパイスでしゃべっていても仕方がないので、仁寺洞の「ハガリ スジェビ」の店に移動することになった。この「ハガリ スジェビ」とは、一言で言うと「壺に入ったすいとん」(ハガリ=壺・瓶、スジェビ=すいとん)だ。仁寺洞ではかなり有名らしい。韓国の伝統的な料理の一つだそうだ。まだ肉をあまり食べることが出来なかった時代の料理なんだろう。ガイドブックにもあまり紹介されていないようだし、これは面白そうだ。

 3人で仁寺洞の方に向かって歩いていくと、突然くりぐりさんのピピ(ポケベル)が鳴った。どうやらコマ君(男性:大邱市在住)から連絡があったらしい。今、パパイスにいるということだった。ということで再びパパイスに戻ると、コマ君が待っていた。コマ君を拾って再び仁寺洞に向かった。

 仁寺洞の奥の方の道をさらに奥へ奥へと向かい、そのどん詰まりにその「ハガリスジェビ」の店があった。新しく作り直したらしく、目に突き刺さるほどきれいな店だった。店の中は韓国の伝統的な農具なども置かれていて、伝統的な雰囲気をかもし出している。そして壁には、黒くて手のひらサイズの「ハガリ」(瓶)がたくさん並べられていた。

 店の奥の方の板の間席に行く。靴を脱いで上がり、韓国座布団を敷いて座った。しばらく待っていると、4人分の「スジェビ」が「ハガリ」に入って出てきた。そこからお玉ですくってみんなに配るのだ。さっそく、くりぐりさんについでもらって、食べてみた。なるほど、すいとんだ。海苔の味がして美味しい。濃い味がついていないので、自分で味を調節しながら食べるようだ。これなら辛いものがダメな人でも問題ない。もちろん辛いのが好きな人はキムチと一緒に食べればいいのだ。

 ところで、「すいとん」をご存じない方のために、少しだけ解説をしておこう。三省堂の国語辞典によると「小麦粉を水でこね、みそしるなどに箸ではさみきるようにちぎっておとし、煮たもの」とある。戦後すぐの頃には、よく食べられていたようだ。しかし、この「ハガリスジェビ」は味噌は使っておらず、少しどろっとした「澄まし汁」だった。でも美味しい。

 次々とおかわりしながら、お腹の中へと入れていく。思ったよりもお腹がふくれてきた。腹持ちは良さそうな感じだ。

 すっかりお腹がいっぱいになり、記念撮影などをしてから店を出た。



03伝統茶店からチャンギョングンへ

 そのあと伝統茶の店に行き、さっきの「韓国式もち」を持ち込みで食べながら伝統茶などを飲み、話をした。しかし、何度も言うようだが彼らはよく食う。あんなに「スジェビ」を食ったはずなのに、数十分あとに、今度はもちをぱくぱく食っている。それで体型は維持しているんだから、全くもって謎だ。

 そのうちピピで連絡を取り合った仲間が集まってくる。macfanさん(男性)が登場して、一緒にお茶を飲みながら話をした。彼はどうやら車で来ているようで、これからいろいろ案内して売れるらしい。ありがたい。それに、カイ君(男性)からも連絡が入ったので、拾いに移動することになった。

 macfanさんの車は、大型のジープ(日本でいうRV車)詰めて乗れば9人ぐらい乗れるものだった。それに乗って先ほどの「パパイス」の前まで戻り、そこでカイ君を拾った。

 そしてそのまま「キョンボックン」(景福宮)に移動した。しかし、正月の休みだからか、駐車場の入り口には長蛇の列が出来ていた。これではいつ入れるか分からないので、ここはあきらめて別の宮殿に移動することにした。僕が今まで行ったことないところとなると、「チャンギョングン」(昌慶宮)ぐらいか・・・。ということで、チャンギョングンに移動した。

 チャンギョングンはソウルの中心部のやや北寄りにある宮殿だ。早速中に入ってみる。メンバーは、くりぐりさん、かんねぎさん、カイ君、僕の4人だ。コマ君とmacfanさんは車に残るということだった。

 宮殿の中はお正月だからか、家族連れなどで賑わっていた。日本なら晴れ着を着た人がうろうろしているところだが、チマチョゴリを来た人は見かけなかった。新正月だからそうなのかも知れない。でも、とにかく人は多かった。

 チャンギョングンの方は特に変わった建物があるというわけでもなく、キョンボックンなど、他の宮殿と同じような感じだった。ただ、思ったより広くてしかも坂道が多かった。他の宮殿が比較的平らなところにたてられているのとは対照的ではないだろうか? 僕たちは建物の謂れなどを勉強するわけでもなく、ただ、モシインヌゴッ(趣があるところ?くらいの意味、うまく訳せません)で、写真を撮りまくってしまった。

 これも正月メニューなのかも知れないが、宮殿の中を歩いていると「ノルティギ」(韓国版シーソー:左下写真)をやっている人たちがいた。そしてその横には「ユンノリ」(韓国版すごろく:右下写真)「トゥホ」(投壺)をやっている人たちもいた。

 

 ノルティギというのは、俵の上に長めの板を置いて、その板の両端に人が立ち、交互に飛び上がるという遊びだ。家の中から滅多に外に出る機会を与えられていなかった女性が、こうやって飛び上がり、外を眺めたと言われている。僕も実際やってみたのだが、これがなかなか難しい。カイ君によると、自分の力で飛び上がったらダメだそうだ。棒のように立っていて、板の力で「飛び上がらせてもらう」ようにするのが、コツなのだ。飛び上がった相手が落ちてくる。そして板が大きくしなって、その反発で自分が飛び上がるというわけだ。僕らはどうしても本能的に衝撃を膝で吸収してしまう。ノルティギに関しては、これをやると全然飛び上がれない。棒のように、棒のようにと言い聞かせたが、なかなかうまくいかなかった。

 それからノルティギをうまくやるためには、板の真ん中にもちょうど俵をまたぐような形で人が立たなければならない。写真の右側の組は真ん中に人がいないのだが、これではうまくいかない。実はこの真ん中の人がかなり重要なのだ。この真ん中の人がうまくタイミングをみてコントロールしないと、板がすぐにずれて、俵の上から落ちてしまう。重石であり、司令塔なのだ。これはなかなか奥が深そうだ。

 ついでに横にあった「トゥホ」(投壺:下写真)にも挑戦してみることにした。このトゥホは、小学館の「朝鮮語辞典」(私はこれを愛用しています)に挿し絵が載っているので知識としては知っていたのだが、やっているのを見たのは初めてだった。

 この遊びは「細長い壺」に、離れたところから「矢」を投げ入れるというものだ。壺の穴に矢を入れるのは本当に至難の業だ。トゥホ用の壺は、真ん中の穴のまわりにも、いわゆる「ラッキーゾーン」的な「輪」がついていて、ここに入ってもOKのようだ。何回かやっているうちに入れることが出来た。しかし、これは思った以上にムキになってやってしまうタイプの遊びのようだ。

 

 これらの遊びをしたり、写真を撮ったり、散歩したりしながら小一時間チャンギョングンで過ごした。

(第3話終了/全5話)