***Patio誕生物語***

神戸であの恐ろしい地震が起こる少し前、年が明けて最初の土曜日、高齢のご婦人が二人の主婦と思しき

ご婦人を伴って、当時担当していた立川展示場を訪れました。二人のご婦人はお嬢様たちでしたが、老婦

人の長年描いてきた夢の行方を見守るために、同行してこられたのです。

 

そのご相談内容とは…

 

1.      国立の駅前の商業地区にビルに囲まれた自宅がある。南に街並外れて高いマンションの計画があり、

反対してきたが止めるのは難しそう。自宅と周囲の環境を考えて、広場のある店舗併用住宅を考えたい。

広場=憩いの中庭スペースには、樹齢50年の大きなマグノリアの木をそのまま残し、他の想い出の木々

もできるだけ新しい庭にレイアウトして使ってほしい。取り囲む周辺建物は全て汚い裏側を向けているが、

それが気にならないように計画してほしい。

 

マグノリアは既に大きく育ち、移植はできません。

枝を張りすぎていて、工事のクレーンを回転させるのが難しい状態です。(そもそもクレーンを設置したい中心位置にマグノリアがあるのです。)

また西側はもともとお店の従業員が自転車やバイクを止め、ゴミを出しておいたスペースです。

 

 

 

 

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


写真は工事前の状態、奥のビルが見えます。

ビルの谷間で、光を求めて上へ伸びる庭木で鬱蒼としている

奥に、自宅がわずかに覗いていて、写真右上にマグノリアの

枝葉が広がります。

この大樹を残しての計画がご希望でした。
                                    ▲入口付近からの写真です。

 

 

2.     これまで建設会社などからいろいろな提案を受けた。現在マンション問題で世話になった設計事務所

とやり取りがあり、提案はやや自分の感性に馴染めないが、そこの顔が立つよう計画を進めたい。

 

手書きの間取りのスケッチを一枚持って自分ひとりでS様宅へ伺いました。

すると居間の真中に全体模型(計画の建物だけでなく地域一体の街並みを再現した立体模型群)まで置か

れ、分厚い計画書がきっちり出来上がっていました。

S様のご要望で、総合計画と設計管理をする建築士さんを訪ねました。

施工を担当する建築会社に指名していただくという立場で挨拶に伺ったのですが…

「サッシが壁の内法に納まらないようなPC工法を採用する考えは無い」とにべもない応対でした。

その後、全体計画をその設計士さんに替わって担当することになります。

 

 

3. テナントは完成後募集したのでは雑居ビルになってしまうので、着工前に全て内定しておきたい。

特にキーテナントは確定しておく。テナントから建築内容に希望があれば検討項目に加えてほしい。

 

キーテナント予定の「文流」は、テレビやグルメ雑誌のイタリア料理特集にはお馴染みの店。

ハートにちなんだグッズを集めた「ハートカンパニー」は近くで営業中の人気のお店。

美容室「キリヤ」はやはり付近のお店で、それまでの地下店舗から出てパティオを見下ろせる2Fを切望。

「スクループルズ」は地元の上品なセンスのブティック。

アクセサリーとニットの店「シルバームーン」

業種までバランスさせてS様の構想に組み込み済みのため、それぞれを念頭においた個別設計です。

大きなネックは、大事なキーテナント「文流」を仲介してくれた宝飾店が、自らも入居を希望していまし

たが、S婦人の店舗部分の構想リストから外れていたことです。

 

続く…