2006年4月はこの2公演

 


マンションマンション「キング・オブ・心中」

下北沢OFF・OFFシアター 3/30〜4/3
4/1(土)マチネ観劇。座席 A-10(招待)

作・演出 福原充則

 高橋治(富岡晃一郎)と葉子(高木珠里)は、カレー屋を始める為に物件を探していた。候補のひとつである、とある商店街にある元喫茶店で話し合う二人。しかし、口論は物件の善し悪しの事ではなく、妻の葉子が不動産屋の望月(三浦竜一)に恋に落ちた、という事が中心となっていた(中心って言うか。それだけを口論していたと言った方が早い・・・)。極端にヤキモチ焼きの治の行動が異常かと思いきや、葉子には度重なる前科があったらしい・・・。それも妻の一方的な恋に終わるのではなく、相手に惚れさせる力を持っていたから始末に負えない。
 一方、アルバイトの面接にやってきた西村(瓜生和成)はフリーター歴10年のつわもの。彼女の美代子(根上彩)までやってきて、すったもんだ。結局不採用だった西村は、他所で働くもうまく行かず自殺を図り、何故か、治の店に地縛霊としてとり憑く。
 そんなカレー屋を舞台に、治の後輩のボン(草野仁)、酒屋の田西(山本了)、葉子と別れたにもかかわらず、忘れられない浮気男・釣川正(今林久弥)とその妻・菜摘(横畠愛希子)も集まり、店内はてんやわんや。そんな苦境の中、片寄った愛を確かめ会う治と葉子の物語。

 初めて観るマンションマンションである。聞くところによると、自分の美術作品を舞台で見せたいが為に横畠愛希子が立ち上げたユニットだとの事。なるほど。思惑通り、面白い舞台美術が立ち並ぶ。
 作・演出はピチチ5の福原充則。安心してその世界に浸れる。本当に奇妙な人々を描かせたら天下一品。しかし、本人は「描かれているのは普通の人々だ」と言っていた・・・。ただ、あんな人々が普通だったら、この世は楽しくて退屈しない、って言うかうざくて気が狂う。どこにもいそうでいない、そんな人々のオンパレード。それを達者な役者が演じるのだから、面白くないわけがない。今回の作品は、仕上がりが遅く、幕が開かないかもってくらいにギリギリだったらしい。それでも、ここまでの完成度の高さを見せるのはさすがである。

 横畠愛希子の話しに戻るが、横畠が作る舞台美術は面白いと正直思った。町の背景のジオラマが舞台袖に配置されているが、その子細に作られた建物(屋根に猫がいたり、物干竿にふとんが干してあったり)を、階段のごとく登る。作品の上に登らせるというのは“舞台美術”として割り切っているからか。その上を歩く人間と建物の不均衡さと言うか比率のむちゃくちゃさが、物語をさらに面白くしているから凄い。まるでマンガの世界である。役者としての横畠は庭劇団ペニノ『ダークマスター』で観ているが、印象は強い方ではなかった。打って変わって今回は、普通の人っぽいけど異常、かわいいけど、うざったいっていうのが、みごとに表現されていて、ちょっと惚れた。濃い役者ばかりの中にいてその存在感が消えていないというのは素晴らしい。

 そんなわけで、奇妙な世界を堪能でき、大満足な1時間強であった。

演劇の部屋に戻る


スロウライダー「トカゲを釣る」

こまばアゴラ劇場 3/24〜4/2
4/1(土)ソワレ観劇

作・演出 山中隆次郎

申し訳ありません。まだ書けていません。

演劇の部屋に戻る


あかいめ「再生ノオト」

ギャラリールデコ 4/11〜4/16
4/15(土)ソワレ観劇。座席 自由(2列目中央)

作・演出 六分一沙良

 とりあえず、DMの一部を引用。

彼女の片足は不自由だった
まるで纏足のように
つまさきがつぶれていた
 
あたしは知っていた
窓から落ちたブスな女の
あたまのしたには
きれいにレンガがつんであった
 
十三月
女はさかさまになる
 
そして
また
再生するのです

 ・・・身重の母が部屋で首吊り自殺を図る。首吊りのショックで流産した子供(妹)を踏みつけた彼女の片足はつま先が潰れ、不自由になった。彼女は子供の頃から遺書ばかりを書いていた。やがて、彼女は幼い頃の経験に苛まれながらも、子供を身篭り、腹が大きくなっていた。母と同じ。そんな母親に対する想いを映像とダンスで見せた公演。出演は、山崎妙子、遠藤留奈、立岩留美子、畔上千春、菊地千里、高須賀千江子、六分一沙良。

 以前『ニセS高原から(ポツドール組)』の打ち上げで六分一沙良さんに名刺を渡したらしい。あまり覚えてないのだが・・・でも、女性に渡しておいて覚えていないってどーゆうことだ!なんたるテイタラク!!って事は置いておいて、これも何かの縁なので、公演を観に行く。頂いたDMをあまり読んでいなく(上記の文)、“うごく絵本と女の子たちと赤い部屋”って文から、かわいい印象を抱いて行ったのだが、これが大きな勘違いであった。すっかりホラー。それも“怨”って字が浮かんできそうな日本的な恐怖。マジ怖かった・・・。過去の行為に対する自責の念とか、不安の病理とか、そんなものが母への想いと共に描かれていく。映像(動く絵本)も怖いし、ダンスも怖い。視覚的に脳裏に焼きついてしまいそうな恐怖(色とかも)、プラス夢でうなされそうな心理的な恐怖・・・。って、恐怖づくしじゃん。

 ただ、難を言えば、ダンスにもう少し面白みがあればいいのにと思った。“面白み”って言っても笑いじゃなくて、微妙な動きの面白み。伝わるかなぁ〜・・・。妊婦特有のS字(腹が出てお尻が出てみたいな)が、視覚的な特異さを示しているのに、踊りに関しては動きが読めてしまい、突飛性がない。だから、ダンスの面白さがイマイチ感じられないのである。

 面白い公演なのに、感動が薄い。ちょっと残念でならない。でも、次回も観たいと思うのは、何か心に引っ掛かる公演だったからであろう。その“何か”を次回は見つけられることに期待したい。

演劇の部屋に戻る



CONTENTSのページに戻る