97年2月はこの4公演

 


MOTHER「ジャンキースクエア」

青山円形劇場 
2/1(土)観劇。座席 A-21

深い霧が街を包んでいた。この街に引っ越してきたばかりの青年は、日課であるジョギングを始めた。しかし青年は知らぬ間に中毒者が集まる“ジャンキースクエア”に足を踏み入れていた。青年は必死に脱出を試みるのだったが…。

舞台は奇妙なダンスから始まる。迷宮をさ迷うかの様なダンスがこれからの物語を暗示しているようでワクワクさせるが、何故か芝居の面白さにも不安を感じさせるオープニングだ。ライティングも選曲も申し分ないのだが、案の定、中盤でも意味のないダンスが入り不安的中。オープニングだけで終わっていれば良かったものを・・・
不条理な空間で青年は、さまざまなジャンキーに出会うのだが、気を吐いていたのが、惑星ピスタチオからの客演である佐々木蔵之介のみだったのは寂しい限りである。佐々木演じる辛いものジャンキーが見せる「仮面ライダー ブラックペッパー」は得意のパワーマイム全開で、最高におかしい。ほかのジャンキーも佐々木ほどのパワーがあればいいのに、何故か笑いが寒い。だじゃれジャンキーなど中味はすかすか、笑いもすかすか。
牧野エミの客いじりは嫌いな人もいるだろうが、私は好きだ。ただ、ちょっとやることが幼稚なのが、舞台のテンションを落としていると思わざるを得ない。円形劇場の地の利を生かした舞台だとは思うがもっと工夫も必要だと思う。
ストーリーに関しては、脱出しなければならない理由が希薄な為か(正常な人間が、あんな空間に足を踏み込んでしまえば、理由なく出たいと思うのはあたり前だが、盛り上がり的には何か欲しかった)脱出するぞという場面で感動が薄かった。だからその後まだジャンキースクエアにいるという、どんでん返しが非常に弱く感じた。脱出したくない気持ちがあると脱出できないという伏線を張っていたのなら、まだジャンキースクエアにいると気がついた時、薄笑いを浮かべて走り出すとか、ちょっとひねりを入れても良かったのではないだろうか。最後まで中途半端な 主人公の気持ちが、ちょっと不満を残す。
本筋とは違うのだが、全体の流れが気がふれた人間の頭の中で葛藤する自己というような感じもした。まっ、こんな深読みは無駄な気もするが。

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遊気舎「PARTNER」

駅前劇場+OFF・OFFシアター
2/8(土)観劇。座席 自由

パートナーと呼ばれる未契約の衛星放送のパロボラアンテナを探すアルバイトが、詐欺王を別件逮捕すべく(パラボラアンテナを隠して設置し、衛星放送を見ているのに、見ていないと嘘をついたら逮捕しようちゅーこと)活躍するという単純な話。

それを駅前劇場とOFF・OFFシアターを使って観客をあっちこっちに移動させ、一緒に体感しようという実験的要素が強い芝居。なのですが、うーーーーん、もの足りない。劇場の移動はただ暗転の一手法と言う感じだったし、工夫が今ひとつ足りない。
さらに、羽曳野の伊藤、ポルシェミキ、偽ブルース・リーの3人の中で一人だけ選べるという場面で偽ブルース・リーが選ばれてしまったものだから、余計にもの足りない。個人的には羽曳野の伊藤が見たかったんだけど…。
ストーリーとはなんの関係もなく、駅前とOFF・OFFの間のロビーに設置された、特設ゴミステージで行われている劇団「夢芝居」第九回公演「乾燥わかめ」が移動の最中ちらり、ちらりと見る事ができるのだが、これがちょっと気になったりして、面白い。
全体としては、お遊びとしてはいいけど、作品としては失敗作と言う感じでした。

ところがどっこい、いろんなキャラクターでの話を聞いたら、全てストーリーが違う。すごいぞ、遊気舎!全部観てこそ本当のおかしいさがわかるという、贅沢な芝居なのでした。
全ストーリーは遊気舎のホームページで紹介されてます。ここからどうぞ。
インタラクティブに楽しむなら小雪さんのページがお勧め。ここからどうぞ。


“遊気舎”自分が観た公演ベスト
1.びろ〜ん
2.ダブリンの鐘突きカビ人間
3.イカつり海賊船
4.PARTNER
 

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猫ニャー第6回公演「長そでを着てはこぶ」

シアターグリーン 2/14〜18 
2/15(土)観劇。座席 自由

まずは一言、「おもしろい」。前回の公演は見逃してしまったのだが、前々回の『ポセイドンのララバイ』から見ると、雲泥の成長がうかがえる。前々回はストーリーを廃したポップなコント集みたいな感じだったのだが、今回は主人公である小池君の引っ越しという場面を用意してきた。
引っ越しをする為に集まってきた友人5人(男2人、女3人。大学のサークル仲間だと思われる)と小池君の弟の計7人の絡み合いが話の中心。ただ中心と言っても、そこに何かがある訳ではない。いや、あるのだろうが特に強調される訳でもない。あえて挙げるなら「何故、小池君は視力が悪いのにめがねをかけないのか?」という話しだけだ。それだけなのに、おかしい。猫ニャー独特のわけがわからないおかしさにも磨きがかかってきた。一歩間違えれば白けきってしまうであろう、台詞とか場面をうまく表現している。ここいら辺が猫ニャーの持ち味だと思う。この持ち味を生かしつつ、どこまでもつっぱしってもらいたいものだ。
ハイテンションで青春してしまう呆れ返るラストに、不覚にも感動してしまった私であった。


“猫ニャー”自分が観た公演ベスト
1.長そでを着てはこぶ
2.ポセイドンのララバイ

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第三舞台「朝日のような夕日をつれて’97」

紀伊國屋サザンシアター 〜3/2 
2/25(火)観劇。座席 10-21

サミュエル・ベケットの「ゴドーを待ちながら」を鴻上流に料理した古典的名作の97年版。

観終わってから、何度も頭の中で繰り返し繰り返し考え、以前の戯曲も読んでみたが、よく理解できない。ただ、ラストで希望に向かって立ちつくす男達の姿には感動した。
以前の戯曲を読んで違和感を感じたのだが、今回の公演があまりにも以前のままであることだ。男達は待ち続けているのではなく、その場所で立ち止まったままで、何も変わっていなかった。再演だからそれでいいと言うかもしれないが、私としては待ち続けたその時間も表現して再演して欲しかったと思う。


“第三舞台”自分が観た公演ベスト
1.天使は瞳を閉じて'88
2.天使は瞳を閉じて'91
3.モダン・ホラー特別編
4.ピルグリム
5.ビー・ヒア・ナウ
6.朝日のような夕日をつれて'97
7.宇宙で眠るための方法について 序章
8.スナフキンの手紙
9.パレード旅団
10.リレイヤーIII

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