THEATER/TOPS 1/2〜1/11
1/6(火)観劇。座席 H-9
作・演出 福島三郎
丸太町で出会った男女7人、プラス喫茶店のマスター(岡山はじめ)の過去と現在を、春空亭平吉(植本潤)の「春まるだし」という高座を進行役として進めていく、ほんわか正月っぽい作品。この「春まるだし」という噺はその昔、主人公である落語倶楽部の部長(有馬自由)とその彼女(高田聖子)が作ったものだが、この噺がこの作品の伏線というか主題というかそんな感じで重要な役割をなしている。落語倶楽部設立に恋と友情などを絡ませた、こそばゆい過去の話と、行方をくらませて10年ぶりに突然帰ってきた部長を取り巻く現在の話を交差させながら進行していく。喫茶店のマスターという過去から同じ場所に留まっている人を中心点として、過去と現在の大晦日という同じ時間の設定で時の流れを見せている。でもちょっと作り過ぎって感じもなきにしもあらずだが、そこは正月という事で大目にみちゃおぅ。個性豊かな役者が揃ったのもなんか正月のおせち料理っぽくて良かった。好きな役者がたくさん出演しているのもあって、自分的には満足できる作品だった。他の出演者は、谷川清美、西田薫、福本伸一、桂憲一、菊池均也。そしてマスターに惚れる同性愛者役でみのすけのゲスト出演。これが、お尻まで出してしまうサービスぶり。いや悪のりぶり。内容に全然絡まないから余計に印象が強いのか、とってもおいしい役どころ。
総合的には満足しているのですが、扉座「ホテル・カリフォルニア」にちょっと類似しているのは、なんともかんとも。有馬自由が高校生で倶楽部の部長という同じ設定もあるんだけどね。で、「春まるだし」の方が断然面白かったんですが、この作品が面白いと印象が深まるのではなく、「ホテル」のつまらなさがひしひし伝わってきてしまったのには参った。観た時は面白く感じたんだけどなぁ。『今頃「ホテル」のつまらなさがわかったんでは遅い!』と、横内謙介ファンクラブ会長からのお言葉。おっと、話がそれてしまいました。
フランスの画家バルテュスの絵画をモチーフに、話を膨らませた5本の短編によるオニムバス構成の作品。今回観たのは加藤直美が出演するBプログラム。「二人の銀行員の妻」「果実におぼれて」「靴箱いっぱいのラヴレター」「タバコとボイン」「美しい日々」の5本。『ヘンテコな気分にはまります』といううたい文句通りに、5本ともヘンテコ。全てに奇妙な空気が漂っていておかしい。それはゲラゲラ・ケタケタ笑うものじゃなくニコニコ・ニタニタという感じ。毒のある内容さえもニコニコ笑ってしまう。そんな変な空間が魅力的であった。腹を空かせた森の小人、いちごをほっぺに付けた女、般若信教のリズムで縄跳びをする奴らなど、登場してくる奴らも奇妙でおかしい。ベターポーヅを観るのは初めてなので今回のオムニバスだけでは判断できないが、独特な空気を感じた。人をのほほんとさせておいてヘンテコな事を仕掛ける。ただもんじゃない。
腹を空かせた召使役で林檎を噛るだけなのに狂気とエロスを感じさせる加藤直美も最高。ただ今回の作品では、加藤直美の狂気がちょびっとしか見れなかったので(オムニバスなので全作品に絡んでるわけでもないし)、ちょっと残念ではあったけど。
12の参加劇団中5劇団が日替わりで出演するコマーシャル・サーカス。去年に引き続きの第2回目。持ち時間約20分でアピールし客を確保しようとする劇団と、おもしろい劇団がないかなぁと探す観客の攻めぎあいが楽しい公演。のはずなんだけど劇団の固定客ばかりが来ているという感じもしないでもなかった。つまんないのに大笑いしているのを見ているとつい愚痴も出ます。劇団の良さが20分でわかるわけはないが、その20分 でさえ楽しませる事が出来ないようでは所詮ダメ。この日出演した劇団を順を追って書いていきます。
5劇団中3劇団がおもしろかったのでまぁまぁという所でした。
- BQMAP「BQMAP−ビーキューマップ−」
ビーキューマップという本だか地図だかわからない物を読むとその世界が現実となって現れるという内容。発想が貧困。眠くなる。- カブ「チープチープ」
ウエイトレスの内輪話という感じ。おもしろい。ちょっと気になる。今回のは2月公演の予告編との事なので、本公演を見て真価を問いたい。この日一番の収穫。- HIGHLEG JESUS「ハイレグジーザスのうれし恥ずかし姫初め」
出し物はアドちゃんのラクガキ、人間椅子、伝言ゲームならぬ伝食ゲーム、ハイレグ体操。ハイレグの初登場の日にはSWAPがあったんだけど、主催者側からのクレームで途中で中止になったそうな。残念。そんなわけで今回はチンポなしの公演。それでも、インパクトはピカ一。なかでも伝言ゲームは凄かった。肉じゃがを口に入れ噛みしめた後次の人の口に入れて行く。それを5人ほど続け、みんなで元の食物を当てるというもの。客席からはうえぇと悲鳴があがったりしておかしい。客いじりの過激さで、今一番危険を感じる劇団でもある。- 劇団猫のホテル「ファミリーとして」
カジノを建設しようとする一団と反対派との抗争の話の一部を切り取ったという感じの公演。中途半端が残念と思えるおかしさ。“週刊明星”によく劇団員が客演していて顔は知っていたので安心して観れたというのもあるが、これ又本公演を見てみたいと思った劇団。- 劇団METAL TRAP「Heroes−名探偵達の事情−」
探偵もののパロディなんだか本気でやってるんだか、なんだかよくわからない。ただ言える事はつまんねーという事。
正義の味方を信じる心を持ったまま大人になってしまった茶沢芳輝。変身できないゴメンバーのリーダー赤木一番。この二人を中心に、他のメンバーや敵も入り交じってのコメディ。『ゴメンバー天下御免』なんて主題歌が流れる中のオープニング。背が低い元イジメられっ子の正義の味方。楽な生活を望んでいる戦闘員。これはきっとヘナチョコで面白いに違いない!とワクワクして観はじめたのに、何故かヒーロー青春物語になってしまい最低の作品になっていた。大人が笑って泣けるなんてうたい文句があったが、言語道断!ふざけるな!と言いたい。
まず初めに断わっておきますが、私は恋愛ものと称される部類のものは大の苦手だったりする。目の前で恋愛の定義みたいな勝手に作った価値観をぶつけられたら、茶ぶ台をひっくり返したい気分になります。そんな前提を踏まえての観劇だった。簡単に言ってしまうと二組の夫婦のラブストーリー。ですが、核心はすごく深いところにあったので期待以上に楽しめた。物語は、心に何かを抱えている、そんな事を匂わせるオープニングで始まる。でもそれは何かは明かさない。何かを見つけられないまま、二組の夫婦は互いに違うカップルとSEXをしてしまう。題名から考えてこの展開はまぁそうなのかぁと思うと同時に「これはSEXばんざいの駄作か」との不安も頭をよぎる。しかし、俊一(久保田浩)と林太郎(近江谷太郎)、都(冬乃もみじ)と小雪(林英世)との関係がわかるに従って、各々抱える悩みがわかってくる。それは平凡な日常に流されるだけの自分ではなく、本当の自分の心を見つめた結果の悪あがきであって、SEXに固執しない恋愛の形を見つけようとする男女の話であるとわかってくる。このあたりから俄然おもしろくなってくる。都と小雪の猥褻なkissもいいが、俊一と林太郎のkissは衝撃と共に笑えてしまった。笑う場面ではないとは思うが、笑えることによって関係がどろっとしたものではなく、とてもいい関係に見えもした。夫婦崩壊の話かと思ったら結局均衡のとれた四角関係に収まったのも気持ちがいい。そしてなにより、こうしなさい、これはダメです、みたいな説教臭さがなく、こんな関係もいいんじゃん的な軽い描き方に好感が持てた。