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Tokyo SANKAKU「Paper Star and Cotton Snow」

日時:平成11年12月12日(日)
場所:荻窪 アール・ヴィゴ
料金:(前売り)1500円
出演:太宰葉奈子、ちばさとこ、山西右悟、本間木綿子、その他

満足度:★★★★★


「紙から生まれた娘がいました。娘は美しい声で歌を歌いました。・・・・しかし娘は燃やされてしまいました。」
今回は荻窪の小劇場「アール・ヴィゴ」にて、7月に公演を観に行った「Tokyo SANKAKU」さんの新作を観てきました。前回のハートフルなコメディーとはうって変わって、今回はシリアスな、悲しい、しかし美しい物語でした。その内容はというと。

学生で童話作家である小山広美は、高校時代の先輩である科学者・遠山にアルバイトをしないかと呼び出される。それは遠山が在籍する研究所で自分の意志と感情を持ったプログラム「カエデ」の家庭教師の依頼であった。人間的な感情が不足ぎみである科学者より、童話作家である広美によって「カエデ」に情緒教育をして欲しいと言うことである。
遠山の秘書である、ちょっとおしゃべりな千鶴を交え、広美の教育により、「カエデ」は砂漠が水を吸い込むように人間的感情を身につけていく。そして「カエデ」は、自分の欲望のために「カエデ」を利用しようとする会長・野田、「カエデ」を商品としてしか見ない所長・三越芝から自分を守ろうとする遠山に対し恋愛感情まで持ち始めた。そして、遠山も、「カエデ」の純真さに触れることで今まで自分がやってきたことが間違っていたのではないかと思い始めていた。
「カエデ」の開発は中止しようと言う遠山、「カエデ」を軍事目的に使おうとする三越芝、「カエデ」に自分の意識を植え付けることで人間の感情の真理を探ろうとする野田。三人の科学者の狂気がぶつかりあったクリスマスイブの夜、物語は悲しい結末を迎える・・・・

人の感情、感性がテーマであるため、詩的な表現が多く使われてましたが、決して難しいことはなく、わかりやすかったです。最初はあまり感情を持たなかった「カエデ」が次第に感情を身につけていく様子。また人間であるのに、人間的感情が見られなかった遠山が逆に「カエデ」によって人をいつくしむ感情に芽生えていく様子。対照的に狂気が増大していく野田と三越芝。そして、生まれたばかりで汚れていない「カエデ」の純粋さ。これらの難しい感情表現を出演者のそれぞれが見事に演じていました。特に印象的なシーンだったのが、「カエデ」が遠山が好きなハーブティを作って、遠山に飲ませるシーン。「カエデ」と遠山の思いが繋がった瞬間、このシーンから目が離せなくなりました。そして、クリスマスイブのデートを「カエデ」が思い描くシーン。雪が降る夜の公園にたたずむ「カエデ」の美しさが目に浮かぶようでした。

個人的に、こういった悲哀物が好きなこともあって、最後のクライマックスではぽろぽろと涙を流しながら観てました。もう一度観たいくらいでしたが、残念ながらこれが千秋楽だったので(^^;しかし、観に行くまではここまでの物が観られるとは思っていなかったので、良い意味で期待を裏切られました。私の中ではS.W.A.T!の「My Blue Heaven」、岸野組の「お涼・平六捕り物絵巻〜女ねずみの恋唄」、鈴置洋孝プロデュース「煙が目に染みる」と匹敵する良いお芝居でした。

「紙から生まれた娘がいました。娘は絵描きに恋をしました・・・・」


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