菅原智之 の インド紀行 ページ 3


 

 


  

インド仏跡参拝記 その3
〜 サルナートとベナレスの沐浴〜
  
  仏教の開祖『お釈迦さま』ゆかりの地を訪ねて、1997年2月12〜20日のインド仏跡参拝記の第3回です。




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 ブッダガヤを出発した我々一行は、またまた激走するバスに揺すぶられながら、遙か8時間彼方の「サルナート」へ向かいました。




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 インドのトラックはTATAというメーカーのものがとても多く、トラック野郎のような派手な飾りに度肝を抜かれます。クラクションもヤンキーホーン。私も道路横断中に鳴らされてしまいました。ですが私、妙に気に入ってしまいました。

 「カッコイイ!!」 



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 「サルナート」はベナレスの近く、お釈迦さまが最初に説法された地です。35歳でブッダガヤにて悟りを開かれてから、その悟りの心境を自分一人で味わうべきなのか、それとも人々と分かちあうべきなのか悩み抜かれ、歩みを始められました。
 当時のサルナートは鹿の園でした。自然が豊かなそこに到着されたときに、かつて一緒に修行した仲間たちと出会われ、ご説法されたのでした。ここから仏教が始まりました。初めて法を説いた地ということで、初転法輪の地と申し上げます。それを記念して、大きな仏塔が建っています。
後ろが仏塔です



 訪問した時には、かつての鹿の園を彷彿させるように、野良犬がちょこんと座っていました。インドには野良犬や野良牛(!)がたくさんいるんです。どれも痩せていてお腹を空かせているようなのですが、自由を楽しんでいるようにも見えます。そして車やバイクや人の雑踏の中に共存しています。とても日本にいては見ることのない不思議な、それでいて自然な光景です。



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 インド内陸部、ヒンドゥー教の聖地「ベナレス(ヴァラナィ)」は、ガンジス川のほとりにあります。ヒンドゥー教では、この地でガンジス川に沐浴すると、天国に生まれるのだそうです。私は仏教徒ですが、好奇心に駆られて沐浴してきました。



 ベナレスに宿泊した我々一行は、まだ暗い早朝5時にガンジス川へと向かいました。とてもしつこい土産売りにつきまとわれながら、やっとの事で沐浴場にたどり着きました。早速水着に着替えます。恐る恐る足を水の中へ。石段はぬるぬるしていて気持ち悪いのですが、水はそんなに冷たくありません。いけそうです。
 パワフルなインド人のおっさんが、身振り手振りで沐浴方法を教えてくれます。どうやら頭の先まで浸かれと言っているようです。冗談じゃない。水は思ったよりも汚れてなく、江ノ島の海水浴場よりもきれいなのですが、もしも病原菌でも貰ってしまったらと思うと、首までが精一杯。おっさんはなんと!
うがいマデしていました・・・。
「ねっパワフルでしょ!」

 やがて川の対岸から朝日が昇り始めました。お釈迦さまもこの川に浸かりながら同じ太陽を見ていたのだろうなと思うと、2500年という途方もない時間も超越したような気がしました。




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 沐浴場を挟んで上流は町の住人の洗濯場で、下流は火葬場。そして遺骨は川に流します。まさに“生”と“死”が一体。死は穢れではなく、特別のものでもなく、いのちあるものにとっては当たり前のことでした。日本人が見失ってしまった、しかし大切なものがここにありました。
 すべてを包み込む悠久の流れ、ガンジス川。川面を花束が静かに流れていきました。
すべてを包み込み、ガンジス川は流れる。





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 『人の生を受くるは難(かた)く、やがて死すべき者の、いまいのちあるは有難し』  (ブッダのことば〈法句経〉より)


  次はいよいよ涅槃の地クシナガラへ参ります。

                  (つづく)



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