「インド雑感」 by 白川淳敬
●2月9日〜17日まで、またかとおっしゃるかもしれませんが、インドに行って来ました。今回は東京仏教学院同窓会企画の旅行で総勢9名で行ってまいりました。
コースはデリー出入りで、まず、デリーでアンベドカルさんの提唱した、カースト弱者、ダリット解放を目指す、新仏教協会のデリー本部を訪ね、本堂で読経をして、メッセージの交換をしてきました。これは有意義でした。
それからの主な訪問地は、アグラ、サンチー、アジャンタ、エローラ、オーランガバード、ムンバイです。仏教関係の見学参拝先は、サンチーのストゥーパ群、サッダーラのストゥーパ群、アジャンタ石窟、エローラ石窟、オ−ランガバード石窟といったところでしょうか。要するレンガ見学と洞窟巡りです。本当はムンバイのカーネリー石窟も予定に入っていましたが食傷気味のためやめました(個人的には行ったことがあるので)。
●訪問地の逐一の報告は皆さまご存じの通りなので省略しますが、インドはどんどん代わります。「インド雑感」と言うことで、仏教遺跡にこだわらずに報告させていただきます。
●アンベドカルさんの新仏教教会
アンベドカルさんの新仏教教会のデリー本部を訪問しました。広い敷地の中にアンベドカル氏の大きな像が野外にあります。4〜5階建ての大きなビルがありその一階の一室が本堂になっています。建物の割に本堂は小さく簡素で、50人も入ったら満堂のようです。ご本尊は釈迦成道の像。その後ろにアンベドカル氏の大きな写真がありました。お互いに読経をして、メッセージの交換をしました。「すべての命は尊い、差別をない社会の実現のためお互いにがんばっていきましょう」というような事を言ったら大きな拍手を戴いてしまった。おみやげに築地本願寺の英字パンフレットと日本のカレンダーと成田で買った日本のお菓子を差し上げました。
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アンベドカルさんのお寺 |
●デリーの排気ガス
インドにはオートリクシャという3輪タクシーが無数に走っています。それも2サイクルエンジンのため白い排気ガスをもうもうとはいて走り回っていました。たぶん一昨年の四月頃から、デリーのオートリクシャはすべてCNG(天然ガス)を燃料にしたものに代わりました。その結果、前より随分ましになり、少なくともデリーの道で息をしていても喉が痛くなりませんでした。
●タ−ジマハール
タ−ジマハール近辺も一般車両の通行が規制され、少し離れたところでバスを降り、歩きか電気自動車に乗り換えて、タージマハールの前まで行くことになります。世界遺産なので、空港のようなボディーチェックがあって、何か持ってると「ピー」と鳴ります。
ちょっと前は、冬の乾期の頃にここに来ると、「どこまでも真っ青な空に浮き上がるタージマハール」が見えたのに、最近は薄曇りで、「白っぽい空に真っ白なタージマハール」は絵にならない。これも大気の関係だろうか。
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タージマハールのボディーチェック |
●サッダーラ、ストゥーパ群
ボパールとサンチーの中間くらいの所を西に入ったところにサンチーと同年代のサッダーラ、ストゥーパ群がありました。昨年個人的に行ったケサリヤのストゥーパ同様、発掘調査修復が途中で放り出されています。ガイド氏いわく資金不足のようです。
メインの大きなストゥーパがあって、その回りに大小さまざまなストゥーパがありますが、どれも崩れています。メインストゥーパには欄楯があったようで、部品が地面におかれて修復を待っています。サッダーラ側の河岸崖にストゥーパと仏画があったのは印象的でした。
我々は、「有名なサンチーの近くに同様のストゥーパ群が見つかった」と、サンチーを中心に考えますが、中心はサンチー近くのヴィデーシャと言う町で、ヴィデーシャを中心に約10q圏内に、サンチー、サッダーラ、アンデール、ボージプル、ソーナーリーの5つのストゥーパ群があります(全部は行ってません)。そもそもヴィデーシャは、アショカ王の妃の出身地だそうで(王子の時近くに赴任しててみそめたらしい)、その縁でここに一大仏教センターが出来たと言われています。この妃との子がスリランカ開教に大きな役割を果たしました。
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サッダーラ、メインストゥーパ |
●アジャンタ石窟のシャトルバス
マハーシュトラ州政府はアジャンタ石窟のバスロータリーまでの車両の乗り入れを規制し、ちょっと手前からシャトルバスで観光客輸送するようになりました。インドでは見たことのない立派なバスで、自然にやさしい(?)真緑に塗られています。そのバスロータリーにはショッピングモールのようなみやげ物屋が出来、これらはおそらく、元のバスロータリーにあった店が移されたものでしょう。その証拠に、元のバスターミナルには店が一軒もありません。
傑作なのが、このバスの車庫。立派なコンクリート製、シャッター付きですが、何を間違えたのか、バスのほうが大きすぎて入らないのです。現在そこは乗務員の休憩所になっているとガイド氏は言っていました。
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アジャンタ石窟のシャトルバス。
向こうに見えるのがバスの入らない車庫 |
●アジャンタ石窟の光ファイバー照明
アジャンタ石窟は壁画が有名ですが、その照明が光ファイバーになっていました。以前は限られたところだけ、照明をあててくれましたが、今は熱のでない光ファイバー照明になっていました。石窟の外に大きな光ファイバーの元がおいてあります。また、入れない部分も多くなり、壁画も遠くから見るような感じです。
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アジャンタの光ファイバーの元 |
●ツアーバスの陳腐化
インドは変わってきました。乗用車も以前はアンバサダーがほとんどでしたが、スズキ、ヒュンダイ、トヨタ、TATA(インド製)が良い乗用車を送り込んでいます。乗用車はどんどん進化しているのに、ツアーバスだけが過去の遺物のような、TATAのトラックシャーシにバスの車体を付けた、乗り心地最悪の頑丈なだけのものです。以前は、まわりの車達も同じような状況だったので、バスもこれでしょうがないと思いましたが、今はまわりが変わって来ているのになぜバスだけ取り残されているのかと思います。一考をお願いしたいところです。
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ツーリストバス、見た目は良いが、やっぱりトラック。 |
●以上思いつくまま「インド雑感」を書かせていただきました。
白川淳敬