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「名所・旧跡こぼれ話」

このコーナーは、東京教区内の隠れた名所や御旧跡にまつわる
こぼれ話など、あまり知られていないものを紹介していくものです。

名所・旧跡こぼれ話
第6話

内野如来様
所在 山梨県南都留郡忍野村内野

報告者: 遠山章信
 

 富士吉田から山中湖に向かい、車で十分ほど走ると左側に開けてくるのが忍野村。手前が忍草(しぼくさ)、その奥が内野である。
 そこに『安養軒』という小さなお堂がある。同村の天野一家の持仏堂で、親鸞聖人のご旧跡地の一つと伝えられている。
 伝説によると、今から800年ほど前、親鸞聖人が甲斐の国、勝沼・等々力(とどろき)の萬福寺に聖徳太子廟を訪ねて、箱根から三国峠を越えてくる道すがら、日もとっぷりと暮れたので、一夜の宿を請われたのが天野家。
 その時、聖人の深い人間愛に触れられ、帰依された天野家の主夫妻、法名を「釋円智」・「釋尼妙智」と戴き、念仏のみ教えに帰入されたという。
 天野家には、蓮の繊維で織った布地の『阿弥陀如来像』、聖徳太子・三国七高僧及び仏弟子達を描いた『光明品』、そして『十字名號』の三幅が伝えられ、毎年九月二十八日に報恩講のお座が営まれている。
 富士吉田市の正福寺とは不思議なご縁に結ばれ、臨済宗・承天寺の檀徒である天野家と、浄土真宗のお寺という垣根を越えた行事として、門信徒と共に参拝している。
 富士北麓界隈には、同様の歴史を持つお堂が、富士吉田市大明見(おおあすみ)に『柏木の如来様』(福源寺の関わり合い)、『浅川(あざがわ)の如来様』(如来寺の関わり合い)があり、いずれも現在までそれぞれのお寺によって報恩講が勤められている。
 山梨県内には、さらに多くのご縁のお寺があったり、峠や分かれ道などに、親鸞聖人との由来を刻んだ石碑が建てられている。
 念仏の流布を垣間見るようだ。




内野如来様




安養軒 御堂
 

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