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011 | 「古都奈良の文化財」の 世界遺産登録について |
昨年12月2日に「古都奈良の文化財」が世界遺産に登録されることとなりました。翌3日付けの日本経済新聞朝刊に次のような記事が掲載されました。 「古都奈良の文化財については,当初委員会に提出された報告では登録基準として挙げられていなかった『宗教的価値』を評価する声が各国から出るなど、高い評価を受けたという」(委員会終了後の記者会見より) この委員会は秘密会議の為これ以上の詳細は不明ですが、推測するに、日本からの申請の際には、宗教的価値というものがそれほど重視されていなかったが、国際的基準から見れば、あのようにすばらしい文化遺産の背景となっている、もしくは支えている宗教的価値をも評価するのは当然のことだ、ということなのではないでしょうか。 この外国委員からの指摘は、日本の文化財保護の痛いところを衝いているような気がします。 つまり、文化財保護が長足の進歩を遂げてきたかに見える日本ではありますが、たとえば、建築、彫刻、古文書等々の文化財の価値として、古さや技術面のすばらしさだけで評価するのではなく、それらを支えてきた多くの人々の努力、熱意、更にはその努力や熱意を生み出す源泉となった思想、宗教といったものへの目配りが足りないのではないかということです。 文化財は寺社などに所属することが多いため、そのような点まで踏み込むと、特定の宗教・団体に肩入れするような印象を与えることを危惧しているのかもしれません。しかし、そこまで全体的に文化遺産を捉えてこそ、総合的評価が可能でありましょうし、更なる価値が見出されることもあるでしょう。文化財保護に関わる方には、文化財を支える思想、宗教という面を、今まで以上に考慮に入れていただきたい、と、強く感じる次第です。 (石上 和敬) |
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