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 即位の礼・大嘗祭への都の
 公金支出、東京地裁が
  
合憲判決

by 北條 祐英    




  1977年7月13日津市地鎮祭訴訟の合憲判決が最高裁において下された。それ以来、いくつかの政教分離にかかる裁判がおこなわれ、高裁においては合憲違憲それぞれの判決が下され、1997年4月2日最高裁大法廷において愛媛玉串料訴訟の違憲判決が下された。これは政教分離訴訟において最高裁が出した初めての違憲判決だった。

   やっといい方向へと思っていた矢先の合憲判決である。明治時代に創られ敗戦によって牙を抜かれたとはいえ、現在に至っても皇室行事は国家神道に則っている。その皇室行事の中でも特に宗教性が高い「即位の礼」「大嘗祭」に東京都が計約5100万円の公金を支出したことが憲法の政教分離原則などに違反しないという判決には開いた口が塞らない。

   折りしも国会では「ガイドライン法案」が審議中である。何やらきな臭い方向へ国が向いているように思えてならない。「いつか来た道」にならなければいいのだが。



(朝日新聞 1999年3月25日)
■即位の礼・大嘗祭――都の公金支出、合憲
 東京地裁、住民の返還請求退ける 



 1990年11月の「即位の礼」と「大嘗(だいじょう)祭」に際し、東京都が計約5100万円の公金を支出したことが憲法の政教分離原則などに違反するとして、当時の鈴木俊一都知事ら4人を相手に公金の返還を求めた住民訴訟で、東京地裁は24日、請求を全面的に退ける判決を言い渡した。青柳馨裁判長は「即位の礼で都は宗教とかかわりを持ったが、その程度は社会的・文化的諸条件に照らして相当とされる限度を超えていない」と述べた。皇室行事として行われた大嘗祭などについても、「知事の参列や公金支出は政教分離原則に違反しない」と結論づけた。

 原告は東京都墨田区の牧師、森山〓(つとむ)さん(64)ら147人。被告は鈴木前都知事のほか、当時の都総務局長ら。原告側は「政教分離原則の厳格な適用を求める司法の流れを無視している」として控訴する意向を示した。

 判決は、津地鎮祭訴訟で最高裁大法廷判決が77年に示した政教分離原則をめぐる「目的効果基準」を踏まえて、合違憲性を検討。(1)即位の礼の目的は天皇即位を公に宣明し、内外の代表が祝うという世俗的なもので、その効果は神道を援助、助長するものではない(2)大嘗祭関連行事は天皇や皇室の私的信仰に基づく皇室行事として行われ、宮内庁から案内を受けた前知事が参列したことには敬意と祝意を表する以上の宗教的要素は含まれていない――などと判断した。

 そして、儀式への参加に伴う費用や、都独自の祝賀行事の費用を公金から支出したことについて、「国民主権原則違反」「思想良心の自由の侵害」などにも当たらないと結論づけた。都営地下鉄の記念乗車券発行に関する支出については、「都知事の権限外」として訴え自体を退けた。



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