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 米高校銃乱射事件

                    by 小林 泰善    


 アメリカ・コロラド州のコロンバイン高校の乱射事件は、遠く離れた日本の私たちにも強い衝撃を与えました。ある新聞の見出しの「なぜ?」という文字は、まさに関係者でなくとも多くの人が持つ共通の思いを象徴していました。事件については、時が経つとともに、種々の事実が明らかになり事件が解明されていくことになることでしょう。
 しかし、「なぜ?」のすべてが了解できることにはならないでしょう。それは、「なぜ?」という思いを招く少年事件が内外を問わず多発していることにあるからです。
 少年たちの心の中に描かれる想像の世界は、夢のあるものばかりではないことは理解できます。中には残酷なものなど歪んだものも当然のことながらあることだと思います。ただ、それを実行してしまうというところに近頃の事件の特徴があることと思います。今回の事件の背景には、少年が武器をたやすく手に入れることができたという異常さもあります。しかし、銃でもナイフでも同じことです。なぜ、実行に移す前に内からも外からも制止が働かなかったのでしょうか。
そして、この度の事件の大きな特徴は、犯行のグループ化です。計画性や準備期間の長さから考えてみましても、グループの行動を持続させた背景には、その行為を正当化する彼らなりの思想的バックボーンがあったと考えられます。もし、現代社会の中にそのような思想を醸成する素地があるとしたら、それはゆゆしき問題です。

 非行グループが、反社会的思想とのかかわり(単なる憧れのようなものであったとしても)を持つとき、日本でも同じようなことがおこる可能性を否定することはできません。 世界では、民族・思想・宗教・文化の相違から起こる争いが絶えません。日本の過去も例外ではありません。そして、現在においても民族差別や社会的弱者に対する差別は厳然としてあります。少年事件に絡むものとして思い出されるのは、横浜であったホームレスの人々に対する襲撃事件です。
 また、新しい問題として、オウム真理教などセクトに対する意識と対応を、真剣に考えなければならない時期にきているのではないかと思います。
 少年の心の問題は、現代に生きる私たちが責任を負う重要な課題として多角的にとらえていかなければならないことと思います。
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