最近のニュースからページ 029
「国立・千鳥ケ淵戦没者墓苑があるのに・・」 |
先日の野中官房長官の発言につきまして、少し考えてみたいと思います。(資料参照) まず「首相はじめすべての国民が心から慰霊できるよう、あり方を考える非常に重要な時期にさしかかっている」という考えから今回の発言は始まったようですが、元々「靖国神社への公式参拝」に疑問を持つ者としましては、政府の靖国神社に対する考え方を見つめ直すきっかけになるのではないかと期待を持ちました。 しかしながら、その後の内容は、そんな思いとは裏腹の「何としても靖国参拝を成立させたい」という意向の表れでしかなかったのです。そのためには、政府がこれまでよりどころとしてきたはずの「英霊」の一部に戦争のすべての責任を押しつけ(A級戦犯の分祀)、自らを正当化して責任から逃れようとする意図が伺えます。 また「各国首脳が来日した時にわが国の戦没者の国立墓地として献花していただけるような環境をきちっとしておくべきではないか」という発言には、現に存在する国立千鳥ヶ淵墓苑をあえて「身元不明の遺骨を納める墓」として、価値の低いものとしてしまっているように感じられるのです。 戦って亡くなった兵士であれ、戦火に遭い亡くなった市民であれ、敵味方を問わずすべての戦争被災者が同じく戦争犠牲者であったはずです。「日本の国のために」と政治家はいわれますが、国家主義という差別の上に作り上げられた「ヤスクニ」という思想こそが今問い直されなければならない問題なのだと思うのです。野中発言を正しい意味で実行するなら、国立千鳥ヶ淵戦没者墓苑の充実を図るべきだと思います。 私たち国民や海外からの人びとすべて、つまりは地球人として心から戦争を悼み、同じ過ちを繰り返さないようにと、心から参拝できる場所は、すでに千鳥ヶ淵墓苑において宗教的絡みを超えて存在しています。 もし、靖国のあり方を考え直すのなら、政治的意図のない、どの宗教儀礼によっても参拝できる場所の検討をはじめてもらいたいと、心から願います。 遠山章信 (資料) 「A級戦犯の分祀など検討を」靖国神社で官房長官 野中広務官房長官は6日午後の記者会見で、太平洋戦争の戦没者らがまつられている靖国神社について「首相はじめすべての国民が心から慰霊できるよう、あり方を考える非常に重要な時期にさしかかっている」と述べ、政府・与党内で調整を進めていく考えを示した。そのうえで、首相の公式参拝などを可能にするため、A級戦犯を他に移す「分祀(ぶんし)」や、靖国神社を純粋な特殊法人とするなど具体的な方法をあげた。靖国神社のあり方をめぐっては、自民党の森喜朗幹事長や公明党の冬柴鉄三幹事長も同日、検討に前向きな考えを示すなど、公明党が政権入りした後の課題として浮上する可能性が出てきた。 野中氏は会見で「(靖国神社の)あり方について十分整理をすることなく五十数年を迎えてきた」との認識を表明。個人的な見解として「だれかが戦争の責任を負わなくてはならない。A級戦犯の方々に第2次大戦の責任を負ってもらい、その方々を分祀する。靖国神社はできれば宗教法人格をはずして純粋な特殊法人として、宗教を問わずに国民全体が慰霊する」との具体案を示した。 さらに「各国首脳が来日した時にわが国の戦没者の国立墓地として献花していただけるような環境をきちっとしておくべきではないか」と述べた。 靖国神社を無宗教の慰霊施設とすることで、首相らの公式参拝や各国首脳の来日時の献花を可能にするという考えだ。 これに関連して、自民党の森喜朗幹事長は記者会見で「日本の国のために戦った人の霊をなんら公式におまつりできないのは、やはりおかしい。今世紀ももうすぐ終わるというのであれば、やはり正式に協議をしてもおかしくはないと思う」と述べ、党内で靖国神社のあり方を検討することに前向きな姿勢を示した。 また、公明党の冬柴鉄三幹事長も記者団に「国家のために働いた人を無宗教でまつる墓地ができれば、国民も広くお参りができる」と述べた。 (朝日新聞 1999.8.7) |
|
戻る |