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「仏像・仏画の鑑賞について」



 最近、美術館や博物館で仏像・仏画などを鑑賞していて思うことがあります。以前には、仏像・仏画などに向かって静かに手を合わせる人々の姿がしばしば見られたような気がするのですが、ここのところそのような光景を目にすることがめっきり少なくなったように思います。私は仏像の前では静かに手を合わせるようにしているのですが、何となく周囲から浮き上がってしまう自分を感じる時さえあります。

 このような現象は、仏像・仏画を信仰、礼拝の対象としてよりも、文化財、美術品として鑑賞したいという人々が増えてきた表れでしょうか。このような傾向に影響されてか、仏像・仏画を保有する寺院側が、一般の展覧会に仏像等の宗教的な宝物を出品するのをためらうといった兆候が出ているとも言われます。

 しかし一方で、信仰、礼拝の対象としてのみ仏像等は鑑賞されなければならない、というのも偏狭な考え方であり、少しでも多くの人々に結果として仏縁を結んで頂くために、文化財、美術品としての側面に関心を持つ鑑賞者が増えることは意義のあることだという意見もあるようです。実際、寺院の伽藍や仏像等の宝物が国宝や重要文化財であると知ったことがきっかけとなって、それまで格別仏教に関心があるわけでは無かった多くの人々の関心が惹起されていく例は枚挙にいとまがないでしょう。

 あくまで信仰、礼拝の対象として仏像・仏画が扱われることを期待する寺院側と、文化財、美術品としての側面に関心が偏りがちな一般の人々、両者の歩み寄りが最善の道でしょうか。

石上 和敬  


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