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赤塚不二夫さんの
「視覚障害者向けの漫画絵本『よーいどん!』」



 漫画家の赤塚不二夫さんが、「触図」と「点字」で目に障害を持つ人たちの

ために漫画をつくりました。(毎日新聞の記事参照)

 テレビでもこの漫画が紹介されていました。テレビでのインタビューで赤塚不

二夫さんは、この本を作る発想のもとになった子供の時のエピソードを話して

いました。

 子供の頃、クラスに障害をもった子がいました。運動会の日、その子の面倒

をみているよう先生に頼まれ、教室から2人で運動会を見ていました。お腹が

空いてきたので、みんなより先に2人で「早弁をしよう」ということになり、こっそ

りお弁当を食べたのでした。そうしたら、その子はとても喜びいつまでもその思

い出を口にするのでした。

 この時のことが、ハンディキャップをもつ人とも一緒に何かを楽しめるというこ

とが、必要なんではないかという発想となったそうです。そして、目に障害をも

つ人とそうでない人が同じ本を読んで楽しめる、「絵」と「触図」、「字」と「点字」

が共にかいてある漫画本をつくるということになったそうです。

 意外と共に楽しめるという視点は気づきそうで気づかなかった視点ではない

でしょうか。障害をもつ人のためにつくられたものを、健康な人も同じように楽

しめたなら、喜びを共有することができるでしょう。そうしたら、障害をもつ人の

喜びもより一層大きなものとなることでしょう。

宮本 義宣  


 見えない人も楽しめたらいいのだ−−赤塚不二夫さん、点字と『触図』でギャグ漫画」

 漫画家の赤塚不二夫さんが視覚障害者も楽しめるようにと、「触図」と点字でギャグ満載の漫画を作った。ケムンパスやニャロメなどおなじみのキャラクターが勢ぞろいし、読者とともに迷路をたどりながらゴールを目指す趣向だ。

 題して「赤塚不二夫のさわる絵本 よーいどん!」。このアイデアは、1998年末に食道がんの手術を受け、東京都内の病院に入院中、ひらめいたという。「目の見えない人も、自分のギャグ漫画で笑えるんだ」

 だが、こうした漫画は過去にほとんど例がない。赤塚さんは点字の学習絵本があると聞き、取り寄せた。その学習絵本では、動物や物体の輪郭が隆起した点で縁取られている。目の不自由な人はこの「触図」で形をつかみ、さらに点字による説明を指先で読み取る。
 しかし、描写が複雑な漫画を点で表現するのは簡単ではない。「確かに、体が犬でしっぽがウナギのウナギイヌなどは、すぐには理解できないかもしれない。でも、目の見える人がキャラクターの性格などを説明してあげればいい」

 点字コーディネーターの協力を得ながら、試行錯誤を続けた。「理解できないのではないか」という意見もあったが、できるだけ指先で判別しやすいように工夫を重ねた。

 目の見える人も一緒に楽しめるように、オールカラー刷り。途中、点字だけのセリフ部分もあり、赤塚さんは「逆にそこでは目の見えない人が、目の見える人に点字を教えてあげればいい。見える人、見えない人が一緒に生きてなくちゃ、ダメなんだから」と語る。今月下旬に小学館から発売予定(定価2000円)で、全国の盲学校に寄贈される。【笠井光俊】


(2000.08.16 毎日新
聞・東京版・朝刊)

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