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宗教の視点から見た小泉総理誕生




 小泉純一郎総理誕生の経緯は、大方の予想を覆す支持基盤の弱い弱者の側の勝利であり、判官贔屓の日本人にとっては実に面白いドラマチックな展開でありました。
 その経緯を宗教の視点から、振り返ってみたいと思います。

 自民党総裁選は、当初から最大派閥である橋本派の出方で全てが決まると考えられていました。ところが、党員による予備選挙で改革を訴える小泉氏の優勢が伝えられ始めますと、連立与党の公明党から脅しがかかります。小泉氏が勝てば閣外協力か連立離脱と。公明党にとって太いパイプである野中氏のいる橋本派会長の橋本氏になんとしても勝ってもらいたかったのです。
 このことはむしろ、小泉氏の支持を増やしたのではないかと思います。国会と違い、地方組織では連立を受け入れても、それを歓迎しているとは限らないのです。自公保連立と言いましても、それは数合わせだけの場当たり的なものであることをだれもが見抜いています。地方党員にとっては「でき得れば連立解消を」との期待は大きいのです。公明党は、創価学会を支持基盤とする言わば宗教政党です。その創価学会は、宗教活動のあり方から共通基盤を見いだすことが難しいと感じている方が多いからです。そのことを知ってか知らずか小泉氏は「公明、保守両党との連立にこだわらない」と発言しています。
 小泉氏の雪崩現象的圧勝の原因はこんなところにもあるのではないでしょうか。
 ところが、小泉総理誕生が決まるとあっと言う間の連立協議です。公明党の小泉氏への懐疑はへつらいに変わり笑顔で握手です。もたれ合いというのでしょうか。小泉総理の言う「自民党を変える」ということは妥協を排することではなかったのではないかと思うのですが、自公保の節操のなさを感じた人は多かったのではないでしょうか。なんといわれようと権力に就いた方が勝ちということなのでしょう。

 もう一つ、宗教の立場から無視できないのは、小泉総理の靖国神社公式参拝発言です。
 自民党の支持団体である日本遺族会へのリップサービスなのかもしれませんが、森前総理の神の国発言の次元に舞い戻ってしまいました。
 しかし、どうやら今政権も靖国神社公式参拝は見送るという方向に推移しそうな状況です。
 この靖国神社公式参拝問題に対する政治家の発言を見ていますと、ほとんどの方が、この問題を外交問題であると捉えているように感じます。しかし、この問題は外交問題以前に、憲法の保障する信教の自由に関わる問題なのです。政治家にはどうもその認識がないように思えます。
 民主党の菅氏は、27日の記者会見で「A級戦犯が合祀(ごうし)され、公式参拝は先の大戦そのものを認めることになる。分祀して公式参拝できるようにするか、代わる慰霊の施設に公式参拝するか。いずれかが打開の道だ」と語っています。  
A級戦犯を分祀すれば靖国神社に公式参拝してよいというものではありません。靖国神社は神道系の一宗教法人であり、それを国家が保護するならば信教の自由を侵害します。また合祀や分祀は極めて宗教的な考え方であり、政治が口を出すことは宗教への国家の介入になりここでも信教の自由を侵害することになります。
 戦没者を国家として追悼する意思があるのなら、どの宗教でもその宗教の儀礼で参拝できる公の施設を造ることしか打開の道はないのではないでしょうか。現在、千鳥ヶ淵戦没者墓苑が国の施設として形態を保ってはいるのですが……。
 小泉総理は、国民の期待を集めています。党利党略ではなくあらゆる意見を聞き、是々非々の立場で改革断行を進めていっていただきたいと思います。
                            



小林 泰善    






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