私が15年位前、築地別院に勤務していた頃の話ですが、年1回、社会事業の一環で国立療養所多磨全生園(東京都東村山市、ハンセン病患者元患者の療養施設)の法要に出向していました。私もその機会の恵まれ、何回か出向させていただきました。
全生園の中には、いろいろな宗派の一戸建ての礼拝施設があり、その中の浄土真宗の本堂でお参りと法話と茶話会をいたしました。都内の僧侶と一緒にまいりましたが、それは親切に接待していただきました。ご参拝の方々はハンセン病の後遺症で身体の抹消が一部が欠損、変形している方もいましたが、そうではない方もいました。しかし、世話人の方に聞くと、ここに来られる方は一部で、後遺症の関係で出て来られない(ひきこもって)と言っていました。
職員の方からハンセン病のことについてお話を伺うことも出来ました。
昔の隔離政策があった頃はハンセン病についての誤解もあり、家族は世間に自分の家からハンセン病が出たということを隠し、本人は家族と縁を切られ、戸籍も抜かれたようです。小さな子どもは、一番親とすごしたい時期に親と離されて、特にかわいそうであったようです。
そして、施設内の方々が年頃になると、結婚をする方もあったそうです。しかし、子どもは産んではならず、断種などが行われていたようです。
しかし私たちがお伺いさせていただいていた頃はすでに、全生園で生活している方々も外出したり、付近の住民の出入りも自由になって、交流行事も盛んに行われているようでしたが、そこで生活している方々が社会復帰する事は、なかなか難しいようでした。
こんな話を伺っておきながら、当時、私はこの現実の理不尽さ、差別偏見に疑問すら持たず、何の発言もしなかったことが、今になって大変申し訳なく思っています。
この度のハンセン病訴訟勝訴、本当におめでとうございました。そして、訴訟中のものについても、いち早く良い審判が出ることを心より念じさせていただきます。
合掌
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