コラム36  02.02.01



初詣と青少年の動向


 警視庁の発表によりますと、今年の三が日の全国の主な神社仏閣への参拝者は約8941万人が訪れ、最高の人手だった昨年より約384万人減ったそうです。東海地方が大雪に見舞われ大幅に減ったことも影響しているのですが、関東地方でも有名神社仏閣の参拝者が減っています。
 しかし、近隣の神社の役員さんたちの話によりますと、どこも例年になく多くの参拝者があったということです。それも、除夜から元旦にかけて大勢の参拝者があり、特に目立ったのが中学生や高校生の集団だということです。いろいろな方のお話を総合すると、除夜の鐘から初詣、そして初日の出と中・高生のグループがお寺や神社の参拝のはしごをしていたようです。

 私は、それを聞いて考えてしまいました。私の中学・高校生時代はどうだったろうかと。私も友達に誘われて初日の出を見に小田急線に乗って江ノ島まで行ったことがあります。しかし、その時参加した仲間は、だれも神社へ行こうと言いだす者はありませんでした。私たちのその年代の少年にとって神社仏閣への関心はなかったと思います。
 大晦日から元旦にかけては、友達と出歩いても咎め立てはされません。少年少女たちにとっては新年の朝をイベント感覚で楽しんでいるのです。
 ただその関心が近隣の神社仏閣に向いているということがとても不思議です。良い傾向か悪い傾向か判断に迷います。私の寺でも除夜の鐘に多くの参拝者が集まります。ここ数年、鐘を撞く行列の中には小学生も含めて若い人たちの姿が目立ちます。小さい子はほとんどが親子連れですが、中学・高校生は、数人ずつのグループで来ています。その感覚は除夜の鐘というイベントへの参加であり宗教行動とは考えにくい面があります。

 初詣に大人たちが有名神社仏閣に参拝する。その宗教行動が、いよいよ子どもたちに伝播し始めたのでしょうか。初詣は単なるイベント感覚では読みきれません。参拝という宗教行為を伴うからです。数年前まで関係者以外にはあまり見向きもされなかった町や村の鎮守さまが、初詣や祭りという形で最近復活してきています。私たちは、この若者の動向を注目していかなければならないと思います。
 宗教を理屈ではなく感覚で捉えていく若者たち。カルト宗教に対する無防備という危うさも感じます。一面、真実の宗教に今まで以上に素直に関心を向け易くなっているのかもしれません。

小林 泰善 

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