こんなCMコピーを覚えていますか?
「モノより、思い出」(日産『セレナ』)
Creedence Clearwater Revivalの名曲“Have
You Ever Seen The Rain”にのって、家族がセレナでお出かけするCMです。結局はモノ(車という商品)を宣伝しているんだけどなーと笑いながらも、ノスタルジックなものをくすぐられました。
国民の過半数が自分の生活程度を「中の中」と感じている昨今(*1)、身の周りを見渡してみると、便利なモノが溢れています。
例えば、各家庭にお風呂がついているということ。当たり前に感じている人が多いかもしれませんが、ほんの30年ほど前は『神田川』の世界だったんですよね。(私自身、銭湯には数えるほどしか行ったことがありません)
モノが便利な生活を提供してくれたことは間違いありませんが、同時にモノは、人と人が接する機会を減らしてしまいました。便利さと引き替えに、モノは、人の温もりを削り取っていきました。
そこで今は、面白い逆行がおこっているみたいです。
一例として携帯電話。一昔前は機械的な着信音がもてはやされましたが、新しいタイプは人の声で着信を知らせる機能もあります。また、相手の都合を気にしなくていい気軽さがウケたメールも、文字のやり取りだけではなく、写真を送付できるタイプが普及しつつあります。
技術の進歩に見えるものは、実は、人の温もりを取り戻す歩みです。モノによってココロを手に入れようとしているかのようです。なんだか矛盾を感じます。
さて、内閣府が発表した世論調査(*2)には、このような回答があります。
物質的にある程度豊かになったので、これからは心の豊かさやゆとりのある生活をすることに重きをおきたい
(以下「心の豊かさ」という)→60.7%
まだまだ物質的な面で生活を豊かにすることに重きをおきたい
(以下「物の豊かさ」という)→27.4%
心の豊かさは、物質的な面が満たされてから考えることなのでしょうか。先送りにするものなのでしょうか。ゆとりのある生活とは、モノやおカネで得られるものなのでしょうか。心情的にはわかりますが、疑問ばかりが残ります。
どんな状況にあっても、「当たり前を尊くいただく心」がないことには、豊かさを実感することはできないのかもしれない。
まあ、偉そうに言う私が、心の豊かさを手に入れているかナイショです。
菅原さおり 2002.10.01
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